即日開票の夜、右派ブロックが過半数を取れないことが判明したとき、ラインフェルト首相は党メンバーや支援者に向かって「幅広い支援を受けた政権を樹立するために、環境党と協議を開始したい」と宣言した。ポピュリスト・極右政党であるスウェーデン民主党の影響力を排除するためだ。しかし、その翌日、環境党は記者会見を開き「右派連合を支援することはありえない」ときっぱり拒絶した。このことは、このブログでも紹介した。
しかし、先週の段階ではまだ票のカウントが完全に終わっておらず、国外投票や期日前投票による票次第では右派連合があと3議席伸ばして、過半数を獲得する可能性があったので、左派・右派のブロックを越えた協議は行われなかった。
さて、先週の終わりに最終的な議席配分が確定し、やはり右派ブロックが過半数を取れないことが判明した。そのため、今週に入ってから、新政権に樹立に向けた動きが注目されたが、まず動いたのは、やはり右派ブロックを代表する保守党(穏健党)と左派ブロックに属する環境党だった。既に触れたように環境党は、投票日の翌日にきっぱりと拒絶するポーズは取ったものの、やはり保守党が声をかけてくることを待っていたようだ。
しかし、保守党のラインフェルト首相は、環境党を連立政権に呼び入れることはしなかった。環境党は、連立政権に招いてもらい彼らの政策そのものに影響を与えられるということであれば、彼らとの安定した提携も考えていたであろう。しかし、政策決定の中枢に入ることなく「外野」で中道保守の連立政権の応援団になることなど考えられないため、保守党との協議の後の記者会見で「公式な協力関係は築かない」と発表した。
テレビのニュース「公式な協力関係は築かない」
しかし同時に、個別の政策については、中道保守政権とも積極的に協力して、法案可決に協力することを明らかにした。例えば、社会統合や移民・難民の受け入れといったスウェーデン民主党が口を挟んでくることが明らかな政策領域においては、環境党と中道保守政権が協力し、スウェーデン民主党の影響を無力化していくという。また、アフガニスタン駐留問題に関しても、撤退の期限を明確にしたくない中道保守政権と、2014年を目処に撤退したい環境党とは距離が比較的近いため、事前協議の上で共同案を提出していくという。
その翌日の火曜日には、保守党と社会民主党が協議を行い、社会民主党も個別の政策に限っては中道保守政権と提携していく用意があることが明らかになった。しかし、中道保守政権と社会民主党との距離はかなり大きいため、協力できる政策事項も限られたものとなるだろう。
私としては、環境党と中道保守政権がより深い協力関係を築いて、連立入りなども協議してくれることを期待していたが、残念ながらそうはならなかった。しかし、それは仕方がない。右派4党はこれまで連立政権を築き、今回の選挙に向けても共同公約を作成するなど、長い協力関係を築いていたのだから、その第一党である保守党が、他の3党を差し置いて環境党を政権に入れてしまえば、連立政権内での力関係が全く違うものになってしまう(環境党は他の3党よりも得票率が高く、政権第2党となる)。だから、彼らの反発は必至だった。
一方で、他の3党は自らの惨敗も認めるべきだろう。というのも、支持がますます後退したからだ。得票率をみると自由党7.1%、中央党6.6%、キリスト教民主党5.6%だが、この中には、議席獲得に必要な4%ハードルをクリアさせるために戦略的に票を投じた人も多い。選挙後の世論調査によると、例えばキリスト教民主党に票を投じた人の実に3分の1は本当は他の党の支持者だったという。つまり、戦略的投票者がいなければ、4%ハードルをクリアできず、議席を全く獲得できなかったわけだ。中央党も実際の支持者だけであれば4.6%ほどの得票率しかなかったという。
いずれにしろ、環境党は、個別政策ごとに中道保守政権と協力関係を探っていく方針を明らかにした。連立に入ったり、閣外協力を築いていれば自らの行動を縛ることになっていたが、そうではなく柔軟な立場が取れる道を選んだため、中道保守政権の今後の政権運営においてキャスティング・ボードを握っていくことになりそうだ。
しかし、先週の段階ではまだ票のカウントが完全に終わっておらず、国外投票や期日前投票による票次第では右派連合があと3議席伸ばして、過半数を獲得する可能性があったので、左派・右派のブロックを越えた協議は行われなかった。
さて、先週の終わりに最終的な議席配分が確定し、やはり右派ブロックが過半数を取れないことが判明した。そのため、今週に入ってから、新政権に樹立に向けた動きが注目されたが、まず動いたのは、やはり右派ブロックを代表する保守党(穏健党)と左派ブロックに属する環境党だった。既に触れたように環境党は、投票日の翌日にきっぱりと拒絶するポーズは取ったものの、やはり保守党が声をかけてくることを待っていたようだ。
しかし、保守党のラインフェルト首相は、環境党を連立政権に呼び入れることはしなかった。環境党は、連立政権に招いてもらい彼らの政策そのものに影響を与えられるということであれば、彼らとの安定した提携も考えていたであろう。しかし、政策決定の中枢に入ることなく「外野」で中道保守の連立政権の応援団になることなど考えられないため、保守党との協議の後の記者会見で「公式な協力関係は築かない」と発表した。
テレビのニュース「公式な協力関係は築かない」
しかし同時に、個別の政策については、中道保守政権とも積極的に協力して、法案可決に協力することを明らかにした。例えば、社会統合や移民・難民の受け入れといったスウェーデン民主党が口を挟んでくることが明らかな政策領域においては、環境党と中道保守政権が協力し、スウェーデン民主党の影響を無力化していくという。また、アフガニスタン駐留問題に関しても、撤退の期限を明確にしたくない中道保守政権と、2014年を目処に撤退したい環境党とは距離が比較的近いため、事前協議の上で共同案を提出していくという。
その翌日の火曜日には、保守党と社会民主党が協議を行い、社会民主党も個別の政策に限っては中道保守政権と提携していく用意があることが明らかになった。しかし、中道保守政権と社会民主党との距離はかなり大きいため、協力できる政策事項も限られたものとなるだろう。
私としては、環境党と中道保守政権がより深い協力関係を築いて、連立入りなども協議してくれることを期待していたが、残念ながらそうはならなかった。しかし、それは仕方がない。右派4党はこれまで連立政権を築き、今回の選挙に向けても共同公約を作成するなど、長い協力関係を築いていたのだから、その第一党である保守党が、他の3党を差し置いて環境党を政権に入れてしまえば、連立政権内での力関係が全く違うものになってしまう(環境党は他の3党よりも得票率が高く、政権第2党となる)。だから、彼らの反発は必至だった。
一方で、他の3党は自らの惨敗も認めるべきだろう。というのも、支持がますます後退したからだ。得票率をみると自由党7.1%、中央党6.6%、キリスト教民主党5.6%だが、この中には、議席獲得に必要な4%ハードルをクリアさせるために戦略的に票を投じた人も多い。選挙後の世論調査によると、例えばキリスト教民主党に票を投じた人の実に3分の1は本当は他の党の支持者だったという。つまり、戦略的投票者がいなければ、4%ハードルをクリアできず、議席を全く獲得できなかったわけだ。中央党も実際の支持者だけであれば4.6%ほどの得票率しかなかったという。
いずれにしろ、環境党は、個別政策ごとに中道保守政権と協力関係を探っていく方針を明らかにした。連立に入ったり、閣外協力を築いていれば自らの行動を縛ることになっていたが、そうではなく柔軟な立場が取れる道を選んだため、中道保守政権の今後の政権運営においてキャスティング・ボードを握っていくことになりそうだ。