芥川賞に決まった「ハンチバック」は親が残したグループホームで暮らす重度障害者の女性が主人公です。障害者を取り巻く問題と普通を求める主人公を中心に「生」と「性」、「健常者の特権性」が鋭く描かれています。 作者の市川沙央さんは早稲田大学卒業の43歳です。市川さんは主人公と同じように先天性の難病を抱えながら執筆活動を続けてきました。純文学に初挑戦となったこの作品で文學界新人賞を受賞しました。芥川賞はデビュー作での受賞となりました。 第169回の直木賞には、垣根涼介さんの「極楽征夷大将軍」と永井紗耶子さんの「木挽町のあだ討ち」が選ばれました。 「極楽征夷大将軍」は史上最も無能と呼ばれる室町幕府初代将軍足利尊氏を主人公とした歴史小説です。やる気や使命感のない人間がなぜ天下を獲れてしまったのか、尊氏の生涯が描かれています。 作者の垣根涼介さんは長崎県生まれの57歳です。筑波大学を卒業後、旅行代理店に勤