解剖を楽しくするためにしていたこと ――さきほど養老さんから、仕事を楽しむのが一番だというお話がありましたが、ご自身は解剖を楽しくするためにどういうことをされましたか? 【養老】あんまり人がやらないことをやるということかな。たとえば遺体の引き取りね。解剖は、遺体がないとできないから、必要な仕事なんだけど、みんな面倒くさがってやろうとしないんですよ。だって、遺族とか、亡くなった人の子どもとかに直接会って、遺体の引き取りについて説明するのってイヤでしょ。何が起きるかわかっている場合は楽でいいんだけど、遺体を引き取る場合には何が起こるかわかんない。遺族にはいろいろな性格の人がいるわけだからね。なかなか事務的に進行しないのがネックですよ。そういうことはやっぱりイヤですよね。 場合によっては、大学側ともめることがあるんです。 お葬式が終わると、遺体を引き取ってくる。普通は焼き場に運ぶんだけど、解剖の