アメリカの大統領選の結果が確定する直前に本書を読んだことは単なる偶然ではあるが、偶然と片づけることができないいくつもの暗合を知る。「これは『遠い昔』や『遠い場所』の話ではない」という帯に記された言葉が重い。 優れた憲法を有し、民主的国家として知られたワイマール(本書ではワイマル)共和国がいかに暗転し、ナチス・ドイツという鬼子を産んだのか、私はこのブログでレヴューしたいくつかの研究を通してこの点を繰り返し考えてきたが、本書もその一環であると同時に、今日このような問いを質すべき切実さはかつてないほど高まっている。本書はきわめて堅実で実証的な歴史研究であり、決して読みやすい内容ではない、特に理論的枠組が論じられる序章と第一章を読み通すためにはある程度の忍耐が必要だ。しかしナチズムの台頭が詳細に論じられる第二章以降はもはや別の時代の記録とは感じられないほどに現代と直結している。それはおそらく今日、