〈……少なくとも死刑を合法の制度として残すこの日本に暮らす多くの人は、視界の端にこの死刑を認めながら、(存置か廃止かはともかくとして)目を逸らし続けている。 ならば僕は直視を試みる。できることなら触れてみる。さらに揺り動かす。余計なお世話と思われるかもしれないけれど〉(『死刑』より) 「ゲシュタルト崩壊って、わかりますか?」と森さんは尋ねてきた。漢字をじっと見つめていると、字がゆらゆらと崩壊していく。死刑について考えていると、そんな思いを何度となく繰り返してきたという。 僕はこの本で、「死刑を凝視せよ」みたいなことを言ってはいるんだけど、いざ凝視していると何がなんだかわからなくなる。やってみて、とてもやっかいなテーマだと思いましたね。 これはオウムの事件以降、ずっと考えていることでもあるんだけど、日本人の特殊性って何なんだろうか。世界が死刑廃止の趨勢にあるなかで圧倒的な死刑存置を支持するこ