所得が1億円を超えると税負担率が下がる「1億円のカベ」がある。令和5(2023)年度税制改正法では、所得が30億円以上の日本のトップ300人程度の「超富裕層」に最低22.5%の税負担を求める内容が盛り込まれた。 租税政策が専門の東京財団政策研究所の岡直樹研究員は、この制度を「超富裕層ミニマム税」と名付け、「岸田文雄首相のリベンジだ」と言う。どういうことなのか。【聞き手・須藤孝】 ◇ ◇ ◇ 再チャレンジ? ――岸田首相は就任前の自民党総裁選で金融所得課税強化を掲げましたが、尻すぼみになってしまいました。今回の税制改正にはその再チャレンジの意味があるということでしょうか。 岡氏 金融所得課税というよりは、緊急避難的に再分配機能を高めることが目的だったと思います。 新型コロナウイルス禍で日本でも富の集中が加速しています。「1億円のカベ」もよく知られるようになっています。成長と分配を経済政策の柱