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JP4128614B2 - ベリリウムを含有する金属ガラスの形成 - Google Patents

ベリリウムを含有する金属ガラスの形成 Download PDF

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Description

発明の背景
本発明は、金属ガラスと一般に言われる非晶質合金に関し、この非晶質合金は、評価できるほどの均一核生成と結晶化が生じる以前に、ガラス遷移温度以下の温度まで合金を冷却することにより、合金溶融物の凝固から形成される。
低温度で非晶質或いはガラス状である合金の形成には、近年評価できる関心事がある。液体相から冷却された場合、通常の金属及び合金は結晶する。しかしながら、十分に速く冷却できる周囲温度で、ある金属と合金は過冷却することができ、極度に粘性のある液体相或いはガラスを保持することができる。104〜106K/sec程度の冷却速度が、典型的に必要とされる。
このような冷却速度を達成するために、溶融金属の非常に薄い層(例えば100マイクロメーター)或いは小滴が、周囲温度近くで保持される導体基板と接触させられる。小さな寸法の非晶質物質を、結晶化を押さえるために、十分な速度で熱を取る必要が生じる。したがって、従来開発された合金は、薄いリボン或いは板或いは粉末としてしか入手できない。このようなリボン、板或いは粉末は、冷却され基板への溶融紡糸と、狭いノズルを通って移動する冷却された基板上での薄膜鋳造と、或いは冷却された基板の間での小滴のスプラット急冷とにより製造される。
かなり限定した冷却速度が利用するので、結晶化に大きな抵抗を持つ非晶質合金を探すためにかなりの努力がなされた。結晶化を低い冷却速度で抑止できるならば、さらに厚い非晶質合金物体を製造することができる。
非晶質合金の形成では、過冷却した合金溶融は、結晶化するために困難な問題に直面する。結晶化は、核生成過程及び結晶成長により生じる。過冷却液体は、急激に結晶すると一般に言われている。非晶質固体合金を形成するために、母相物質溶融し、この液体を溶融温度Tmからガラス遷移温度Tg以下まで結晶化を出現させること無く冷却する。
図1は、対数目盛りの時間に対して図示された温度の図を模式的に示す。溶融温度Tmとガラス遷移温度Tgを図示する。具体的な曲線aは、温度と時間の関数として結晶化開始を示す。非晶質固体物質を作りだすために、この合金は、溶融温度以上からガラス遷移温度を通って、結晶化曲線の鼻を横切ること無く冷却する必要がある。この結晶化曲線aは、金属ガラスが形成される最も速い合金の結晶化開始を模式的に示す。105一般には106を越える冷却速度が、典型的に必要であった。
図1の第2の曲線bは、後に開発された金属ガラスの結晶化曲線を示す。非晶質合金を形成するために必要な冷却速度は、1或いは2或いは3程度の大きさまで減少し、さらに著しく減少する。第3の結晶化曲線cは、本発明の実施において成された追加改良の大きさ割合を模式的に示す。結晶化曲線の鼻は、2或いはそれ以上の大きさで長時間側に移動した。103K/s好ましくは102K/s未満の冷却速度が達成された。非晶質合金は、2或いは3K/s遅い冷却速度が得られた。
非晶質合金の形成は、問題の一部分でしかない。非晶質物質による正味の形状組成物及び適切な寸法の3次元物体を形成することが望まれる。良好な機械的靭性を持つ3次元物体へと、非晶質合金を処理かつ成形、或いは非晶質粉末を固めるためには、この合金が変形できることが必要である。非晶質合金は、ガラス遷移温度近く或いはそれ以上に加熱されたときのみ、負荷応力の下で実質的に均一に変形される。この温度領域で結晶化が、再び急激に発生することが一般に観察される。
したがって、再び図1を参照して、非晶質固体として一度形成された合金が、ガラス遷移温度以上に再加熱された場合、合金が結晶化曲線に遭遇する前に、非常に短かな時間が存在する。製造された第1の非晶質合金に関する結晶化曲線aは、ミリセカンドで遭遇し、ガラス遷移温度以上での機械的成形は実質的に実施不可能である。改良された合金でさえも、処理可能な時間は、わずかセコンド或いは数セコンドすぎない。
図2は、融点温度とガラス遷移温度の間で過冷却された液体の非晶質合金に対する対数目盛りの粘度と温度との模式図である。ガラス遷移温度は、合金の粘性が1012ポアズ程度の温度であると典型的に考えられている。一方で、液体合金は、1より小さい粘性を有することができる(大気温度の水は約1センチポアズの粘性を有する)。
図2の模式図で明らかなように、非晶質合金の粘性は低温度に向かって次第に低下し、その後ガラス遷移温度で急激に変化する。わずか5℃の温度の増加が、粘性の大きさを減少する。低負荷応力で変形可能にするために、非晶質合金の粘性を105ポアズほどの低さに減少することが望ましい。これは、ガラス遷移温度以上で適切に加熱できることを意味する。生じうる結晶化が発生する以前に、合金を加熱、操作、処理及び冷却をするために十分な時間必要であるので、非晶質合金を処理する時間(すはわち、ガラス遷移温度から図1の結晶化曲線と交差するまでの経過時間である)は、数秒或いはそれ以上が好ましい。すなわち、良好な成形性のためには、結晶化曲線は右側に、すなわち長時間方向に移動することが望ましい。
金属ガラスの結晶化への抵抗は、溶融の冷却によってガラスを形成するために必要な冷却速度に関係する。これは、処理中のガラス遷移温度以上の加熱による非晶質相の安定性である。結晶化を押さえるために必要な冷却速度は、1K/s〜103K/s或いはそれ以下程度であることが望まれる。臨界冷却速度が低下するにしたがって、処理に対して長い時間がかけられ、より大きな断面積の部品を作ることができる。さらに、このような合金は、工業的な処理に対して安定な時間間隔内で結晶化すること無くガラス遷移温度以上で実質的に加熱することができる。
発明の概要
すなわち、現在好ましい実施態様したがう本発明の実施の、ガラス遷移温度以下の冷却速度により103K/s未満の速度で金属ガラスを形成する合金を提供する。この合金は、2〜47原子パーセントの範囲、或いは他の合金化元素及び望ましい臨界冷却速度に依存する狭い範囲でベリリウムを含み、かつ少なくとも2種の遷移金属を含む。合金化元素が合金に存在することに依存して、この遷移金属は、30〜75原子パーセントの範囲で少なくとも1種の早い遷移金属及び5〜62原子パーセントの範囲で少なくとも1種の遅い遷移金属を含有する。早い遷移金属は周期律表の第3、4、5、及び6族を含み、ランタノイド及びアクチノイドを含む。後遷移金属は、周期律表の第7、8、9、10及び11族を含む。
好ましい金属ガラス合金の群は、式(Zr1-xTixa(Cu1-yNiybBecを有し、xとyは原子分率であり、かつa、b及びcは原子百分率である。この式において、a、b及びcの値はジルコニウムとチタニウムの比率に部分的に依存する。すなわち、xが、0から0.15の範囲である場合、aは30から75%の範囲であり、bは5から62%の範囲であり、かつcは6から47%の範囲である。xが、0.15から0.4の範囲である場合、aは30から75%の範囲であり、bは5から62%の範囲であり、かつcは2から47%の範囲である。xが、0.4から0.6の範囲である場合、aは35から75%の範囲であり、bは5から62%の範囲であり、かつcは2から47%の範囲である。xが、0.6から0.8の範囲である場合、aは35から75%の範囲であり、bは5から62%の範囲であり、かつcは2から42%の範囲である。xが、0.8から1の範囲である場合、aは35から75%の範囲であり、bは5から62%の範囲であり、かつbが10から49%の範囲である場合3cは(100−b)以下である限定の下で、cは2から30%の範囲である。
さらに、この(Zr1-XTiX)部分は、0〜25%のハフニウム、0〜20%のニオブ、0〜15%のイットリウム、0〜10%のクロム、0〜20%のバナジウム、0〜5%のモリブデン、0〜5%のタンタル、0〜5%のタングステン、及び0〜5%のランタン、ランタニド、アクチニウム及びアクチノイドからなる群から選択された添加金属を含むことができる。(Cu1-YNiY)部分は、0〜25%の鉄、0〜25%のコバルト、0〜15%のマンガン及び0〜5%の他の第7〜11族の金属からなる群から選択された付加的金属を含有することもできる。ベリリウム部分は、
Be部分は、含有量が少なくとも6%であるベリリウムを有する15%以下のアルミニウム、5%以下のシリコン及び5%以下のボロンからなる群から選択された添加金属を含むことも可能である。この組成物の他の元素は2原子パーセントする必要がある。
【図面の簡単な説明】
本発明のこれらと他の特性と利点が、添付される図面を考慮して、次の詳細な説明を参考に正しく認識できる同様に、さらに明快に理解することができるであろう。
図1は、非晶質或いはガラス合金の模式的結晶曲線を示し、
図2は、非晶質ガラス合金の模式的粘性を示し、
図3は、本発明の実施で提供される合金のガラス形成範囲を示す擬3元組成図をであり、
図4は、チタニウム、銅、ニッケル及びベリリウムからなる好ましいガラス形成合金の好ましい群のガラス形成範囲を示す擬3元組成図であり、かつ
図5は、チタニウム、ジルコニウム、銅、ニッケル及びベリリウムからなる好ましいガラス形成合金の好ましい群のガラス形成範囲を示す擬3元組成図である。
詳細な説明
本発明の目的に対する、金属ガラス生成物は、体積で少なくとも50%のガラス状或いは非晶質相を含む物質と定義する。ガラス形成可能性は、冷却速度が106K/s程度のスプラット急冷により変えることができる。さらに度々、本発明の実施例で提供される物質は、実質的に100%の非晶質相を含む。マイクロメートルより大きい寸法の部品を製造するために使用可能な合金に対して、103K/s未満の冷却速度が好ましい。好ましくは、結晶化を妨げるために冷却速度は、1から100K/sec或いはそれ以下の範囲ある。個々の好ましいガラス形成合金に対して、少なくとも1ミリメートルの厚さを鋳造するための能力が選択される。
この冷却速度は、広範な種々の方法で達成でき、1から10mm或いはそれ以上の寸法範囲の非晶質物質の板、棒、ストリップ或いは正味の形状部品を製造するために合金を冷却された銅鋳型に鋳造するか、或いは、15mm或いはそれ以上の典型的な直径を有す棒を製造するためにシリカ或いは他のガラス容器に鋳造する。
鋳造ガラス合金に使用する最近の寛容の方法は、薄膜のスップラット急冷、単或いは双ロール溶融スピニング加工、水溶融スピニング加工、或いは板の平面流動鋳造ような方法も使用される。可能でより遅い冷却速度、及び冷却後の非晶質相の安定性により、正味の形状部品を製造するのに、或いは、正味の形状の部品を製造するのに変形ができる大きな物体を製造するために、棒或いはインゴット鋳造、押し出し鋳造及び粉末金属圧縮及び類似の方法など、他の多くの方法が使用できる。
非晶質合金の急速凝固粉末形成は、液体を小滴に分割する種々の噴霧化工程で得ることができる。スプレー噴霧化及びガス噴霧化は典型である。非晶質相を少なくとも50%含む1mm以下の粒子サイズを有する粒状物質は、高熱伝導率を有する冷却された伝導性物質に、液状小滴を接触させることにより、或いは不活性液体に導入することにより製造することができる。これらの物質の形成加工は、多くの物質との高化学的反応性のため、不活性雰囲気或いは真空中で行われる。
様々な新しいガラス形成合金が、本発明の実施から確認された。ガラス状或いは非晶質物質を形成する適切な合金範囲が、いろいろな方法で定義することができる。幾つかの組成範囲は比較的高い冷却速度で金属ガラスが形成されるが、一方で好ましい組成範囲では、かなり低い冷却速度で金属ガラスを形成する。合金組成範囲は図3から6に示されるように3元或いは擬3元組成図で限定できるとはいえ、合金範囲の境界は、異なる物質が導入されるときには、いくぶん変化する。溶融温度からガラス遷移温度以下の温度に、約106K/sより遅い速度で、好ましくは103K/sより遅く及びしばしばさらに遅い速度で、最も好ましくは100K/sより遅い速度で金属ガラスを形成する合金を、境界は包含する。
一般に言われる理に適ったガラス形成合金は、少なくとも一種の早い遷移金属、少なくとも一種の遅い遷移金属及びベリリウムを含む。良好なガラス形成は、幾つかの3元系ベリリウム合金で明らかにできる。しかしながら、均一で良好なガラス形成、すなわち、結晶化を避けるための低い臨界冷却速度は、少なくとも3種の遷移金属を有する4元合金で明確にすることができる。なを低い臨界冷却速度は、4元合金、特に少なくとも二種の早い遷移金属及び少なくとも二種の遅い遷移金属を有する合金で明確にされる。
合金が2から47原子百分率のベリリウムを含有することが、最も広範囲の金属ガラスの一般的特徴である(別に示さない限り此処に述べた組成百分率は原子百分率である)。好ましくは、ベリリウム含有量は約10から35%でありが、合金に含まれる他の金属に依存する。広範囲のベリリウム含有量(6から47%)が、早い遷移金属がジルコニウム及び/または比較的少量のチタニウム例えば5%を有するジルコニウムを含んでなる組成の組の3元或いは擬3元組成図を、図3に示す。
図3に示されるように、3元組成図の第2の頂点は、早い遷移金属(ETM),或いは早い遷移金属の混合物である。本発明の目的のため、早い遷移金属は、ランタニド及びアクチノイド系を含む周期律表の第3、4、5、及び6族を含む。これらの族に対するIUPACの先の表記は、IIIA、IVA、VA及びVIAであった。早い遷移金属は、30から75原子百分率の範囲で存在する。好ましくは、早い遷移金属は、40から67原子百分率の範囲で存在する。
3元組成図の第3の頂点は、遅い遷移金属(LTM),或いは遅い遷移金属の混合物を表す。本発明の目的のため、遅い遷移金属は、周期律表の第7、8、9、10及び11族を含む。IUPACの先の表記は、IIIA、VIIIA及びIBであった。ガラス状合金は5から62原子パーセントの範囲で、4元又はさらに複雑な合金に遷移金属を加えて準備される。好ましくは、遅い遷移金属は、10から48%の範囲である。
ベリリウムが2から47原子パーセント範囲で存在して、少なくとも一つの早い遷移金属及び少なくとも一つの遅い遷移金属を有する多くの3元合金組成物は、理に適った冷却速度で冷却された場合、良好なガラス質となる。早い遷移金属成分は、30から75%であり、遅い遷移金属は5から62%の範囲である。
約103K/s未満のガラス形成のための臨界冷却速度を有する好ましい合金の境界を表すより小さな6角形図を、図3の3元組成図上に示し、多くの場合は100K/sより遅い臨界冷却速度である。この組成図において、ETMは、ここで定義したような早い遷移金属に適応し、LTMは後期遷移金属に適応する。ガラスを形成する組成物の多くは、少なくとも3種の遷移金属を含有しかつ4元或いはさらに複雑な組成物であるので、この図は擬3元と考慮できる。
図3に示されたより大きな6角形領域は、幾分速い冷却速度を有する合金のガラス形成領域を表す。これらの領域は、式(Zr1-XTiXa1ETMa2(Cu1-YNiYb1LTMb2Becを有する合金に対しては、組成範囲により境界が定められる。
この式において、xとyは原子分率であり、a1、a2、b1、b2、及びcは原子百分率である。ETMは添加早い遷移金属の少なくとも1種である。LTMは添加遅い遷移金属の少なくとも1種である。この例において、その他のETM量は、ジルコニウムとチタニウムの総計の0から0.4倍の範囲にあり、xは0から0.15の範囲にある。ジルコニウム及び/またはチタニウムを含む早い遷移金属の合計は、30から75原子パーセントの範囲にある。銅及びニッケルを含む合計遷移金属は、5から62%の範囲にある。ベリリウムの量は6から47%の範囲にある。
図3に定義された小さいほうの6角形の範囲内に、低い臨界冷却速度を有する合金がある。このような合金は、少なくとも1種の早い遷移金属、少なくとも1種の遅い遷移金属及び10から35%のベリリウムを有する。合計ETMは40から67%の範囲を含有し、かつ総LTMは10から48%の範囲を含有する。
合金組成が、遅い遷移金属のみを含みかつ遅い遷移金属として銅とニッケルを含む場合、ニッケル成分範囲の限定が好ましい。すなわち、b2が0である場合(言い換えれば他のLTMが存在しない場合)、及びジルコニウムとチタニウムとに加えて少しの早い遷移金属が存在する場合、y(ニッケル成分)0.35から0.65の範囲にすることが望ましい。換言すれば、ニッケルと銅の比率はほぼ等しいことが望ましい。その他の早い遷移金属は、銅に容易に溶解しないので、添加ニッケルがバナジウムニオブなどの物質溶解度を高めることが好ましい。
好ましくは、その他のETM成分が低いか、或いはジルコニウム及びチタニウムが唯一の早い遷移金属である場合、ニッケルは組成物の約5から15%を含有する。これは、5から15の範囲のb.yを有するような化学量論型の式に関連して述べることができる。
以前の研究は、非常に速い冷却速度で金属ガラスを形成する2元及び3元合金であった。少なくとも3種の遷移金属とベリリウムを有する4元、5元或いはさらに複雑な合金が、以前に可能であると考えられていたよりさらに遅い臨界冷却速度で金属ガラスを形成することが発見されれた。
少なくとも1種の早い遷移金属と少なくとも1種の遅い遷移金属とを有し、十分な量のベリリウムを含有する3元合金が、以前の合金よりさらに遅い臨界冷却速度を有する金属ガラスを形成することも明らかである。
上記に要点を述べた遷移金属に加えて、金属ガラス合金は、ベリリウム成分が6パーセント以上が残存しているアルミニウムを20原子パーセント以下、シリコンを2原子パーセント以下、ボロンを5パーセント以下を含有してもよく、幾つかの合金に対してはBi、Mg、Ge、P、C、O等のその他の元素を5原子パーセント以下含有してもよい。好ましくは、ガラスを形成する合金のその他の元素比率は2%未満である。好ましいその他の元素比率は、0から15%のAl、0から2%B及び0から2%のSiを含有する。
遅い臨界冷却速度と比較的長い処理時間を与えるため、好ましい上記金属ガラスのベリリウム成分は、少なくとも10パーセントである。
早い遷移金属は、優先順位の降下順に、ジルコニウム、ハフニウム、チタニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、イットリウム、ネオジウム、ガドリニウム及びその他の希土類元素、モリブデン、タンタル及びタングステンからなる群から選択される。遅い遷移金属は、優先順位の降下順に、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、ルテニウム、銀及びパラジウムからなる群から選択される。
特に好ましい群は、早い遷移金属としてはジルコニウム、ハフニウム、チタニウム、ニオブ、及びクロム(20%未満のジルコニウムとチタニウム)、遅い遷移金属としてニッケル、銅、鉄、コバルト及びマンガンからなる。最も遅い臨界冷却速度は、ジルコニウム、ハフニウム及びチタニウムからなる群から選択された早い遷移金属、及びニッケル、銅、鉄及びコバルトからなる群から選択された遷移金属を含有する合金で見いだされる。
金属ガラス合金の好ましい群は、式(Zr1-XTiXa(Cu1-YNiY)Becを有し、xとyは原子分率であり、a、b及びcは原子百分率である。この組成において、xは0から1の範囲にあり、かつyは0から1の範囲にある。a、b及びcの値はxの大きさにある程度依存する。xが0から0.15の範囲であるときは、aは30から75%の範囲にあり、bは5から62%の範囲にあり、かつcは6から47%の範囲にある。xが0.4から0.6の範囲であるときは、aは35から75%の範囲にあり、bは5から62%の範囲にあり、かつcは2から47%の範囲にある。xが0.8から1の範囲であるとき、aは35から75%の範囲にあり、bは5から62%の範囲にあり、かつbが10から49%の範囲にありときにcが(100−b)未満である制限の下で、cは2から30%の範囲にある。
図4と5は、(Zr、Ti)(Cu、Ni)系の二つの典型的な組成に対するガラス形成領域を図示する。例えば、図4は、擬3元組成を表し、x=1すなわち、チタニウム−ベリリウム系であり、第3の頂点は銅とニッケルである。図4の大きな領域は、Ti(Cu、Ni)Be系に対して、上記数的に定義されるようなガラス形成領域の境界を表す。大きな領域内の組成は、融点からガラス遷移温度以下の温度に冷却することによりガラス形成をする。これらの領域の合金は、特に遅い臨界冷却速度を有する。
同様に、図5は、x=5のガラスを形成する組成を、大きな6角形で表す。金属ガラスは、大きいほうの6角形領域内の合金を冷却することで形成される。遅い冷却速度を有するガラスは小さな方の6角形領域内で形成される。
さらに、このような組成の(Zr1-XTiX)部分は、25%未満のHf、20%未満のNb、15%未満のY、10%未満のCr、20%未満のVからなる群から選択された金属を含むことができ、百分率は合金組成全体であり、(Zr1-XTiX)部分ではない。換言すれば、この早い遷移金属が、記載された範囲内に維持されている部分と、総合金百分率として示される代わりの物質とのジルコニウム及び/又はチタニウムの代わりとなりる。適切な状況では、モリブデン、タンタル、タングステン、ランタン、ランタニド、アクチニウム及びアクチノイドからなる群から選択された金属を10%以下含むこともできる。例えば、タンタル、及び/またはウランが、濃い合金を望む場合は含有することができる。
(Cu1-YNiY)部分は、25%以下のFe、25%以下のCo、及び15%以下のMnからなる群から選択された付加的金属を含有することもでき、パーセントは、(Cu1-YNiY)部分でなく、全合金組成物のパーセントである。他の第7から11族の金属を10%以下含むこともできが、商業的に望ましい合金に対しては高価すぎる。幾つかの高価な合金は耐食性を有するが、金属ガラスの耐食性は、結晶形態の同一合金の耐食性と比較して全く良好である傾向を示す。
Be部分は、総合金に対して、含有量が少なくとも6%であるBeを有する15%以下のAl、5%以下のSi及び5%以下のBからなる群から選択された添加金属を含むことが可能である。好ましくは、この合金のベリリウム量は少なくとも10原子パーセントである。
一般的に言えば、5〜10パーセントの遷移金属がこのガラス合金には好ましい。ガラス合金は、付随的或いは汚染物質を考慮してかなりの量を許容できることが注目される。例えば、結晶曲線を著しく移動せずに、かなりの酸素量が金属ガラスに溶解される。ゲルマニウム、燐、炭素、窒素又は酸素のような他の付随的元素は、総計で約5原子パーセント未満存在いてもよく、好ましくは、総計で約1原子パーセント未満存在いてもよい。少量のアルカリ金属、アルカリ土類金属或いは重金属も許容することができる。
良好なガラス形成合金であることが明確である組成を表示する種々の方法がある。これらは、種々の元素の比率を代数項で表示した組成式を含む。ガラス相の維持を容易に促進する高比率の幾つかの元素が、結晶化を促進する傾向のあるその他の元素を打ち負かすことができるので、この比率は相互依存する。遷移金属とベリリウムに加えてこの元素の存在は、又著しい影響を有する。
例えば、合金中の酸素固体溶解度を越えた量の酸素が結晶化を促進すると考えられる。特に良好なガラス形成合金が、ジルコニウム、チタニウム或いはハフニウムを含有する理由であると考えられる(評価可能なかぎり、ハフニウムはジルコニウムと相互依存可能である)。ジルコニウム、チタニウム及びハフニウムは、実質的な酸素固体溶解度を有する。商業的に入手可能なベリリウムは、かなりの量の酸素を含有し、また反応する。ジルコニウム、チタニウム或いはハフニウムの不在は、酸素が、不均一結晶化の核となる不溶性酸化物を形成できる。これは、ジルコニウム、チタニウム或いはハフニウムを含有しない特定の三元合金の試験で示された。非晶質固体を形成することに不足するスプラット急冷された試料は、酸化物の析出を思わせる状態を有する。
少ない比率で組成物中に含まれる幾つかの元素は、ガラス比率に影響を及ぼすことができる。クロム、鉄或いはバナジウムは強度を増加できる。しかしながら、クロム量は、ジルコニウム、チタニウム及びハフニウムの総計の約20%までに制限すべきであり、好ましくは15%未満に制限すべきである。
ジルコニウム、ハフニウム、チタニウム合金において、合金の早い遷移金属部分のチタニウム原子分率は、0.7未満であることが好ましい。
早い遷移金属は、組成物中に一様に望まれない。特に、好ましい早い遷移金属は、ジルコニウムとチタニウムである。早い遷移金属で次に優先されるものは、バナジウム、ニオブ及びハフニウムを含む。上記のように限定されたクロムでは、イットリウムとクロムは、その次の優先順位となる。ランタン、アクチニウム、及びランタニド及びアクチノイドは、限定された量で含むことができる。最後の好ましい早い遷移金属は、これらは特定の目的に望ましいので、モリブデン、タンタル、タングステンである。例えば、タングステン及びタンタルは、比較的高い密度の金属ガラスに望ましい。
遅い遷移金属では、銅とニッケルが特に言及される。鉄はある組成では特に望ましい。遅い遷移金属におけるこの次の優先順位は、コバルトとマンガンである。銀は幾つかの組成物からはできれば除かれる。
珪素、ゲルマニウム、ボロン及びアルミニウムは、この合金のベリリウム部分に考慮され、これらのいずれかが少量含むことができる。アルミニウムが存在する場合、ベリリウム含有量は少なくとも6%である。好ましくは、アルミニウム含有量は20%未満であり、最も好ましくは15%未満である。
特に好ましい組成物はほぼ同一比率の銅とニッケルの混合物を使用する。したがって、好ましい組成物はジルコニウム及び/またはチタニウム、ベリリウム及び銅とニッケルの混合物を有し、ここで例えば、銅の量は、銅とニッケルとの合計量の35%から65%の範囲にある。次に、範囲と性質が相違するガラス形成組成物の式を示す。この合金を、50%以上の結晶質相の形成を阻止するために、その融点以上からガラス遷移温度を通って、十分な冷却速度で、冷却することにより、この合金は、少なくとも50%の非晶質相を有する金属ガラスにすることができる。次の式の個々において、xとyは原子分率である。添字a、a1、b、b1などは原子百分率である。
典型的なガラス形成合金は次の式を有する。すなわち、
Zr1-xTixa1ETMa2(Cu1-yNiyb1LTMb2Bec
を有し、ここで早い遷移金属は、V、Nb、Hf、およびCrを含み、Crはa1の20%以下である。
好ましくは遅い遷移金属は、Fe、Co、Mn、Ru、Ag及び/またはPdである。他の早い遷移金属ETMの量は、(Zr1-xTix)部分の量の40%未満である。xが、0から0.15の範囲である場合、(a1+a2)は30から75%の範囲であり、(b1+b2)は5から62%の範囲であり、b2は0から25%の範囲であり、かつcは6から47%の範囲である。xが、0.15から0.4の範囲である場合、(a1+a2)は30から75%の範囲であり、(b1+b2)は5から62%の範囲であり、b2は0から25%の範囲であり、かつcは2から47%の範囲である。
好ましくは、(a1+a2)は40から67%の範囲であり、(b1+b2)は10から48%の範囲であり、b2は0から25%の範囲であり、かつcは10から35%の範囲である。
Xが0.4より大きい場合、他の早い遷移金属の量は、ジルコニウムとチタニウムの部分の量の40%未満の範囲である。次に、xが、0.4から0.6の範囲である場合、(a1+a2)は35から75%の範囲であり、(b1+b2)は5から62%の範囲であり、b2は0から25%の範囲であり、かつcは2から47%の範囲である。xが、0.6から0.8の範囲である場合、(a1+a2)は35から75%の範囲であり、(b1+b2)は5から62%の範囲であり、b2は0から25%の範囲であり、かつcは2から42%の範囲である。xが、0.8から1の範囲である場合、(a1+a2)は35から75%の範囲であり、(b1+b2)は5から62%の範囲であり、b2は0から25%の範囲であり、かつcは2から30%の範囲である。この合金において、0.8から1のxの値に対して、(b1+b2)が10から49%の範囲である場合、3cは(100−b1−b2)以下であると言う限定がある。
好ましくは、xが、0.4から0.6の範囲である場合、(a1+a2)は40から67%の範囲であり、(b1+b2)は10から48%の範囲であり、b2は0から25%の範囲であり、かつcは10から35%の範囲である。xが、0.6から0.8の範囲である場合、(a1+a2)は40から67%の範囲であり、(b1+b2)は10から48%の範囲であり、b2は0から25%の範囲であり、かつcは10から30%の範囲である。xが、0.8から1の範囲である場合、(a1+a2)は38から55%の範囲であり、(b1+b2)は35から60%の範囲であり、b2は0から25%の範囲であり、かつcは2から15%の範囲であるか、又は(a1+a2)は65から75%の範囲であり、(b1+b2)は5から15%の範囲であり、b2は0から25%の範囲であり、かつcは17から27%の範囲である。
好ましいガラス形成組成物は、次式を有するZrTiCuNiBe合金を含む。すなわち、
(Zr1-xTixa(Cu1-yNiybBec
を有し、yは、0から1の範囲であり、かつxは0から0.4の範囲である。xが、0から0.15の範囲である場合、aは30から75%の範囲であり、bは5から62%の範囲であり、かつcは6から47%の範囲である。xが、0.15から0.4の範囲である場合、aは30から75%の範囲であり、bは5から62%の範囲であり、かつcは2から47%の範囲である。好ましくは、aは40から67%の範囲であり、bは10から35%の範囲であり、かつcは10から35%の範囲である。例えば、Zr34Ti11Cu32.5Ni10Be12.5は、良好なガラス形成組成物である。同等のガラス形成合金が、これらの範囲からわずかに外れて数式化できる。
前述の式のxが、0.4から0.6の範囲である場合、aは35から75%の範囲であり、bは5から62%の範囲であり、かつcは2から47%の範囲である。xが、0.6から0.8の範囲である場合、aは35から75%の範囲であり、bは5から62%の範囲であり、かつcは2から42%の範囲である。xが、0.8から1の範囲である場合、aは35から75%の範囲であり、bは5から62%の範囲であり、かつbが10から49%の範囲である場合、3cは(100−b)以下である限定の下で、cは2から30%の範囲である。
好ましくはxが、0.4から0.6の範囲である場合、aは40から67%の範囲であり、bは10から48%の範囲であり、かつcは10から35%の範囲である。xが、0.6から0.8の範囲である場合、aは40から67%の範囲であり、bは10から48%の範囲であり、かつcは10から30%の範囲である。xが、0.8から1の範囲である場合、aは38から55%の範囲であり、bは35から60%の範囲であり、かつcが2から15%の範囲であるか、又はaは65から75%の範囲であり、bは5から15%の範囲であり、かつcが17から27%の範囲である。
特に好ましい組成物範囲において、(Zr1-xTix)部分は、15%以下のHf、15%以下のNb、10%以下のY、7%以下のCr、10%以下のV、5%以下のMo、Ta又はW、及び5%以下のランタン、ランタニド、アクチニウム及びアクチノイドを含むことができる。(Cu1-yNiy)部分は、15%以下のFe、10%以下のCo、10%以下のMn、及び5%以下の他の第7族から第11族の金属をまた含むことができる。Be部分は、15%以下のAl、5%以下のSi及び5%以下のBも含む。好ましくは、付随する元素は1原子パーセント未満の総量で存在する。
幾つかのガラス形成合金は次の式で表示することができる。すなわち、
((Zr、Hf、Ti)xETM1-xa(Cu1-yNiyb1LTMb2Bec
を有し、((Zr、Hf、Ti)ETM)部分のチタニウムの原子分率は、0.7以下であり、かつxは0.8から1の範囲であり、
3.式((Zr、Hf、Ti)xETM1-xa(Cu1-yNiyb1LTMb2Bec
を有する合金で形成されるガラス状合金であって、
xとyは原子分率であり、かつa、b1、b2及びcは原子百分率であり、aは、30から75%の範囲であり、(b1+b2)は5から57%の範囲であり、かつcは6から45%の範囲である。好ましくは、aは、40から60%の範囲であり、(b1+b2)は10から48%の範囲であり、かつcは6から45%の範囲である。
代わりに、次の式が示される。すなわち、
((Zr、Hf、Ti)xETM1-xaCub1Nib2LTMb3Bec
を有し、xは0.8から1の範囲である。ETMはY、Nb、Gd及び他の希土類元素である場合、aは30から75%の範囲であり、(b1+b2+b3)は6から50%の範囲であり、b3は0から25%の範囲であり、b1は0から50%の範囲であり、かつcは6から45%の範囲である。ETMはCr、Ta、Mo及びWである場合、aは30から60%の範囲であり、(b1+b2+b3)は10から50%の範囲であり、b3は0から25%の範囲であり、b1は0からx(b1+b2+b3)/2の範囲であり、かつcは10から45%の範囲である。ETMがVとNbからなる群から選択される場合、aは30から65%の範囲であり、(b1+b2+b3)は10から50%の範囲であり、b3は0から25%の範囲であり、b1は0からx(b1+b2+b3)/2の範囲であり、かつcは10から45%の範囲である。
好ましくは、ETMはY、Nb、Gd及び他の希土類元素である場合、aは40から67%の範囲であり、(b1+b2+b3)は10から38%の範囲であり、b3は0から25%の範囲であり、b1は0から38%の範囲であり、かつcは10から35%の範囲である。ETMはCr、Ta、Mo及びWである場合、aは35から50%の範囲であり、(b1+b2+b3)は15から35%の範囲であり、b3は0から25%の範囲であり、b1は0からx(b1+b2+b3)/2の範囲であり、かつcは15から35%の範囲である。ETMがVとNbである場合、aは35から55%の範囲であり、(b1+b2+b3)は15から35%の範囲であり、b3は0から25%の範囲であり、b1は0からx(b1+b2+b3)/2の範囲であり、かつcは15から35%の範囲である。
上述の金属ガラスは、aは40から67%の範囲であり、(b1+b2)は10から48%の範囲であり、かつcは10から35%の範囲である。また、上述の金属ガラスは、(a1+a2)は40から67%の範囲であり、(b1+b2)は10から48%の範囲であり、b2は0から25%の範囲であり、かつcは10から35%の範囲である。さらに、上述の金属ガラスは、aは1、b2は0及びyは0.35から0.65の範囲である。
上述の合金において、ETMは、Y、Nd、Gd及び他の希土類元素からなる群から選択される早い遷移金属であるか、或いはV、Nb、及びHfからなる群から選択される早い遷移金属である。
上述の合金において、(Zr1-xTix)部分は、また、0から25%のHf、0から25%のNb、0から15%のY、0から10%のCr、0から20%のV、0から5%のMo、0から5%のTa、0から5%のW、及び0から5%のランタン、ランタノイド、アクチニウム及びアウチノイドからなる群から選択された添加金属を含み、(Cu1-yNiy)部分は、また、0から25%のFe、0から25%のCo、0から15%のMn及び0から5%の第7族から第11族の金属からなる群から選択された添加金属を含み、Be部分は、また、6未満でないcを有する0から15%のAl、0から5%のSi及び0から5%のBからなる群から選択された添加金属を含み、かつ合金が2%未満の他の元素を含む。
上述の金属ガラスは、aは40から67%の範囲であり、bは10から48%の範囲であり、かつcは10から35%の範囲である。また、上述の金属ガラスは、さらに最大5%以下のSi、Ge及びBからなる群から選択された添加金属を含む。上述の金属ガラスは、また20%以下のAlを含み、かつcが6未満でない。
それぞれx=1及びX=0.5である組成物を定義した場合、好ましいガラス形成組成物を表す幾分小さな6角形領域を図4と5に示す。これらの境界は、擬3元系状態図(準3元系成分図)のより小さな6角形領域を示す。好ましいガラス形成合金の二つの比較的小さな6角形領域があることが注目される。非常に遅い臨界冷却速度が、これらの二つの好ましい組成物範囲を明にする。
具体的に非常に良好なガラス形成組成物は、ほぼ式(Zr0.75Ti0.2555(Cu0.36Ni0.6422.5Be22.5を有する。直径15mmの溶融石英管内のこの物質の試料は、水中に投入されて冷却された。溶融温度からガラス遷移温度を通る冷却速度は、毎秒約2〜3度と見積もられる。
検討した範囲で包囲された種々の物質の組み合わせでは、約106K/s未満の冷却速度で少なくとも50%のガラス状の相を形成しない有益でない金属混合物であるかもしれない。適切な組み合わせは、合金組成物を簡単で適切な溶融をすること、スプラット冷却すること、かつ試料の非晶質性質を立証することにより容易に確認することができる。好ましい組成物は、比較的遅い臨界冷却速度で確認できる。
金属ガラスの非晶質性質は、多くの公知の方法で確認することができる。完全な非晶質試料のX線回折図形は、広い散漫散乱最大値を示した。結晶化した物質がガラス相とともに存在する場合は、結晶化物質の比較的鋭いブラッグ回折ピークを観察した。鋭いブラッグピークを有する相対的強度は、散漫最大値の強度と比較して、存在する非晶質相の分率を見積もる。
存在する非晶質相の分率は、示差熱分析で見積もることもできる。非晶質相の結晶化を引き起こさせるため試料を加熱して、放出されるエンタルピーを、完全なガラス質試料を結晶させたとき放出するエンタルピーと比較する。これらの熱の比率が、初期試料中のガラス状物質のモル分率を与える。透過型電子顕微鏡分析が、ガラス状物質の分率を決定するためにも使用することができる。電子顕微鏡では、ガラス状物質は、少ないコントラストを示し、この相対的に特徴の無い像により確認することができる。結晶質物質は大きなコントラストを示し、容易に区別することができる。したがって、透過電子回折は、相の同一性を確認するために使用できる。非晶質物質の体積分率は、透過型電子顕微鏡の像の解析により見積もることができる。
本発明の合金の金属ガラスは、かなりの曲げ延性を示す。スプラッド箔は、90〜180°の曲げ延性を示す。好ましい組成物範囲においては、完全に非晶質の1mm厚さのストリップは、曲げ延性を示し、微小割れを示すこと無く初期厚さの3分の1に圧延することもできる。このように圧延した試料は、90度までも曲げることができる。
本発明の実施において提供されるような非晶質合金は、高い硬度を有する。高いビッカース硬度値は、高い強度をしめす。多くの好ましい合金は比較的小さな約5〜7g/ccの密度を有し、この合金は大きな強度重量比率を有する。しかしながら、望まれる場合は、タングステン、タンタル及びウラン等の重金属が、高い密度を望む組成物中に含むことができる。例えば、高密度金属ガラスは、通常組成物(TaWHf)niBeを有する合金を形成することができる。
これらはバナジウム及びクロム無しの合金より高い強度を証明するので、バナジウム及びクロムの適切量が、好ましい合金においては望まれる。
実施例
非晶質相が体積で50%以上を有し、少なくとも1ミリメートルの厚さのストリップに鋳造することができる合金の表を次ぎに示す。摂氏表示でガラス遷移温度Tgを含む多数の合金の特性も、表に示されている。見出し欄のTxは、非晶質合金をガラス遷移温度以上で加熱することにより、結晶が生じる温度である。測定方法は示差熱分析である。非晶質の試料は、ガラス遷移温度以上まで20℃毎分の速度で加熱される。記録された温度は、結晶が開始してエンタルピー変化が示される温度である。試料は不活性ガス雰囲気内で加熱されたが、不活性ガスは商業的に入手可能な純度であり少し酸素を含んでいる。その結果として、試料は幾分酸化表面を発達させた。試料が清潔な表面を有する場合、不均一核生成よりむしろ均一核生成であるために、より高い温度が達成されることを我々は示した。したがって、均一核生成の開始は、表面酸化物のない試料に対するこれらの試験で測定されたものより実際に高くなる。
見出し欄のΔTは、示差熱分析に止し測定された結晶温度とガラス遷移温度との双方の差を示す。一般的に言われていることは、より高いΔTが、非晶質合金を形成するためにより遅い臨界冷却速度を示す。又、ガラス遷移温度以上で非晶質合金を処理するためにより長時間が可能であることを示す。100℃以上のΔTは、特に好ましいガラス形成合金を示す。
表の最後の欄の見出しHvは、非晶質組成物のビッカース硬度を示す。一般的に言われていることは、より高い硬度数は強い強度の金属ガラスを示す。
Figure 0004128614
Figure 0004128614
次の表は、厚さ5mmの相に鋳造された場合に、非晶質になった多数の組成を示す。
Figure 0004128614
次の表は、厚さ約30ミリメートルの延性フォイルを形成するために、スプラット(splat)急冷した場合に、50%以上非晶質相になることを示す組成物、通常は100%非晶質相になる組成を示す。
Figure 0004128614
Figure 0004128614
低臨界冷却速度を有する多くのガラス形成合金組成物の種類と特別な実施例とをここに示す。記載されたガラス形成範囲の境界は厳密でなく、これらの正確な境界の幾分外側の組成が良好なガラス形成物質であり、これらの境界のわずか内側の組成は1000K/s以下の冷却速度ではガラス形成物質でないことは、当業者に明らかである。したがって、本発明は、次の請求の範囲内で記載された正確な組成からわずか変動しても実施することができる。

Claims (9)

  1. 式(Zr1-xTixa1ETMa2(Cu1-yNiyb1LTMb2Becを有し、103K/s未満の冷却速度で1mm以上の厚みに鋳造された非晶質相を50%以上含む金属ガラスで形成される3次元物体であって、
    ETM及びLTMは選択元素であり、
    xとyは0〜1の範囲の原子分率であり、x及びyの少なくとも一方が0でなく、かつa1、a2、b1、b2及びcは原子百分率であり、a1及びa2の少なくとも一方が0でなく且つb1とb2の少なくとも一方が0でなく、
    ETMは、V、Nb、Hf、及びCrからなる群から選択され、かつ前記Crの原子百分率は、0.2a1以下であり、
    LTMは、Fe、Co及びnからなる群から選択され、
    2は、00.4a1の範囲であり、か
    (A)xが、00.15未満の範囲である場合、
    (a1+a2)は3075%の範囲であり、
    (b1+b2)は562%の範囲であり、
    b2は025%の範囲であり、かつ
    cは647%の範囲であり、
    (B)xが、0.150.4未満の範囲である場合、
    (a1+a2)は3075%の範囲であり、
    (b1+b2)は562%の範囲であり、
    b2は025%の範囲であり、かつ
    cは247%の範囲であり、
    (C)xが、0.40.6未満の範囲である場合、
    (a1+a2)は3575%の範囲であり、
    (b1+b2)は562%の範囲であり、
    b2は025%の範囲であり、かつ
    cは247%の範囲であり、
    (D)xが、0.60.8未満の範囲である場合、
    (a1+a2)は3575%の範囲であり、
    (b1+b2)は562%の範囲であり、
    b2は025%の範囲であり、かつ
    cは242%の範囲であり、
    (E)xが、0.8未満の範囲である場合、
    (a1+a2)は3575%の範囲であり、
    (b1+b2)は562%の範囲であり、
    b2は025%の範囲であり、かつ
    cは230%の範囲であり、
    (A)から(E)における(b1+b2)が1049%の範囲である場合、3cは(100−b1−b2)以下である限定下にある
    非晶質相を50%以上含む金属ガラスで形成される3次元物体
  2. (a1+a2)は4067%の範囲であり、
    (b1+b2)は1048%の範囲であり、
    b2は025%の範囲であり、かつ
    cは1035%の範囲である、
    請求項1記載の非晶質相を50%以上含む金属ガラスで形成される3次元物体
  3. 式((Zr、Hf、Ti)xETM1-xa(Cu1-yNiyb1LTMb2Becを有し、103K/s未満の冷却速度で1mm以上の厚みに鋳造された非晶質相を50%以上含む金属ガラスで形成される3次元物体であって、
    ETM及びLTMは選択元素であり、
    xとyは0〜1の範囲の原子分率であり、x及びyの少なくとも一方が0でなく、かつa1、a2、b1、b2及びcは原子百分率であり、a1及びa2の少なくとも一方が0でなく且つb1とb2の少なくとも一方が0でなく、
    ((Zr、Hf、Ti)ETM)部分のTi原子分率は、0.7以下であり、
    xは0.81の範囲であり、
    LTMは、Ni、Cu、Fe及びCoからなる群から選択され、
    ETMは、V、Nb、Y、Nd、Gd及び他の希土類元素、Cr、Mo、Ta及びWからなる群から選択され、
    aは、3075%の範囲であり、
    (b1+b2)は557%の範囲であり、
    cは、645%の範囲である
    金属ガラスで形成される3次元物体
  4. 金属ガラスの溶融物を前記金属ガラスの遷移温度以下に冷却して、1mm以上の厚みを有する非晶質相を50%以上含む金属ガラスで形成される3次元物体を作る方法であって、
    前記金属ガラスの溶融物は、式(Zr1-xTixa1ETMa2(Cu1-yNiyb1LTMb2Becを有し、
    ETM及びLTMは選択元素であり、
    xとyは0〜1の範囲の原子分率であり、x及びyの少なくとも一方が0でなく、かつa1、a2、b1、b2及びcは原子百分率であり、a1及びa2の少なくとも一方が0でなく且つb1とb2の少なくとも一方が0でなく、
    ETMは、V、Nb、Hf、及びCrからなる群から選択され、かつ前記Crの原子百分率は、0.2a1以下であり、
    LTMは、Fe、Co及びnからなる群から選択され、
    a2は、00.4a1の範囲であり、
    (A)xが、00.15未満の範囲である場合、
    (a1+a2)は3075%の範囲であり、
    (b1+b2)は562%の範囲であり、
    b2は025%の範囲であり、かつ
    cは647%の範囲であり、
    (B)xが、0.150.4未満の範囲である場合、
    (a1+a2)は3075%の範囲であり、
    (b1+b2)は562%の範囲であり、
    b2は025%の範囲であり、かつ
    cは247%の範囲であり、
    (C)xが、0.40.6未満の範囲である場合、
    (a1+a2)は3575%の範囲であり、
    (b1+b2)は562%の範囲であり、
    b2は025%の範囲であり、かつ
    cは247%の範囲であり、
    (D)xが、0.60.8未満の範囲である場合、
    (a1+a2)は3575%の範囲であり、
    (b1+b2)は562%の範囲であり、
    b2は025%の範囲であり、かつ
    cは242%の範囲であり、
    (E)xが、0.8未満の範囲である場合、
    (a1+a2)は3575%の範囲であり、
    (b1+b2)は562%の範囲であり、
    b2は025%の範囲であり、かつ
    cは230%の範囲であり、
    (A)から(E)における(b1+b2)が1049%の範囲である場合、3cは(100−b1−b2)以下である限定下にあり、
    前記式(Zr1-xTixa1ETMa2(Cu1-yNiyb1LTMb2Becを有する前記金属ガラスの溶融物を製造する工程、及び
    mm以上の厚みの横断面で50%を越えた結晶質相の形成を防止するため103K/s未満の十分な速度で、前記金属ガラスを金属ガラスの融点以上から金属ガラス溶融物のガラス状遷移温度以下の温度に冷却する工程、
    を含んでなる非晶質層を50%以上含む金属ガラスで形成される3次元物体を作る方法。
  5. 金属ガラスの溶融物を前記金属ガラスの遷移温度以下に冷却して、1mm以上の厚みを有する非晶質相を50%以上含む金属ガラスで形成される3次元物体を作る方法であって、
    ETM及びLTMは選択元素であり、
    前記金属ガラスの溶融物は、式((Zr、Hf、Ti)xETM1-xa(Cu1-yNiyb1LTMb2Becを有し、
    xとyは0〜1の範囲の原子分率であり、x及びyの少なくとも一方が0でなく、かつa、b1、b2及びcは原子百分率であり、b1とb2の少なくとも一方が0でなく、
    ((Zr、Hf、Ti)ETM)部分のTi原子分率は、0.7以下であり、
    xは0.81の範囲であり、
    LTMは、Ni、Cu、Fe及びCoからなる群から選択され、
    ETMは、V、Nb、Y、Nd、Gd及び他の希土類元素、Cr、Mo、Ta及びWからなる群から選択され、
    aは、3075%の範囲であり、
    (b1+b2)は557%の範囲であり、
    cは、645%の範囲であり、かつ
    前記式((Zr、Hf、Ti)xETM1-xa(Cu1-yNiyb1LTMb2Becを有する前記合金を製造する工程、及び
    mm以上の厚みの横断面で50%を越えた結晶質相の形成を防止するため103K/s未満の十分な速度で、前記金属ガラスを金属ガラスの融点以上から金属ガラス溶融物のガラス状遷移温度以下の温度に冷却する工程、
    を含んでなる非晶質層を50%以上含む金属ガラスで形成される3次元物体を作る方法。
  6. aは4067%の範囲であり、
    (b1+b2)は1048%の範囲であり、かつ
    cは1035%の範囲である、
    請求項5記載の方法。
  7. 式(Zr1-xTixa(Cu1-yNiybBecを有し、103K/s未満の冷却速度で1mm以上の厚みに鋳造された非晶質相を50%以上含む金属ガラスで形成される3次元物体であって、
    xとyは0〜1の範囲の原子分率であり、x及びyの少なくとも一方が0でなく、かつa、b及びcは原子百分率であり、か
    (A)xが、00.15未満の範囲である場合、
    aは3075%の範囲であり、
    bは562%の範囲であり、かつ
    cは647%の範囲であり、
    (B)xが、0.150.4未満の範囲である場合、
    aは3075%の範囲であり、
    bは562%の範囲であり、かつ
    cは247%の範囲であり、
    (C)xが、0.40.6未満の範囲である場合、
    は3575%の範囲であり、
    は562%の範囲であり、かつ
    は247%の範囲であり、
    (D)xが、0.60.8未満の範囲である場合、
    は3575%の範囲であり、
    は562%の範囲であり、かつ
    は242%の範囲であり、
    (E)xが、0.8未満の範囲である場合、
    は3575%の範囲であり、
    は562%の範囲であり、かつ
    は2〜30%の範囲であり、
    (A)から(E)におけるbが1049%の範囲である場合、3cは(100−b)以下である限定下である
    非晶質相を50%以上含む金属ガラスで形成される3次元物体
  8. aは4067%の範囲であり、bは1048%の範囲であり、かつcは1035%の範囲である請求項7に記載の非晶質相を50%以上含む金属ガラスで形成される3次元物体
  9. 金属ガラスの溶融物を前記金属ガラスの遷移温度以下に冷却して、1mm以上の厚みを有する非晶質相を50%以上含む金属ガラスで形成される3次元物体を作る方法であって、
    前記金属ガラスの溶融物は、式(Zr1-xTixa(Cu1-yNiybBecを有し、
    xとyはyが0〜1の範囲及びxが0〜0.4の範囲の原子分率であり、x及びyの少なくとも一方が0でなく、かつa、b及びcは原子百分率であり、か
    (A)xが、00.15未満の範囲である場合、
    aは3075%の範囲であり、
    bは562%の範囲であり、かつ
    cは647%の範囲であり、
    (B)xが、0.150.4未満の範囲である場合、
    aは3075%の範囲であり、
    bは562%の範囲であり、かつ
    cは247%の範囲であり、
    (C)xが、0.4〜0.6未満の範囲である場合、
    aは35〜75%の範囲であり、
    bは5〜62%の範囲であり、かつ
    cは2〜47%の範囲であり
    (D)xが、0.6〜0.8未満の範囲である場合、
    aは35〜75%の範囲であり、
    bは5〜62%の範囲であり、かつ
    cは2〜42%の範囲であり、
    (E)xが、0.8〜1未満の範囲である場合、
    aは35〜75%の範囲であり、
    bは5〜62%の範囲であり、かつ
    cは2〜30%の範囲であり、
    前記式(Zr1-xTixa(Cu1-yNiybBecを有する前記金属ガラスの溶融物を製造する工程、
    及び
    mm以上の厚みの体積で50%を越えた結晶質相の形成を防止するため103K/s未満の十分な速度で、前記金属ガラス金属ガラスの融点以上から金属ガラス溶融物のガラス状遷移温度以下の温度に冷却する工程、
    を含んでなる非晶質層を50%以上含む金属ガラスで形成される次元物体を作る方法。
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