ハンセン病の元患者と、中年のどら焼き職人の交わりを描いたドリアン助川原作、河瀬直美監督の映画「あん」が、ハンセン病というテーマを描いた作品としては異例のヒットとなっている。第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門のオープニング作品に選ばれ、日本国内でも約150館で上映、世界45カ国でも上映が決まっている。 物語は、罪を犯して出所し、借金を抱えながらどら焼き店で働く千太郎(永瀬正敏)の店に、年老いた徳江(樹木希林)がアルバイトを志願することから始まる。徳江が小豆に語りかけながらゆでる餡(あん)のおいしさに、店は評判となり繁盛する。徳江はハンセン病療養所に住み、所内で菓子作りを学んでいた。しかし店主は、徳江の曲がった指を見て仙太郎に命じる。「あの人、『らい』よ。やめてもらってちょうだい」。風評が広がったのか、店への客足は遠のき始める。徳江もいつしか店を去るが、千太郎と常連客の中学生ワカナ(内田