このコーナーは、時事通信社の関係団体で、(一社)内外情勢調査会の会員企業がお薦めする各社の商品を掲載します。内外情勢調査会は1954年の設立で、ほぼ毎月、全国100以上の都市で会食付きの会員制講演会事業を展開しています。会員は、企業経営者や中央省庁・自治体の首脳ら6500人。東京の会合には、首相や閣僚、日銀総裁なども登壇することが知られています。
創業340余年の歴史を紡ぐ松翁軒
子どもからお年寄りまで幅広い年代に親しまれ、日本人にとって身近なお菓子と言える長崎発祥のカステラは、ポルトガル人から伝えられた南蛮菓子にヒントを得た長崎の菓子職人が作り上げたもの。中でもとりわけ古い歴史を持つ松翁軒は、江戸時代中期の天和元(1681)年、初代山口屋貞助氏によって創設され、代々菓子作り一筋に精進を重ねてきた長崎カステラの老舗である。
松翁軒のカステラは、口当たりの良さと、色が他のカステラに比べ若干オレンジがかっているのが特徴。カステラに使われる卵は、島原半島の契約農家から毎朝直送される卵で、カステラ特有の艶のある美しい焼き上がりのために黄身の色まで厳しく管理している。
また、カステラ作りに欠かせない小麦粉にはカステラ専用粉を、カステラのおいしさを決めるザラメは、より純度の高いものを使用している。さらにしっとりとした焼き上がりのために水あめを加えるが、実はカステラに水あめを加えるのは、長崎で生まれた独自のアイデアである。
そして今も脈々と受け継がれているのは、手焼きへのこだわりだ。例えば、看板商品である「松翁軒のカステラ」には、熟練した職人による生地作りと焼き上げの見極めが重要。
まんべんなく丁寧に行う泡きり(生地の中の大きい気泡をなくし、きめ細かくする工程)から材料の計量、生地作り、焼成まで、すべての工程を一人の職人が一台の窯を受け持ち、一枚一枚を丹念に焼き上げていく。こうした職人の巧みな技と勘、経験によって、いつでもおいしいカステラが味わえる。
「その日の天候や気温によって微妙に調整しますが、こうした手間を惜しまない手仕事が、きめ細かくしっとりやわらかな口溶けを生み出すのです」と、11代目当主で松翁軒社長である山口喜三氏は、手焼きへのこだわりを話す。
さらに「松翁軒のカステラ」は、ザラメをあらかじめ底に敷いているのではなく、生地に混ぜてから焼き上げる。そうすることで、一部の溶けなかったザラメが底に沈み、触感の違いを生み出し、生地全体にザラメのおいしさが行き渡る。こうしたこだわりこそが松翁軒のファンが多い理由だ。
また、極上のカステラと名高い「五三(ごさん)焼カステラ」も松翁軒の看板商品。卵黄を増やし、砂糖もたっぷりと使用することで、よりふんわりとした食感を作り出している。ちなみに江戸時代、五つの味(すべての味)を凌駕(りょうが)するほど美味という「五味(ごみ)カステラ」の名で生まれた上質のカステラは、明治になって「五三焼カステラ」と呼ばれるようになったそうだ。
チョコレート味のカステラの元祖
明治時代に開発された「チョコラーテ」もチョコレートカステラの元祖と言われ、「松翁軒といえばチョコラーテ」という人も少なくない人気商品。今でこそチョコレート味のカステラは珍しくないが、研究熱心だった八代目の貞次郎氏が試行錯誤を繰り返し、九代目の健市氏でようやく完成となったオリジナルカステラ。当初は、お得意さまの注文品として販売されていたが、戦中は販売が休止し、戦後の昭和40年代に「チョコラーテ」として復活した。
「カステラの生地にパウダーを混ぜるというのではなく、カステラに合わせて特注したカカオマスを原料として使っています。パウダーよりもチョコレートのほうが手間がかかり、焼き上げも難しいのですが、おいしさのためには、手間は惜しむわけにはいきません」と言う。
そのほかにも、季節限定商品を楽しみにしているリピーターも多く、今の時期なら五島産の天日干しの塩で作る桜葉と九州産の小麦を使用し、桜葉のほのかな香りとモチモチとした食感の「さくらカステラ」がおすすめ。華やいだ春の香りが口の中で広がり、馥郁(ふくいく)たる味わいが楽しめる。さらに出産祝いや初節句などに作る桃の実を模した縁起菓子の桃カステラも販売中だ。
「卵、砂糖、小麦粉、水あめ。カステラの材料は至ってシンプルですが、しっとりした口溶けのよいカステラを作るためには、材料のバランスをどう調整すればよいのか。カステラの歴史は、常に進化の歴史です」
日本に伝わった当初のカステラは、小麦粉と砂糖、卵を同量で混ぜ合わせて焼くだけのシンプルなものだったが、日本独自の製法によって進化した「長崎カステラ」を育て上げてきた老舗のカステラをぜひ、味わってみては。
株式会社松翁軒
〒850-0874
長崎市魚の町3番19号
TEL 0120-150-750/095-822-0410