不倫問題で3カ月の党の役職停止処分を受けた国民民主党の玉木雄一郎代表はこのほど時事通信のインタビューに応じた。「政策の実現には協力するが、石破政権の延命に協力する気は全くない」「政策が実現しない場合はいつでも反対する。内閣不信任案のオプション(選択肢)は常にある」などと述べた。少数与党の石破政権は来年度予算成立に向け、国民民主党など野党の賛成が不可欠で、玉木氏の発言は今後の政策協議の詰めに当たり、与党側をけん制したものだ。玉木氏の主な発言は次の通り。(時事通信解説委員 村田純一、政治部 木田茜)
役職停止期間中、「一議員」として汗をかく
―3カ月の役職停止処分をどう受け止めているか?
多くの皆さんにご心配、ご迷惑をおかけした。大変重い処分で真摯(しんし)に受け止め、従いたい。初心に戻って、この3カ月(※)は一議員として、信頼回復と党勢拡大、約束した政策の実現に向けしっかりと汗をかいていきたい。
役員会には出席せず、週1回の定例会見もしていない。榛葉賀津也幹事長の定例会見に一本化し、代表としての活動は休止している。ネットではずっと発信を続けており、政策決定のプロセスを知りたいというニーズもあり、政策や他党とのやりとりをできるだけオープンに発信したい。
―議員辞職の選択肢はなかったか?
議員辞職のつもりはなかった。基本的にはプライベートな問題なので、夫婦間でどう乗り越えていくのかという問題だと思う。党倫理委員会でも、不倫そのものを組織として判断したものではない。ただ党の役職にある者が誤解を生むような行為をした、という注意義務違反で厳しく処断されたと思っている。
(※玉木氏の役職停止期間は3月3日まで。その後は党代表に復帰する予定)
「年収103万円の壁」、25年の178万円引き上げ目指す
―所得税がかかる年収の最低ライン「103万円の壁」について、自公国3党幹事長協議で、「178万円を目指して来年から引き上げる」ことで合意したが、評価は?
相当踏み込んで、自民党も公明党も決断してくれたというのが正直な印象。3党協議中、私も国民民主党幹部と連絡を取り、2回ぐらい「もう(協議を)蹴飛ばしてやめたらいいんじゃないの」と言ったこともある。うちは政策本位だから、「政策が実現するなら補正予算案に賛成するけど、実現しないなら反対」という方針が明確にあった。
自公国の協議では、三つの画期的な合意点があった。一つは、まず基礎控除の引き上げ等について「来年から」と明記したこと。
引き上げ幅も、国民民主党が主張する「178万円を目指して」と書き、「178」という数字が入ったことだ。
さらに、50年続いてきたガソリン税の暫定税率を「廃止する」と明記したことだ。期限は書いてないが、暫定税率の廃止明記はかつてなかった。これは非常に大きなメッセージだ。私たちが有権者に説明できる内容になっている。
―「来年から178万円を目指す」とあるのは、25年中に178万円まで引き上げるのではなく、年々、段階的に引き上げていくという考えが自民にある。
交渉の経緯を言うと、最初の自民案は「来年から大幅に引き上げる」と書き、その上で、「178万円を目指す」という表現だった。
「大幅」というのは人によって見方が違う。「178」というのは、場合によっては10年後や20年後の目標になるというのが自民党の原案だった。それは絶対駄目。来年は「大幅」に上げ、「178」が将来的な目標なら、来年の「178」という選択肢は消えることになる。来年の目標として178万円を目指すと押し返し、今に至っているから、この表現は重い。
(※その後、12月13日の自公国3党税制調査会長の協議で、自公は「25年分から123万円への引き上げ」を提案。国民民主は「自分たちの考えとかなり相違がある」と反発した。17日に再協議したが、自公から新たな提案がなく、国民民主は協議を打ち切った)
―「年収103万円の壁」見直しの次は何が最優先の目標か?
3カ月の役職停止期間中に考えたい。参院選に何を訴えるかだ。「103万円」はまだ終わっていない。やっとスタート地点に立ったぐらいで、協議はそう甘くはない。クリスマスぐらいに終わると思っている人もいるが、それは自公過半数の時の話。年末年始返上でやったらいい。
企業・団体献金の扱い、第三者機関で論議を
―企業・団体献金の禁止について、「団体を除く」と書かれている立憲案には「抜け穴がある」と反対しているが。
企業・団体献金について、私は全面禁止してもいいと思うが、石破首相も言った通り、本当に全面禁止すると憲法21条(表現の自由)に抵触、あるいは違反するという可能性が残るかもしれない。その意味で言うと、立憲もよく考えていて、完全に「穴」をふさぐのはまずいと分かっているので、政治団体を除いたとも考えられる。
与野党協議の場があるので、もう少し冷静に議論した方がいい。献金の上限規制を入れるとか、企業・団体献金の受け入れ先は党本部だけにし、その代わり厳しい政党法をつくり規制を設ける方が、より良い合意になる気がする。
私は今国会でまず調査研究広報滞在費(旧文通費)の使途公開と残金の国庫返納のルールと、(使途公開の義務がない)政策活動費の廃止、政治資金を監視する第三者機関の設置、この三つを先に決めて、企業・団体献金の扱いのような、なかなか政治家では決められないような問題は、独立性の高い第三者機関を設置して決めてもらえばいいと思っている。
もう一つ、今回の裏金問題の一番の根源は政治資金パーティーだったが、パーティーの開催問題は何も議論していない。いくら企業・団体献金を禁じても、企業・団体にパーティー券を買ってもらったら一緒なのに、立憲民主党は何も言わない。かつて立憲が法案を出しながら幹部がパーティー開催を予定して批判され、懲りたからだろう。
(※自民・立憲両党は12月16日の国対委員長会談で、政策活動費の全面廃止などで合意。企業・団体献金の禁止に関しては、来年3月の年度末までに結論を出すことを確認し、結論を先送りした。)
3党幹事長合意、どこまで達成できるか
―国民民主党はよく自民寄りと言われるが、各党と等距離の姿勢は変わらないか。
まず大前提を言うと、私たちは石破政権の延命に協力する気は全くない。政策の実現に協力する気はあっても、特定の政権維持に協力をするわけではない。結党以来、メディアから自民党に擦り寄っていると言われ続けてきたが、それでも有権者は私たちを評価し、衆院選で公示前より4倍の議席を与えてくれた。
それはなぜかというと、「対決より解決」「政策本位」で来たからだ。政策ごとに各党と等距離というのは党大会の活動方針に書き、選挙でも訴えてきた。与党と協議することに何の恥じらいもない。
―来年度予算案の賛否を考える上で、何を重視するか? 内閣不信任決議案が出た場合の対応は?
今回の自公国3党の幹事長で合意した内容がどこまで達成できるかが、来年度予算案の賛否にも大きな影響を与える。それが一番大きい。われわれは「トリガー条項」の時に、ある意味、いろんな教訓を学んだ。
(※国民民主党は22年、ガソリン税の上乗せ部分の課税を停止する「トリガー条項」の凍結解除を要求し、自公と政策協議を進め、22年度予算案の採決では野党として賛成する異例の対応を取った。しかし、その後の協議で自公は難色を示し、実現しなかった経緯がある)
中途半端なことで予算案に賛成したりはしない。私たちは政策が実現しないなら、いつでも反対に回る。内閣不信任案だって、(賛成を含め)いろんなオプションは常にある。誰と組むかより、何を成し遂げるかに重きを置いた判断を常にしている。相手は変わるし、判断する中身も変わる。だから、今の政治は新しいスタイルだ。
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