本作は3部作構成を前提とした内容になっているため、『~Vol.1 New World Days~』『~Vol.2 Adventurer’s Days~』『~Vol.3 Postlude Days~』の内容を全て纏めた上での評価を行う。
異世界酒場のセクステット
【いせかいさかばのせくすてっと】
ジャンル
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恋愛アドベンチャー
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対応機種
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Windows(Steam/GOG.com) Nintendo Switch
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発売元
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qureate
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開発元
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iMel qureate
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発売日(Vol.1)
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【Switch】2020年11月5日 【Steam/GOG】2020年12月15日
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発売日(Vol.2)
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【Switch】2021年1月14日 【Steam/GOG】2021年2月19日
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発売日(Vol.3)
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【Switch】2021年3月18日 【Steam/GOG】2021年5月14日
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定価(10%税込)
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【Switch】各800円 【Steam】各1,280円
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プレイ人数
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1人
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セーブデータ
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80個(+クイックセーブ1箇所)
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レーティング
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CERO:D(17才以上対象)
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備考(Switch版)
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ダウンロード専売
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判定
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賛否両論
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ポイント
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魅力的な6人のヒロインとのハーレム生活 良くも悪くもシリーズの”らしさ”が目立つ
主人公とヒロインの双方に問題アリ
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qureate作品
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概要
qureate(キュリエイト)の臼田裕次郎氏が送る低価格恋愛ADV・でいずシリーズの第4弾。
キャラクターデザインは前作『くっころでいず』に引き続き乾和音氏が担当している。
なお、「セクステット」とは「六重奏」のこと。決して卑猥な意味ではないぞ。
勿論本作もWin版は公式サイトでR18化パッチが配信されており、FANZA及びDLsiteでも18禁Ver.単体で販売されている。
また、本作からでいずシリーズはSwitch版の方が先にリリースされるようになっている。
ただし、本稿ではR18表現の無い「パッチ未適用のSteam版」と「Switch版」に限定して記載する都合上、R18部分や価格格差については評価の考慮に入れないものとして扱う。
現状でいずシリーズでは唯一となる3部作構成となっており、Vol.毎に魅力的なヒロイン達の内の二人をメインに仲を深めていく事になる。
あらすじ
秋葉原のメイド喫茶の裏方で料理を振舞う青年がある日突然異世界に転生!? 転生した世界は魔物が闊歩し、魔法が存在するファンタジーの世界だった。
元の世界に帰る術もなく、途方に暮れている主人公の前に突如モンスターが現れ、 襲われそうになるが、間一髪のところで冒険者が集う酒場「ストレイシープ」 女店主であるルピナスに助けられる。
命の恩人であるルピナスに連れられて「ストレイシープ」に向かうがそこは、 客が1人もいない寂れた酒場だった。
行くあてのない主人公はストレイシープを立て直し、多くの冒険者が集えば、 元の世界に戻る方法を知る者が来店するかもしれないとルピナスに協力することに!
メイド喫茶で培った料理の腕前で経営危機の酒場を救うことはできるのか!?
異世界の酒場を舞台に笑いあり涙あり、ちょっとHありのドタバタ恋愛ハーレム劇が始まる!!
(Vol.1の公式サイトより引用)
システム
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ADVゲーム
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ストーリーは主人公の目線で語られて、かつ基本は1本道。ストーリー中は選択肢が8~9回分出る。
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エンディングが3種類(Vol.3のみ4種類)あり、「最後の選択肢で何を選んだか」「それまでの選択肢で何を選んだか」という条件で展開が分岐し、個別ルートA、個別ルートB、ハーレムルート(Vol.3はこれにバッドエンドルートが加わる)に到達できるかどうかが判定される。
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過去シリーズではBGMを使い回さなかったでいずシリーズだが、3部作となる本作ではメインテーマ以外は共有している。
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その他
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バックログ表示・メッセージボックスの非表示・クイックセーブ&ロード・早送り・メッセージのスキップといった機能は前作までと全く同じ物が搭載されている。
評価点
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個性的で魅力的なヒロイン達
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本作で攻略対象となるのは
怪力メシマズ女店主ルピナス、そのルピナスを姉さんと慕うレズビアン獣人のデイジー、露出度高めな女剣士ダリア、爆乳のん兵衛魔法使いベロニカ、むっつり修道者プルメリア、皮肉屋後輩の杏(あんず)の6人。
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最初は当たりがきついキャラもいるが、シナリオを進めれば新たな一面が垣間見えるようになっており、全員が魅力的に描かれている。
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E-moteにより立ち絵がぬるぬる動くのはもちろん、過去作に引き続き攻略対象の台詞は(該当Vol.以外でも)全てフルボイスである。
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一応同じqureateの作品に『NekoMiko』というダブルヒロインの前例があるとはいえ、1つの作品につき一人のヒロインが当たり前だったでいずシリーズファンが予算の心配をしたのは言うまでも無い。
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シリーズ初の過去作キャラのゲスト出演
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Vol.1と2で存在が示唆され、Vol.3で『くっころでいず』のヒロイン・カトレアがゲスト出演を果たした。時系列がくっころの騎士団長エンド後のため、前作主人公の後日談や「あの台詞」も聞くことが出来る。
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今までの作品では存在を示唆されることはあれど、直接本人が出演することは無かったため、Vol.3発売前の出演正式発表時にはシリーズファンから歓迎の声をもって迎えられた。
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ちなみに、カトレアは攻略対象である杏と中の人が同じ。その演じ分けは見事と言うほかなく、エンドロールでキャスト一覧を見るまで気づかなかったと言う人が殆ど。
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異世界ハーレム物というテーマにしたことによるイベントバリエーションの増加
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紳士イラストレーターのこだわりが詰まりに詰まったイベントスチルも当然健在。
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獣人娘の着替えシーンやスライムまみれ、ツタのモンスターに束縛されるなどの
紳士御用達イベントはもちろん、バチバチに口論する修羅場イベントも存在する。
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攻略ヒロインをVol.毎に分けたことによるシナリオ構成
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後述する問題点のせいで忘れがちだがVol.1~3全体のシナリオを俯瞰して見た場合、「ルピナスとデイジーが働くストレイシープの酒場のトラブル解決→店の人手が足りなくなり、ダリア・ベロニカと深く関わる事になる ⇒ その2人のトラブルの原因を解消した事により、元いた世界への帰還手段を入手できるチャンスが来る」という流れそのものは綺麗に纏まっている。これは一作では描ききれるボリュームではないため、この点については評価されている。
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Switch版とSteam版の発売順の変更
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これまでのでいずシリーズのSwitch版は「安い代わりに発売が遅く、パッチも無い」という、他のフルプライス全年齢版恋愛ADV作品にありがちな販売形式だったが、本作から「安く早めに遊べるSwitch版」と「パッチで二度楽しめるSteam版」という、それぞれに利点のある明確な差別化が行われるようになったのは評価に値する。
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過去作にもパロディネタを少々入れていたでいずシリーズだが、本作ではVol.1とVol.2にまさかのジョジョネタを仕込んでいる。元ネタを知らなくとも認知度が高いあのネタであることもあり、Vol.1ではプレイヤーを爆笑の渦に誘い込んだ。
賛否両論点
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ダリアの声だけ妙に高い
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慣れれば問題ないのだが、他のキャラが外見のイメージとほぼ乖離していない声なのに対し、ダリアを演じる松田理沙/力丸乃りこ氏の声が高めで、人によっては浮いている印象が残ってしまう。
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相変わらずのお手頃価格
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僅か千円前後という、フルプライス作品の多い恋愛ADVにしては非常にリーズナブルな価格設定は本作でも健在。
ただし、後述する問題点から「価格相応と割り切れない人には向かない」「多少値段を上げてでもキャラクターの描写をどうにかしてほしかった」という声も存在する。
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一応、他のシリーズ作品と共にちょくちょくセール対象になっているのでその時に購入すればある程度は割り切りやすくなる。
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ただし、Steamでは他シリーズと同等の価格帯ではあるものの、シリーズ同士のバンドルなどの割引きは存在していない。
問題点
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ヒロイン達の描写
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でいずシリーズ自体「低価格な反面ボリュームが少なく、そのせいで駆け足な展開やご都合主義展開、シナリオに引っ張られているようにみえるキャラの行動やヒロインの描写不足がある」という、シリーズファンにとっては暗黙の共通認識となりつつある不安要素を内包していた。
そんな中発売された本作は三部作構成でボリュームを増やしたはいいものの、元から不足気味なのにもかかわらず「一作あたりでヒロイン1人あたりに割ける容量を実質半分にする」という方針を取ってしまったため、「ヒロインを掘り下げるためのイベントの減少により感情移入がしにくい」「ヒロインが主人公を好きになる理由があまりにも浅い」という印象が残りやすくなってしまっている。
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更に、シナリオ構成上の避けようのない問題として「先に登場するヒロインほどスチルの登場回数も多く、後に出たヒロインほど作中の出番が少ない」という点も目に付く。特にデイジーと杏が顕著。
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また、Vol.1では主人公と付き合うことになるヒロインが二人しかいないためそんな描写は無いのだが、Vol.2、Vol.3と進めていくにつれて「ヤンデレ」「ストーカー」といった人を選ぶ本性が徐々に露呈していく。
ヒロインが主人公に刃物を持って詰め寄るシーンもあるため、「エンディング後の未来が心配になった」という感想も少なくない。
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そして、下記の主人公の問題行動を目の当たりにしても恋心が冷めないという点についても違和感が拭えない。そのため、本作最大の「シナリオの都合による被害者」と捉えられることもしばしば。
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主人公の描写
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上述したヒロイン達は描写不足が問題な反面、主人公の心理描写は描かれる場面が多くなっている。それ自体は良い事で性格も「基本的には良い人」なのだが、時折見せる思考や言動があまり褒められたものではない。
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一部例を挙げると「告白を断ってもなんやかんやである程度承諾してしまう意志の弱さ」「キスの最中に他のヒロインと比較する発言をする」「百合の間に挟まり両方とも手籠めにする」「既に付き合っている相手に対し、バレるまで新しく恋仲になった相手がいる事を黙っている」といったもの。
こういった事を無自覚にやらかしていると言う事もあって他でいずシリーズの主人公と比較しても明らかにタチが悪く、「寝床が屋根裏部屋」という作中の描写から(当然と言うべきか)プレイヤー達からは「屋根裏のゴミ」というあだ名をつけられてしまっている。
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以上の結果から、でいずシリーズのシナリオ製作を請け負っている株式会社リンクトブレインの担当者の質の差が如実に出てしまい、「シナリオの出来が玉石混淆」というシリーズの新しい認識を追加せざるを得ない結果になってしまった。
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3部作構成にしたことによる弊害
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セーブデータの引継ぎ要素は無く、主人公の名前をVol.毎に入力する必要がある。
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また、Vol.2とVol.3のシナリオはハーレムルートが前提となっており、「選ばなかった方とはそんなになのかと思ってたら続編で思いっきりイチャイチャしてた」というあべこべな状況に個別ルートを選択したプレイヤーが面食らうと言った事態も発生している。
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事前情報関連
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ダリアは事前情報で「根暗」と紹介されていたが、本作前半部での描写を見るとどちらかと言えば「クール」という言葉の方がしっくりくる。そもそも何故マイナスなワードをチョイスしたのか甚だ疑問。
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あらすじには「転生」と書かれているが、主人公が死亡していないので正確には「転移」に該当する。公式がシナリオのジャンルを正しく把握できていないと言うのは如何なものだろうか。
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相変わらず英語表記のオプションUI
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これについては価格を考えると妥協するほかないが、やはり分かりづらい。
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一応、でいずシリーズを通して全て同じオプションなので、複数作品遊ぶ前提なら覚えてしまえば問題ない。
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次回作の『愛怒流でいず』以降は改善されている。
総評
「低価格でかわいい女性と恋愛できるADV」としての評価を盤石にしつつあったでいずシリーズだったが、本作はシリーズの良さも悪さも明確に表面化させてしまう作品となってしまった。
いわゆる「なろう系」っぽい雰囲気やご都合主義、駆け足な展開を許容できるかどうか、ヒロインの魅力にのみ割りきれるかどうか、低価格という理由でどこまで妥協できるかと言った「プレイヤーの好み次第で評価が分かれる要素」がシリーズの他作品と比べて大きい上に主人公の問題行動も目に付く。
そのため、でいずシリーズの特徴を理解してある程度の折り合いをつけられるのなら兎も角、シリーズの入門にはあまりお勧めできないと言わざるを得ない。
余談
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でいずシリーズは世界観を共有している。
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本作の場合、くっころ以外には『NinNinDays』との繋がりを示唆する描写がVol.1の冒頭に存在する。
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また、Vol.3のプルメリアルートでは『とらぶるでいず』終盤で登場するタクシードライバーが再登場している。
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『NinNinDays2』ではヒロインの片割れである桔梗を本作でルピナスを演じたみたかりん/のはらゆうか氏が演じている。
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また、作中で訪れることになるコスプレショップにVol.1の壁紙パネルとルピナスのコスプレ衣装が飾られており、桔梗がベロニカのコスプレをする展開も用意されている。
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2022年3月18日に、本作のコミカライズ版が連載開始された(公式ツイート)。
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描写不足だったゲーム本編の内容を補完する形で物語が綴られているが、
TKBが堂々と描写されている。
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2023年10月に『異世界酒場のセクステット』シリーズのDL数が累計30万を突破している。(ファミ通)
最終更新:2024年01月15日 16:32