幕末から大正までの動きを評して、作家の司馬遼太郎はこう書き残しています。 「明治維新から日露戦争までを一町内でやったようなものである」 うーむ、さすが大作家らしいキャッチーな言い回しで、なるほどそうかと頷きそうになります。 ただし「賛同できるか?」と問われたら即答できないモヤモヤもありまして。 維新の敗者である幕府や佐幕藩は、ともすれば「時代を見据えることもできない旧弊な人物ばかり」と思われがちです。 果たして本当にそうでしょうか? 歴史というものは時代によって捉え方が変わるものであり、現在、こうした「幕府派=全員凡人」という見方は修正されつつあります。 当時の記録を見ると、倒幕側の人間も、来日した外国人も、幕府派の中にも優秀かつ先を見据えていた人物がいたと見直されるようになったのです。 その代表的な一人が安政4年(1857年)6月17日が命日である阿部正弘でしょう。 ペリー来航時に幕府老