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JP4011316B2 - Cu基非晶質合金 - Google Patents

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JP4011316B2 JP2001262438A JP2001262438A JP4011316B2 JP 4011316 B2 JP4011316 B2 JP 4011316B2 JP 2001262438 A JP2001262438 A JP 2001262438A JP 2001262438 A JP2001262438 A JP 2001262438A JP 4011316 B2 JP4011316 B2 JP 4011316B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大きな非晶質形成能を有し、機械的性質、加工性に優れたCu基非晶質合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶融状態の合金を急冷することにより、薄帯状、フィラメント状、粉粒体状など、種々の形状を有する非晶質固体が得られることがよく知られている。非晶質合金薄帯や粉末は、大きな急冷速度の得られる単ロール法、双ロール法、回転液中紡糸法、アトマイズ法などの種々の方法で作製できるので、これまでにも、Fe系,Ti系,Co系,Zr系,Ni系,Pd系またはCu系について多くの非晶質合金が得られており、優れた機械的性質、高い耐腐食性等の非晶質合金特有の性質が明らかにされている。
【0003】
本発明と関連するCu基非晶質合金では、主に、二元系Cu-Ti,Cu-Zr,(Scripta METALLURGICA.,10(1976)337-940、Scripta METALLURGICA.,11(1977)761-764、特開昭60-59034号公報)、あるいは3元系Cu-Ni-Zr,Cu-Ag-RE,Cu-Ni-P,Cu-Ag-P,Cu-Mg-RE,(Zr,Ti)(Cu,Ni)Be,(ETM,Ti)Cu(Ni,Co)およびCu-(Zr,RE,Ti)-(Al,Mg,Ni)(特開平7-41918号公報、特開平7-173556号公報、特開平9-59750号公報、特表平 10-512014 号公報、特開平11-61289号公報、Sic.Rep.RITU.A42(1996)1343-1349、Sic.Rep.RITU.A28(1980)225-230,Mater.Sic.Eng.,A181-182(1994)1383-1392、Mater.Trans.,JIM,37(1996)359-362、USP5,368,659、USP5,618,359)に関して研究が行われてきた。
【0004】
これらのCu基非晶質合金は、主に、上述の単ロール液体急冷法により作製された薄帯状試料で研究がなされた。しかしながら、実用的な使用を鑑みた大形状Cu基非晶質合金、言い換えれば非晶質形成能に優れたCu基非晶質合金に関しては研究開発は進んでいない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ガラス遷移を示し、広い過冷却液体領域および大きな換算ガラス化温度(Tg/Tm)を有する非晶質合金では、結晶化に対する高い安定性を示して、大きな非晶質形成能を有することが知られている。このような大きな非晶質形成能を有する合金は、金型鋳造法によりバルク状非晶質材を作製することが可能である。一方、非晶質合金を加熱すると、特定の合金系では結晶化する前に、過冷却液体状態に遷移し、急激な粘性低下を示すことが知られている。
【0006】
このような過冷却液体状態では、合金の粘性が低下しているために閉塞鍛造などの方法により任意形状の非晶質合金形成体を作製することが可能である。したがって、広い過冷却液体域および大きな換算ガラス化温度(Tg/Tm)を有する合金は、大きな非晶質形成能および優れた加工性を備えていると言える。
【0007】
上記の従来のCu基非晶質合金のガラス形成能は低いので、液体急冷法により薄帯状、粉末状、細線状などの非晶質合金しか得られていない。そして、高い熱的安定性を示しておらず、最終製品形状へ加工することも困難なことから、工業的に見て、その用途がかなり限定されていた。そこで、本発明は、大きなガラス形成能を有し、優れた機械的性質、優れた加工性、を兼ね備えたCu基非晶質合金の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の課題を解決するために、Cu基合金の最適組成について研究した結果、Zrおよび/またはHfを含有する特定組成の合金を溶融し、液体状態から急冷凝固させることにより、25K以上の過冷却液体領域△Txを示す直径(肉厚)1mm以上の非晶質相の棒(板材)が得られ、大きなガラス形成能、優れた機械的性質、優れた加工性、を兼ね備えたCu基非晶質合金が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、 式: Cu100-a-b(Zr+Hf)aTib[式中、a、bは原子%で、10≦a≦40、 5≦b≦30、35≦a+b≦50である。]で示される組成を有し、
Tx Tx-Tg (ただし、 Tx は、結晶化開始温度、 Tg はガラス遷移温度を示す。)の式で表 わされる過冷却液体領域の温度間隔△ Tx 25 K 以上、 Tg/Tm (ただし、 Tm は、合金の融解温度を示す。)の式で表わされる換算ガラス化温度が 0.56 以上であり、金型鋳造法により得られた直径又は厚さが 1mm 以上の棒材又は板材であり、圧縮破断強度が 1800MPa 以上、伸びが 1.5 %以上、ヤング率が 100GPa 以上の機械的性質を有する、非晶質相を体積百分率で90%以上含むCu基非晶質合金である。
【0011】
また、本発明は、式: Cu 100-a-b (Zr Hf) a Ti b [式中、 a b は原子%で、 10 a 40 5 b 30 35 ≦a+ b 50 である。 ] で示される合金組成となるように調製した母合金を溶融した後、銅製の金型に充填凝固させることにより
直径又は厚さが 1mm 以上の棒材又は板材からなり、△ Tx Tx-Tg (ただし、 Tx は、結晶化開始温度、 Tg はガラス遷移温度を示す。)の式で表わされる過冷却液体領域の温度間隔△ Tx 25 K 以上、 Tg/Tm (ただし、 Tm は、合金の融解温度を示す。)の式で表わされる換算ガラス化温度が 0.56 以上であり、圧縮破断強度が 1800MPa 以上、伸びが 1.5 %以上、ヤング率が 100GPa 以上の機械的性質を有し、非晶質相を体積百分率で 90 %以上含むCu基非晶質合金を得ることを特徴とするバルク非晶質合金の製造方法である。
【0013】
なお、本明細書中の「過冷却液体領域」とは、毎分40 Kの加熱速度で示差走査熱量分析を行うことにより得られるガラス遷移温度と結晶化温度の差で定義されるものである。「過冷却液体領域」は結晶化に対する抵抗力、すなわち非晶質の安定性、非晶質形成能力および加工性を示す数値である。本発明の合金は25K以上の過冷却液体領域△Txを有する。また、本明細書中の「換算ガラス化温度」とは、ガラス遷移温度(Tg)と毎分5Kの加熱速度で示差熱量分析(DTA)を行うことにより得られる合金の融解温度(Tm)の比で定義されるものである。「換算ガラス化温度」は非晶質形成能力を示す数値である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。本発明のCu基非晶質合金において、Zrおよび/またはHfは、非晶質を形成する基本となる元素である。Zrおよび/またはHf量は5原子%を超え55原子%以下で、好ましくは10原子%以上40原子%以下である。5原子%未満、55原子%超では、過冷却液体領域△Txおよび換算ガラス化温度Tg/Tmが低下するため、非晶質形成能が低下する。
【0015】
また、Ti元素は、非晶質形成能を大幅に高める効果を有するが45原子%を超えると過冷却液体領域△Txおよび換算ガラス化温度Tg/Tmが低下するため、非晶質形成能が低下する。Ti元素の含有量は、より好ましくは、5原子%以上30原子%以下である。
【0016】
Zrおよび/またはHf量とTiとの合計量は30原子%を超え、60原子%以下とする。これらの合計含有量が30原子%以下、60原子%を超えると非晶質形成能が低下するため、バルク材が得られない。より好ましくは、35原子%以上50原子%以下である。
【0017】
本発明のCu基非晶質合金においては、任意元素としてCuを10原子%まではAg,Pd,Au,Ptによって置換してもよく、置換することにより、過冷却液体領域の広さは、少々増加するが、10原子%を超えると過冷却液体領域が25K未満となり、非晶質形成能力が低下する。
【0018】
本発明のCu基非晶質合金においては、任意元素として少量のFe,Cr,Mn,Ni,Co,Nb,Mo,W,Sn,Al,Ta,または希土類元素(Y,Gd,Tb,Dy,Sc,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Ho)の添加は機械的強度の向上に有効であるが、多量になると非晶質形成能が劣化するため、0.5原子%以上5原子%以下が好ましい。
【0019】
図1には、Cu-Zr-Ti系合金において非晶質バルク材の形成範囲と形成臨界厚さを示す。非晶質バルク材(直径1mm以上)が形成できる範囲を実線で示している。丸の中の数字は非晶質合金が形成できる非晶質バルク材の最大の厚さ(単位mm)を示す。図2には、本発明合金の一例として、Cu60Zr20Ti20合金の非晶質バルク材における圧縮試験の応力−歪み曲線を示す。この合金の圧縮破断強度はおよそ2000MPa、伸びは2.5%、ヤング率は122GPaである。
【0020】
本発明のCu基非晶質合金は、溶融状態から公知の単ロール法、双ロール法、回転液中紡糸法、アトマイズ法などの種々の方法で冷却固化させ、薄帯状、フィラメント状、粉粒体状の非晶質固体を得ることができる。また、本発明のCu基非晶質合金は大きな非晶質形成能を有するため、上述の公知の製造方法のみならず、溶融金属を金型に充填鋳造することにより任意の形状のバルク非晶質合金を得ることができる。
【0021】
例えば、代表的な金型鋳造法においては、本発明の合金組成となるように調製した母合金を石英管中でアルゴン雰囲気中において溶融した後、溶融金属を0.5〜1.5 kg・f/cm2の噴出圧で銅製の金型内に充填凝固させることにより非晶質合金塊を得ることができる。更に、ダイカストキャスティング法およびスクイズキャスティング法などの製造方法を適用することもできる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。表1に示す合金組成からなる材料(実施例1〜16、比較例1〜4)について、アーク溶解法により母合金を溶製した後、単ロール液体急冷法により約20μmの薄帯試料を作製した。そして、薄帯試料のガラス遷移温度(Tg)、結晶化開始温度(Tx)を示差走査熱量計(DSC)より測定した。これらの値より過冷却液体領域△Tx(=Tx-Tg)を算出した。融解温度(Tm)の測定は、示差走査熱分析(DTA)により測定した。これらの値より換算ガラス化温度(Tg/Tm)を算出した。
【0023】
また、金型鋳造法により作製した直径1mmの棒状試料の非晶質化の確認はX線回折法により行った。また、試料中に含まれる非晶質相の体積比率(Vf-amo.)は、DSCを用いて結晶化の際の発熱量を完全非晶質化した厚さ約20μmの薄帯との比較により評価した。これらの評価結果を表1に示す。さらに、圧縮試験片を作製し、インストロン型試験機を用いて圧縮試験を行い圧縮強度(σf)、ヤング率(E)および伸び(ε)を評価した。また、ビッカース硬さ(Hv)を測定した。評価結果を表2に示す。
【0024】
【表1】
Figure 0004011316
【0025】
表1より明らかなように、各実施例の非晶質合金は、25K以上の過冷却液体領域△Tx(=Tx-Tg)と0.56以上の換算ガラス化温度(Tg/Tm)を示すとともに、直径1mmの非晶質合金棒が容易に得られた。
【0026】
これに対して、比較例1〜2の合金は、Zrおよび/またはHf+Ti量が30原子%であり、ガラス遷移を示さず、大きなガラス形成能を持っておらず、直径1mmの棒状非晶質合金が得られなかった。比較例3の合金は、Ni量が10原子%であり、ガラス遷移を示さず、大きなガラス形成能を持っておらず、直径1mmの棒状非晶質合金が得られなかった。比較例4の合金は、基本元素のZrおよび/またはHfが含有されておらず、冷却速度の大きな単ロール法により作製したリボンでは非晶質化するが、直径1mmの棒状非晶質合金が得られず、圧縮試験が不能であった。
【0027】
【表2】
Figure 0004011316
【0028】
表2より明らかなように、各実施例の非晶質合金は、1800MPa以上の圧縮破断強度(σf)、1.5%以上の伸び(ε)および100Gpa以上のヤング率(E)を示す。
【0029】
さらに、表3に示す合金組成からなる材料(実施例17〜31、比較例5〜8)について、アーク溶解法により母合金を溶製した後、金型鋳造法により非晶質単相組織が得られる棒状試料の臨界厚さと臨界直径を測定した。さらに、圧縮試験片を作製し、インストロン型試験機を用いて圧縮試験を行い圧縮強度(σf)を測定した。結果を表3に示す。
【0030】
【表3】
Figure 0004011316
【0031】
表3より明らかなように、比較例では臨界厚さが高々0.1mmであるのに対して、実施例では臨界厚さが2mm以上で圧縮強度が2000MPaを超える大きな非晶質形成能と優れた機械的性質に優れた非晶質合金が得られたことが分かる。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のCu基非晶質合金組成によれば、金型鋳造法により直径(厚さ)1mm以上の棒状試料を容易に作製することができる。これらの非晶質合金は25K以上の過冷却液体領域を示すとともに、高強度、高ヤング率を有する。これらのことから、本発明は、大きな非晶質形成能、優れた機械的性質、優れた加工性、を兼備した実用上有用なCu基非晶質合金を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、Cu-Zr-Ti系3元合金において非晶質バルク材の形成範囲と形成臨界厚さ(単位:mm)を示すグラフである。
【図2】図2は、直径2mmのCu60Zr20Ti20非晶質合金バルク材の圧縮試験による応力−歪み曲線を示すグラフである。

Claims (2)

  1. 式: Cu100-a-b(Zr+Hf)aTib[式中、a、bは原子%で、10≦a≦40、 5≦b≦30、35≦a+b≦50である。]で示される組成を有し、
    △Tx=Tx-Tg(ただし、Txは、結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表わされる過冷却液体領域の温度間隔△Txが25 K以上、Tg/Tm(ただし、Tmは、合金の融解温度を示す。)の式で表わされる換算ガラス化温度が0.56以上であり、金型鋳造法により得られた直径又は厚さが1mm以上の棒材又は板材であり、圧縮破断強度が1800MPa以上、伸びが1.5%以上、ヤング率が100GPa以上の機械的性質を有する、非晶質相を体積百分率で90%以上含むCu基非晶質合金。
  2. 式: Cu100-a-b(Zr+Hf)aTib[式中、a、bは原子%で、10≦a≦40、 5≦b≦30、35≦a+b≦50である。]で示される合金組成となるように調製した母合金を溶融した後、銅製の金型に充填凝固させることにより
    直径又は厚さが1mm以上の棒材又は板材からなり、△Tx=Tx-Tg(ただし、Txは、結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度を示す。)の式で表わされる過冷却液体領域の温度間隔△Txが25 K以上、Tg/Tm(ただし、Tmは、合金の融解温度を示す。)の式で表わされる換算ガラス化温度が0.56以上であり、圧縮破断強度が1800MPa以上、伸びが1.5%以上、ヤング率が100GPa以上の機械的性質を有し、非晶質相を体積百分率で90%以上含むCu基非晶質合金を得ることを特徴とするバルク非晶質合金の製造方法。
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