Wikileaks(ウィキリークス)の創設者ジュリアン・アサンジュがイギリスで自ら出頭し逮捕された。
彼がスウェーデンを8月半ばに訪れた際、彼から強姦や性的暴行などを受けたという2人のスウェーデン人女性が警察に被害届を出していた。その後、スウェーデン当局は証拠に乏しいということで一度は捜査を取りやめたものの、この2人の女性の弁護士が不服申し立てを行い、再び捜査が開始された。そして、先週にスウェーデンの裁判所が逮捕状を出したのを受けて、ICPOが国際指名手配を行っていたのだった。本人は、このまま隠れていることはできないと判断し、滞在先のイギリスにおいて自ら身柄をイギリス警察に引き渡したようだ。
この事件は、2人の女性が被害届を出した直後から、スウェーデンでも大きく報道されていたが、非常に不可解な点が多い。特にアメリカから恨まれている人物だけに、彼を逮捕して今後の活動を阻止したり、犯罪者というレッテルを貼ることで彼の評判を失墜させるための陰謀だという見方は当然ながらできる。
実際、被害届の背景にある出来事を追っていくと、すべてが「でっちあげ」である可能性が非常に高いように思われる。
ジュリアン・アサンジュがスウェーデンを訪ねた理由の一つは、社会民主党に属するあるグループが主催するセミナーに参加することだった。「紛争におけるメディアの役割」がセミナーのテーマだった。
そのセミナーの主催者の一人は30歳のスウェーデン人女性だったが、アサンジュがスウェーデンに滞在中、8月11日から19日ごろまで寝泊りしていたのは彼女のアパートだった。彼女は14日まで自宅を留守にするので、その間、アサンジュにアパートを使わせたのだった。しかし、彼女は予定を変更し1日早く自宅に戻ってきた。その後も、アサンジュは彼女のアパートにしばらく滞在を続けることになる・・・。
実は、被害届を出した2人の女性のうちの一人はこの女性なのだ。被害届によると、事件が起きたのは8月13日の夜から14日の朝にかけてだったという。
しかし、8月14日にはこの女性が属する社会民主党のグループが主催したセミナーが開かれているが、彼女は特に変わった様子はなくセミナーに参加。そして、その夜、彼女とジュリアン・アサンジュは「ザリガニ・パーティー」にも参加している。この日の14時頃、彼女はFacebookとツイッターにこう書きこんでいた。
「ジュリアンがザリガニ・パーティーに参加したいって。今夜か明日、私たちが飛び入りで参加できそうなパーティーを開く人はいない?」
ザリガニ・パーティーと言えば、スウェーデンにおける8月の風物詩であり、週末に友達同士で集まってホームパーティーを開くのが恒例だ。だから、自分たちも今から加えてもらえないか、不特定の友達にあててメッセージを送ったのだ。
その後、どこのパーティーに参加するのことになったのか、それとも自分たちで友達を招いて急遽パーティーを開いたのかは分からないが、日付が変わった15日未明、彼女は再びツイッターに書き込みをしている。
「朝2時になるけど、まだ屋外に座っている。ぜんぜん寒くない。世界で最もクールな天才たちと一緒。こんなに素晴らしいことはない!」
と、酔った勢いもあって有頂天になっていることが分かる。「クールな天才たち」の中には、アサンジュも含まれているだろうから、その24時間ほど前に「被害を受けた」という彼女が彼に嫌悪感を抱いていることはまったく窺えない。彼女は警察に被害届を出した後にタブロイド紙の取材を受け、その中で「アサンジュは女性を侮蔑している」と答えているが、この記述からは、彼女が彼をそのように見ていたとは全く感じられない。
そして、その後もアサンジュの名前は出てこないものの彼女はFacebookやツイッターに短い書き込みを続けている。特に変わった様子はなく、日常的な書き込みだ。最後の書き込みは8月19日。そして、突然途絶えてしまう。
何が起きたのだろうか? 実は20日、彼女は警察に被害届を出したのだ。そして、それと同時にFacebookやツイッターのすべてのメッセージをネット上から消去している。しかし、彼女はFacebookやツイッターを、Bloggyというツイッターに似たサイトとも連動させて全く同じメッセージを流していたものの、彼女はこのサイト上のメッセージを消去することを忘れていた。
このことに気づいたある人が、このサイトの証拠写真を取った上で、彼女が属する社会民主党のグループが運営するブログ(彼女がウェブ責任者)のコメント欄に、そのことを知らせるメッセージを残した。相手がどう反応するかを確認するためだ。ただ、その人は最初のコメントではBloggyについては全く触れず、彼女のツイッターのすべてのメッセージが消去されたのはなぜかを尋ねてみたのだった。すると、そのコメントはウェブ責任者に消去されてしまった。その後、その人は改めてコメントを書き、Bloggy上に全く同じメッセージが残されていることを指摘したのだった。すると、そのコメントが消去されただけでなく、Bloggy上に残されていたメッセージも消去されてしまったのだ。
この一連の動きは「訴えに不利となる証拠隠し」と受け取れなくもない。そもそも、被害から数日経ってから被害届が出されたことも不自然だ。
では、彼女が仮に「でっち上げ」の被害届を提出して、アサンジュを貶めようとしているとしたら、その動機は何だろうか? まず一つは嫉妬だ。実はアサンジュが彼女のアパートに滞在中、二人は関係を持っていたようだ。彼女は「超有名人」であるアサンジュに惚れ込んでいた(いわゆるgroupie、ミーハー?)。しかし、8月18日か19日ごろ彼女はある情報を耳にする。彼女が属する社会民主党のグループの別の女性メンバーも、アサンジュと関係を持ったというのだ。
そのもう一人の女性も社会民主党の同じグループに属し、14日のセミナーに参加していた。アサンジュに近づいていき、一緒に昼食を食べたり、映画を見たりした。そして16日の夜、アサンジュは彼女の住むアパート(ストックホルムから少し離れた町 エンショーピン)を訪ね、翌日の正午ごろストックホルムに戻っている。
二人の女性は8月18日か19日ごろ、電話で話をすることがあった。彼女らはここで、アサンジュが二人の両方と関係を持ったことを知ったようだ。一人目の女性のほうは激怒し、アサンジュをアパートから追い出してしまう。その後、彼はホテルに滞在するようになる。二人の女性は、20日の午後2時、一緒に警察署を訪れ、被害届を提出した。
ただ、強姦や性的暴行という容疑の名から想像されるのとは異なり、彼女らが警察に訴えた被害の内容は、最初の女性の場合「アサンジュが意図的にコンドームに穴を開けていたために、コンドームが割れた」というものだ。また、もう一人の女性の場合は「自分の意思に反してアサンジュがコンドームを使わなかった」というものだ。彼が暴力を使った、などということは彼女ら自身も述べていない。彼女らの被害届および警察での聞き取り調査の内容の一部は、既にリークされている(スウェーデン警察内部の犯行?)。
また、彼女らが被害届を出すために警察署を訪れたとき、彼女らはどのような被害内容で届けを出すのか、明確な考えを持っておらず、警察にアドバイスを求めたという話もある。そして、警察官からどのような被害内容であれば性的暴行という容疑で訴えることができるかのアドバイスを受けた上で、上記の被害を届け出たというのだ。これは、イギリスのガーディアン紙が記事にて言及しているところから判断して信憑性はありそうだ。
だから、動機としてまず考えられるのは、嫉妬ということになるが、それだけだろうか? 20日に二人揃って警察署を訪れるまでに、どのような打ち合わせがあったのだろうか? 誰かに相談して計画を練った、ということもありえる。また、激怒・嫉妬した彼女らを使って、より大きな目的を達成しようとする人々がいたかもしれない。
この情報にどこまで信憑性があるのか私は分からないが、アサンジュのWikileaksが暴露を予定していた極秘文書の中に、スウェーデンの社会民主党にとって非常に不利になる情報が含まれていることを、アサンジュが一人目の女性に話した、という情報もある。これが本当であれば、それが暴露されるのを何として避けたいという動機が働いたことも考えられる。この場合、社会民主党そのものが絡んでいる可能性がある。実は、その後この2人の女性の弁護を担当することになった弁護士は、社会民主党のメンバーであると同時に国内ではわりと名の知れた弁護士である男性だ(彼は社会民主党政権による任命を受けて2000年から2007年まで男女平等オンブズマンを務めてもいた)。
実際のところ、Wikileaksが先日、その一部を公開したアメリカの外交公電の中には、スウェーデンの社会民主党政権やその幹部がアメリカと密談を行ったり、オフレコで情報交換をしていたことを示す記述が見つかっている。
一度は不起訴となったものの、不服申し立てを受けて検察が再び調査を始めた背景にも、社会民主党との怪しい関係が見え隠れしていると思われる要素もある。というのも、再調査の際にこの件を担当することになった検察官は、この二人の弁護をしている社会民主党の弁護士と非常に仲がよい女性検察官だからだ(彼女は現在も担当)。ただ、この点については、たまたまそうであったという偶然性もあるだろうから、なんともいえない。一方、アメリカ政府によるスウェーデン政府や関係当局への圧力の可能性も否定できないし、スウェーデンの社会民主党だけでなく現・中道保守政権にとっても、アサンジュを逮捕・起訴することを望んで、再び調査を開始させたかもしれない。
アメリカ政府といえば、彼らが2人の女性に直接働きかけて、アサンジュを訴えさせたという可能性もある。イラクの射殺ビデオの暴露以降、アメリカ政府がスウェーデン政府に対して多大な圧力をかけてきたことは間違いない。Wikileaksのサーバーはスウェーデン国内にもあるし、創設者であるアサンジュはスウェーデンの「言論の自由」法令の庇護を受けようとスウェーデン当局と手続きに入っていたうえ、その本人がスウェーデンを訪れてセミナーに参加しようと言うのであれば、何らかの罠を仕掛けようとした可能性は高い。しかし、アメリカがこの「被害届」にどこまで関与しているのかは分からない。この一人目の女性はウプサラ大学で(政治学を?)勉強した後、アメリカのスウェーデン大使館でインターンシップをした経験もあるから、アメリカとのリンクがない訳ではない。アメリカの例えばCIAの意向を受けて、アサンジュを貶めるために罠をかけたという見方もあるものの、これだけでは何とも言えない。
彼が逮捕された今、これからスウェーデンに移送されることになるのか、そこでどのような展開になるのか、そして、もしかしたら、アメリカがスパイ容疑で彼を訴えて、スウェーデン政府に彼の身柄の引渡しを求めるのではないか・・・?という見方もある。
いろんな情報が錯綜するが、今回はここまで。
<注>
以上の情報は8月下旬以降、スウェーデンの新聞やタブロイド紙、英字新聞やネット上のサイトなどで読んだ情報の中から、ある程度、信憑性の高そうなものを選んで書いたつもりだが、ご存知のようにネットは情報戦の武器でもあるので、いかがわしい情報も紛れ込んでいるかもしれない。
英語で書かれた情報としてある程度まとまっているのは、
Assange: Aftonbladet's 'Inside Story'
Assange Case: Ny Knows the Girls Made it Up but Doesn't Care
Guardian: How the rape claims against Julian Assange sparked an information war
彼がスウェーデンを8月半ばに訪れた際、彼から強姦や性的暴行などを受けたという2人のスウェーデン人女性が警察に被害届を出していた。その後、スウェーデン当局は証拠に乏しいということで一度は捜査を取りやめたものの、この2人の女性の弁護士が不服申し立てを行い、再び捜査が開始された。そして、先週にスウェーデンの裁判所が逮捕状を出したのを受けて、ICPOが国際指名手配を行っていたのだった。本人は、このまま隠れていることはできないと判断し、滞在先のイギリスにおいて自ら身柄をイギリス警察に引き渡したようだ。
この事件は、2人の女性が被害届を出した直後から、スウェーデンでも大きく報道されていたが、非常に不可解な点が多い。特にアメリカから恨まれている人物だけに、彼を逮捕して今後の活動を阻止したり、犯罪者というレッテルを貼ることで彼の評判を失墜させるための陰謀だという見方は当然ながらできる。
実際、被害届の背景にある出来事を追っていくと、すべてが「でっちあげ」である可能性が非常に高いように思われる。
ジュリアン・アサンジュがスウェーデンを訪ねた理由の一つは、社会民主党に属するあるグループが主催するセミナーに参加することだった。「紛争におけるメディアの役割」がセミナーのテーマだった。
そのセミナーの主催者の一人は30歳のスウェーデン人女性だったが、アサンジュがスウェーデンに滞在中、8月11日から19日ごろまで寝泊りしていたのは彼女のアパートだった。彼女は14日まで自宅を留守にするので、その間、アサンジュにアパートを使わせたのだった。しかし、彼女は予定を変更し1日早く自宅に戻ってきた。その後も、アサンジュは彼女のアパートにしばらく滞在を続けることになる・・・。
実は、被害届を出した2人の女性のうちの一人はこの女性なのだ。被害届によると、事件が起きたのは8月13日の夜から14日の朝にかけてだったという。
しかし、8月14日にはこの女性が属する社会民主党のグループが主催したセミナーが開かれているが、彼女は特に変わった様子はなくセミナーに参加。そして、その夜、彼女とジュリアン・アサンジュは「ザリガニ・パーティー」にも参加している。この日の14時頃、彼女はFacebookとツイッターにこう書きこんでいた。
「ジュリアンがザリガニ・パーティーに参加したいって。今夜か明日、私たちが飛び入りで参加できそうなパーティーを開く人はいない?」
ザリガニ・パーティーと言えば、スウェーデンにおける8月の風物詩であり、週末に友達同士で集まってホームパーティーを開くのが恒例だ。だから、自分たちも今から加えてもらえないか、不特定の友達にあててメッセージを送ったのだ。
その後、どこのパーティーに参加するのことになったのか、それとも自分たちで友達を招いて急遽パーティーを開いたのかは分からないが、日付が変わった15日未明、彼女は再びツイッターに書き込みをしている。
「朝2時になるけど、まだ屋外に座っている。ぜんぜん寒くない。世界で最もクールな天才たちと一緒。こんなに素晴らしいことはない!」
と、酔った勢いもあって有頂天になっていることが分かる。「クールな天才たち」の中には、アサンジュも含まれているだろうから、その24時間ほど前に「被害を受けた」という彼女が彼に嫌悪感を抱いていることはまったく窺えない。彼女は警察に被害届を出した後にタブロイド紙の取材を受け、その中で「アサンジュは女性を侮蔑している」と答えているが、この記述からは、彼女が彼をそのように見ていたとは全く感じられない。
そして、その後もアサンジュの名前は出てこないものの彼女はFacebookやツイッターに短い書き込みを続けている。特に変わった様子はなく、日常的な書き込みだ。最後の書き込みは8月19日。そして、突然途絶えてしまう。
何が起きたのだろうか? 実は20日、彼女は警察に被害届を出したのだ。そして、それと同時にFacebookやツイッターのすべてのメッセージをネット上から消去している。しかし、彼女はFacebookやツイッターを、Bloggyというツイッターに似たサイトとも連動させて全く同じメッセージを流していたものの、彼女はこのサイト上のメッセージを消去することを忘れていた。
このことに気づいたある人が、このサイトの証拠写真を取った上で、彼女が属する社会民主党のグループが運営するブログ(彼女がウェブ責任者)のコメント欄に、そのことを知らせるメッセージを残した。相手がどう反応するかを確認するためだ。ただ、その人は最初のコメントではBloggyについては全く触れず、彼女のツイッターのすべてのメッセージが消去されたのはなぜかを尋ねてみたのだった。すると、そのコメントはウェブ責任者に消去されてしまった。その後、その人は改めてコメントを書き、Bloggy上に全く同じメッセージが残されていることを指摘したのだった。すると、そのコメントが消去されただけでなく、Bloggy上に残されていたメッセージも消去されてしまったのだ。
この一連の動きは「訴えに不利となる証拠隠し」と受け取れなくもない。そもそも、被害から数日経ってから被害届が出されたことも不自然だ。
では、彼女が仮に「でっち上げ」の被害届を提出して、アサンジュを貶めようとしているとしたら、その動機は何だろうか? まず一つは嫉妬だ。実はアサンジュが彼女のアパートに滞在中、二人は関係を持っていたようだ。彼女は「超有名人」であるアサンジュに惚れ込んでいた(いわゆるgroupie、ミーハー?)。しかし、8月18日か19日ごろ彼女はある情報を耳にする。彼女が属する社会民主党のグループの別の女性メンバーも、アサンジュと関係を持ったというのだ。
そのもう一人の女性も社会民主党の同じグループに属し、14日のセミナーに参加していた。アサンジュに近づいていき、一緒に昼食を食べたり、映画を見たりした。そして16日の夜、アサンジュは彼女の住むアパート(ストックホルムから少し離れた町 エンショーピン)を訪ね、翌日の正午ごろストックホルムに戻っている。
二人の女性は8月18日か19日ごろ、電話で話をすることがあった。彼女らはここで、アサンジュが二人の両方と関係を持ったことを知ったようだ。一人目の女性のほうは激怒し、アサンジュをアパートから追い出してしまう。その後、彼はホテルに滞在するようになる。二人の女性は、20日の午後2時、一緒に警察署を訪れ、被害届を提出した。
ただ、強姦や性的暴行という容疑の名から想像されるのとは異なり、彼女らが警察に訴えた被害の内容は、最初の女性の場合「アサンジュが意図的にコンドームに穴を開けていたために、コンドームが割れた」というものだ。また、もう一人の女性の場合は「自分の意思に反してアサンジュがコンドームを使わなかった」というものだ。彼が暴力を使った、などということは彼女ら自身も述べていない。彼女らの被害届および警察での聞き取り調査の内容の一部は、既にリークされている(スウェーデン警察内部の犯行?)。
また、彼女らが被害届を出すために警察署を訪れたとき、彼女らはどのような被害内容で届けを出すのか、明確な考えを持っておらず、警察にアドバイスを求めたという話もある。そして、警察官からどのような被害内容であれば性的暴行という容疑で訴えることができるかのアドバイスを受けた上で、上記の被害を届け出たというのだ。これは、イギリスのガーディアン紙が記事にて言及しているところから判断して信憑性はありそうだ。
だから、動機としてまず考えられるのは、嫉妬ということになるが、それだけだろうか? 20日に二人揃って警察署を訪れるまでに、どのような打ち合わせがあったのだろうか? 誰かに相談して計画を練った、ということもありえる。また、激怒・嫉妬した彼女らを使って、より大きな目的を達成しようとする人々がいたかもしれない。
この情報にどこまで信憑性があるのか私は分からないが、アサンジュのWikileaksが暴露を予定していた極秘文書の中に、スウェーデンの社会民主党にとって非常に不利になる情報が含まれていることを、アサンジュが一人目の女性に話した、という情報もある。これが本当であれば、それが暴露されるのを何として避けたいという動機が働いたことも考えられる。この場合、社会民主党そのものが絡んでいる可能性がある。実は、その後この2人の女性の弁護を担当することになった弁護士は、社会民主党のメンバーであると同時に国内ではわりと名の知れた弁護士である男性だ(彼は社会民主党政権による任命を受けて2000年から2007年まで男女平等オンブズマンを務めてもいた)。
実際のところ、Wikileaksが先日、その一部を公開したアメリカの外交公電の中には、スウェーデンの社会民主党政権やその幹部がアメリカと密談を行ったり、オフレコで情報交換をしていたことを示す記述が見つかっている。
一度は不起訴となったものの、不服申し立てを受けて検察が再び調査を始めた背景にも、社会民主党との怪しい関係が見え隠れしていると思われる要素もある。というのも、再調査の際にこの件を担当することになった検察官は、この二人の弁護をしている社会民主党の弁護士と非常に仲がよい女性検察官だからだ(彼女は現在も担当)。ただ、この点については、たまたまそうであったという偶然性もあるだろうから、なんともいえない。一方、アメリカ政府によるスウェーデン政府や関係当局への圧力の可能性も否定できないし、スウェーデンの社会民主党だけでなく現・中道保守政権にとっても、アサンジュを逮捕・起訴することを望んで、再び調査を開始させたかもしれない。
アメリカ政府といえば、彼らが2人の女性に直接働きかけて、アサンジュを訴えさせたという可能性もある。イラクの射殺ビデオの暴露以降、アメリカ政府がスウェーデン政府に対して多大な圧力をかけてきたことは間違いない。Wikileaksのサーバーはスウェーデン国内にもあるし、創設者であるアサンジュはスウェーデンの「言論の自由」法令の庇護を受けようとスウェーデン当局と手続きに入っていたうえ、その本人がスウェーデンを訪れてセミナーに参加しようと言うのであれば、何らかの罠を仕掛けようとした可能性は高い。しかし、アメリカがこの「被害届」にどこまで関与しているのかは分からない。この一人目の女性はウプサラ大学で(政治学を?)勉強した後、アメリカのスウェーデン大使館でインターンシップをした経験もあるから、アメリカとのリンクがない訳ではない。アメリカの例えばCIAの意向を受けて、アサンジュを貶めるために罠をかけたという見方もあるものの、これだけでは何とも言えない。
彼が逮捕された今、これからスウェーデンに移送されることになるのか、そこでどのような展開になるのか、そして、もしかしたら、アメリカがスパイ容疑で彼を訴えて、スウェーデン政府に彼の身柄の引渡しを求めるのではないか・・・?という見方もある。
いろんな情報が錯綜するが、今回はここまで。
<注>
以上の情報は8月下旬以降、スウェーデンの新聞やタブロイド紙、英字新聞やネット上のサイトなどで読んだ情報の中から、ある程度、信憑性の高そうなものを選んで書いたつもりだが、ご存知のようにネットは情報戦の武器でもあるので、いかがわしい情報も紛れ込んでいるかもしれない。
英語で書かれた情報としてある程度まとまっているのは、
Assange: Aftonbladet's 'Inside Story'
Assange Case: Ny Knows the Girls Made it Up but Doesn't Care
Guardian: How the rape claims against Julian Assange sparked an information war