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がんばれ森川君2号

【がんばれもりかわくんにごう】

ジャンル 育成シミュレーション
対応機種 プレイステーション
発売元 ソニー・コンピュータエンタテインメント
開発元 ソニー・コンピュータエンタテインメント
ムームー
発売日 1997年5月23日
定価 5,040円
配信 ゲームアーカイブス:2007年2月22日
判定 なし


概要

Pet in TV、略してPiT(ピット)と呼ばれるAI搭載ロボットをプレイヤーが指示したり教育したりして育成するゲーム。
箱庭形式で作られた幾つかのワールドをPiTに探索させ、そこに存在する様々なオブジェクト(物)を利用して到達できる最深部にて「AI-CHIP」と呼ばれるアイテムを収集するのが目的である。
すべての「AI-CHIP」を集めたときに何かが開放される!
ちなみに「2号」というタイトルだが「1号」(前作)は別に存在しない。また、「森川」とは開発者の森川幸人氏(現・株式会社ムームー社長)の事であり、PiTの名前が「森川君」と言う訳でもない。


システム

  • PiTは最初の時点では右も左も分からない「赤ん坊」そのもののAIしか持っていない。
    • オブジェクトを指定するとPiTはパターン的な行動を取り、成否をプレイヤーが決定するとPiTはその通りに憶えていく。
      • ただし、ワールド進行に必須なオブジェクト以外にはPiTの行動の正解不正解の定義は存在しない。そのため、PiT自身が嫌がらない限りプレイヤーの嗜好に合わせたPiTに仕立て上げることが可能。
  • オブジェクトへの行動はパターン的なものを一通り繰り返す。
    • 叩くや蹴るのほか引っくり返したり脅かしたり、どうにもならなくなると 突然家に帰ろうとすらする。
      • 家に帰るという行動はPiT自身がにっちもさっちもいかないと判断した場合に取る行動。
  • 大目的はAI-CHIP収集だけでなく、隠しワールドであるワールド9のクリア。
    • このワールドではPiTに指示ができず自立行動しかさせられないため、他のワールドでしっかり教育しないと突破できない。
  • オブジェクトはさまざま。
    • 食べ物(エネルギーパック等)や仕掛け(スイッチ等)、また他のマップへの移動タイルもオブジェクトに数えられる。
    • ただし上記のような意味のあるオブジェクトは全体では少なく、その多くが特に意味のないもので構成される。
    • 簡潔に言ってしまうと、"マップ内の床面以外のすべての設置物がオブジェクト対象"である。木や柵や墓石やウ○コすらも。
  • オブジェクトの中には同じ開発元の『JumpingFlash! アロハ男爵ファンキー大作戦の巻』から出演しているものもある*1

評価点

  • PiTは喋ることはないが、そこが本当のペットみたいで可愛い。
    • PiTの喋る言語は存在するが単なる機械音に近いもので、声から機嫌を推し量ったりはできない。そもそも聞き取りにくい。
    • 「同意している」など、PiTの表面的な意思はプレイヤーも理解できるようになっている。
  • ワールド探索が楽しい。
    • プレイヤーの視点からすればすぐに解ける仕掛けでもPiTには細かく指示しなければ難しい。だからこそ先に進めるようになっただけでも達成感がある。
      • 中には初見プレイではプレイヤー自身も仕掛けが理解できないものもある。
    • ワールドはさまざまな風景が用意されており、場所に応じたオブジェクトが点在するので飽きが来ない。
  • ゲームオーバーがない。
    • 空腹度か疲労度のどちらかが悪化したり爆弾等で大ダメージを受けるとPiTはその場で倒れるが、単に家に戻されるだけで大きなペナルティはない。
      • しかも家の前のワープタイルですぐにもとのマップに戻れる。学習状況等もそのまま。
    • このシステムは後述する育成法を助長してしまう意味では問題点でもある。
  • PiTの見た目が変化するものが多い。
    • 外装パーツや拡張パーツを装備するとPiTの見た目が様々に変化する。特に外装パーツは衣装のような扱いであり、ギャグ風味なものからファンシー、クールなものまで揃っている。
    • そのマップ内だけに限られるが、帽子等の被り物系アイテムもある。

問題点

  • 初期PiTの選択の意味がほとんどない。
    • ゲームスタート時に5種類の性格のPiTからひとりを選んでスタートするのだが、どのPiTでも初期ステータスが若干違うだけで育成しているうちにまったく同じになる。
      • 一応、選んだPiTによって家のデザイン(テクスチャ)が変化はする。初期外装も限定である。
  • ストレスの存在がよくわからない。
    • □ボタンでPiTを呼んでクリアに関わるオブジェクトだけを操作させて進めばサクサクプレイできるのだが、こうするとストレスがたまり言うことを聞かなくなる。
      • しかし、「よしよし」すればすぐさま元に戻る。だったら最初からストレスというもの自体が必要ないのでは…と思ってしまう。
  • 生き物は多種多様いるのだが、PiTがどんな行動を取っても利益になることはない。無意味か危険かのどちらかである。
  • 一部アイテムを持ち帰るとクリア不可能になる場合がある。
    • PiTは気に入ったものを持ち帰るという基本的な性格がある。そのため、腕力が高い状態で仕掛けに関わるスイッチ等を持ち帰ってしまい先に進めなくなることもある。
      • 持ち帰ると自宅にコレクションされるのでそこから元に戻すことはできるが、同じマップに行くとまた持ち帰ってしまうループに陥る。しかも毎回のように「嫌がっている」などと言われる。
  • あまりAIの性能が良くないためか、ひとつの行動を間違って覚えるとなかなか修正できない。
    • 特定オブジェクトを「叩く」以外の行動をさせるために(「叩く」では腕力次第で破壊してしまうため)本頁作成者の場合は3時間近く学習させても覚えられなかった。
    • PiTを「よしよし」する事はできても、叱ったり矯正したりすることはできない。この点はファミ通のインプレでも指摘されていた。
  • BGM関連
    • BGMはPiTの機嫌に左右されて選曲されるため、機嫌の悪い時は不協和音に近いBGMが垂れ流され続ける。プレイヤーの操作でOFFにすることはできない。
    • BGM自体も単調なループBGMばかりで、妙に甲高かったり重苦しかったりと聞いているのが苦痛になるものもある。
  • 自習モードで放置プレイさせておけば勝手に育つ。
    • PiTに自立行動させる自習モードというものがあるのだが、ゲームオーバーが存在しないため放置プレイが可能。
    • 基本的な行動を覚えたらあとは自習モードのままでリアル時間一日程度ほったらかせばクリアに必要な腕力や脚力は確保できる。
    • しかしあまり放置するととんでもない性格に育ったりする。目の前にある物を片っ端から叩き壊したり、ウ○コを好き好んで食べたりと言ったPiTが出来上がる事すらあり得る。自習もほどほどに。
  • AI-CHIPを全て集めると金色のPit「ゴールデンPiT」が育成可能となるが、そちらに変えると今まで育てたPiTが破壊される演出が入る。いくらなんでもあんまりである。
    • ゴールデンとは言え、実際は外装パーツを装備しているだけ。変更時に性格などのカスタマイズができるが、やはりあまり意味は無い。
    • この破壊シーンについて、開発者である森川のインタビューで明かされている。それによると1つのPiTで600ポリゴン以上という当時のプレイステーションでは最高レベルの処理がなされており(高性能AIのほうが容量的に大きかったようだが)、ふたつ以上同じ物体を画面内に出現させると処理速度が遅くなってしまうから、とのこと。森川氏としてはこのような結果になったことを悔やんではいるらしい。

総評

パッケージイラストの通りに可愛らしく女性にも好評だったこのゲームだが、ゲームクリアに傾倒してしまうとPiTの行動でいちいち停止させられるのが鬱陶しくなってしまう。
コントローラーから半分手を離し、時間に囚われずゆったりと余裕を持って生暖かく見守れる人にこそ向いているのんびりゲー。AI-CIHP収集を作業と捉えず探索の一環と考えられれば言うことなしである。


余談

ユルいゲーム内容とは裏腹に、開発に当たって指揮を執った森川氏の苦労は相当なもので、正に「がんばれ森川君」と言うべきものだった。ひょっとして「1号」ってこの事?

  • 以下、別冊宝島「このゲームがすごい!プレイステーション編」より抜粋。
    • 当時「ウゴウゴルーガ」等のCG製作で名を馳せていた森川氏は、ゲームに関しては全くの素人であった。彼がゲーム業界関係者との雑談で「AIを使ったゲームなんていいんじゃない?」と何気なく言った事が発端となり、気がつけば本作の指揮を取る事に。しかし割り振られたプログラマーの数学知識が非常に乏しいことが判明。引くに引けない森川氏は「高校の参考書を引っ張り出し、三角関数から勉強し直した」。
    • 開発の参考のため、幼児の挙動を観察しようと公園のベンチに座って子供たちを凝視していたところ、変質者扱いされたことも。
    • 数年の猛勉強を経て本作を完成させた経験が、『アストロノーカ』など後のゲーム製作に生きることとなった。また氏は、本作発売後に日本人工知能学会にて特別講演の講師として招かれている。
  • 発売当時、コミックボンボンで連載されていた漫画『サイボーグクロちゃん』で本作のネタが登場したことがある。
    • サイボーグ猫「ミーくん」の子機である「がんばれミーくん2号」。言葉が喋れないのは本作と同じだが、戦闘力は クロちゃんと張り合って都市一つ壊滅させる レベル。
最終更新:2024年10月06日 18:09

*1 本作のPVには同作からムームー星人も出演している(本編にもおまけとして収録されている)。