北海道の世界自然遺産である知床半島で、日本の陸上最強動物のヒグマを集団で追い回して撮影する危険行為が問題視されている。
きっかけは公益財団法人の知床財団がヒグマ情報を提供するツイッターの投稿だった。同アカウントは25日、知床国立公園の林内で複数の人間が連携してヒグマを追い回して撮影しているとの通報が複数件あったと報告。当該撮影者らに自制するよう促した。
知床国立公園では、かねて観光客の餌やりと接近撮影や、それに伴う大渋滞が問題視されてきた。その結果、昨年4月に自然公園法が改正され、国立公園や国定公園内での動物へのみだりな「餌やり・接近・つきまとい」は規制対象となった。当然、ヒグマを追い回して撮影する行為も規制対象だ。
野生動物に詳しいツアーガイドはこう話す。「以前から知床には公然の秘密となっているヒグマ撮影スポットが存在した。ただ、みんな似た写真になるため、一部ファンがSNSでの『いいね』欲しさに迫力のある写真、人とは違う写真を求めていたのは事実。そうした人たちがルールを破って立ち入り禁止エリアに侵入した話は少なくない」
とはいえ、ヒグマを追い回すとは危険極まりない行為。素人はもちろん、仮にヒグマに慣れた人物だったとしても、絶対にやってはいけない行為だ。
北海道猟友会砂川支部の池上治男氏は「人に追い回されたら、ヒグマはパニックに陥る。そうするとどういう行動をとるかわからない。2021年6月に札幌の住宅街でヒグマが住民を何人も襲ったときも、クラクションを鳴らして驚かせたせいで異常な興奮状態に陥っていた」と解説。もし車に逃げ込んでも「ガラスを割って車内に侵入される危険性がある」と、逆襲に遭う可能性を指摘した。
法を犯し、自らの命を危険にさらして承認欲求を満たそうとする一部ファンにはあきれるばかりだが、災難なのはヒグマの方だ。前出のツアーガイドは「人を襲ったヒグマは駆除対象になる。人間の不用意な行為でヒグマを怒らせた上に命も奪う結果になる」と話す。不測の事態を起こさないためにも、法と命とマナーは守ってもらいたいものだ。