人間にとって地図とは何か?『ユー・アー・ヒア あなたの住む「地球」の科学』特別エッセイ/角幡唯介(探検家) 【特別エッセイ】 位置を求めるということ 角幡唯介(探検家、『極夜行』著者) 森羅万象のおりなすこの地球という天体のなかで、人間はいったいどのようにして、自分は今ここにいるということを知ることができるのだろうか。 ……などという気障なセリフを大真面目に言ったら、お前は何を馬鹿なこと言っているんだ? と笑われるだろうか。 テクノロジー全盛のこの時代、そんなものはGPSの座標データが教えてくれるにきまっている。GPSが北緯四十五度三十二分五秒、東経七十八度十六分三秒と示せば、そこがお前の地球上の位置だ。カーナビが次の信号を右にまがってくださいと言えば、お前はそのとおりに進めばいい、今いる場所など空間内部のとある地点の情報を数学的表現に置きかえたものにすぎない、それ以上の何があるというのか