今年8月26日に惜しくも他界した歴史学者、森安孝夫氏(1948-2024、大阪大学名誉教授)。一般的な知名度はけっして高くないが、その独自の研究と妥協のない人柄で、一部の歴史ファンから熱く支持され、国際的にも評価される「プロの歴史学者」だった。ここでは、人類社会に対する強い使命感と信念を持った森安氏の著作からそのメッセージを紹介していきたい。 国立大学の教授が権力批判していいんですか? 日本人には馴染み深い「シルクロード」を研究対象としながら、森安氏の名前は、一般にはあまり知られてこなかった。 ユーラシア大陸の砂漠と草原に点在する史料を読み込み、分析したその成果は、おもに学術論文で国内外に発表され、専門の研究者のあいだでは極めて高い評価を得ていた。しかし、概説的な著作が少なく、テレビなどに登場することもほとんどなかったのだ。 そんな森安氏の一般書としてのデビュー作にして話題作『シルクロード