19世紀末の空を、謎の船が飛び回った。 それは当時、まだ実用化に至っていなかった飛行船。 飛んでいるはずのない空の船――奇妙な搭乗員――その報告が、様々な地方で様々な新聞の紙面を賑わせた。 謎の飛行船とその搭乗員。彼らはどこから来て、どこへ行ったのか。 何かが空をやってくる 1896年、北米。 20世紀を目前にしたこの年、11月から翌1897年5月にかけてアメリカ各地の新聞で『謎の飛行船』を目撃したという記事が誌面を飾った。 それは神出鬼没の幽霊飛行船。あるはずのない奇妙な飛行機械が北米の空を縦横無尽に飛んでいるのだ――と各地方新聞が連日のように報じた。 その奇妙な飛行機械はカリフォルニア州サクラメントで最初に騒ぎになり、その後、カンザス州、ウエストバージニア州、ネブラスカ州、ワシントン州、インディアナ、アイオワ、サウスダコタ――と北米の広いエリアへと広がった。 目撃者総数は1000人を超