「日経平均株価は、最悪2000円まで暴落する」という私の発言に、堀江貴文氏が「自分が死ぬからって何でも言っていいわけじゃない」と噛みついてきた。それだけではない。経済評論家の朝倉慶氏や株主優待の桐谷広人氏など、各方面から私の見立てへの非難が殺到している。それでも、私は暴落を確信している。
 その根拠は、まず、暴落は過去にも起きているという事実だ。1929年9月3日に386ドルだったニューヨークダウは、1932年7月8日に40・6ドルまで値下がりした。下落率は89%だ。一方、89年の大納会で3万8915円をつけた日経平均株価は、2008年10月28日に6995円に値下がりした。下落率は82%だ。つまり、8~9割の株価下落は過去にも起きている。暴落の原因は、いずれもバブルの崩壊だ。株式市場では、企業の本質的な価値を無視して株価が上昇する。しかしそれが一定限度を超えると、株価は一気に下落する。それがバブル崩壊だ。これまでの歴史で破裂しなかったバブルは、ひとつもないのだ。

 ジョン・ガルブレイスは、バブルの対象となるのは、画期的な技術や商品ではなく、古いものを新しく見せかけた「新奇性」のあるものだとした。

 今回のバブルは、GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)と呼ばれるアメリカのIT企業から始まった。ただ、それが限界に達すると、今度はEV(電気自動車)にテーマが移った。ただ、実際に普及が進むと、高コストや必ずしも環境対策につながらないこと、気温の下がる冬場の充電がうまくいかないことなどからメッキがはがれてしまった。そこで、投機の対象は自動運転に移ることになった。自動運転には、AIが必要だということで、AI関連企業の株価が上昇し、さらにAIには大量の半導体が必要だということで、投資対象が半導体製造企業に移った。なかでも高い技術力を持つエヌビディアに投資が集中し、その株価が世界の株価を牽引する状況になっている。さらに直近では、宇宙開発企業への期待が高まっている。

 しかし、冷静に事態を見つめてほしい。インターネットが開発されたのは1960年代のことだ。電気自動車に関しては、1830年代にスコットランドの発明家ロバート・アンダーソンが世界初の電気自動車を発明しており、日本でも終戦直後には複数の自動車会社が電気自動車を発売している。AIについても、日本の家電メーカーは、1990年代には、「インテリジェント家電」という名で家電製品にマイクロコンピュータを組み込んで、さまざまな判断を家電製品自身が行えるようにしている。半導体が家電製品に搭載されたのは1960年代だし、アポロ11号が月面着陸に成功したのは1969年だ。つまり、現在バブルを起こしている分野は、すべて1960年代までに登場したものなのだ。

 ただ、今回のバブルのテーマは、とても筋が悪い。例えば、エヌビディアの時価総額は、日本のGDPと肩を並べるほど過大評価されている。

 宇宙開発の場合は、もっと悪質で、月面で人類が暮らせるようにすることが未来を創造するという触れ込みだが、月に住んでも何の意味もないことは、明白だろう。

 いまトランプ大統領の再登板を機に、世界は第三次世界大戦前夜のような混乱を始めている。ナチスドイツがパリを侵攻したとき、ダンスホールは満員だったという。いますぐ踊りを止めて、避難を開始すべきだ。