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アーキタイプ・アーカディア

【あーきたいぷ あーかでぃあ】

ジャンル 終末仮想世界ノベルアドベンチャー
対応機種 Nintendo Switch
プレイステーション5
プレイステーション4
Windows(Steam)
iOS
Android
開発元 ウォーターフェニックス
発売元 ケムコ
発売日 【Switch/PS5/PS4】2021年10月21日
【Steam】2022年1月24日
【iOS/Android】2022年7月1日
定価 【Switch/PS4パッケージ版】各4,400円(税込)
【CS機ダウンロード版/Steam】各3,980円(税込)
【iOS】3,000円
【Android】2,440円
プレイ人数 1人
レーティング CERO:C(15歳以上対象)
判定 良作
ポイント 終末世界×VRMMO
特殊な世界観かつ王道なバトルストーリー
シリーズの中では異色の少年漫画的作風
ケムコノベルアドベンチャーシリーズ

概要

最悪なる災厄人間に捧ぐ』(以下さささぐ)に続くウォーターフェニックス開発のケムコノベル第2弾。
本作では『ソードアート・オンライン』に代表される「VRMMO*1」を題材とし、文明が滅んだ現実世界と劇中のゲーム世界が交互に舞台となる。


あらすじ

世界中に蔓延した「原罪病」によって滅んだ地球。
ルストとクリスティンの二人の兄妹は生き残りの人間を探す旅を続けていた。
ある日、VRゲーム『アーキタイプ・アーカディア』をプレイしていたクリスティンは突如気を失い、その異変に気付いたルストはデバイスを装着し『アーキタイプ・アーカディア』をプレイし始める。
そこは自身の記憶をカードにし、そのカードからアバターを顕現しモンスターや他のプレイヤーと戦う「記憶を巡る争い」の世界だった。


用語解説

+ 長いので格納
  • アーキタイプ・アーカディア
    • 作中の舞台となるフルダイブ式のVRMMOゲーム。ヘッドマウント型のデバイスを装着してログインしゲームをプレイする事で原罪病の進行を抑えられる。
      • このためログインやログアウトが治療用語として扱われ、患者をプレイヤーと呼ぶなどあまり類のない表現をしている。
    • ゲーム内の世界は廃墟都市や雪原、火山や工業都市、水没都市と5つのエリアに分けられている。
    • 文明が滅んだ世界において、何故現在でもゲームが続けられているのかは不明。
  • 記憶カード
    • プレイヤーの記憶から生成されるカード。このカードからアバターが生み出され、プレイヤーやモンスターたちはアバターを使役させて戦わせる。
    • 記憶から生成されるため、外見はプレイヤー自身か縁のある人物が元となり、性格も記憶が元となる。
    • アバターが敗北し、カードが破損すると実際に記憶も失ってしまう。プレイヤーの手持ちの記憶カードが全て破損するとゲームオーバーとなってしまう。
    • プレイヤー同士で記憶カードの受け渡しをする事も可能。ただし「ゲスト」*2は対象外。
  • アバター
    • 記憶カードを元にして呼び出される使い魔のようなもの。プレイヤーの記憶を元にしているため、プレイヤーに縁のある人物などを元にした姿となっている。
    • アバターの元である記憶に合わせて「共感率」が設定されており、プレイヤーがこの記憶に向き合いどれだけ共感できるかでアバターの強さが変わっていく。
      • 当然、記憶に共感できないと実力を発揮できない。また、上がり過ぎるとモンスター化してしまうリスクを持つ。
    • また、アバターの能力も記憶に基づいたものとなっている。*3
  • モンスター
    • 共感率が上がり過ぎたプレイヤーの成れの果て。記憶カードと一体化した存在でもある。
    • 全体的にグロテスクな外見をしているが、中には他のプレイヤーに友好的なモンスターも存在している。
    • 各エリアごとにボスが設定されているが、元がプレイヤーなためかボスモンスターに勝利したプレイヤーもボスとして扱われる。
  • 原罪病(ペカトマニア)
    • 数百年前に世界中に蔓延した謎の病気。進行ステージによって症状が変わり、初期は悪夢を見るようになり次第に幻聴や幻覚に苛まれ、末期には自傷・他傷行為に走ってしまう。
      • 解りやすく言うならゾンビに似た状態になってしまうようなものである。
    • 『アーキタイプ・アーカディア』内でゲームオーバーを迎えたプレイヤーは理性を失い、現実世界では一気に末期症状へと進行してしまう。

主要登場人物

+ 長いので格納
  • ルスト
    • 主人公。妹思いで天真爛漫な性格だが、何かに興味を持つ・楽しもうとすると「興味を持つな」という幻聴に苛まれる。
    • 何故か記憶カードが最初から1枚破損している。残りのカードは家族の記憶だが、妹以外は能力の詳細が不明。
    • 当初は流されるままにゲームクリアを目指していたが、次第に自分なりのやり方でアーキタイプ・アーカディアへと向き合っていく。
  • クリスティン / スティ
    • ルストの妹。『アーキタイプ・アーカディア』のプレイヤーであり、「遊びギルド」のマスターを務める。また、ゲーム内では名前を「スティ」と登録している。
    • 序盤で彼女に起きた異変が原因なのか、記憶カードが破損しており、そのために言葉がたどたどしく大人しい性格となっている。
    • 「ラスモス・ゾティーラ・トゥーラッカ」という謎の挨拶を自作している。
  • アルティア
    • 遊びギルドのサブリーダーである女性。クールな性格だが根は優しく、ルストやアレグロをからかったりと茶目っ気もたっぷり。
  • アレグロ
    • 自身を悪と称する苛烈な性格を持つプレイヤー。「世界には善人だけが残れば良い」事を信条としており、そのためにルストと衝突する事も多い。
    • 一方で、目の前からルストがいなくなった時に狼狽するなど根は寂しがり屋。
  • チュラル
    • 廃墟都市エリアの集落を守る女性プレイヤー。厳しくも優しい性格であり、ルストの戦闘の師匠となる。
  • オリーブ
    • 雪原エリアで出会うプレイヤーの少女。何故か常に三人称視点で会話をする。
  • ドム
    • 火山エリアを掌握する少年プレイヤー。冷静沈着な性格であり、バトルマニア。
  • リア
    • ドムの相棒であるプレイヤー。普段は温和な性格だが、戦闘時はアバターとの同調のために髪型と口調を変え好戦的な性格となる。
  • カトリン
    • ギルド「日輪騎士団」に所属するプレイヤー。わけあってギルド内から迫害されている。

システム

  • 基本UIは『さささぐ』と同様。
    • インデックス機能や分岐までのストーリー飛ばしなど、基本的な機能は一通り揃っている。
  • ストーリーの途中では他の登場人物の視点も描かれる。
  • 本作は選択肢が多く、それに見合うかのようにバッドエンディングの数も多い。マルチエンディングも備えている。
  • 本作も不測の事態のためのあらすじ解放機能=全チャートのアンロック解除が存在している。

評価点

  • 特殊な世界観によるハードSF
    • 文明が崩壊している事もあり、劇中に登場する『アーキタイプ・アーカディア』の多くのプレイヤーたちは現実世界の存在を知らない。さらに記憶カードを失っている者も多く、彼らの過去や現実での姿を解き明かし、さらにはゲームそのものの秘密も知っていく事がストーリーで描かれていく。
      ログイン中も記憶の破壊やモンスター化など常にゲームオーバーの危険性を持っており、現実世界も終末と化しているため適度に緊張感を保ってくれる。結局デスゲームな辺りがやはりケムコノベルらしい
      • ゲーム世界である事を活かし、現実世界では既に廃れた食べ物や文化などが登場しルストがそれらに初めて触れ感激する様子や、言語の違いによる壁が取り払われている様子なども描かれる。
    • ゲーム世界で会った人物が現実世界でも登場し交流するという展開も当然描かれるが、本作の場合は「数少ない現実世界の生き残り」という事もあり、一筋縄ではいかない衝撃的な展開も見られる。
    • 文字フォントの色を変えてギルドメンバー内限定の会話を表現するなど、MMOらしい雰囲気作りも特徴の一つ。
  • 駆け引きや逆転劇などが描かれた丁寧なバトル描写
    • 「現在の戦力で敵とどう対処するか」「ルストの持つ詳細不明の記憶カードを戦いの中で使い、能力の謎を解き明かしていく」という基本かつ王道的なものや
      「自分の過去の経験に基づく記憶とどう向き合うか」「共感率の上がりにくい他者の記憶をどう扱うか」という過去のトラウマや目の前の悲劇を乗り越える一種のパワーアップイベントも描かれる。
      ゲームのルールに基づいた描写でもあり、どういうルールなのかも把握できて非常に解りやすい。
  • 好感の持てるキャラクターたち
    • 主人公のルストはゲーム初心者という事もあり、『アーキタイプ・アーカディア』のルールを知らずストーリーの進行と共にゲームのコツを学んでいく他、自分を巡る記憶も知っていくなど、正にプレイヤーとの共感率が上がりやすいキャラ付けがされている。
    • メインヒロインであるスティだけでなく、ルスト同様にスティに優しいアルティア、根は善人である事が伺えるアレグロ、変人だが積極的に協力してくれるオリーブなど多くのキャラも魅力的に描かれている。視点切り替えなどもあり、多くの人物による群像劇の側面も持っている。
    • 敵であるモンスターも印象的な活躍を見せる事が多い。
  • 本作でも先の気になる展開が描かれ、何気ない描写から生まれた伏線も多く描かれる。
    • バッドエンディングでもその後の展開への伏線が描かれているため、一度見てみるのも良い。

賛否両論点

  • シリーズの中では比較的王道な作風
    • これまでのケムコノベルでは直球のデスゲームを題材とした作品が多く、そのためか登場キャラたちの間で不穏な空気を纏ったものも多い。
      本作もデスゲーム的な作風かつポストアポカリプスが舞台ながら、全体的にキャラクターたちは前向きな性格持ちが多く、あまり陰鬱さは感じられない。
      • 『さささぐ』もデスゲームが題材ではないものの陰鬱な雰囲気は共通していたが、それと比べると明るい作風となっている。 流石に『デスマッチラブコメ』ほどではないが
    • 間口の広さという点では確実に本作に軍配が上がるが、他の作品のような常に緊張感の漂う作風を好む意見も見られている。

問題点

  • インデックスの区分けがやや大雑把
    • 各章の初めと選択肢の分岐ごとからしか読む事が出来ず、気に入ったシーンや重要な解説などをまた見たい時はセーブに頼るしかない。
  • 他ゲームで言うTIPSなどの用語解説画面が存在しない
    • 本作はその特殊な世界観故に固有名詞やルールの解説が多く見られており、用語の詳細を忘れてしまったので解説をまた見たくなった時はゲーム中の当該画面をまた読むしかない。上記のインデックスの問題と合わさって煩わしさがある。

総評

少々特殊な世界観ながら劇中設定に沿ってかRPGテイストが非常に強い王道的な作風であり、ホラー色の強い同シリーズ作品の中では異色とも言える。
バトルものの少年漫画やSFなどのノベル作品が好きな層は特にすんなりと入り込めるだろう。


余談

  • 本作はケムコアドベンチャーポータルに最後に記載されたシリーズタイトルとなる。
    • ただし、トップページに作品の項目は無く、他の作品紹介からのページ右にあるバナー記事に記載がある。
    • 以後のアドベンチャー作品は主にインディーズからの移植が中心となっている。
最終更新:2024年12月19日 22:42

*1 ゴーグル型のVRデバイスを装着して仮想現実を楽しむMMO。長らくフィクションの題材として描かれていたが、技術の進歩により『Zenith: The Last City』のような実例も存在するようになった。なお、フィクション作品では単なる異世界転生や召喚モノと混同されがちでもある。

*2 正式なプレイヤー登録をしていない状態。

*3 例えばリバーシ代わりに使っていた石やジグソーパズル遊びの記憶からは、投石やジグソーパズルの生成の能力が出る。