9月1日が近づくと、母が決まって話してくれたことを思い出す。 横浜市南区の中村静枝さん(92)は、母の西川フミさんから100年前の関東大震災で被災した当時の体験談を繰り返し聞かされてきた。 物心がついたころから、12年前に母が104歳で亡くなるまで。「記憶がどんどん薄れていく危機感があったんでしょうね」 フミさんが被災したのは、かつての面影を残す横浜・伊勢佐木町の商店街の一角だ。 当時、「髪結いさん」をめざして美容学校に通うため、伯父が経営する和菓子店「三河屋」の2階に居候していたという。 はかまを脱ぎかけて転倒、階段がちぎれ… 9月1日は、学校の始業式だった。帰宅して自室で袴(はかま)を脱ぎかけたとき、地面が大きく揺れた。 激しい揺れに立っていられず、袴に片足を入れたまま転倒した。懸命に立ち上がって逃げようとしたが、階段は3段目から下が千切られたようになくなっていた。 伯父の指示で、使用