宮内悠介の新作は音楽がテーマだ。たんなる物語の素材にとどまらず、音楽の本質に深く関わっていく。また、小説そのものの構成も音楽的だ。この作品に限らず宮内作品の特徴だが、主題やモチーフをさまざまに反復/変奏しながら、全体として精妙に組みあげる。小説は冒頭から結末へと直線的に読み進まれるものだが、読者の脳裏には立体/複層の印象として残っていく。音楽が流れていくメロディだけではないように、小説も物語だけではない。宮内悠介はそれを熟知している作家だ。 とは言え、物語だけを追ってもじゅうぶんに面白い。ここには躍動があり、謎がある。 主人公の櫻井脩はジャズの難関校〈グレッグ音楽院〉を受験するためにアメリカ西海岸へやってきた。この音楽院の入学試験は数段階にわたり、そのいずれもがかなり風変わりだ。ある種の少年マンガを彷彿とさせるケレンを感じるが、小説としてのリアリティも練られている。 まず予備試験として、音
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