わたしが「プロジェクト&プログラム・アナリシス研究部会」を立ち上げたのは、3年半ほど前のことだ。2011年の5月、まだ東日本大震災と原発事故の余波がさめやらぬ頃で、毎日、小さな余震におびえ、計画停電という名の不便を皆が強いられていたときだった。スケジューリング学会会長(当時)の八巻・静岡大教授と、慶応大学の松川教授のご支援をいただいて、隔月に慶応三田キャンパスで勉強会を開く、今のようなスタイルに落ち着いたのはその年の秋頃だったと記憶する。第1回目は、発起人として、「リスク確率にもとづくプロジェクト評価と合理的意志決定の基準」という基調講演をした。内容は、その前年に出した自分の学位論文が中心で、数式だらけのOR的研究だが、なぜこんな研究部会が必要なのか、どうして長ったらしくて聞き慣れない会の名称をつけたのか、についても触れている。 それは、『プロジェクト・アナリスト』という職種の確立が必要で
今日の横浜北部はよく晴れまして、気温も上昇。春を越えてすっかり初夏の陽気かと思いました。 さて、戦略研究学会の年次大会に出席してきたのですが、孫崎享氏の特別基調講演を聞きましたので、それについて少し。 噂に聞いていた孫崎氏の講演ですが、まずタイトルは 「東アジアの安全保障を考える」 というものでして、氏の肩書は、 「東アジア共同体研究所所長、元外務省国際情報局長」 というものでした。 具体的な内容についてはすでにTwitter上で中継した通りなのですが、大きな流れとしては、まずは今回のオバマ訪日における記者会見での日本メディアの報道の仕方が極めて恣意的なものであったという指摘からはじまりました。 次に米軍の高官が上院に対して「上陸作戦ができない」と明言していたことなどを指摘しつつ、そもそもの戦略の定義とはどういうものか、それに歴史的経緯から、日本にとって領土問題が最優先の議題ではなかったこ
USBメモリをパソコンに挿すと引っかかる事がある。コネクタの半分が空洞、半分が突起になっているため、2分の1の確率で引っかかる。これは、マークやランプを上に向けて挿さないユーザーが悪いのだろうか。『誰のためのデザイン? 認知科学者のデザイン原論』の著書ノーマンは、このような事例をデザイナーの問題だと主張する。 ノーマンによるデザインの7か条。 外界にある知識と頭の中にある知識の両者を利用する。 作業の構造を単純化する。 対象を目に見えるようにして、実行のへだたりと評価のへだたりに橋をかける。 対応づけを正しくする。 自然の制約や人工的な制約などの力を活用する。 エラーに備えたデザインをする。 以上のすべてがうまくいかないときには標準化をする。 例えば、4番の「対応づけ」の悪い例は、部屋の電灯スイッチ。一般的なスイッチは縦と横に4つ並んでいるが、実際の電灯の配置とは一致していないため、どこを
2009年までオートバイの全日本選手権や鈴鹿8時間耐久ロードレースに参戦していた元レーシングライダーです。現在は引退し、会社を経営していますが、企業や大学のプロジェクトチームをマネジメントする立場にあります。チームスポーツのレース業界で13年間培ってきた持論を言語化していければと思っています。 これは『アクティビティ「持論を持とう!」』に参加された日経ビジネスオンライン読者が書いた「参加にあたっての一言」である。 本連載の第1回で、「PM(プロジェクトマネジャー)の持論を作り、磨いていく手順を学び、同時に参加者がお互いの持論を通して啓発し合える活動(アクティビティ)を実施する」と読者に呼びかけた(『あなたの「持論」は文章に書けますか?』参照)。 ここで言う「持論」とは「経験から生まれ、行動を導いている方法論」である。自分が持っている方法論であり、自分の経験から生まれ、自分の行動を導くものを
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最近いろいろな場所でイノベーションに関する講演をやってて、その都度、イノベーションに関する意思決定は、杓子定規なルールや手続きに則るのではなく、リーダーによる「全人格的」な直観によって行われるべきだ、という話をしているんですが、将来的には、この「リーダーの直観」に変わる新しい意思決定のあり様が可能になるかもしれないよなあ、とぼんやり考えています。 こう書くと、おいおい例えばピッグス湾事件等の「集団浅慮」の問題を知らないのか?と思われる方もいらっしゃるかも知れません。確かに、一般に同質性の高いエリートが集まると「おバカな意思決定」をやってしまうという傾向があることは数多くの実証例で明らかにされていて否めませんよね。しかし、次の事例を読めば集合的な知性がもつ潜在的な力を認めざるを得ないのではないでしょうか? 1968年5月、アメリカ海軍所属の原子力潜水艦スコーピオンは、地中海で実施されていた軍
あれほど大騒ぎした北朝鮮情勢は、中距離弾道ミサイルが撤去され、「戦争」の挑発もなくなり、すっかり尻すぼみになってしまいました。その後、中国の大手国有銀行が当局の指導を受けて、北朝鮮向けの送金を止めていることが報じられました。水面下でどのような駆け引きがあったかはわかりませんが、アメリカの経済制裁に中国が同調したことが北朝鮮を追い詰め、ミサイル撤去に至ったと思われます。 アメリカでは、国際政治の交渉にゲーム理論を使うのが常識です。有名なのは冷戦時代の「相互確証破壊」で、アメリカとソ連が相手を一瞬で消滅させるだけの大量の核兵器を保有することが、平和のための最良の戦略だとされました。この論理はひとびとの神経を逆なでしましたが、それによって米ソの「世界最終戦争」が避けられたのも事実です。 ゲーム理論は、すべてのプレイヤーが自分の利益を最大化すべく合理的な選択をするという前提のもとに、いくつかの単純
2013年05月12日22:20 カテゴリ投資の知恵袋[edit] 下げに付き合わない事 一番大事なことは、下げに付き合わない事なんだ。それと表裏一体だが、上げには辛抱強く我慢して食らいついて付き合う事だ。 男女の関係やビジネスの交流とまったく同じだと思う。ダメなヤツとは相手が何を言い寄って来ようがキッパリと手を切り、素晴らしいパートナーとは必死に努力しながら付き合い続ける。 ピカピカ光っている全員を追いかけちゃイケナイ。自分と相性が合う素晴らしモノを見つけたら懸命に理解して食らいついていく。 それで十分に満足が得られるものだ。 より素晴らしくても、相性が悪ければ、不得意なものならば、諦めることだ。 所詮、自分とは縁が無い相手なのだと。 素晴らしいモノも、時としてダメになってしまう。 懸命に理解して食らいついていれば、劣化したことが誰よりも早く察知できる。 そしたらキッパリと別れる事だ。
ビジネス書の杜の主宰者の好川哲人です。 長らく休止していましたビジネス書の杜の書籍プレゼントを少しずつですが、復活させています。今年2冊目のプレゼントです。2冊目は、コラボレーションの本です。 ロン・リッチ、カール・ウィージ(シスコシステムズ合同会社 執行役員会監修、翻訳) 「コラボレーション革命~あなたの組織の力を引き出す10のステップ」、日経BP社(2013) 昨年になりますが、米国の起業家、齋藤ウィリアム浩幸さんが、「ザ・チーム」という本で、「日本にはグループはあるが、チームがない。これが日本の最大の 問題だ」と指摘されました。この指摘は多くの人に衝撃を与えました。日本人の多くは、自分たちはチームワークがよく、チームで仕事をしていると思っている からです。 齋藤ウィリアム浩幸「ザ・チーム (日本の一番大きな問題を解く) 」、日経BP社(2012) 実は数年前に、「コラボレーション革命
[思考] ブログ村キーワード コロンビア大学ビジネススクールのアイエンガー教授による「選択の科学」の講義Eテレ「コロンビア白熱教室」の第3回目の放送が昨夜ありました。 「選択」することが困難を切りひらく力となるというアイエンガー教授の授業、昨夜は過去に間違った選択をしていてもついまた同じような選択をしている私たち、この過ちを正すツールの授業で、「選択日記」(よりよい選択を下すために選択の記録をつける)つけてみましょうという内容でした。 私にとってはテンポの速い授業で、著書『選択の科学』(文藝春秋)もあるのですが著書にもない事例と説明もあり一度ぐらいでは記憶にとどめることができません。 講義が昨夜 、直観的選択がいいのか理性的な選択がよいのか より良い選択(最良の選択)をするための実践的なknow-howを伝授するものは「選択日記」、過去の記憶がいかにあやふやなものかということは誰でも体験し
『ビジョナリー・カンパニー4 自分の意志で偉大になる』の紹介をした第1回目では、欧米の社会科学系の博士課程の学生がほぼ必ず読まされる(つまり、Ph.D.を持った大学教授必読の) “That’s interesting!”(Murray Davis)という1971年の古典的な論文の話から始めました。 このポイントは、論文、理論の良しあしは「理論が正しいかどうか」では必ずしもなく、「interestingかどうか」で決まる。そして、interestingであるとは、とりもなおさず人が「なんとなく」思っている前提を否定することにある、言い換えれば「直感と違う(counter-intuitive)ことを言う」ことだと申し上げました。 今回と次回はこの論文と研究者の仕事の関係から始め、さらに経営にかかわる皆さんへの示唆を考えてみたいと思います。 経営学とデータ 経営学も含め、社会科学系の研究者がして
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