【耕作農家は・・・?】
牧草以外の農作物はどうだったのだろうか? 汚染された地域における農作物は、牧草のほかには主に穀類だった(葉野菜、ジャガイモなどはもっと南部のほう)。事故が発生した4月末は、穀類の種まきをする直前だった。戸惑う農家に対して、農務庁は表土を5cmほど掻きとって、農地の外に廃棄するように指示した。また、畑をよく耕した上で種を蒔くようにもアドバイスを行った。スウェーデンの一部の地域では、秋に耕運を行い、春には耕さないところもあるようだが、そういう地域でも春に改めて耕すように指示したのである。そうすることで、穀物に取り込まれるセシウムの量が減らせるというのが理由であるようだ(その理由は下で)。
また、カリウムをたくさん含む化学肥料を農地に撒くようにも指示した。カリウムは植物が必要とする栄養素だが、植物は放射性セシウムをカリウムと間違えて取り込んでしまう。そのため、カリウムを農地にたくさん撒くことで、植物に取り込まれる放射性セシウムを減らすことができるようだ
(人間の甲状腺に放射性ヨウ素が取り込まれないように、放射性のない通常のヨウ素を錠剤として服用する論理と似ている。下の表を参照)。
放射性のヨウ素、セシウム、ストロンチウムの特性
また、石灰の散布も推奨された(これはセシウムを石灰に吸着させ、植物への移行を抑えるため? もしくは、放射性のストロンチウムがカルシウムとよく似ているため、植物に取り込まれるストロンチウムの量を減らすため?)。
穀類のセシウム-137の量も牧草と同様にその後、定期的に検査が行われたが、穀類の汚染度は牧草の汚染度の10~30分の1だったという。もともと、牧草地のほうが植物に取り込まれるセシウムが多い。その理由は牧草地がほとんど耕されないからだという。では、よく耕すことがなぜセシウムの植物への移動を抑えるのかというと、濃度が拡散されるうえ、土中のミネラルや粘土粒子にセシウムが吸着されやすくなるためのようだ。また、ミネラルを多く含む土壌と、腐葉土などの腐敗植物を多く含む土壌では、前者のほうが土壌から植物へのセシウムの移行が少ないという。土壌中のミネラルがセシウムを吸着するためだ。
その後、農作物の汚染量の調査は毎年行われているが、2001年の調査によると汚染がひどかった地域の穀類に含まれるセシウムの量は、1kgあたり0~7ベクレルで、平均値は1ベクレルだった(穀類の粒へのセシウムの移行そのものも、牧草などの草系植物へのセシウムの移行よりも少ないという)。
【人工肥料のカリウムを撒布した場合の効果】
農地1ヘクタール当たりに、年間0kg、100kg、200kgのカリウムを撒布したとき、穀類の粒の部分に含まれるセシウムがどれだけ変化するかを、年ごとに追っていったもの。カリウムを撒いた場合に、穀類へ吸収されるセシウムの量が大きく減少することが分かる。
※ ※ お知らせ ※ ※
以上の出典は、スウェーデンの防衛研究所・農業庁・食品庁・放射線安全庁・農業大学が共同で2002年に発表した報告書『放射性物質が落下した場合の食品生産について』からですが、この邦訳が2012年1月30日に『スウェーデンは放射能汚染からどう社会を守っているのか』というタイトルで発売されました。
スウェーデンの防衛研究所が農業庁やスウェーデン農業大学、食品庁、放射線安全庁と共同でまとめ、2002年に発行した「放射性物質が降下した際の食品生産について」という報告書の翻訳です。
チェルノブイリ原発事故のあとにスウェーデンが被った被害やその影響、農業・畜産分野で取られた対策や、放射能汚染を抑えるための実験、放射能に関する基礎知識、将来の事故に備えた災害対策の整備や、実際に事故が起きたときの対策の講じ方をまとめたものです。
詳しくは、こちらをご覧ください。
牧草以外の農作物はどうだったのだろうか? 汚染された地域における農作物は、牧草のほかには主に穀類だった(葉野菜、ジャガイモなどはもっと南部のほう)。事故が発生した4月末は、穀類の種まきをする直前だった。戸惑う農家に対して、農務庁は表土を5cmほど掻きとって、農地の外に廃棄するように指示した。また、畑をよく耕した上で種を蒔くようにもアドバイスを行った。スウェーデンの一部の地域では、秋に耕運を行い、春には耕さないところもあるようだが、そういう地域でも春に改めて耕すように指示したのである。そうすることで、穀物に取り込まれるセシウムの量が減らせるというのが理由であるようだ(その理由は下で)。
また、カリウムをたくさん含む化学肥料を農地に撒くようにも指示した。カリウムは植物が必要とする栄養素だが、植物は放射性セシウムをカリウムと間違えて取り込んでしまう。そのため、カリウムを農地にたくさん撒くことで、植物に取り込まれる放射性セシウムを減らすことができるようだ
(人間の甲状腺に放射性ヨウ素が取り込まれないように、放射性のない通常のヨウ素を錠剤として服用する論理と似ている。下の表を参照)。
放射性のヨウ素、セシウム、ストロンチウムの特性
また、石灰の散布も推奨された(これはセシウムを石灰に吸着させ、植物への移行を抑えるため? もしくは、放射性のストロンチウムがカルシウムとよく似ているため、植物に取り込まれるストロンチウムの量を減らすため?)。
穀類のセシウム-137の量も牧草と同様にその後、定期的に検査が行われたが、穀類の汚染度は牧草の汚染度の10~30分の1だったという。もともと、牧草地のほうが植物に取り込まれるセシウムが多い。その理由は牧草地がほとんど耕されないからだという。では、よく耕すことがなぜセシウムの植物への移動を抑えるのかというと、濃度が拡散されるうえ、土中のミネラルや粘土粒子にセシウムが吸着されやすくなるためのようだ。また、ミネラルを多く含む土壌と、腐葉土などの腐敗植物を多く含む土壌では、前者のほうが土壌から植物へのセシウムの移行が少ないという。土壌中のミネラルがセシウムを吸着するためだ。
その後、農作物の汚染量の調査は毎年行われているが、2001年の調査によると汚染がひどかった地域の穀類に含まれるセシウムの量は、1kgあたり0~7ベクレルで、平均値は1ベクレルだった(穀類の粒へのセシウムの移行そのものも、牧草などの草系植物へのセシウムの移行よりも少ないという)。
【人工肥料のカリウムを撒布した場合の効果】
農地1ヘクタール当たりに、年間0kg、100kg、200kgのカリウムを撒布したとき、穀類の粒の部分に含まれるセシウムがどれだけ変化するかを、年ごとに追っていったもの。カリウムを撒いた場合に、穀類へ吸収されるセシウムの量が大きく減少することが分かる。
以上の出典は、スウェーデンの防衛研究所・農業庁・食品庁・放射線安全庁・農業大学が共同で2002年に発表した報告書『放射性物質が落下した場合の食品生産について』からですが、この邦訳が2012年1月30日に『スウェーデンは放射能汚染からどう社会を守っているのか』というタイトルで発売されました。
スウェーデンの防衛研究所が農業庁やスウェーデン農業大学、食品庁、放射線安全庁と共同でまとめ、2002年に発行した「放射性物質が降下した際の食品生産について」という報告書の翻訳です。
チェルノブイリ原発事故のあとにスウェーデンが被った被害やその影響、農業・畜産分野で取られた対策や、放射能汚染を抑えるための実験、放射能に関する基礎知識、将来の事故に備えた災害対策の整備や、実際に事故が起きたときの対策の講じ方をまとめたものです。
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