オンライン配信によるゲーム内容更新が不定期に行われるため、必ずしも本記事の内容が最新の内容に対応しているとは限りません。
アップデートによる評価等の追記は1ヶ月経過してからお願いします。
グランツーリスモ7
【ぐらんつーりすもせぶん】
ジャンル
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リアルドライビングシミュレーター
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対応機種
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プレイステーション5 プレイステーション4
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メディア
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【PS5】Ultra HD BD-ROM 1枚組 【PS4】BD-ROM 2枚組
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発売元
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ソニー・インタラクティブエンタテインメント
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開発元
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Polyphony Digital
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発売日
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2022年3月4日
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定価(税込)
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【PS5】8,690円 【PS4】7,590円 25周年アニバーサリーエディション: 10,890円
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象)
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プレイ人数
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オフライン: 1~2人 オンライン: 1~20人
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判定
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良作
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備考
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【PS5】PlayStation VR2対応 【PS4】1,100円でPS5版へアップグレード可能
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ポイント
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ワールドマップが『GT4』以来復活 PS5版はナンバリング初のVRに対応
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グランツーリスモシリーズ
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PlayStation Studios作品
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概要
SIEが展開しているドライビングシミュレーターの金字塔『グランツーリスモ』シリーズのナンバリングタイトル第7作。
ナンバリングタイトルとしては実に9年ぶりとなる作品であると共に、シリーズ25周年記念作品としての一面も持つ。
パッケージの看板車両は「MAZDA RX-VISION GT3 CONCEPT」及び「ポルシェ ビジョン グランツーリスモ」。
どちらもメーカーが直々にグランツーリスモのためだけに設計・デザインした車両である。
なお、PS4版は性能で劣る下位ハードという都合から、120fps・レイトレーシング・VR・GTソフィー等、一部の要素には対応していない。
特徴・評価点
『GT4』以来となるワールドマップの復活
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今回はリゾート地がテーマで、利便性と旅情を兼ね添えたデザインとなっている。
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クリスマスやGT公式の世界大会のシーズンになると特別な演出で彩られる等の小ネタもある。
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チューニングショップやGTオートも復活し、スピンオフ『グランツーリスモSPORT』では簡略化されていたチューニング要素が完全復活した。
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同じく『GT4』まで存在していた中古車ディーラーも復活。本作ではレースカーや価値の高い名車はレジェンドカーという別の括りで販売。
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中古車ディーラーにはアップデートで所持車両の売却機能も追加。本作では日付ごとに相場が変化し売却額が上下するというシステムがある。
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ドライビングテクニックを磨くライセンス、特定の車種でライバルカーのオーバーテイクや限られた燃料でゴールを目指すミッション、世界各国のスポットで愛車を撮影できるスケープス等、お馴染みの要素も多数収録されている。
初心者でもグランツーリスモを楽しめるカフェ
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ゲームを進める目標要素としてメニューブックが登場。ワールドマップに存在するカフェのマスターから提示された課題をクリアしていく。
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課題の内容は指定されたレースで入賞し、車両を収集していく「コレクション」と複数のレースでの合計獲得ポイントを競う「選手権」が主だが、道中ではチューニングや洗車、スケープスの利用等、『グランツーリスモ』の様々な要素に触れることが条件になっているものがあり、『グランツーリスモ』を楽しみながらゲームを進められる。
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「コレクション」で集めていく車種にはページごとに「日本のFFスポーツ」「日産GT-R」といったテーマが設定されており、メニューを達成すると紹介映像が流れる。車両を映すカメラワークや簡潔で温かい語り口での解説により親しみやすく車種の辿った歴史や車文化を知ることができる。
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レースの獲得賞金自体は高級車の価格と比べて全体的に渋めの調整だが、代わりに順次解禁されていくコースを走ることでの固定のプレゼントカーや課題クリア特典のルーレットチケットが多数配布されるため、カフェをクリアしていくだけなら途中資金稼ぎが必要になる場面は無い。
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一応「選手権」には参加するのに取得が必要なライセンスが設定されているが、第二段階である国内A級までとハードルは低め。
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メニューブックNo.39をクリアすることでゲームとしてはエンディングを迎えるが、それ以降もレースに挑戦する「ボーナスメニュー」と特定シリーズの自動車の収集を行う「エクストラメニュー」がアップデートで不定期ながら追加されている。
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また、特定車種に乗車中の場合、その車両に詳しい実在人物やオリジナルキャラクターから解説を聞くことができる。
デイリーワークアウトとウィークリーチャレンジ
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前者は『GTS』より続投したシステム。1日に42.195km以上を走って車両や資金等を獲得できるルーレットチケットを得られるようになる。
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元々本シリーズは毎日こつこつプレイする遊び方が推奨されており、このシステムはその遊び方をプレイヤーにより促すものとなっている。
ちなみにモードは特に何でもよく、タイムアタックでもスポーツモードでもミッションでも何でもよく、累計で42.195kmずつ走るだけでよい。
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『GTS』では車両しか入手できず、またプレゼントカーは売却しても資金を得られなかったため、かなり無駄が多いシステムだった。
一方で本作では資金やパーツ、スワップ用のエンジン等も得られる他、プレゼントカーを売却しても資金を得られるように改善された。
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後者はSpec IIアップデートであるVer.1.40にて追加。メニューブックNo.39をクリアし、エンディングに到達する事で解禁される。
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毎週変わる5つのレースイベントで3位以内に入る事で、最大3つまでルーレットチケットもしくは資金を入手できるようになっている。
内容は4/5が既存イベントの中から選ばれ、残り1つがウィークリー限定イベントである。1勝・3勝・5勝と達成する事で特典を得られる。
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本シリーズは初代『GT1』の頃から、資金稼ぎのために高効率のイベントに繰り返し参加する…というプレイスタイルになりがちだった。
しかし本作ではこのシステムの追加により、初期の既存イベントに再び参加し、様々な車両を使用する意義・きっかけが生まれる事となった。
グランツーリスモ・ソフィー
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GTソフィーとは、「Sony AI」「SIE」「PDI」の3社によって研究開発が進められているレーシングAIエージェントである。
2022年2月に発表され、期間限定の体験イベントが開催された後、Spec IIアップデートであるVer.1.40にて正式に実装された。
このGTソフィーは、現状では9つのサーキットと約340台の車両に対応しており、今後もアップデートで更新されていくと思われる。
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対応サーキットでクイックレースを選んだ際、AIを通常かソフィーかの選択を促され、後者を選択する事で遊べる仕様になっている。
駆け引きに消極的な通常AIと違い、ソフィーはレイトブレーキングやブロックライン等、プレイヤーと変わらぬ高度な走りを見せてくる。
難易度:上級レベルを選択した際のソフィーは、上級プレイヤーすら舌を巻く速さである。腕に自信があるなら是非挑戦してみるといい。
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ちなみに本作に実装された「GTソフィー2.0」は、一般プレイヤーに配慮し、初心者から上級者まで楽しめる難易度幅に調整されている。
一方、公式大会のエキシビションレースで使われたソフィーは、GTトップドライバーが束で掛かってギリギリという鬼のような強さだった。
公式サイトの「GRAN TURISMO LIVE」に多数の動画があるので、興味のある方は是非見てみよう。このAIが実装されなくて本当に良かった。
収録車種について
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収録車種は本作発売時点で全425台であり、全1272台という膨大な車種が最終的に収録された『GT6』と比較すると大幅に減少している。
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しかし、品質が劣るスタンダード相当の車両が多数存在していた前作に対して、本作は全車両がプレミアム相当のモデリングである。
性能や挙動等に大きな差のない大量のグレード違い等もほぼ撤廃されており、これらを踏まえると十分な水準の収録車種と言えるだろう。
同一車種の年式違いもなくはないが、クリオやGRスープラ、EK9・DC2の前期型・後期型程度しかなく、ユーザーからの不満の声はない。
発売後もアプデで車両の追加が定期的に行われており、発売から2年以上が経過したVer.1.48時点では、計83台追加されて全508台となっている。
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エクステリアはもちろん、内装も丁寧に作り込まれており、一部のコンセプトカーやVGT等を除けば全車が車内視点に対応している。
バックモニターやインパネの機能に加え、RX-7等の一部のスポーツカーはレブリミットアラームすらも正確に再現する拘りっぷりである。
ライト内の鏡面部からグリルメッシュ一本一本に至るまで細かく再現しており、スケープス等で接写しても粗が殆ど感じられないレベル。
1人のカーモデラーが、およそ270日かけて1台の車両を作り上げる辺りからも、その細かさが分かるだろう(参照)。
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原点回帰・シリーズ集大成の本作では、従来作に収録された車両が最新のモデリングに引き上げられた上で多数復活している。
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PS3作品からは日産のシルビア S15 レーシングモディファイや、ホンダのシビック Type R EK レーシングモディファイが復活した。
どちらも『GT5』のモデリングを手直ししたものではなく、本作への再収録に伴いわざわざモデリングを新規に作り直している。
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日産からはニスモの400Rに加え、スカイライン GT-R R32 NISMOが『GT2』以来となる復活を果たし、往年のファンを喜ばせている。
R32 NISMOはニスモダクトをはじめとした外観的特徴をしっかり再現し、ワイドボディ時の形状でV・spec IIとの差別化を図る拘りぶり。
400Rに至っては『GT6』までに収録されていた量産型ではなく、『GT2』のみに収録されていたプロトタイプを収録する謎の拘りようである。
更には240ZG、ケンメリ、シルエイティ等の他、PENNZOIL NISMO GT-Rにシルエットフォーミュラの復活と、様々な名車を収録している。
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『GT2』よりシリーズに毎回登場していたV6エスクード パイクスピークスペシャルも、最新モデリングに作り直された上で復活収録。
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『GTS』でトレノ・レビン収録に伴い、そのモデリングを利用して『頭文字D』の作者「しげの秀一氏」の愛車のAE86が再収録された。
市販トレノにはないフォグランプを装着でき、内装にはカップホルダーがある等、ファンの心情を心から理解している作り込みがされている。
海外メーカーで特にユーザーの目を引いたのが、『GT4』のパッケージを飾った当時の看板車両であるフォードGT LM Spec IIの復活。
特徴的なホワイトのカラーリングや大型化されたリアウィング等、これまで収録されてきたテストカー版とは様々な違いが存在している。
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この他、XJ220・CLK-LM・DMC-12・シャパラル2J・155 2.5 V6 TI・ST205等、お馴染みの車両をこれでもかと言うほど収録している。
「頭文字D」や「湾岸ミッドナイト」でも人気の車種が軒並みアップデートで復活を果たしており、憧れのあの車両を最高品質で味わえる。
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新規収録車両に関しては、『GT6』と同じく、最新車両に拘らず幅広い年代からバランスよく収録している。
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シボレー コルベット C4は、従来作の90年型ZR-1ではなく、最初期に僅か63台のみ作られた極めて希少な89年型ZR-1をあえて新規収録。
コルベット C1についても、従来作の54年型ではなく、ビッグマイナーチェンジによりフロントフェイスが変更された58年型を収録している。
MRに変更された現行の最新型であるコルベット C8も収録され、これによりC5を除く全世代のコルベットが収録されるに至った。あと1台…。
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スピンオフの『GTS』で遂にGTシリーズに登場し、ファンに衝撃を与えたポルシェは、本作で本格的に収録が始まった。
『GTS』では一部のみの収録だった911は、本作では901・930・964・993・996・997・991・992と全世代の911が揃い踏みするに至っている。
この他にも、カレラ GTS (904)、917K ショートテール、911 GT1 ストリートバージョンと、ファンを唸らせる魅力的な車両が多数収録された。
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スバルからは現行の最新レーシングカー、かつ2021年度のGT300チャンピオンマシンであるSUBARU BRZ R&D SPORTがまさかの収録となった。
高性能化が進むSUPER GTマシンのため、GT300ながらGr.3に設定されており、GT300の特長である空力の高さもしっかり再現している。
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マツダのRX-8は『GT5~6』に収録されたType Sではなく、RX-8の最終特別仕様車であるSpirit Rをわざわざ新規収録してくれている。
同じく三菱のランサーエボリューションIXも、『GT5~6』の05年型GSRではなく、最上位グレードの06年型MR GSRを新規に収録した。
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トヨタはPDIとパートナーシップ契約を結んでいるだけあって収録車種が非常に多く、今作では最も優遇されたメーカーと言える。
登場から僅か1年弱で収録されたGR010 HYBRID、発売前に収録されたGRカローラ等はパートナーシップ契約の恩恵が如実に出ている。
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マクラーレンからは、所謂「セナプロコンビ」により、15/16勝という凄まじい戦果を挙げた伝説のフォーミュラカー、MP4/4が収録。
レーティングの都合によりマルボロロゴがないが、自分で簡単に再現できるよう、リバリーエディターの編集エリアで配慮してくれている。
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また、ホンダからは65年のメキシコGPでF1初優勝を記録し、日本F1史に名を遺す伝説のフォーミュラカー、RA272が収録されている。
余談になるが、このRA272がGT公式世界大会の使用車両に選ばれた際、直撃世代である実況の中島秀之氏がウッキウキで解説していた。
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2010年頃からのSUVの流行から生まれた「スーパーSUV」の車両として、ランボルギーニ・ウルスが収録されている。
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『SEMA グランツーリスモ・アワード』受賞車両、『グランツーリスモ・トロフィー』受賞車両も、従来作に引き続き収録されている。
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前者は北米最大級の自動車部品見本市『SEMA SHOW』にて設定されていた賞。受賞車両は将来の『GT』シリーズへの収録が確約されていた。
特にガレージRCRが手掛けたEG型シビックは、GTアワード受賞時の仕様ではなく、受賞以後に更なる魔改造が施された仕様での収録となる。
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後者はペブルビーチ・コンクール・デレガンスにて2008年より設定された賞であり、GTアワードと同じく将来の作品への収録が確約される。
特筆すべきはメルセデス・ベンツから収録されたS Barker Tourerであり、なんとGTシリーズとしては2番目に古い1920年代の車両である。
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個性とトレンドを尖らせたチューンドカーに、1世紀前のクラシックカーと対照的であり、本作がカバーする自動車文化の広さをうかがわせる。
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各メーカーが本シリーズのために独自にコンセプトカーを開発する企画「ビジョン グランツーリスモ」は、本作で遂に10周年を迎えた。
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『GTS』までの25社に加え、本作ではイタルデザイン、スズキ、ポルシェ、ジェネシス、更にはフェラーリやブルガリまでもが参加。
特にスズキはロードカーだけでなく、グループGT3に相当するモディファイが施されたバージョンも収録されている。
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GTシリーズならではである、本来ならレースに全く向かない「ユニークな車両」の収録ももちろん健在。
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WWIIで活躍した軍用車両のウィリス MB、ミニバンのアルファード、小さなオフローダーとして人気の高いジムニー、
『GT6』以来の復活となるステーションワゴンの代名詞・ボルボ 240エステート、生産台数としては世界3位の大衆車であるルノー キャトル、
最新のものでは2025年に市販が予定されているソニーとホンダの協業で作られた電気自動車・アフィーラなどが収録されている。
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特にユーザーの度肝を抜いたのが、福岡県福岡市消防局の全面協力によって収録が実現したハイメディック、つまりは救急車である。
サイレンはもちろん「右へ曲がります、ご注意ください」等の自動放送も徹底再現されており、しかも実際にレース中に鳴らす事ができる。
内装も完璧に作り込まれており、PlayStation VR2を用意すれば、その作り込まれた内装の車内見学も可能である。PDIは狂ってる。
前述の通りレース向きの車両ではないが、改造次第ではそこそこ戦えるのも『GT』ならでは。ダートコースを駆ける救急車は一見の価値あり。
収録サーキットについて
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本作はフランスの多国籍タイヤ製造企業「ミシュラン」とパートナーシップ契約を結んでいる。
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これによりミシュランに縁のある「ワトキンズ・グレン」「ロード・アトランタ」がグランツーリスモシリーズで初めて収録された。
また、『GTS』で収録されなかった「デイトナ・インターナショナル・スピードウェイ」も復活、もちろんロードコースも収録されている。
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同じく『GTS』で収録が見送られた「トライアルマウンテン」「ハイスピードリンク」「ディープフォレスト」が最新クオリティで復活。
後のアップデートでは「グランバレー」も収録されており、従来のイーストセクションに相当する「サウスレイアウト」も完備している。
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なお、これらはシリーズの最初期に設計されたサーキットという都合から、いずれも大なり小なりレイアウトが変更されている。
全体的に全長やコース幅の拡大、ヘアピンの追加等、主にレース中のバトルやオーバーテイクを促すための変更・追加等が行われている。
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コースの再現性・リアリティも相変わらず高く、特にリアルサーキットはわざわざ現地に行ってピットインアラームを録音するほど。
特にカタロニア・サーキットやスパ・フランコルシャンのピットインアラームは、F1やWECで聞き覚えのあるプレイヤーも多い事だろう。
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その他、「アルザス テストコース」「ニュルブルクリンク エンデュランス/スプリント」等、細かなコースレイアウトも増加している。
チューニング・カスタマイズ要素の大幅な強化
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エンジンチューンや足回り等の従来作に存在したチューンはほぼ全て存在しており、その上で新規要素を多数追加している。
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特にドリフト用にサイドブレーキやステアの切れ角をチューン・調整可能になった事については、好きな人には嬉しいものだろう。
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軽量化やボアアップといった不可逆チューンを施工した場合でも、元の状態に戻せる新品ボディ・新品エンジンが追加。
相応の資金を求められるものの、従来作では新たに車両を買う以外に無かったため、これの追加はとても好意的に受け止められている。
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外装のカスタマイズ要素も豊富であり、従来作以上に多数のエアロパーツが用意されている。
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ファンを唸らせるものも多く、例えばインプレッサのアプライドEは、「インプレッサ S203」を再現可能なパーツを用意する芸の細かさ。
本作には収録されていないランサーエボリューションVIも、ランエボVI T.M.エディションのエアロパーツを弄る事によって再現可能である。
LFAもニュルブルクリンクパッケージを再現できるエアロパーツが用意される等、ユーザーの声に可能な限り答えようとする努力がうかがえる。
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この他、ホイール、ボンピン、ナンバープレート、ライトバルブ、一部車両ではエンブレムの変更等、かなり細かいカスタマイズが可能。
また、本作ではロールケージも装着できる。PPが殆ど変化しないため軽視されやすいが、これにより車両の剛性を向上させる事ができる。
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原則的に市販車両に限られるが、タイヤハウスを拡張するワイドボディ化のモディファイを施せるようになった。
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もちろん単純なドレスアップだけでなく、タイヤのトレッドも併せて拡大すれば、主に横方向のグリップ力を向上させることができる。
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ワイドボディ化は基本的にタイヤハウスを拡張するのみだが、ごく一部の車両は施工すれば大幅にモディファイされるものが存在する。
例えばスプリンタートレノとカローラレビンの両AE86は、ワイドボディ化を施す事によってAE86 TRD N2仕様を再現可能である。
デ・トマソ パンテーラに至っては、ワイドボディ化で「パンテーラ GT5」を再現でき、そのためのエアロパーツもわざわざ用意する徹底ぶり。
そしてあまりにも力技すぎる施工アニメーションは爆笑を誘った。4人がかりで引っ張ってどうにかできるものなのか…。
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一部の車種ではエンジンを乗せ換える「エンジンスワップ」ができるようになった。
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他作品では定番のチューニングで、現実でもD1等を筆頭に数えきれない施工例があったため要望は強かったが、本作にて初実装となった。
例えば非力なクラシックカーであるフォルクスワーゲン Type 1に、964型911の3.6リッター水平対向6気筒を載せるなんて芸当もできる。
このエンジンスワップ対応車種は、アップデートによってどんどん増加されており、現時点では100台以上もの車両に対応している。
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基本的には同一メーカー間や、日産・S15シルビアにトヨタの2JZを搭載する等、現実世界で施工例がある他メーカースワップが多い。
一方でアルファードにLFAの1LRを、デルタにR35のVR38DETTを積む等、何かがお壊れになったかのような組み合わせも存在する。
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本システムは非力な車両をモンスターマシンに変えられるものであるが、その結果操作感覚が激変し車両に振り回される事も少なくない。
単に変えれば速くなるというものではなく、エンジンスワップに合わせた綿密なセッティングも求められるため、ご利用は計画的に…。
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なお、スワップ用エンジンは当初は入手手段が非常に少なかったが、現在は資金さえあればGTオートでいつでも施工可能になっている。
その解禁はVer.1.34のアップデートで行われた。本作発売から凡そ1年強が経過しての解禁であり、時期としては概ね妥当と思われる。
そしてワイドボディ化と同じくこちらの施工アニメーションも、プレイヤーからのツッコミ必至の超絶力技である。
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車両の各部位にペイントやデカールの添付を施し、好きなリバリーを作成できる「リバリーエディター」も『GTS』に引き続き搭載。
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相応のセンスや腕は必要だが、未収録のレースカーを再現したり、痛車やネタリバリーを作ったりと、多くのユーザーを虜にしている。
無論『GTS』と同様に制作したリバリーのアップロード・ダウンロードも可能であり、日々多くのユーザーが「いいね!」を求めている。
また、『GTS』と比較して本作ではレーシングサンシェードも弄れるようになっており、リバリー作成の自由度がより高まっている。
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『GTS』と同じく、グランツーリスモ・ドットコムからSVG形式の自作デカールのアップロード・共有もできる。
こちらも本作ではユーザーインターフェースが細かく改善されており、使いやすく改良されてリバリー作成が捗るようになった。
表現・演出・パフォーマンスの進化
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メインハードをPS5に移した結果、様々な面でその恩恵を強く受けており、特にグラフィックは元々美麗だった『GTS』すらも上回る。
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4K画質は当然として、PS5の目玉であるレイトレーシングにも対応しており、これをオンにした際の車両は恐るべき美しさを誇る。
なお、このレイトレーシングはフォトモードやディーラー画面、リプレイ等の一部のみ対応しており、ドライビング中はオフとなる。
残念なように思えるが、プレイ感覚に大きな差がないため、「フレームレート優先」設定にしなくても問題ないという評価点でもある。
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フレームレートも設定を「フレームレート重視」にすれば、可変ではあるがほぼ全ての状況で60fpsをしっかり維持できている。
更に2023年3月のアップデートで最大120fpsに対応。流石にこれを味わうにはハードルが高いが、極めて快適な環境下でのレースが可能。
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シリーズ最新作という事もあって挙動も大きく進化しており、特に今作では減速・ブレーキング面が著しく向上している。
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これは、イタリア・ロンバルディア州に拠点を置くディスクブレーキ会社「ブレンボ」とパートナーシップ契約を結んだのが大きい。
この契約により、ハードブレーキング時のリアのバタつきや、トレイルブレーキング時の挙動等、減速関係のリアリティが大幅に向上。
従来作では殆どできなかったブレーキのチューニング・セッティングもできるようになり、更にキャリパーカラーの設定も可能になった。
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時間変化・天候変化・天体シミュレーターが『GT6』以来となる再実装。『GTS』では固定の数種類から選択する形であった。
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『GTS』の天候変化は試験的な導入につき、ドライ/ウェットの選択しかできなかったが、今作で改めてリアルタイムとなった。
『GT6』から大幅に進化しており、実際の気象データを元に雲オブジェクトをその場で生成し、シミュレートした風に沿って流れていく。
発生したのが雨雲であれば当然雨が降る事もあり、雨が止んだ後はレーシングラインから徐々に路面が乾いていくという徹底っぷりである。
また、これに伴って「雨雲レーダー」がゲーム内に実装され、耐久レース等ではレーダーを確認しながら戦略を考える必要がある。
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天候変化は一部のサーキットにのみ実装されているが、時間変化は全てのサーキットに実装されている。
この時間変化は実装されているほぼ全てのレースイベントに適用されており、中にはナイトコンディションになるイベントも存在する。
『GT5』で初めて実装された花火シミュレーターも引き続き実装されており、デイトナ等ではより美しく進化した花火を見られる。
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PS5なだけあってロード時間も極めて短く、20台出走のイベントすら2~3秒、タイムアタックに至っては暗転すらしないというレベル。
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ロード時間は主に『GT5~6』で問題視されていたが、本作で完全に解消されたと言ってもよく、ストレスなく遊ぶ事ができるようになった。
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プレイヤーからの評価が特に高いのが、DualSenseコントローラーのハプティックフィードバック・アダプティブトリガーである。
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縁石を踏んだ感触、水溜りにステアを持っていかれる感覚、減速時のペダルの硬さ等、実車かと思うほどの没入感を味わう事ができる。
ちなみに開発者の山内一典氏は、発売前に「まずはコントローラで遊んでほしい」とコメントしていた。それほどまでの再現度なのである。
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PlayStation VR2に対応。『GTS』では一部しかVR機能に対応していなかったが、本作ではオフラインでの2人対戦以外の全レースに対応している。
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没入感の高さは当然として、VR2を使えば普段レースでは見えない部分も確認する事ができ、改めて本作の作り込みの高さが窺い知れる。
その他
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一部のコースでは、特定条件下で背景にUFOが出現して牛が攫われる、湖に謎の水棲生物が顔を出す等のイースターエッグもある。
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『GT6』までにもイースターエッグ要素は存在したが、グラフィックの美麗化によりハッキリ見えるようになったのは評価に値する部分だろう。
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シリーズお馴染みのテーマ「Moon Over The Castle」が、『GT5』以来12年ぶりに復活した。
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本作のコンセプトが「原点回帰」「シリーズ集大成」であることからも採用が期待されていたため、ファンからは喜びの声が上がった。
ちなみに日本版ではお馴染みのテーマとして扱われているが、実は海外版でもメインテーマとして収録されたのは本作が初となる。
問題点
パートナーシップ契約による弊害
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本作はアメリカ・ミシガン州に拠点を置くヒストリックカー査定会社「ハガティ株式会社」とパートナーシップ契約を結んでいる。
今作の中古車、特にレジェンドカーは、このハガディ社の査定額となっており、数ヶ月に1回の頻度で改定されるシステムになっている。
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このパートナーシップ自体は悪くないが、これが裏目に出て、従来作よりも大きく値上がりした車両が複数出てしまった。
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例えば、今や世界的に人気の高いR32~34 GT-RやFD型RX-7は、その希少価値の高さから本作では数千万に値上がりしてしまっている。
特にマクラーレン F1に至っては、従来作の1億から一転、本作では20億にまで値上がりしている。確かに希少な車両ではあるが…。
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R34やZ432など、生産台数の少ないグレードを収録したためにいたずらに高額化した感が否めない車もある。
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ブランドセントラルについても同様で、一部の絶版かつ希少な車両のみだが、ハガティ社の査定額になっており大幅に値上がりしている。
ただし、ブランドセントラルでの販売車両には価格改定が発生せず、入荷待ちや在庫切れも起こらないため、その点については良心的である。
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一応擁護しておくと、ハガディ社とのパートナーシップ契約は、決してゲームに悪い影響ばかりを与えているばかりではない。
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従来作では20億だったXJ13やフォード Mark IVは、ハガディ社の査定額になった結果大幅に値下がりし、以前よりも買いやすくなった。
『GT6』では4.5億、『GT5』ではなんと15億という価格だったシャパラル 2Jが、本作では一気に値下げされて2.5億になっている例もある。
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また、ハガディ社の査定額は、生産数や現存個体が少ない・人気が高い・レースで好成績を残した等の理由があるほど高い傾向にある。
これによりリアルレースで散々な結果だったA220 ショートテールは、本作では高性能かつ価格が非常に安いコスパに優れる車両となっている。
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もっとも、従来作より安くなった・買いやすくなった車両より、従来作よりも大なり小なり高額になった車両の方がずっと多いのが実情である。
『GT』シリーズは様々な企業と深く関わっており、それはそれで大切ではあるが、本件に関してはあまりよい結果に繋がらなかったと言えよう。
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同じくブレンボとのパートナーシップ契約により、ブレーキシステムを変更すると強制的にブレンボのロゴが入ったキャリパーになる。
ゲーム性には直接関係がなく、フォトモードでも殆ど目立たないとはいえ、キャリパーに拘りがあるプレイヤーは気になるかもしれない。
ほぼ空気と化した招待状システム
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一部のスーパーカー・ハイパーカーは、本作ではルーレットチケットから獲得できる「招待状」がないと買えない仕様になっている。
これ自体はプレミアム感を演出する試みと考えられるが、問題はアプデで追加されたスーパーカー・ハイパーカーには招待状が不要な事にある。
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例えば本作発売当初から存在するカレラGTの購入には招待状が必要だが、アプデで追加された918 Spyderの購入には招待状が不要である。
恐らく「折角の追加車両がすぐに使えない」という不満を回避する処置だろうが、むしろ既存車両にのみ要らぬ制限が掛かってしまっている。
アプデで追加された車両に招待状がいらないのなら、もはや招待状で既存収録車両にプレミアム感を出す必要性はほぼないと言えるだろう。
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そもそもこの招待状自体、入手方法がルーレットチケットに限られており、確定で入手できる方法が存在しない事にも不満を持たれている。
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この招待状は☆4~5以上のルーレットチケットでしか入手できず、おまけにルーレットの抽選枠に招待状が選ばれないこともざらにある。
これにより、運が悪いと購入できる資金はあるのに、招待状が無いせいでいつまで経っても購入できないという事態も起こりえてしまう。
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招待状でプレミアム感を演出する試み自体には一定の評価を与えられるものの、それ以上に不便で邪魔になる事の方が多いのが実情である。
チケットの抽選枠を招待状が潰しているという別ベクトルでの問題点もあるため、「もう招待状システムを廃止してほしい」という声は多い。
その他の問題点
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先述の通り本作では新品ボディ・新品エンジンを購入することで車両を新車と同じ状態に戻す事ができるが、一部それでも戻せないチューニング、カスタマイズが存在する。該当するのはワイドボディ化及びエンジンスワップ。
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ワイドボディ化は新品ボディを買ってもワイドボディの新品となり、ワイド化前の車体に戻すことはできない。知らずに希少車両にワイド化を施すと後悔することになるかもしれない。
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エンジンスワップも同様にスワップ後のエンジンの新品となり、スワップ前のエンジンに戻すことはできない。
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元のエンジンがスワップに対応しており、それをパーツとして持っていても使えない。
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ミュージックラリーは、流れる音楽に合わせて走行するタイムラリー形式のミニゲームだが、正直ゲーム性はそこまで高くない。
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チェックポイントを時間内に通らないと、レース途中でゲームオーバーになるため、実質タイムアタックをするのと対して変わりない。
リズムゲームのように音楽とレースが何かしら干渉し合う事もないため、結局のところ「音楽に合わせて走るだけ」の内容でしかない。
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尤も、このミュージックラリーに獲得資金やプレゼントカー等は一切なく、PSゲームとしてのトロフィーも設定されていない。
ゲームに疲れた時に息抜きとして遊ぶ、それこそちょっとしたミニゲームとして用意された要素と思われる。
総評
『GT5』『GT6』で問題視されたモデリングの使い回しや、大した差のない大量のグレード違い等、手抜きと思われかねない要素はほぼ撤廃。
一方でフォトモード・カスタム要素・リバリーエディター・高品質なグラフィックや挙動等、シリーズ固有の魅力は更にブラッシュアップ。
短所を改善した上で魅力・長所を伸ばした、正にシリーズ原点回帰、かつシリーズ25周年記念作品に相応しいクオリティを誇る作品と言える。
発売初期には様々な要因が重なって大きく評価を落とす事もあったが、それもすぐに改善され、現在は全く問題なく遊べる事ができる。
『GTS』で好評を博したオフライン公式大会も引き続き行っており、開催される度に手に汗握る白熱したバトルが繰り広げている。
自動車好き・モータースポーツ好きなら垂涎の出来なので、興味のある方は是非手に取ってみよう。
余談
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『GTS』で登場した「フィッティパルディ EF7 ビジョン グランツーリスモ」が、同作のVGTの中では唯一続投していない。
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これについては、フィッティパルディ・モータースが2019年3月に活動停止状態に陥ったのが原因ではないかと、ファンからは推測されている。
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本作はオンライン接続が必須であり、ゲーム内のほぼ全ての機能はオンライン接続とPSNアカウントがないと利用できない。
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オフライン状態でプレイできるのはワールドサーキット内のアーケードモードのみ。2022年ともなればゲーム機をインターネットに接続するのはもはや当たり前となっている時代ではあるが、ネット環境の無いユーザーやPSNアカウントを作成してない人は要注意。
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また、セーブデータもオンライン上で管理される。そのため必然的にPS5版とPS4版とで、特別な手順を踏まずともクロスセーブが可能となっている。
最終更新:2024年11月18日 06:18