JP2012219127A - ポリウレタン用難燃剤組成物ならびにこれを用いて製造される難燃性ポリウレタン及び難燃性ポリウレタンフォーム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】難燃剤組成物は、(A)赤リン3〜50質量%、(B)沈降防止剤0.2〜15質量%を含む。該沈降防止剤は、カーボンブラック、微粉シリカ、水添ヒマシ油ワックス、脂肪酸アミドワックスおよび有機クレーから選択される。難燃性ポリウレタンは、上記ポリウレタン用難燃剤組成物を添加して製造される。
【選択図】なし
Description
すなわち、ポリウレタンは前述のようにイソシアネートとポリオールの反応によって生成されるので、イソシアネートもしくはポリオール、または難燃剤として使用される有機リン酸エステルのいずれかに粉末状難燃剤を配合した製品形態としたとき、貯蔵、流通過程で粉末状難燃剤が沈降し、ときには攪拌の工程が必要となり、また沈降が著しい場合にはケーキ状に固まるため包装容器から移すことが困難となる。更に、難燃性ポリウレタンフォームを最終目的物とする場合には、得られるポリウレタンフォームは組成が不均一となり、低品質のものになってしまう。現状では、ポリウレタンの原料は、配合されてから使用されるまで通常1ヶ月の期間貯蔵されることが多いので、混合後1ヶ月程度は沈降が起こらない難燃剤が求められている。
また、本発明は上記難燃剤組成物を用いて製造される難燃性ポリウレタン及び難燃性ポリウレタンフォームを提供することを課題とする。
これにより、難燃剤として赤リンを単独で使用することができ、その場合には、難燃剤の使用量を少量に抑えることが可能となるので物性に与える影響が少なく、また、組成物中で均一に分散するので、最終目的物であるポリウレタンの物性も良好かつ均一なものとなる。また、ハロゲン含有難燃剤を使用しないので、装置の腐食や材料の変色がなく、環境保全に貢献できる。難燃剤として赤リンとリン酸エステルを併用する場合には、リン酸エステルの使用量を低減できるので、物性が良好となり、リン酸エステルの可塑性を活かしつつ、装置の腐食や材料の変色を抑え、環境影響の低減に貢献できる。
(1)(A)赤リン3〜50質量%、(B)沈降防止剤0.2〜15質量%を含むポリウレタン用難燃剤組成物。
(2)沈降防止剤が、カーボンブラック、微粉シリカ、水添ヒマシ油ワックス、脂肪酸アミドワックスおよび有機クレーから選択される少なくとも一種である上記(1)記載のポリウレタン用難燃剤組成物。
(3)沈降防止剤としてカーボンブラックを5〜14質量%含む上記(1)または上記(2)記載のポリウレタン用難燃剤組成物。
(4)沈降防止剤として微粉シリカを2〜10質量%含む上記(1)または上記(2)記載のポリウレタン用難燃剤組成物。
(5)沈降防止剤として水添ヒマシ油ワックスまたは脂肪酸アミドワックスを0.2〜5質量%含む上記(1)または上記(2)記載のポリウレタン用難燃剤組成物。
(6)沈降防止剤として有機クレーを2〜10質量%含む上記(1)または上記(2)記載のポリウレタン用難燃剤組成物。
(7)赤リンと沈降防止剤が、リン酸エステル、ポリオールおよびイソシアネートから選択される媒体に分散されている上記(1)乃至上記(6)のいずれかに記載のポリウレタン用難燃剤組成物。
(8)媒体がリン酸エステルであり、かつ、沈降防止剤がカーボンブラック、脂肪酸アミドワックスおよび有機クレーから選択される少なくとも一種である上記(7)記載のポリウレタン用難燃剤組成物。
(9)媒体がポリオールであり、かつ、沈降防止剤が、微粉シリカ、カーボンブラックおよび脂肪酸アミドワックスから選択される少なくとも一種である上記(7)記載のポリウレタン用難燃剤組成物。
(10)媒体がイソシアネートであり、かつ、沈降防止剤が、微粉シリカ、カーボンブラック、脂肪酸アミドワックスおよび有機クレーから選択される少なくとも一種である上記(7)記載のポリウレタン用難燃剤組成物。
(11)上記(1)乃至上記(10)のいずれかに記載のポリウレタン用難燃剤組成物を添加して製造される難燃性ポリウレタン。
(12)上記(1)乃至上記(10)のいずれかに記載のポリウレタン用難燃剤組成物を添加して製造される難燃性ポリウレタンフォーム。
以下、本発明のポリウレタン用難燃剤組成物ならびに難燃性ポリウレタンおよび難燃性ポリウレタンフォームの実施の形態について詳細に説明する。
本発明のポリウレタン用難燃剤組成物は、赤リンを3〜50質量%、沈降防止剤を0.2〜15質量%を含むことを特徴とする。
また本発明の好適実施形態は、リン酸エステル、ポリオール又はイソシアネートを媒体として、赤リン3〜50質量%と沈降防止剤0.2〜15質量%が分散されているポリウレタン用難燃剤組成物である。
本発明において、赤リンは難燃性を付与する目的で添加される。
赤リンとしては、一般的に用いられる未処理の赤リンや、樹脂被膜、金属水酸化物被膜などで被膜処理された赤リン等を使用することができ、特に限定はされないが、取り扱い容易性の観点から被膜処理された赤リンであることが好ましい。またその粒径は、特に限定はされないが、赤リン系難燃剤として流通しているものが使用でき、通常平均粒径100μm以下であり、この粒度で難燃剤として均一に分散するので好ましく、製造時や使用時において、スプレー発泡される工程や、ポンプで反応機に注入される工程を経る場合には20μm以下であることが特に好ましい。
赤リンは、ポリウレタン用難燃剤組成物の全量に対し、3〜50質量%含有される。3質量%未満では難燃性の効果を得ることができず、50質量%を超えると、流動性がなくなり均一な液状またはペースト状混合物が得られないからである。
なお、本発明のポリウレタン用難燃剤組成物またはその予備調製物として、赤リンを高濃度に含有させたマスターバッチを作製する場合、赤リン含有量が高ければ高いほどコスト的に優位である。しかし、上述のように赤リン量が50質量%を超えると均一な混合物が得られなくなるため、配合成分に応じて赤リン含有量を適宜調節し、例えば赤リンを10〜50質量%、好ましくは20〜50質量%含有させることができる。
本発明において、沈降防止剤は、難燃剤の主成分である赤リンを均一に分散させる目的で添加される。
沈降防止剤としては、特に限定はされないが、カーボンブラック、微粉シリカ、水添ヒマシ油ワックス、脂肪酸アミドワックスおよび有機クレーを単独で、または2種以上を組み合わせて用いることが好ましく、特に、少量で安定した沈降防止性のある脂肪酸アミドワックス系沈降防止剤を用いることが好ましい。
沈降防止剤は、ポリウレタン用難燃剤組成物の全量に対し、0.2〜15質量%含有される。0.2質量%未満では沈降防止の効果が弱くなり、15質量%を超えると粘度が上昇し液状またはペースト状の混合物が得られず、取扱い性が悪くなるからである。
なお、本発明のポリウレタン用難燃剤組成物またはその予備調製物として、赤リンを高濃度に含有させたマスターバッチを作製する場合、希釈後の赤リン成分の沈降を防止する量の沈降防止剤を予め添加しておく必要があり、希釈後で沈降防止剤が0.2〜15質量%となるように含有させることが好ましい。例えば、赤リン10質量%のポリオールプレミックスを製造するための赤リン20質量%のマスターバッチを作製する場合、希釈後のポリオールプレミックスでカーボンブラックが7質量%必要とすると、マスターバッチで14質量%添加させるといったように、希釈後の貯蔵を考慮し多めに添加することが好ましい。
脂肪酸アミドワックスの市販品としては、脂肪酸アミドワックス成分のみの粉末状のものや、溶剤中で脂肪酸アミドワックスをペースト化したプレ膨潤タイプがあり、例えば、楠本化成社製のディスパロン(登録商標)「A603−20X」、「A603−10X」、「6500」、「6650」、「6700」が使用できる。その他、チキソトロピック性を有する他の成分と複合化されている製品であってもよい。
本発明において、媒体は赤リンおよび沈降防止剤を分散するものであり、特に限定はされないが、リン酸エステル、ポリオールまたはイソシアネートであることが好ましい。これらの媒体は、最終目的物である難燃性ポリウレタンの原料成分となり得るものである。例えば、媒体としてリン酸エステルを用いて赤リンを高濃度に含有させたマスターバッチを「複合難燃剤」として、媒体としてポリオールを用いて赤リンを高濃度に含有させた赤リン系難燃剤マスターバッチとしてや、ポリオールに他の添加剤と共に赤リンを含有させた「ポリオールプレミックス」として、媒体としてイソシアネートを用いて赤リンを高濃度に含有させた赤リン系難燃剤マスターバッチとしてや、イソシアネートに他の添加剤と共に赤リンを含有させた「イソシアネートプレミックス」として使用することができる。ここで「赤リンを高濃度に含有」とは、赤リンを10〜50質量%含有することを言う。
媒体は、ポリウレタン用難燃剤組成物の全量に対し、少なくとも35質量%含有されることが好ましい。この範囲とすることで、配合成分が均一に分散した液状またはペースト状の混合物を容易に得ることができる。
ポリマーポリオールはPPG中でアクリロニトリルやスチレン等をラジカル重合させることによって得られる。
赤リンを高濃度に含有させたマスターバッチを作製する場合も、上記のポリオールを使用することが好ましい。最終目的物であるポリウレタンに求める物性や特性に応じてポリオール成分も選択されるが、マスターバッチ中のポリオール量がポリウレタン全体において少量であり、求めるポリウレタンの物性や特性を損なわない場合には、ポリウレタンで汎用されるポリオール、例えば、硬質ポリウレタンフォーム製造用には、官能基数が3〜8、官能基あたりの分子量が60〜200のPPG、軟質ポリウレタンフォーム製造用には、官能基数が3〜8、官能基あたりの分子量が700〜3000のPPG、ウレタンエラストマー製造用には、官能基数が2〜3、官能基あたりの分子量が100〜3000のPPGを使用しても差し支えなく、この場合、使用目的に応じてマスターバッチ用ポリオールを使い分ける必要がなく、汎用ポリオールを媒体とした赤リン系難燃剤マスターバッチとなる。
赤リンを高濃度に含有させたマスターバッチを作製する場合も、上記のイソシアネートを使用することが好ましい。最終目的物であるポリウレタンに求める物性や特性に応じてイソシアネート成分も選択されるが、マスターバッチ中のイソシアネート量がポリウレタン全体において少量であり、求めるポリウレタンの物性や特性を損なわない場合には、ポリウレタンで汎用されるイソシアネート、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートを使用しても差し支えなく、この場合、使用目的に応じてマスターバッチ用イソシアネートを使い分ける必要がなく、汎用イソシアネートを媒体とした赤リン系難燃剤マスターバッチとなる。
本発明のポリウレタン用難燃剤組成物は他の添加剤を含むことができ、特にポリウレタンフォーム用難燃剤組成物である場合は、ポリウレタンを形成するための硬化剤、架橋剤、触媒、発泡剤、劣化防止剤、可塑剤、整泡剤等を含むことができる。また赤リン以外の難燃剤として、リン酸エステルや、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、メラミンを含むことができる。なお、リン酸エステルについては、上述のように媒体として配合される場合もある。
本発明のポリウレタン用難燃剤組成物は、例えば、赤リン、沈降防止剤およびその他の添加剤を液体媒体に均一に分散することによって、製造することができる。
分散方法としては、配合成分が均一に分散される様々な分散方法を用いることができ、攪拌機としては、汎用攪拌機、ディスパー分散機、ディゾルバー、ニーダー等を使用することができる。沈降防止剤として、水添ヒマシ油ワックスや脂肪酸アミドワックスを使用する場合は、均一に混合するためにある程度のせん断力が必要であり、ホモジナイザー、サンドミル等のせん断力の強い攪拌機を使用することが好ましい。
分散の工程としては、赤リン、沈降防止剤、ポリウレタン原料成分、その他の添加剤等、全ての配合成分を一度の操作で混合、分散することができる。また上記のマスターバッチを予備調製物とする場合や、水添ヒマシ油ワックスまたは脂肪酸アミドワックスをポリウレタン原料成分または溶剤に固形分で数十%含有させた分散液を予め調製した場合は、これらにその他の配合成分を所望の濃度で添加して混合、分散することができる。
本発明のポリウレタン用難燃剤組成物は、各種の難燃性ポリウレタンの製造に用いることができ、例えば難燃性ポリウレタンフォームや難燃性ポリウレタンエラストマー等の製造に適している。中でも、難燃性ポリウレタンフォームの製造に適しており、特に軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォームの製造に好適に用いることができる。
本発明の難燃性ポリウレタンは、上に詳述した本発明のポリウレタン用難燃剤組成物を添加して製造することができる。難燃性ポリウレタンフォームの製造方法としては、スラブ発泡、モールド発泡、注入発泡、スプレー発泡、ラミネート等など公知の製造方法を適用することができる。難燃性ポリウレタンエラストマーの製造方法としては、熱硬化性タイプでは注型、反応射出成形(RIM)、コーキング等、熱可塑性タイプでは射出成形、押し出し成形、カレンダー成形、ポリマーブレンド等、公知の製造方法を適用することができる。
(実施例1〜13および比較例1〜3の難燃剤組成物の製造)
表1に示す原料を配合量にしたがって計量し、攪拌機を用いて均一に混合されるまで攪拌し、難燃剤組成物を調製した。なお、脂肪酸アミドワックスを使用した実施例3、実施例5、実施例7、実施例8および実施例12については、予め脂肪酸アミドワックスが10%となる様にポリオール、リン酸エステルまたはイソシアネートを添加し、日本精機製作所社製ホモジナイザーを用いて均一混合後、所定のポリオール、リン酸エステル、イソシアネートおよび赤リンを添加し、攪拌機を用いて攪拌した。
実施例11〜13の高濃度品とポリオールを表2に示す配合量にしたがって計量し、攪拌機を用いて均一に混合されるまで攪拌し、難燃剤組成物を調製した。
ポリオールA:PPG−3000,日油(株)製「ユニオール TG−3000」
ポリオールB:PPG−330,日油(株)製「ユニオール TG−330」
リン酸エステルC:トリス(クロロプロピル)ホスフェート,大八化学工業(株)製「TMCPP」
リン酸エステルD:大八化学工業(株)製「CR−570」
イソシアネート:ポリメリックMDI,日本ポリウレタン工業(株)製「ミリオネートMR−200」
赤リンE:燐化学工業(株)製「ノーバレッド 120UFA」 平均粒径 8μm
赤リンF:燐化学工業(株)製「ノーバエクセル 140F」 平均粒径 11μm
沈降防止剤G:三菱化学(株)製「カーボンブラック MA220」
沈降防止剤H:フュームドシリカ,日本アエロジル(株)製「アエロジル 300」
沈降防止剤I:フュームドシリカ,日本アエロジル(株)製「アエロジル R972」
沈降防止剤J:脂肪酸アミドワックス,楠本化成(株)製「ディスパロン A603−20X」,有効成分20%
沈降防止剤K:有機ベントナイト,(株)ホージュン製「エスベン NZ」
沈降防止剤L:有機ベントナイト,(株)ホージュン製「エスベン NO12S」
上記で得た各難燃剤組成物について分散安定性を見るため、以下の沈降性試験を行った。
難燃剤組成物を4週間室温で静置し、その間の1週間、2週間、3週間、4週間経過時点において、全体の液高さと上澄み部分の高さを測定し、上澄み部分の高さが占める割合を算出した。結果を表1及び表2に示す。
さらに、マスターバッチを想定して赤リンを高濃度含有させた実施例11〜13においても沈降防止剤を添加することによって少なくとも4週間の間沈降が防止でき、また、マスターバッチを希釈してプレミックスにすることを想定した実施例14〜16においても沈降が防止できた。
Claims (12)
- (A)赤リン3〜50質量%、
(B)沈降防止剤0.2〜15質量%
を含むポリウレタン用難燃剤組成物。 - 沈降防止剤が、カーボンブラック、微粉シリカ、水添ヒマシ油ワックス、脂肪酸アミドワックスおよび有機クレーから選択される少なくとも一種である請求項1記載のポリウレタン用難燃剤組成物。
- 沈降防止剤としてカーボンブラックを5〜14質量%含む請求項1または2記載のポリウレタン用難燃剤組成物。
- 沈降防止剤として微粉シリカを2〜10質量%含む請求項1または2記載のポリウレタン用難燃剤組成物。
- 沈降防止剤として水添ヒマシ油ワックスまたは脂肪酸アミドワックスを0.2〜5質量%含む請求項1または2記載のポリウレタン用難燃剤組成物。
- 沈降防止剤として有機クレーを2〜10質量%含む請求項1または2記載のポリウレタン用難燃剤組成物。
- 赤リンと沈降防止剤が、リン酸エステル、ポリオールおよびイソシアネートから選択される媒体に分散されている請求項1乃至6のいずれか一項記載のポリウレタン用難燃剤組成物。
- 媒体がリン酸エステルであり、かつ、沈降防止剤がカーボンブラック、脂肪酸アミドワックスおよび有機クレーから選択される少なくとも一種である請求項7記載のポリウレタン用難燃剤組成物。
- 媒体がポリオールであり、かつ、沈降防止剤が、微粉シリカ、カーボンブラックおよび脂肪酸アミドワックスから選択される少なくとも一種である請求項7記載のポリウレタン用難燃剤組成物。
- 媒体がイソシアネートであり、かつ、沈降防止剤が、微粉シリカ、カーボンブラック、脂肪酸アミドワックスおよび有機クレーから選択される少なくとも一種である請求項7記載のポリウレタン用難燃剤組成物。
- 請求項1乃至10のいずれか一項記載のポリウレタン用難燃剤組成物を添加して製造される難燃性ポリウレタン。
- 請求項1乃至10のいずれか一項記載のポリウレタン用難燃剤組成物を添加して製造される難燃性ポリウレタンフォーム。
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