書筆、画筆、化粧筆など、それぞれに製法の異なる会社が集う歴史ある“筆のまち”広島県安芸郡熊野町。「熊野筆」として知られる筆づくりの歴史は古く、江戸時代末期までさかのぼる。盆地のため農地が狭く、農民たちは農閑期になると紀州・熊野や大和・吉野へと出稼ぎに出て、その帰りに筆や墨を仕入れて行商を行うのが一般的だった。このことがきっかけで、筆づくりを学んで帰った人々が村人に筆づくりを広めたという。そして、筆の穂となる獣毛や、軸となる竹の生産地ではないものの、筆づくりの技術が現在まで脈々と受け継がれ、1975年には書筆の一部に対して国の伝統的工芸品の指定を受けた。