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スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

新型インフルエンザのワクチン接種

2009-12-11 17:41:03 | Yoshiの生活 (mitt liv)
更新が遅れています。現在開催されているコペンハーゲン会議をはじめ、追うべき情報がたくさんでなかなか時間が割けません。

ところで、昨日やっとインフルエンザ・ワクチンの接種をした。季節性インフルエンザではなく新型(豚)インフルエンザH1N1のワクチンだ。


スウェーデンでも、今年の春にメキシコで死者が相次いだ頃から、H1N1の大流行に備えた対策が議論されてきた。スウェーデンでも住民の半分以上が感染する恐れがあり、そうなると社会全体が麻痺してしまう。

だから、まず全住民を対象としたワクチン接種をすることでそのリスクを極力減らすことが決まった。ワクチン工場はスウェーデン国内にないため、国外の製薬企業に注文することになる。スウェーデン政府が発注したのは、Glaxo Smith Klineという企業。ベルギーとドイツに工場がある。政府が発注したワクチンの量は1800万人分。スウェーデンの人口は925万人なので、これは住民数の約2倍にあたる。というのも、その当時はワクチン接種を2度行わないと免疫が生まれない、と言われていたからだ。

そして、それでも大流行が防げず、住民の大部分が職場を休む事態になった場合でも、社会インフラ(医療・福祉・警察・消防etc)が最低限でも機能するように、それぞれの現場で人員確保や人員配置のための詳細な計画が練られていた。

結果論から言えば、今回の豚インフルエンザは当初予想されていたほど恐ろしいものではなかったのだが、それは今だから言えることであって、今年春の時点で政府が様々な対策を事前に講じたことは間違いではなかっただろう。それに、命を落とす危険は当初考えられていたほど高いものではないにしろ、感染した個人にとって1週間にわたって苦しむことは大きな災難であることに変わりはない。

スウェーデンには10月後半からワクチンが少しずつ届くようになった。これは本来ならば9月のうちにワクチンが届く予定だったが、生産過程で様々な問題が発生したり、EUの医薬品当局の承認に時間がかかり、大幅にずれ込むことになった。

接種はまず、持病を持つリスクグループから始まり、医療関係者・医学部生 → 幼児とその家族 → 学童 → それ以外の人、という順番で進められてきた。幼児・学童が優先されているのは、保育所や学校を通した大流行が起こりやすいためだ。また、幼児・学童だけに免疫を持たせても、彼らが家庭に持ち帰るウイルスのために親が感染する可能性もあるため、その家族も優先的に接種を受けることになった。ただし、優先順位の詳細はそれぞれの県が決めるため、例えばウプサラ県などは「大学生」にも「幼児とその家族」と同時期に接種を許可したため、ワクチン不足になり混乱が生じた。

ワクチンの納入は当初の予定より大幅に遅れることになったが、順調に納入が進められているため、11月終りから一般の人々への接種も始まっている。ちなみに、接種は無料。費用はすべて政府持ちだ。また、大きな職場では雇い主の計らいで職場で接種ができるところもある。ヨーテボリ大学もその一つだ。大学の教員や職員のために、先週と今週にわたって大学に看護士がやってきて接種をしてくれた。

ちなみに当初は2回の接種が必要とされたが、試験の結果1回で免疫が生まれることが分かったので、接種は1回のみ。だから、数百万人分のワクチンが余ることになるが、これは注文をキャンセルするか、他の国に販売するようだ。また、スウェーデンが注文したワクチンは鶏の受精卵の中で培養するため、卵アレルギーの人には接種ができない(卵を使わない培養法もある)。

副作用は人さまざまで、人によっては接種の後に熱が出たり、数日寝込むひともいるようだが、私は腕の軽い痛みだけで済んだ。実際にウイルスに対する抵抗力が生まれるまでに2週間ほどかかるというから、まだ油断は禁物。