誰かの書いた文章や言葉を読んで、これは私が感じたいつかのあれだと、根拠もなしに確信してしまうその勢いに反して、「あれ」がなんなのかはさっぱり、言葉にならない、その感じがおもしろい 例えば「言葉にできないこと」をイメージするときに、私が思い浮かべる光景にはいくつかあって、そのひとつが、学校サボってどっか行こうって乗ってた、昼下がりの小田急線の車内のことなんだけど、 いつもは端っこに座るのに誰もいないからって中央に座って、視界が開けていて、なげだした足と、つま先をかすめる影と、学校指定の靴下は片方だけゴムが緩んでいて、これ三足でニセンエンは高いよなぁって、左手を鞄に添えたまま、腰を落としてだらしなく座り、ふと顔をあげたときの緑の、 その流れてく色は、陽にあたって金と薄緑の水玉模様のようで、私は隣に居る誰かに、それを言いたいと思った、けど、そうしなかったのは、いま口にしたら、それは、まったく別の