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スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

海上投棄とハイ・グレーディング

2009-12-29 09:17:23 | コラム
『沈黙の海』が扱っている一つのテーマは、スウェーデンやヨーロッパ近海における乱獲と水産資源の枯渇だ。

しかし、次第に明らかになるのは、EUや加盟国が乱獲を防ぐ目的で導入している制度が、逆に乱獲を助長しているという皮肉な現実だ。

その理由はこうだ。EUは水産資源を保護するために、海域と魚の種類ごとに漁獲枠を定めている。「北海のこの海域では、今年はタラを××××トン獲ってもよい」という風にである(ちなみにかなり大きな漁獲枠が毎年設定されており、このこと自体も大きな問題だ)。その海域が複数の国にまたがる場合は、それぞれの国に配分し、そして、それぞれの国は自国で登録された漁船ごとに漁獲枠を配分していく。だから最終的に「あなたの漁船は今年はタラを△△トン、ヒラメを○○トン獲ってもよい」という具合に決まる。スウェーデンでは、さらにそれが週ごとに分割されて「この週は××トン獲ってもよい」と細かく決められることもある。

さて、漁獲枠という制度が抱える根本的な問題はここから始まる。

自分の漁船はタラを10トン獲ってもよいという漁獲枠しか持っていないのに、15トン獲れてしまったらどうすればいいだろうか? もしくは、網を引き上げてみたらタラと一緒にカレイが1トンも入っていたらどうすればいいだろう?

EUの漁獲枠による規制では、与えられた漁獲枠を超える水揚げは許されていない。漁獲枠を持っていない魚の水揚げも許されていない。だから、漁師はどうするのかというと、船の上で捨てるしかない。これが悪名高き「海上投棄」と呼ばれる行為だ。

あるいは、こういうケースも考えられる。自分の船は今週はカレイ5トンの漁獲枠を与えられている。網を引き上げてみたら、カレイがちょうど5トン獲れたけれど、小型のカレイが多かった。これではあまり儲けにならない。網をもう一度、いや二度海に入れて漁をしてみたら、全部で15トン獲れた。この中から、高い値段がつく大型のカレイだけを5トン選んで水揚げし、あとは海に捨ててしまおう・・・。これは「ハイ・グレーディング」と呼ばれる行為だ。

百聞は一見にしかずというから、次の映像を見ていただきたい。ノルウェーの沿岸警備隊(海上保安庁)が2008年8月に撮影した、イギリス・シェトランド籍の漁船だ。


ノルウェーの沿岸警備隊は、ノルウェーの管理水域にて漁業権を持たずに操業していたこの違法漁船を発見し追跡した。そして、この漁船はイギリスの管理水域に達すると、海上投棄を行い始めた。その理由が、漁獲枠を満たしてしまったからなのか、ハイ・グレーディングのためなのかは分からないが、ノルウェー沿岸警備隊によるとおよそ5トンのタラがこの時、海上に投棄されたという。この漁船が捕獲した魚の8割(!)に相当すると見られている。海上投棄の現場がこのように鮮明に撮影されたのは稀なことだという。


2007年EUは独自の推計を行い、北海においてトロール漁船(多くの場合、底曳き漁船)に捕獲された魚の4割から6割の魚が海上投棄されている、と発表した。

一方、ノルウェーはEU加盟国ではないため、出漁日数や操業時間によって漁業の規制を行っている。そして、漁で獲れた魚はすべて水揚げしなければならない、と定めている。そうすると、毎年、どれだけの魚が漁業によって死んでいるのかを正確に知ることができ、水産資源量の管理がより正確に行われるようになる。

これに対し、EUでは合法的に水揚げされる魚以外にも、こうして海上で捨てられている魚がたくさんあるために、漁業が海洋環境に与えている負荷の全体像を把握しにくい。もちろん、それ以前の問題として、本来なら海で泳ぎ続けて、子孫を増やしていたであろう数々の魚が、何の目的もなく殺されて投棄されているという現状は、野蛮だという以外の何ものでもない。


詳しい情報は『沈黙の海』に書かれています。
また、上の映像はイギリス紙・ガーディアンの記事からです。

中国企業による企業買収の帰結は・・・?

2009-12-26 07:38:37 | スウェーデン・その他の経済
中国Geely(吉利)によるVolvo Cars(ボルボの乗用車部門)の買収についてだが、契約の詳細を詰めるために今後も協議が続けられ、来年の半ばに正式な契約が結ばれるとのことだ。


24日のDagens Nyheter 経済面より
「GeelyはVolvoにとって勇気のいる(← リスキーな)選択だ」

フォードがVolvo Carsの売却を表明している以上、資金を潤沢に持つ資本グループに買い取ってもらい、会社の経営を再び軌道に乗せていかなければならない。不況の中、そのような買い手が限られている現状だから、スウェーデンではGeelyに買収してもらえることを喜ぶ声もある。潜在性の底知れない中国市場への進出が容易になるとの楽観論も聞かれる。

一方で、経営文化がこれまでの先進国と異なるうえ、国際市場に参入し始めて間もない中国の企業に何ができるのかを疑問視する声もかなり根強い。また、深刻な人権侵害を犯している全体主義の国に買い取られることでブランド名に傷がつくという反発もある。もちろんGeelyは民間企業ではあるのだが、政府-党-企業の境界が曖昧な国において民間企業という言葉が持つ意味合いは、先進国におけるそれとは違うものだろう。

今月上旬に買ったスウェーデンのビジネス週刊誌に「チャイニーズ・モデルはブランドネームを台無しにする」という記事が掲載されていた。そして、見出しに続いて次のように書かれていた。

中国企業はこれまで天然資源の買取で世界市場に進出してきたが、それ以外の分野における買収は失敗に終わってきた。中国企業がスウェーデンの自動車企業を買い取るなら、それはスウェーデンの企業にとっての救いとはならず、むしろ抱える問題をさらに増やすだけだろう。」

非常に興味深い分析であり、将来のスウェーデン自動車産業の行く末を暗示しているようなので、その要旨を紹介したい。

――――――――――

中国企業による世界市場への進出は、第一段階天然資源の買取だったが、5年ほど前から第二段階に入ってきた。第二段階というのは、技術、知識、ブランド名、流通網などを求めた企業買収のことだ。しかし、中国企業に買収された企業の多くが障害にぶつかっているという。

(例1)電気機器メーカーTCLによるフランスのThompsonAlcatelの買収
5年まえに行われたこの買収に際しては、フランスと中国の両国で盛大なセレモニーが開催されたが、買収後に両企業は北米市場で大きな問題を抱えるようになり、またヨーロッパからは完全に撤退することになった。他方で、中国市場においても当初のシェアを維持できなくなってしまった。現在は、性能の劣る廉価版の携帯電話を主に途上国において販売する企業に成り下がってしまった。

(例2)LenovoによるIBMのパソコン部門の買収
買収後、IBMの経営陣とLenovoの間で経営方針を巡る対立が生じ、IBMの経営陣はLenovo側の人材にごっそりと置き換えられてしまった。その後、研究開発がおろそかになり、IBMの主力であるThinkpad品質・価格ともに大幅に落ちてしまった。販売が伸びているのは主に中国市場だけで、近年の業績はあまりよくない。買収の狙いはLenovoの品質をIBMの水準に引き上げることだったが、現実はむしろIBMがLenovoの水準に落ちてしまったというものだ。

(例3)上海汽車(SAIC)による韓国自動車メーカー雙龍自動車(Ssanyong)の買収
買収直後から、生産拠点を中国に移したいSAICとそれに反発するSsanyongの労働組合との間で対立が生じた。また、契約に違反してSsanyongの技術を勝手にSAICに持ち出したり、買収の際に約束されていた韓国における投資の継続も果たされていない。

そのほかにも、イギリスの自動車メーカーRoverの例が挙げられているが、結果はIBMの場合と同じく、ブランド名や品質が大きく低下したという。

これらの失敗の原因がいくつか挙げられている。
・中国企業は、ブランド名品質を貶めるようなことを意図的に行っているのではないが、結果として、徐々にそれが進行していく。
ヒエラルキー性の強い中国型の組織では、短期的な収益性ばかりが評価の基準となる傾向にある。
・中国企業は価格競争を特に意識して、コストを何としてでも抑えることに全力を注ぐ傾向にある。その結果として、コストがかかり短期的には収益が上がりにくい研究開発という部門が犠牲になる(同じアジアの国でも日本企業に買収されるのとはわけが違う)。
・経済そのものが他人が作るものを安く自分たちで作ることで成り立ってきたため、ブランド名を大切にするという意識に欠けている。
・相手国の社会、文化や働き方、経営の仕方に関して知識を欠いている。

そのうえで、「最初の経営改革として、Geelyはボルボが使用するタイヤやバッテリーなどといった部品を中国から調達させようとするだろう。それが中国企業のやり方だ」という専門家の見方を掲載している。

一方で、そのような失敗は過去の話で、世界市場に今後進出していく企業は、過去の経験から学んでいる、という見方もある。中国企業が技術開発にもしっかり力を入れている例として挙げられているのは、テレコムの分野で国際マーケットシェアを着実に伸ばしつつあるHuawei(ファーウェイ・華爲)だ。

――――――――――

この記事では触れられていなかったが、そもそも技術開発というのはボルボだけの問題ではなく、様々な部品をボルボに提供している数々の下請企業との連携のなかで行われるものだ。だから、ボルボ内部での研究開発が今後どうなるかを考えるだけでなく、果たして中国企業がそのような下請企業との連携を今後も大切にするのかどうか、また逆に下請企業の側が、中国傘下に入ったボルボと今後も技術提携を続けていく意思を持っているのかどうか、という点も考えていかなければならない。

Geelyは今後もスウェーデンでボルボの生産と研究開発を行う、とは言っているが、コストが高いと分かればすぐに移動させてしまう危険性もある。

うまく行かないだろうな、というのが率直な感想だ。しかし、その予想が外れることを願って・・・。いや、その前にフォードが売却案を撤回するか、Geelyとの今後の交渉が決裂して、他の資本グループに売却されることを願っている。

脱力するニュースを二つ。

2009-12-24 01:00:44 | スウェーデン・その他の経済
イェヴレ市の有名なワラ製ヤギ人形は水曜の朝3時ごろ、何者かに火をつけられ、瞬く間に炎上してしまった。

警察は通報を受けてから2分ほどで現場に駆けつけたものの、既に黒く焦げた骨組みしか残っていなかった。近年は燃焼を防ぐ防火剤が散布されたこともあったが、色が変わったりワラ特有のパサパサ感がなくなったりするため、今年は散布されていなかった。

毎年相次ぐいたずらを防ぐために、前年同様に今年も防犯カメラが設置されていた。3秒ごとに更新される映像はインターネットを通じて、誰でもウェブで見ることができた。しかし! 今回は事件の直前に何者かがアクセスを集中させ、サーバーに負担がかかりすぎたために一時的に機能不全となり、犯人の姿や放火の瞬間の映像は残っていなかったという。アクセス数は全焼直後から再び落ち着いたために、犯人がわざとサーバー攻撃を仕掛けたものだと見られている。犯人はまだ捕まっていない。



防犯カメラのうちの一つの映像
(注: ヤギ人形が何のことか分からない人は、3つ前の記事を読んでみてください。)
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もう一つ良くないニュースが・・・

可能性が濃厚だ、という話はここ数週間、集中的にメディアに流れていたので驚きはしなかったが、ボルボ乗用車部門(Volvo Cars)は中国の自動車メーカー吉利(Geely)に売却されることが正式に決まった。


確かに吉利は今年10月以降は優先交渉権を得て、フォードと売却手続きの交渉を続けてきたのだが、これを阻止したいスウェーデンのエンジニア系や大卒者系の労働組合が資本を募ってJakob(ヤーコブ)という連合体を形成し、ボルボの買収に名乗りを上げてきた。可能性は限りなく小さかったが、私は「もしかしたら」と期待もしていた。だから、非常に残念。詳しい報道がいまスウェーデンのメディアに流れているが、あんまり見る気がしない。
日経新聞の記事

そういえば、GMはドイツの自動車メーカーOpel(オペル)MagnaとGAZの企業連合体に売却する決定を一度は下したものの、ロシアに技術が流出することを警戒したGMが売却決定を撤回し、オペルを今後もGM傘下に留めると発表した。

フォードも近い将来、同じように気を変えることはないだろうか?

魚の名前

2009-12-22 21:24:42 | コラム
先日、魚を買いにヨーテボリでいつも使う魚屋に行った。

いつものようにタラ系の魚が並べられている。私が欲しかったのはタラではなく、それよりも一回り小さい白身魚でホワイティングというタラ科の魚だ。塩焼きにするとおいしい。
(注: ホワイティング(whiting)と書いたがこれは実は英語名であって、スウェーデン語名はvitling(ヴィートリング))

並べられた魚の中にこのホワイティングに似ている魚があったが、見かけが少し違う。若い店員に「ホワイティング」か?と尋ねると「そうだ」と答えた。

すると、後ろで忙しそうに仕事をしていた店の親分みたいなのが割って入ってきて「違うぞ。ここに黒紋があるのが見えるだろう?」とその若い店員に教えていた。その魚は実はスウェーデン語でkolja(コリヤ)と呼ばれる魚。英語名はhaddock(ハドック)。

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『沈黙の海』の翻訳をする上で少々苦労したのは、登場する魚の名前だった。何しろ、ヨーロッパ近海や大西洋に生息する魚の多くは日本近海にいない。それでも和名がちゃんと付けられているものがある一方で、和名がないものも多かった

だから、原著に登場した魚は、まずラテン語の学名と分類(○○目△△科××属)を一つ一つ調べた上で和名があるかどうかを確認した。同じ「属」に日本近海の魚種があるものの、完全に同じ種ではない魚もあった。その場合には「××属」の部分を名前として使った(日本近海の魚名も××の部分と同じことが多かった)。そして、このやり方でも難しい場合は、英語名をカタカナ表記したりした。

さて、このkoljaという魚。調べてみると和名は「モンツキダラ」となっている。こうやってカタカナで書くとあまりピンとこないが「紋付き」のタラということだ。

私も訳しているときには実感が全然わかなかったが、この魚屋でのやり取りで「ああ、これがあのモンツキダラか!」と納得できた。そう、タラやホワイティングと同じタラ科であることに違いはないのだが、胸ビレの横のほうに黒い紋がついているのが特徴なのだ。また一つ新しいことを教わって嬉しくなった。

(注: 和名としては「コダラ」という名前も一部では使われているようです。例えば ウィキペディアなど。このように和名が複数ある、もしくは、きちんと確立していない、というのも翻訳上の悩みの種でした。)

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『沈黙の海-最後の食用魚を求めて』は、値段が少々高いにもかかわらず、売れ行きはまずまず良さそうです。最後の付録として「魚名事典」を私が自ら付け加えました。登場する魚の、スウェーデン語名-和名-英語名-ラテン名-学問上分類の対照表です。

スウェーデンに住んでおられる方で「魚屋でよく見かけるのだけど、これは日本語でなんと呼ぶのだろう?」と疑問に思っておられる方もおられるでしょう。タラ科の魚やカレイ科の魚は、スウェーデンで販売されているだけでも何種類もあります。ですので、この対照表が是非とも役に立つはずです。

さようなら、サーブ(SAAB)!

2009-12-19 09:59:54 | スウェーデン・その他の経済
ついに本当の終りがやってきた。

サーブの買収候補として最後まで名乗りを上げていたのはオランダのスポーツカー企業スパイカー・カーズ(Spyker cars)だったが、この企業への売却が無理と判断したGMは、金曜日午後に記者会見を開き、サーブの売却を断念し、廃業とすることを発表した。サーブという企業の解散であり、スウェーデン国内にある生産工場は閉鎖されることとなる。


まるでサーブの墓標のよう

日本の新聞には「GM、サーブ売却断念 事業を大幅縮小へ」という見出しが掲げられているが、もっと分かりやすく言い換えれば、サーブという企業事業停止の手続きに則(のっと)ってたたんでいきます、ということだ。今後は車の生産は行わないし、新モデルももちろん開発しない。ただし、現在サーブ車に乗っている人のために交換用部品の供給は保証して行くという。

今週前半の報道では、スパイカー・カーズとの売却交渉も順調に進んでおり、また、サーブはこれから市場に投入していく新しい電気自動車の未完成モデルを早くも報道陣に公開したりしていた。しかし、スパイカー・カーズには見込み無し、とGMは見切りをつけてしまった。GMはサーブの売却を年末までに、と決めていたが、その期限を待たずして廃業の決定を下してしまった

GMスパイカー・カーズサーブスウェーデン政府「時間が足りない」ということを問題にしていた。スパイカー・カーズはさらに「ヨーロッパ投資銀行(EIB)からの融資が買収の鍵になるが、これが大きな難関だ」ともらしていた。というのも、今週初めにサーブは、旧技術と生産機械の一部を中国の北京汽車に売却することを決めたため、サーブの担保価値が減少することになったからだ。そのため、ケーニッグセグに認められた融資額よりも大きく減額されてしまうということだった。

ただし、それ以上に問題だったのは、スパイカー・カーズ自身の経営状況だ。年に数十台の超高級車を生産している小さな企業で、数年前には倒産の危機にあり、大株主であるロシアの富豪や銀行資本に多額の資本注入をしてもらっていた。また、アラブ首長国連邦の大富豪も多額の出資をこのオランダ企業に行ってきた。サーブのような乗用車企業を経営するノウハウはほとんどない、というのが業界専門家のもっぱらの評価のようだ。ロシア人や石油富豪が狙っているのは、ヨーロッパ投資銀行(EIB)からの融資であって、それすら手にできれば、いずれはサーブを廃業にするか売り飛ばすだろう、と見ていた専門家もいた。

金曜日に発表されたGMのこの決定を受けて、GM側のコメントを伝えるスウェーデン日刊紙の見出しはこうだった。
"Vi har vänt på alla stenar."(我々はすべての石をひっくり返してみた。)
もともとのコメントは英語だからどのような表現が実際に使われたのかは分からないが、つまり「すべての可能性は試してみた」ということだ。それでも年末までに売却の方策が見つからなかったようだ。

――――――――――

最初のサーブ車が生産されたのは1947年のことだった。SAABという名前はSvenska Aeroplan AB、つまりスウェーデン航空機 株式会社を表しており、この会社自体は1937年に創業して、スウェーデン国防軍のための戦闘機や爆撃機を作っていた。

しかし、第二次世界大戦後は経営の多角化ということで、乗用車の市場に参入することになったのだ。航空機の流線型をイメージしたデザインから、サーブ車は「翼のない飛行機」として親しまれた。


その後、1970年代にはフロントライトにワイパーをつけたり、座席に電熱ヒーターをつけたり、横からの衝突に備えたシールドを取りつけたりと斬新なアイデアを披露した。ターボエンジンも有名だったというし、近年ではエタノール用のターボエンジンも開発してきた。安全性の面でさらに付け加えれば、追突時の鞭打ちを防ぐために首への衝撃を吸収する装置も世界で初めて実用化したという。

乗用車部門はその後、航空機や軍需品を製造する親会社サーブから切り離されて別企業となっている。(今でもたまに日本語のサイトで、サーブはスウェーデンにとって重要な軍需産業なので潰されるわけがない、などといった書き込みを見かけるが全くの勘違い)

1969年から1990年まではスウェーデンのトラックメーカーであるスカニア(Scania)サーブの合弁企業だったし、1990年からは株の一部をGMが所有し始め、2000年には完全に所有されることになった。サーブはGM傘下のもとで主にアメリカ市場での販売拡大を狙ったようだが、うまく行かずGMの傘下に入ってからほとんど毎年赤字を記録していた。

寒波です

2009-12-17 08:02:20 | Yoshiの生活 (mitt liv)
一昨日から大きな寒波がヨーロッパを襲っています。

下のリンクはニュースの動画。最初に登場するのは、ストックホルムから100km北方にあるGävle(イェヴレ)という町。歩行者がまず一人転び、通りかかった自転車が立て続けに転ぶという災難です。自転車も砂利が撒かれたあとならいいけれど、それまではツルツルに凍ることもあり、注意が必要。特にブレーキをかけるときはバランスを崩して横転しやすい。


その後はウプサラ(Uppsala)。この地域では、雪かきや砂利撒きなどの対応が遅れて、けが人が多く出ている模様。スキーを履いて通勤・通学している人も映っています。ヨンショーピンの郊外ではトラックと通学バスの衝突事故。

ヨーロッパの他の地域も大変。セルビアのベオグラードやスペインが映っています。

《補足》ちなみに、後ろに映っているのは、毎年この時期にスウェーデンを騒がせる麦わら製のヤギ。
2006-12-31:イェヴレ市のヤギ人形
2008-12-27:今年は生き残るか?-イェヴレ市のヤギ

サーブは何処へ・・・!?

2009-12-16 09:44:25 | スウェーデン・その他の経済
金融危機以降、苦境に立ってきたスウェーデン自動車業界の展開については、ボルボ乗用車部門(Volvo Cars)サーブ(SAAB)の売却交渉を中心に何度か書いてきましたが、最近少し怠けていました。

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サーブのほうは、今年に入ってから事実上の経営破綻に陥り、会社更生法の適用を受けながら新生サーブへと生まれ変わる努力を続けてきた。同時に、サーブを傘下に収めてきたGMサーブ売却の意向を示してきたため、GMに代わる新しい所有者を見つけるための作業が続けられてきた。

買収候補者の中から選ばれたのは、スウェーデンのスポーツカー・メーカー、ケーニッグセグだったが、問題は完全買収に必要な資金が足りない、ということだった。スウェーデン政府にお伺いを立ててみたものの「支援はしない」との冷たい返事。

穴埋めの一つの方法は、ヨーロッパ投資銀行(EIB)からの融資を受けることだった。ただし、融資審査には厳しい条件がある上、スウェーデン政府からの信用保証がなければお金は貸さない、と言ってきた。度重なるやり取りの末に、やっとのことでこの条件をすべて満たすことに成功し、EIBから融資が受けられることになった!

しかし、それでも30億クローナ(4億3000万ドル)が足りない! この穴埋めをすることになったのは北京汽車(BAIC)だった。この中国企業はケーニッグセグに出資する見返りに、サーブの技術の一部を手にする目論見だったようだ。こうしてケーニッグセグは買収に必要な資金がやっと揃えたかと思いきや・・・

2009年11月25日 「ケーニッグゼグ、サーブ買収交渉打ち切り」との報道!

[デトロイト 24日 ロイター] 米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)[GM.UL] は24日、傘下サーブの売却を中止すると発表した。売却先のスウェーデンの高級自動車メーカー、ケーニッグゼグが買収を取りやめた。
 サーブは来月末までをメドに、中国の北京汽車工業の出資を得てケーニッグゼグに売却される予定だった。
ケーニッグゼグは声明で、売却手続きから撤退したと表明。「会社に新たな命を吹き込む戦略上、時間的要因が常に重要だった」と述べた。(以下省略)

ロイターの記事

せっかく狭い難関を何度も乗り越えて、やっと新生サーブが誕生するかと思った矢先だった。これで売却プロセスは一からやり直しだ。しかし、GM側としては年内に売却を済ませたい、と言ってきたため、残り時間は非常に短い。売却が無理なら、サーブの廃業・解体ということになる。しかし一方では、サーブ買収に名乗りを上げる企業がいくつかあるという報道もあり、サーブの社長は「希望はまだまだある」と相変わらずの楽観的なコメントを述べていた(日刊紙のある解説者はそれ以前から「彼はどんなひどい目にあってもへこたれない人だ」と賞賛していた)。

しかし、先週末に一つのニュースが入ってきた。北京汽車(BAIC)がサーブの技術と生産設備の一部を購入する契約を結んだ、というのだ。サーブという企業の事実上の解体がついに始まったか!?と思わせる見出しだったが、よく聞いてみるとそうではなかった。

北京汽車(BAIC)が購入することになったのは、9-3モデル(旧型)と9-5モデル(旧型)の生産技術と生産設備だ。設備については、解体して中国へ運び、設置するのだそうだ。両モデルは開発から既に10年以上が経っており、サーブや欧米の自動車メーカーにとっては既に一世代遅れの技術となっている。それを北京汽車が買い取り、自社の新型モデルに融合するのだという。(自動車業界では、一つのモデルの“寿命”は6年ほどだとか)

だから、スウェーデン各紙「Win-Win situation」だと報じていた。つまり、北京汽車はのどから手が出るほど欲しがっていた技術が、たとえ一世代遅れのものであろうと手に入る。他方で、サーブは今となっては重要ではない古い技術を売ることで資金が手に入る、ということなのだ。しかも、技術移転を行ってその技術を北京汽車が自社の新型モデルに融合していくためには、大掛かりなサポートがサーブ側で必要になり、おそらく今後数年はサーブの本拠地における技術部門の活動も盛んになるだろう、とある新聞は予測している。
ロイターの日本語記事

ちなみに、9-3モデルや9-5モデルについては、サーブはリニューアルした新型バージョンを開発しており、それが現在生産されている。そして、こちらの技術は今後もサーブ内に留めておくのだという。

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歴史は繰り返すという。戦後、スウェーデンはヨーロッパ最大の造船国だと呼ばれた時代がかつてあった。しかし、日本や韓国などの新興国に追い上げられ、競争力を失っていき、70年代から80年代造船工場が相次いで閉鎖されていった。ヨーテボリやマルメなどにあった造船設備や大型クレーンの一部は、その頃に解体され韓国に輸出されて、再び使われることになった。今では造船業といえば、スウェーデン海軍の軍用艦艇を細々と作っている程度だ。


それと同じことが今、自動車産業で起きているのだろうか? 自動車産業は造船業と違って、スウェーデンや欧米は新技術の開発を続けていくことで新興国の追い上げをかわしていくことができるのだろうか・・・?
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話をサーブに戻そう。サーブ買収に関心を示した企業の中で、現在唯一残っている企業は、オランダのスポーツカー・メーカーのSpyker(スパイカー)だ。そう、またもやスポーツカー・メーカーなのだ。この企業も買収を断念したケーニッグセグと同様、高級車を年間数十台作っている程度の企業だ。サーブの将来は、今この企業にかかっているといっても良いだろう。

この書き込みをしている15日深夜、主要日刊紙のサイトを見ていると「スパイカーによる買収交渉がうまく行かなければ、サーブは廃業するだろう」という見出しが掲げられていた。


日本のサイトによると、サーブが廃業したあとのシナリオもすでに描かれている、という情報もある。

日経新聞2009年12月12日「上海汽車、サーブ買収か 中国紙」
【上海=下原口徹】中国紙、経済観察報(電子版)は11日、中国自動車最大手の上海汽車集団が米ゼネラル・モーターズ(GM)のスウェーデン子会社のサーブを破産後に低価格で買収することで、GMと水面下で合意していると報じた。(以下省略)
日経の記事

ただし、これはあくまで中国の情報筋によるところであって、スウェーデンでは報じられていない。しかし、そのような準備が着々と進んでいてもおかしくはないだろう。

タイガー・ウッズのスウェーデン繋がり

2009-12-14 23:39:52 | コラム
タイガー・ウッズの不倫問題が世界のマスメディアを騒がせているが、ここスウェーデンでもスポーツニュースやタブロイド紙が彼のスキャンダルを立て続けに報じている。

スウェーデンでこれだけ騒がれているのは、タイガー・ウッズが世界で一番稼いでいる有名ゴルファーだからという理由だけではない。不倫騒動の渦中にある彼の妻Elin Nordegren(エーリン・ノーデグレーン)スウェーデン人だからということもある。

1週間前には、妻の母親がストレスで倒れ、フロリダの病院に運び込まれたというニュースが大きく取り上げられていた。騒動の渦中にある自分の娘を心配して、娘の家のあるアメリカを訪れた時の出来事だったらしい。

しかし、その母親の名前が気になった。どこかで聞き覚えのある名前だった。Barbro Holmberg(バルブロ・ホルムベリ)・・・。 そう、社会民主党政権時代に移民難民担当大臣(2003-2006)をしていた元閣僚だ。閣僚時代には、難民認定の問題でよくニュースに登場していた人だった。その娘が、タイガー・ウッズの妻だったのだ。だから、ウッズにとってみれば、義理の母ということになる。

ちなみに彼女(母親)は国会議員の職を退き、現在はウプサラの北にあるGävleborg(イェーヴレボリ)県の県知事をしている。だから、急遽休みをとってアメリカを訪れていたようだった。病院から担任した後、直ちにスウェーデンへ戻り、公務に復帰したようだ。

ついでに言えば、Elin Nordegren(エーリン・ノーデグレーン)という名前の苗字も気にかかっていた。Nordegrenといえば公共ラジオSRのアメリカ特派員で現在は同じラジオ局のトークショーを担当しているジャーナリスト/アナウンサーで、Tomas Nordegren(トーマス・ノーデグレーン)というおじさんがいる。例えば、ブッシュ米大統領が再選することになった2004年秋の大統領選挙の前後では、アメリカから毎日のように独特のスコーネ方言で現地情報をスウェーデンのラジオニュースに発信していたのを覚えている。

調べてみると、やっぱり彼がElin Nordegren(エーリン・ノーデグレーン)の父親であることがわかった。

なるほど、思わぬところで人間が繋がっているものだと知って、面白くなった。


2週間ほど前に大学の同僚から送られてきた写真。タイガー・ウッズのクリスマス挨拶で「妻と仲むつまじくやっています」というメッセージだとか

新型インフルエンザのワクチン接種

2009-12-11 17:41:03 | Yoshiの生活 (mitt liv)
更新が遅れています。現在開催されているコペンハーゲン会議をはじめ、追うべき情報がたくさんでなかなか時間が割けません。

ところで、昨日やっとインフルエンザ・ワクチンの接種をした。季節性インフルエンザではなく新型(豚)インフルエンザH1N1のワクチンだ。


スウェーデンでも、今年の春にメキシコで死者が相次いだ頃から、H1N1の大流行に備えた対策が議論されてきた。スウェーデンでも住民の半分以上が感染する恐れがあり、そうなると社会全体が麻痺してしまう。

だから、まず全住民を対象としたワクチン接種をすることでそのリスクを極力減らすことが決まった。ワクチン工場はスウェーデン国内にないため、国外の製薬企業に注文することになる。スウェーデン政府が発注したのは、Glaxo Smith Klineという企業。ベルギーとドイツに工場がある。政府が発注したワクチンの量は1800万人分。スウェーデンの人口は925万人なので、これは住民数の約2倍にあたる。というのも、その当時はワクチン接種を2度行わないと免疫が生まれない、と言われていたからだ。

そして、それでも大流行が防げず、住民の大部分が職場を休む事態になった場合でも、社会インフラ(医療・福祉・警察・消防etc)が最低限でも機能するように、それぞれの現場で人員確保や人員配置のための詳細な計画が練られていた。

結果論から言えば、今回の豚インフルエンザは当初予想されていたほど恐ろしいものではなかったのだが、それは今だから言えることであって、今年春の時点で政府が様々な対策を事前に講じたことは間違いではなかっただろう。それに、命を落とす危険は当初考えられていたほど高いものではないにしろ、感染した個人にとって1週間にわたって苦しむことは大きな災難であることに変わりはない。

スウェーデンには10月後半からワクチンが少しずつ届くようになった。これは本来ならば9月のうちにワクチンが届く予定だったが、生産過程で様々な問題が発生したり、EUの医薬品当局の承認に時間がかかり、大幅にずれ込むことになった。

接種はまず、持病を持つリスクグループから始まり、医療関係者・医学部生 → 幼児とその家族 → 学童 → それ以外の人、という順番で進められてきた。幼児・学童が優先されているのは、保育所や学校を通した大流行が起こりやすいためだ。また、幼児・学童だけに免疫を持たせても、彼らが家庭に持ち帰るウイルスのために親が感染する可能性もあるため、その家族も優先的に接種を受けることになった。ただし、優先順位の詳細はそれぞれの県が決めるため、例えばウプサラ県などは「大学生」にも「幼児とその家族」と同時期に接種を許可したため、ワクチン不足になり混乱が生じた。

ワクチンの納入は当初の予定より大幅に遅れることになったが、順調に納入が進められているため、11月終りから一般の人々への接種も始まっている。ちなみに、接種は無料。費用はすべて政府持ちだ。また、大きな職場では雇い主の計らいで職場で接種ができるところもある。ヨーテボリ大学もその一つだ。大学の教員や職員のために、先週と今週にわたって大学に看護士がやってきて接種をしてくれた。

ちなみに当初は2回の接種が必要とされたが、試験の結果1回で免疫が生まれることが分かったので、接種は1回のみ。だから、数百万人分のワクチンが余ることになるが、これは注文をキャンセルするか、他の国に販売するようだ。また、スウェーデンが注文したワクチンは鶏の受精卵の中で培養するため、卵アレルギーの人には接種ができない(卵を使わない培養法もある)。

副作用は人さまざまで、人によっては接種の後に熱が出たり、数日寝込むひともいるようだが、私は腕の軽い痛みだけで済んだ。実際にウイルスに対する抵抗力が生まれるまでに2週間ほどかかるというから、まだ油断は禁物。

フィンランド航空のストライキ

2009-12-06 18:15:57 | Yoshiの生活 (mitt liv)
11月30日のスウェーデン大使館のミニセミナーに来てくださった皆様、ありがとうございました。このブログを見て参加してくださった方もおられ、嬉しくなりました。もし、本の内容にご関心を持たれましたら、是非ともお買い求めになって読んでみてください。

11月25日には、大阪の弁護士の方々のご依頼で、大阪中央公会堂にてスウェーデンの社会保障と公正・平等というテーマで講演させていただきましたが、大勢の方が来てくださり、こちらもありがとうございました。

今回も短い日本滞在でしたが、その間に温暖化会議や、風力発電、持続可能な社会の発展に関するシンポジウムなどをいくつか聴講し、その会場でいろんな方々と情報交換する機会がもてました。まだまだ勉強すべきことがいっぱいだと感じます。(温暖化シンポジウムでは、パネルディスカッションで真っ向から対立していた大学研究者と鉄鋼業界の代表が、その後の“飲み”で鉢合わせし、NGOの代表や某紙の新聞記者も交えて、シビアな雰囲気になるなど、面白いものを見せていただきました。笑)

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さて、スウェーデンに戻る日の話。フィンランド航空の職員がストライキをやっているとのことで、成田発ヘルシンキ行きが4時間遅れとなった。フィンランド航空ではパイロットの組合がこの2週間ほど前にストを行っていたが、今度は荷物・給油などに携わる地上職員のストライキだという。

ヘルシンキからは、その日のうちにヨーテボリ便に乗る予定だったのだが、成田からの便が4時間遅れとなったために、ヘルシンキで一泊し、翌朝一番の便でヨーテボリに向かうことになった。

成田空港に着いた時点で、フィンランド航空のカウンター前には長蛇の列。40分待ってやっとカウンターにたどり着いたと思ったら「1時間後に再び戻ってきてください」との返事。他の大部分の乗客はカウンターできちんと対応してもらっていたので、理由を求めたところ、別の職員が出てきて、態度が急に変わり対応をしてくれることになった。この時点で、?マークが1つ。

ヘルシンキからの翌日便のチケットに切り替えてもらう。ヘルシンキでの一泊は当然ながら航空会社側が手配し、負担してくれるのかと思いきや「エコノミークラスなので、我々は責任を負わない。お客様のほうで手配・負担してください」とのこと。そんな話は聞いたことがないと反論すると「今回のストは、荷物担当の職員のストなので、フィンランド航空とは関係がなく、よって我が社の責任ではない」という返事。おまけに「ストで遅れが出ているという情報は、既にホームページ上に掲載しているので、お客様の側も当然知っているべきであり、遅れに備えた対応はお客様自身の責任」とのこと。何度も反論したものの、いかにも「当然のこと」という対応だった。?マークが5つくらい増えた。

成田空港には幸い有料インターネットがあったおかげで、すぐさまネットを介して、ヘルシンキの国際空港近辺のホテルを確保することができた。もちろん自己負担で。

さて、4時間遅れで成田を発った飛行機は、4時間遅れでヘルシンキに着いた。現地のフィンランド航空職員から伝えられた情報は「フィンランド航空のストのために遅れが出て申し訳ない。1泊が必要な乗客のために、フィンランド航空はホテルを確保している。負担も航空会社がする」というものだった。成田の日本人職員の話とは全く違うし、見かけは力強くて恐ろしそうなおばさんのわりに対応は良かった。

苦労して自分でホテル探しをする必要はなかったんだ。そのいかついおばちゃんに頼んで予約していたホテルをキャンセルしてもらおうとしたが、私のクレジットカードから既に支払いが済んでいるとのこと。結局、私は自分で予約したホテルに泊まり、費用は航空会社があとで支払ってくれることになった。面白いことに、私が予約したホテルは、航空会社が確保していたホテルのすぐ隣だった。

今回の地上職員のストやその前のパイロットのストは、フィンランド会社側が職員を子会社もしくは派遣会社に移そうとしたことに対して、職員・パイロットが反発していたためだった。だから、ストに同情しないわけでもない。

問題は、成田の日本人職員のケチケチ対応。ヘルシンキの職員の説明とは全く食い違っているのは、どういうことなのだろう? 苦情を送るとともに、有料インターネットにかかった費用(400円)を請求しよう。

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ちなみに、荷物・給油担当の職員のストだったため、成田からヘルシンキに着いた時に、預けた荷物はすぐに出てこなかった。最低でも2時間はかかるとのこと。待つのは面倒なので、手荷物だけ持ってホテルに行くことにした。次の日のヨーテボリ便は7時40分。それまでに荷物を受け取ればよいからだ。

次の日の早朝5時に空港に戻った。荷物の受け取り場には誰もおらず、特別に開けてもらって中に入った。すると・・・。目の前に広がっているのは、数百に及ぶスーツケース。持ち主のもとに届かず、ここで一晩を明かした荷物の数々だ。出発地ごとに分けて置かれているものもあったが、多くは無造作に床のあちこちに置かれていた。

「さぁ、自分のを見つけてね。」と職員はいうが、どこから手をつければいいのか? 数十分かけてTokyo発の荷物の山を見つけたが、そこにはなかった。時間は刻々と過ぎていく、早く見つけないとヨーテボリ便のチェックインに間に合わなくなる。

幸い、London発の荷物の横に置かれた自分のスーツケースを発見。それを持って、チェックインへと急ぎ、事なきを得た。

しかし、7時40分発のヨーテボリ便も、乗客が全員乗り込んだもののなかなか動かない。何と給油の順番待ちだという。給油を済ませ、2時間後にやっと出発。

私は、学部生向けの講義があったのでかなり焦ったが、大学側に問い合わせたら「それ明日ですよ」と言われて安心した。とんでもない勘違い。