このコーナーは、時事通信社の関係団体で、(一社)内外情勢調査会の会員企業がお薦めする各社の商品を掲載します。内外情勢調査会は1954年の設立で、ほぼ毎月、全国100以上の都市で会食付きの会員制講演会事業を展開しています。会員は、企業経営者や中央省庁・自治体の首脳ら6500人。東京の会合には、首相や閣僚、日銀総裁なども登壇することが知られています。
岡山を代表する銘菓「きびだんご」のルーツ
日本は、世界有数の長寿企業国ともいわれるが、創業以来、伝統の灯を守りながら常に新たな挑戦を続けてきた老舗企業が岡山県にある。それが「きびだんご」で知られる株式会社廣榮堂だ。その歴史は江戸時代末期の1856年(安政3年)に始まる。
「もともとは、備前池田藩の城下町で廣瀬屋という7代続いた瀬戸物屋の後を継いだ初代、武田浅次郎が菓子屋に商売替えをしたのが始まりです」と、株式会社廣榮堂社長室室長の小西祐貴氏は、その歴史を振り返る。
当時の「きびだんご」は、黍(きび)の採れるところならどこにでもあった桃太郎の昔話にも出てくる素朴な日常食。あんをつけたり、汁をかけて食べる四角い形の日持ちの悪いものだった。それを初代、武田浅次郎氏が黍の代わりにもち米を用い、貴重品だった上白糖と水あめを混ぜて柔らかい求肥にし、風味づけに黍粉を加えることで、現在の「きびだんご」とほぼ同じ製法を完成させた。
1885年(明治18年)に明治天皇が岡山に行幸された際、浅次郎氏は「きびだんご」を献上し、「日の本にふたつとあらぬ吉備団子むべ味はひに名を得しや是」と御製を賜ったという。また、91年(明治24年)に山陽鉄道が岡山まで開通すると、商才に長けた浅次郎氏は新たな販売先として鉄道にも目を向けた。当時、串刺しのものが多かった「きびだんご」を箱詰めに変え、四角い薄い木の枠で仕切り、だんごを一つずつ詰めて販売。当時、1箱(9個入り)5銭の「きびだんご」は、岡山土産として飛ぶように売れたという。さらに日清戦争に出兵した兵士の凱旋土産にと、自ら桃太郎の扮装で駅の立ち売りを始めたことで人気を呼び、これを機に全国にその名が知られるようになった。
その後、廣榮堂は「きびだんご」とともに明治、大正、昭和と時を刻んでいくが、太平洋戦争時は物資統制令、食糧管理令が出され、材料の入手ができず、休眠状態という苦難の時代もあったという。2006年に社長に就任した武田浩一氏の父で、1962年に四代目店主となった武田修一氏は、高度成長期のさなか、販路拡大と同時にオートメーションの工場を建設した。
「山陽新幹線の新大阪―岡山間が開通した1972年は、年間売り上げが220%の伸びとなり、販売網も順調に拡大。年商は7倍にもなりました」と小西氏は話す。
その一方で修一氏は、朝日新聞連載の有吉佐和子氏の小説「複合汚染」を読んだことをきっかけに自然と共生した健康かつ安全な食品製造にも乗り出した。76年には「政所(まんどころ)もち」の産地として知られる岡山市高松農協(現JA岡山高松支所)とタイアップし、特別栽培によるもち米づくりを農家の方々に委託。そうして創業時の手づくりの味にこだわった「むかし吉備団子」を77年に誕生させた。
すべてにこだわった最高級の「むかし吉備団子」
廣榮堂の直営店(岡山県内7店舗)とオンラインショップ限定で販売されている「むかし吉備団子」は、特別栽培のもち米などを使用した材料調達から製造方法、パッケージまで、すべてにこだわった最高級の「きびだんご」として、お土産のみならず全国にファンの多いおすすめの商品である。
ふっくらとした美しい形、弾力のあるもっちりとした食感、そして、もち米の風味を最大限に引き出すため、特別栽培の希少なもち米を一晩、水に浸し、石臼で挽いて調製する。手間と時間はかかるが、この製法だからこその味わいとあっさりした甘み、食感が楽しめる。また、木箱にもこだわりがたっぷりと詰まっている。選び抜かれた芳しい香りの「秋田杉」の箱が24個入り、35個入りに使用されており、包みを開けた瞬間、木の香りがひろがる。まさにひと味もふた味も違う最高級の「きびだんご」といえるだろう。
「保存料不使用で、おいしく食べられる期限が短いため、出来たてに近い状態を味わっていただけるよう、直営店またはオンラインショップのみで販売しております」
そのほかにも、廣榮堂では、お土産の枠を超え、日本中の子どもたちに「健康なおやつとして食べてもらいたい」という思いから、93年に世界的な絵本作家の五味太郎氏のオリジナルイラストを使用した「元祖きびだんご」へとパッケージを一新。大ヒット商品となり、現在も看板商品として販売している。
岡山県は、その昔、吉備国といわれ、稲や黍の栽培に適した気候の土地だったとか。江戸時代から続く和菓子の老舗が昔からの製法にこだわり、本物の味を追求した「むかし吉備団子」をぜひ、味わってみては。
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株式会社廣榮堂(本社)
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