1963年に刊行がスタートした『東洋文庫』シリーズ。日本、中国、インド、イスラム圏などアジアが生んだ珠玉の作品の中から、毎週1作品をピックアップ。 1000文字のレビュー、そしてオリジナルカルテとともに、面白くて奥深い「東洋文庫」の世界へいざないます。 2020年の夏のことだが、アイヌ団体が、地元の川でのサケ捕獲は先住民族の権利だとして、国と道を相手取って漁業権を認めるよう求め提訴した。ところがこのニュースに対し、ヤフコメで批判的な書き込みが多いことに驚いた。きっと日本が行ってきたアイヌ人に対する仕打ちも歴史も知らないに違いない。無知とは罪である。 とエラソーに構えてみたものの、私自身がまったく何も知らなかったことに、本書『サハリン島占領日記1853-54』を読んで気づかされた。 本書は、1853年にロシア軍がサハリン島南岸の地を占領した事件をつぶさに綴った、遠征隊隊長の日記である。この日