このコーナーは、時事通信社の関係団体で、(一社)内外情勢調査会の会員企業がお薦めする各社の商品を掲載します。内外情勢調査会は1954年の設立で、ほぼ毎月、全国100以上の都市で会食付きの会員制講演会事業を展開しています。会員は、企業経営者や中央省庁・自治体の首脳ら6500人。東京の会合には、首相や閣僚、日銀総裁なども登壇することが知られています。
書筆、画筆、化粧筆など、それぞれに製法の異なる会社が集う歴史ある“筆のまち”広島県安芸郡熊野町。「熊野筆」として知られる筆づくりの歴史は古く、江戸時代末期までさかのぼる。盆地のため農地が狭く、農民たちは農閑期になると紀州・熊野や大和・吉野へと出稼ぎに出て、その帰りに筆や墨を仕入れて行商を行うのが一般的だった。このことがきっかけで、筆づくりを学んで帰った人々が村人に筆づくりを広めたという。そして、筆の穂となる獣毛や、軸となる竹の生産地ではないものの、筆づくりの技術が現在まで脈々と受け継がれ、1975年には書筆の一部に対して国の伝統的工芸品の指定を受けた。
この“筆のまち”である熊野町が改めて耳目を集めたのが、2011年サッカー女子ワールドカップで初優勝した「なでしこジャパン」へ授与された国民栄誉賞副賞の竹田ブラシ製作所の化粧ブラシだろう。
「創業から現在まで営業部門のない小さな会社ですが、熊野で初の化粧ブラシ専門製品メーカーとして『世界一の品質』『世界初の新しさ』にこだわった製品を作り続けています。副賞となった化粧ブラシは、弊社が内閣府から直接の依頼で製作、納品したものです」と話すのは、1947年に熊野町で創業した有限会社竹田ブラシ製作所3代目社長の竹田康洋氏。
竹田ブラシ製作所では、現在、歌舞伎などに使う伝統的和化粧刷毛から最新のメイクアップブラシ類まで800アイテム以上をオリジナルブランド「Takeda Brush」として販売。国内のみならず、海外の高級ブランドやメイクアップアーティストからも高い評価を受け、パリコレ舞台裏にも招待された。
品質の説得力を追求した化粧ブラシ
製品づくりでは、「十把一からげにされがちな化粧筆業界の中で、どうやって個性やブランドを研ぎ澄ますか。本質的には、製品そのものが持つ説得力(品質)を先鋭化するしかない。熊野最古の化粧ブラシメーカーの強みである、長年にわたる独自の基礎技術と知識の積み上げをこの10年でさらに磨き上げました」と竹田氏は強調する。
例えば、ヨーロッパ整毛を施した最高品質ランクの「イタチ毛」「リス毛」「狐毛」などの原料毛は、毛に特徴があり過ぎて量産には全く向かず、同社ですら昔は使いこなせなかった。そのような高価で希少だが、抜群に品質が良い原料毛を使うためには、入荷時の観察強化や技術的な工夫の継続が必要不可欠。「別次元の使いやすさ」「今までにない個性」など、多様な「新しい高品質」を生み出す素地はまさにここに集約している。さらに化粧品の研究やテスト、お客さまのニーズなどの最新知識を製品づくりに導入することで、「世界初を目指す」「世界最高品質」にこだわった製品が生み出される。
なでしこジャパンに贈られた「基本ブラシセット ベーシック 椿」には、用途に合わせてリス、ヤギ、イタチの毛が用いられている。しかも正しい使い方をすれば、10年以上は問題なく使い続けられる。
竹田氏によれば、「毛先を光に透かすと消えてしまうような産毛に近い“本当の毛先部分”を生かす作業には、熊野の筆づくりの伝統技術に通じる点も多く、実際、筆を肌に滑らせてみると、品質の良さを実感していただけると思います」と話す。
厳選された原料毛と高い技術を用いて作られる化粧ブラシは、自然のままの毛先が肌に触れるよう、カットせずに一本一本、職人の手によって「そろえ」と「成形」が行われ、1日の生産量も限られる。こうした独自の少量生産方式主体の製造体制は、量産化がメインの化粧筆業界では非常にまれだという。
世界を席巻する製品を続々生み出す開発力
オリジナルの金型設計技術を基に世界を席巻する製品を生み出してきた竹田ブラシ製作所。世界的ブランドから採用され続けた携帯用リップブラシや1982年当時、世界初の製品として西ドイツの商社と共同開発した携帯用チークブラシなどが特に有名である。
中でも携帯用チークブラシは、その後も改良が重ねられ「内ケース」「内容物」「外ケース」それぞれが固定、開放する機能構造のふた付きの携帯用ブラシへと進化を遂げ、2種類の国際特許を取得している。
「ふた付きの携帯用チークブラシは、会長で2代目社長だった父・竹田史朗がユーザーにより喜ばれる製品を目指して進化させたもの。ブラシ本体にふたがあれば、化粧で使用した後でもバッグや服を汚すことはなく、衛生的に携帯できます」と明かす。
また、2003年には業界初となる百貨店内常設店(新宿高島屋1階)を開設。ほぼ全ラインアップを展示販売するなど、ユーザーとの対面販売に主眼を置いている。さらに社員とともにメイクアップアーティストを売り場に配置(交代制・不定期)し、化粧ブラシの選び方や使い方を実演しながら、ポイントメイクのアドバイスを行っている。こうした販売スタイルでつかんだニーズは、製品開発や改良に生かされている。
化粧ブラシは、女性の多くが所持する化粧道具の定番といえる存在。ぜひともユーザーの声に耳を傾けながら「世界一の品質」「世界初の新しさ」へのこだわりを形にしてきた化粧ブラシを自分へのご褒美、大切な方へのプレゼントにお薦めしたい。
有限会社竹田ブラシ製作所
〒732-4214
広島県安芸郡熊野町中溝4-8-1
TEL 082-854-0144
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