森との健全な関係について考える上で避けて通れないのが野生動物といかに折り合いをつけて生きていくかということ。保護か管理か—絶対的な正解は存在しないからこそ、難しい。知床で狩猟しながら自然と命に向き合う夫婦に聞いてみた。 “自然を守る”とは? 保護と管理のはざまで考える 夏は禁猟期間のため、銃を持って歩けるのは農地での有害鳥獣捕獲の時だけ。この日は森に近い農地でシカを探すことに。フンや足跡などを手がかりに歩く。 「ヒグマがいるかもしれないから、離れないでください」。そう言って、ふたりは静かに歩く。霧が立ち込める森は視界が悪く、小さな物音でもビクビクしてしまう。 川村喜一さん、芽惟さんが北海道の知床に移住したのは7年ほど前。ともに東京の芸術大学で学び、喜一さんは写真、芽惟さんはテキスタイルなど様々な素材を用いて造形物を作る。移住後に狩猟免許を取得し、農地に出没するシカの有害獣捕獲は概ね通年、秋