このコーナーは、時事通信社の関係団体で、(一社)内外情勢調査会の会員企業がお薦めする各社の商品を掲載します。内外情勢調査会は1954年の設立で、ほぼ毎月、全国100以上の都市で会食付きの会員制講演会事業を展開しています。会員は、企業経営者や中央省庁・自治体の首脳ら6500人。東京の会合には、首相や閣僚、日銀総裁なども登壇することが知られています。
信州一大きな湖、諏訪湖近くに酒蔵を構える1662(寛文2)年創業の宮坂醸造株式会社は、御柱祭で有名な諏訪大社のご宝鏡「真澄鏡(ますみのかがみ)」に由来する銘酒「真澄」で広く知られる老舗酒蔵。優良酵母として現在も国内の多くの酒蔵で使われている七号酵母発祥の蔵でもある。近年は「原点回帰」をテーマに、七号酵母をルーツに持つ自社株酵母を用いた「個性を生かした食中酒造り」を目指している。
全国の酒蔵で使用される 「七号酵母」発祥の酒蔵
宮坂醸造の歴史は、江戸末期までこの地を治めた諏訪家の家臣、宮坂家が刀を置いて酒造業に着手したのが始まり。明治から大正に時代が遷(うつ)る頃、酒蔵の経営は厳しい局面を迎えた。そんな折、酒蔵のかじ取りを任されたのが宮坂勝氏、現在社長を務める宮坂直孝氏の祖父だった。
若くして酒蔵を継いだ勝氏は、同年代の蔵人(くらびと)、窪田千里氏を杜氏(とうじ)に大抜擢(ばってき)。二人は日本一の美酒を造ることを夢見て、全国の有名蔵への視察を重ねて、技術を磨き続けた。
「その努力が実を結び、全国清酒品評会で1943年に1位を獲得、46年には上位を独占しました」と、宮坂氏は話す。
それがきっかけとなり、当時の醸造試験場所長だった山田正一博士が真澄の秘密を探るべく蔵を訪れた。その際に真澄 諏訪蔵の醪(もろみ)から新種の酵母を発見し、後に「協会7号酵母」と名付けられた。そして、戦前から戦後にかけて品評会で上位を独占していた真澄への評判と相まって、たちまち全国の酒蔵へと広まっていったのである。
七号酵母は、今でも全国の6割を超える酒蔵で使用されているが、発祥の酒蔵でありながら宮坂醸造では、2000年代以降は「華やかな味わいが出せる酵母をブレンドして使うこともあった」という。しかし、17年に大きな決断を下す。それは真澄のアイデンティティーに立ち返るための七号酵母への原点回帰だった。
真澄最高峰の銘柄「夢殿」
19年より宮坂醸造では、ほぼ全ての製品でスクリーニング技術を駆使して自社で選抜工程を繰り返し、上質な芳香があり、えぐみも少ない七号系自社株酵母仕込みに切り替えた。同時に新たな製法や技術革新はもちろん、パッケージやラベルの刷新を通じて「料理に寄り添う上質な酒」を目指し、リニューアルを行った。
「七号酵母は、近年開発された新種の酵母に比べると華やかな酒質を造り上げるには少し不向きかもしれません。ですが七号酵母で醸した真澄は、現代の日本の食事に合うように程よい酸味のある飲み飽きしない味わいになっています。ぜひ、食中酒として楽しんでほしい」と宮坂氏は話す。
質の良い酒を造るために、米や水にもこだわっている。原料米は酒造好適米(長野県産と兵庫県産)を玄米で仕入れ、自社で精米。水は南アルプス山系の伏流水を使用し酒質を磨いている。また、97年に「真澄のある和やかな食卓」をコンセプトに、酒蔵に併設したセレクトショップ「セラ真澄」をオープン。輸出にも力を入れ、海外拠点を設けるなど、日本酒文化の魅力を国内外へ発信し続けている。
真澄は普通酒から純米大吟醸酒、スパークリング日本酒まで、バリエーション豊かな商品展開をしている。
中でも明治時代から“真澄の最高峰”に冠してきた名称が「夢殿」(ゆめどの)。厳選した酒米を七号系自社株酵母で醸し、袋搾りの雫だけを製品化した希少な純米大吟醸だ。
精米歩合は35%と、小さく磨き上げた酒米を使用し、醪に圧力をかけない袋搾りで時間をかけてじっくりと絞られた雫のみが集められている。上品でさわやかな甘みと深みのある味わい、そして格調高い香りは、まさに〝真澄の最高峰〟にふさわしいといえるだろう。
また、海外で長い歴史を持つ日本酒の品評会「全米日本酒歓評会」では、2021年度に「夢殿」は大吟醸A(精米歩合40%以下)部門にて、金賞を受賞。杜氏が酒米の最高のコンディションを見極め、丹精込めて仕上げた成果の一つだ。金色に輝くエンブレムは高級感にあふれ、特別なひとときや贈り物に自信を持ってお薦めできる“究極の食中酒”である。