« 第268回「ネギの香りに包まれて」 | TOP | 第270回「いつまでもあると思うな親と金、そして...」 » 2007年05月27日 第269回「T子の部屋」 部屋にはいると彼女は、緊張する僕をやさしくエスコートしてくれた。 「どうぞ、こちらに座って」 やわらかいソファに腰を下ろした僕は、まるで僕が来ることをわかっていたかのように置かれた涼しげなグラスをテーブルから持ち上げると、まろやかな冷たい緑茶を乾いた口の中に流し込んだ。そして、その緊張が伝わらないように、平静を装っていた。 僕と彼女が出会ったのは、4、5年前だっただろうか。初めて訪れた仕事先に彼女がいた。「ひとし君」なる人形の置き方に戸惑う僕の隣に、彼女が座っていたのだ。ただそのときは、彼女の言動に、頭のいい女性だなぁと関心すらしたものの、当然異性としての意識もなく、仕事上の、それ以上でもそれ以下でもない関係でしかなか
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