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2009-09-07

Redmine の解説本を二冊買ったので比べてみた

Ruby on Rails で作られたバグ管理システム Redmine の解説本が最近立て続けに出た。

入門Redmine Linux/Windows対応Redmine -もっと手軽にプロジェクト管理!

一冊は「入門 Redmine」で (以下「入門」と呼ぶ)、秀和システムから。225 ページ。作者は前田剛氏。氏は日本の Redmine の総本山的なサイトである Redmine.jp の運営者とのこと。

もう一冊は「Redmine もっと手軽にプロジェクト管理」で (以下「手軽」と呼ぶ)、インプレスから。231 ページ。単著ではなく、TIS の社内ベンチャー SonicGarden の中の人達が書いている。名前を挙げると、倉貫義人・栗栖蔵臣・並河祐貴・前田直樹の 4 人。このうち栗栖氏だけは、TIS 入社後にはてなへ転職している。

比較

発売は、「入門」が 2008 年 12 月、「手軽」が 2009 年 8 月。対象にしている Redmine は、「入門」が 0.7 系の開発版 (一部 0.8 の情報を含む)。対して「手軽」が 0.8.2。現在の最新版は 0.8.4 なので、「手軽」の方がバージョンは合っている。

といっても、「入門」を読んでいて、最新バージョンとの違いに困ったという場面はなかった。

利用者・管理者

Redmine 利用者向けの説明、及び管理者の設定項目の説明では、「入門」の方が良いかもしれない。表やスクリーン・ショットが多く、読みやすい。

他方、「手軽」は文章中心で、「入門」より詳しく説明している部分があるにもかかわらず、あっさりとしている印象を受ける。表より列挙を多様しているのも、初学者に敷居を高くしている。

両者ともに、バグ管理システムそのものの使い方について説明している点が良い。「入門」は陥りがちな点をピンポイントで解説していて分かり易い。「手軽」は物語仕立てでメリットを説明していて、バグ管理を使わない時・使った時の改善点が際立つ構成になっている。

「入門」は本当に入門的で、一冊をプロジェクト・メンバーに回し読みさせるのに良さそう。「手軽」は、回覧させても読まない人が出てきそうな点がイマイチ。どちらかというと、Redmine のマネージャー的立場の人が読んで、啓蒙の手がかりにする本かもしれない。

インストール

両者とも Cent OS に、MySQL を DB として Redmine をインストールしている。Redmine は DB として SQLite もサポートしているけど、それを推めない点がいい (Trac は SQLite で構築してちと困った)。

ウェブ・サーバーについては、両者で少し対応が違う。

「入門」で扱うのは、主に Apache + Passenger でのインストール方法。それ以外には軽く触れる程度。Passenger がベスト・プラクティスだと言って、初めて Redmine をインストールする人を迷わせない。拍手。

「手軽」が紹介するのは、mongrel を使う方法と lighttpd を使う方法の二種。Passenger は言葉が出てくる程度。

さて、どれがいいのかしらん。一応、「入門」の言葉を引いておく

Passenger が 2008 年 4 月にリリースされる以前は、Ruby on Rails アプリケーションを Apache と連携させるには Apache や Pound などを HTTP プロキシとして構成しバックエンドの mongrel_cluster 上で動作するアプリケーションにリクエストを中継するのが一般的でした。また、さらに以前は FastCGI を利用した方法 (Apache + mod_fastcgi、Lighttpd) が主流の時期もありました。多くの資料でもそれらの方法が紹介されています。

しかし、Passenger の登場以後、それらの方法を利用するメリットがある局面は、Passenger が利用できない Windows 環境で運用したい場合など、ごく限定的です。

ぼくには、この言葉を裏付ける数値を出せない。もしかしたら、「入門」から「手軽」の約 8 か月の間に状況は変わったのかもしれない。そうじゃないかもしれない。誰か分かる人がいたら、コメント下さい。

Amazon と Plugin

「手軽」にしかない項目が 2 つある。

一つは、Amazon の EC2 を使って Redmine を構築する方法。いわゆるクラウド・サービスに Redmine を置いちゃおう、ってお話。Amazon の S3 を使ってバックアップを取る方法も解説している。手順の流れを追う程度の簡単な解説だけど、今の所、この本でしかない解説なので貴重。

もう一つは、Redmine の Plugin を作るお話。Plugin のインストール方法は「入門」にもあるのだけど、作り方は書いてない。「手軽」の説明は、Ruby on Rails を触った人なら付いていけるんじゃないかな? (Rails でアプリを作ったことがないと厳しいかもしれない)。

総評

入門者にターゲットを絞っているのが「入門」。広く浅く、Redmine の色んな可能性を知りたい少し中級者には「手軽」。

でも、本当に Redmine をプロジェクト内で使おうとするなら、きっと両方買うことになるのかもしれない。

2 comments:

  1. 「入門」の著者の前田です。書評ありがとうございました。

    「一冊をプロジェクト・メンバーに回し読みさせるのに良さそう」というのは実は執筆時に最も意識していたことで、プロジェクトに参加した新人に「とりあえずこれ読んで」と渡せる本をめざしておりました。

    それが伝わっていたことがたいへん嬉しく思います。

    ReplyDelete
  2. 前田さん、はじめまして。
    著者ご本人からコメントを頂けて光栄です。

    > それが伝わっていたことがたいへん嬉しく思います

    前田さんの意図を汲み取れて、こちらも嬉しいです。

    ところで、今、開発中の Redmine 0.9。かなり大きな変更となりそうですね。楽しみです。
    最近、開発の進みが遅いようで気になっていますが...
    0.9 リリースの暁には是非第二版を :)

    ReplyDelete