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法改正で混乱する物流現場の運用、アナログからの脱却がポイント

物流革新促すIKZO Onlineのデジタル連携

2024年12月24日 (火)

話題物流危機を象徴する2024年も終わろうとしているが、物流業界に引き続き解決すべき多数の課題が山積している状況に変化はない。

具体的な課題解決に向けての施策の1つが、物流二法の改正による運送事業の後押しである。しかし、物流現場の実情を熟知するウイングアーク1stの物流プラットフォーム事業開発部部長、加藤由貢氏は、「このままの法改正後の運用では、実運送会社やドライバーの負担がむしろ増加するのでは」と懸念を示す。

契約から請求までの企業間デジタル連携が、法対応の答え

実運送事業者の適正価格収受に向けて、改正法では元請け事業者への実運送体制管理簿の作成、荷主・トラック事業者・利用運送事業者への運送役務やその対価(付帯業務料、燃料サーチャージなどを含む)を運送契約締結時に書面交付することなどが義務付けられた。また、業界の長年にわたる課題である多重下請け構造の是正に向けても、トラック事業者・利用運送事業者に対し、ほかの事業者の運送の利用(下請けに出す行為)の適正化について努力義務を課すとともに、一定規模以上の事業者に対しては適正化に関する管理規程の作成、責任者の選任を義務付けることが定められている。

▲ウイングアーク1st物流プラットフォーム事業開発部部長、加藤由貢氏

これらはいずれも実運送事業者の収益を上げ、トラックドライバーの労働環境の改善を目標とする措置だが、「現状の運送業務の実態のまま、この改正法での運用を適用すると、むしろ運送事業への負荷が増加し、本来の主旨と外れた本末転倒な取り組みになりかねない」(加藤氏)というのである。

加藤氏が指摘する「現状の運送業務の実態」とは、未だ運送における企業間取引で電話やファクスなどでの連絡が主流であることを指し示している。企業間の連携をアナログから、デジタルへと転換すること。まずこの環境を整備しなければ、せっかくの法改正も意味がないとの指摘だ。

法改正後は、適正な運送や付帯業務の対価に基づいた運送契約、運送条件の書面化など「契約」段階からの交渉・確認、実際に荷待ち・荷役時間に要した時間を発注側に「実績」として報告することや、その実績に基づいた案件完了時の「請求」業務まで、これまで以上に1つの案件ごとに複雑で高い精度の作業が求められる。「運送契約」から「実績」、さらにはその対価の「請求」まで、企業間をまたがる一連の流れへの対応が難易度を増す状況下で、これまでのアナログでの連絡や、Excel(エクセル)ベースの情報共有に頼っていては、運送事業には業務負担ばかりが増えかねないのである。

▲加藤氏は、法改正後に契約、実績、請求の各工程ごとの業務煩雑化を指摘する(クリックで拡大)

法改正後の「契約」「実績」「請求」対応の、実運送事業者とドライバーへのしわ寄せも危惧される。契約時にはなかった積み下ろし先での荷役が、実際の現場で発生してしまった場合はどうするのか、その荷役料金・荷役時間の取り扱いも現場ドライバーの業務負担となる恐れなど、一例を上げただけでも運用課題が山積していることがわかるだろう。情報伝達の齟齬(そご)や行き違いなどが業務中や請求時の事故となるケースや、急きょの指示変更での連絡体制など、アナログな情報伝達や書類管理に頼る状況では、改正法に対応する負荷が実運送事業者とドライバーにかかり、本来改正法が目指した目標とは大きなずれが生じかねない。

だからこそ加藤氏は、法改正後の対応でまず肝要なのは、企業間の「契約」「実績」「請求」の3点をつなげて管理できる、情報連携・伝達の仕組み作りだとする。荷主と元請け、元請けと運送会社へと企業間のコミュニケーションを、現状のアナログ運用からデジタルへと転換すること、それこそが改正法の目指す目標に向けては不可欠であり、取り組みの最優先事項だと断言するのだ。

荷主・運送会社・ドライバーをつなぐIKZO Online

加藤氏が提言する、企業間コミュニケーションをデジタル化するツールとなるのが、企業間データ連携プラットフォーム「IKZO Online」(イクゾー オンライン)だ。運送契約に関する受発注のやり取りや作業実績の報告、請求運賃との突合など、発注側と取引先とを双方向でつなぐ。電話やファクスによる連絡・確認業務のような非効率な作業からの転換、生産性向上を実現するサービスである。

荷主・運送会社・ドライバーをオンラインでつなげることで、発注からドライバー業務まで「契約」内容に基づいた案件処理が可能となる。元請け事業者にとっては、実運送体制管理簿の作成において下請け階層数を自動表示するなど、法対応を見据えた運用も効果的だろう。

荷待ち・荷役作業時間管理、「実績」管理のアナログからデジタルの転換においては、ドライバーの負担なく、荷待ち・荷役作業時間を管理し、荷主ともリアルタイムでの情報共有が可能な「ドライバーアプリ」機能を用意した。ドライバーアプリは、IKZO Onlineで登録した運行指示書や条件などの内容をドライバーがリアルタイムにスマートフォンのアプリ上で確認できるサービスで、荷主とドライバーの双方向で運行状況やデータを共有、確認することで企業間、ドライバーとのスムーズな連携効率化を促す。ドライバーにとってはアプリで簡単に作業実績の登録が可能、荷主にとっては発注依頼したドライバーの荷待ち・荷役作業時間の計測・管理や依頼車両のステータス管理が可能だ。運行情報、運行指示の管理効率化、ドライバーの負荷軽減、指示情報の齟齬を無くすことで、物流現場の連携ミスや負担を軽減する。荷主側にとって多重構造下での荷待ち・荷役作業時間の計測や管理に対応して、法令に準じた管理体制を整えることも容易となる。

さらに、「請求」の工程もオンラインで共有することで、請求業務においても双方向での効率化を実現する。運行案件ごとに、契約と運行時間・荷待ち時間・荷役作業時間の実績管理などとひも付けてオンライン上で完結できれば、煩雑なファクスなどでの請求運賃、支払い運賃の確認と承認などの作業からも解放される。

▲「IKZO Online」のサービスイメージ(クリックで拡大)

まずは、荷主・運送会社・ドライバーをつなぎ、企業間の「契約」「実績」「請求」までの情報連携と正確な情報伝達を実現することから、はじめて多重構造の是正や取引適正化で実効性のある対策も見えてくるのだ。

荷主が主導すべき全体最適化から、中小企業のデジタル連携も広がる

アナログからの脱却を基盤として、さらに今後は、荷主企業がIKZO Onlineの運用を主導して、発注段階から一気通貫の企業間デジタル連携を推進することも、物流の上流にあたる荷主企業にとっての大事な効率化の取り組みとなるのではないだろうか。荷主企業、特に規模の大きな特定荷主には、物流業務を俯瞰して、全体最適化を主導する責任も重くなる。物流統括管理者(CLO)が主導すべき物流のあり方でも、全体をいかに効率的につなげるかは重要なテーマだ。

抜本的な物流革新には、もはや個社での対応には限界があり、企業同士の連携が必須である。IKZO Onlineは、物流の上流から下流まで、荷主企業、運送会社それぞれが取り組むべき役割を見極め、共通の目標に向かうためのコミュニケーションにおける中心的役割を担うツールだとも言えるだろう。荷主企業が物流の上流でこのシステム導入を先導すれば、デジタル化が困難な下流の中小運送企業での運用も広がり、デジタル化の入り口に立つ企業、IKZO Onlineでつながる企業を増やすデジタル連携拡大にも貢献する。荷主、運送会社、ドライバーが手をつなぎ、共に踏み出す物流革新の歩み。その手をまず最初に差し出すのは、荷主の役割にほかならない。

加藤氏は、荷主以外にも「企業間連携を円滑にする規格化や標準化においては、政府の主導も必要」であると訴え、同社としても運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)を通じて連携拡大と強化に取り組むなど、自ら範を示す。さらにその先、目指すべきフィジカルインターネットの実現においては、運送業界の大部分を占める中小零細企業こそがデータで連携しなければならないだけに、将来、「中小運送事業者やドライバーが笑顔になるためのサポート」(加藤氏)を使命に掲げる同社ならではの取り組みや示唆に富む提言こそが、あるべき未来の物流像の実現における重要なヒントになるのではないだろうか。

ウイングアーク1st「物流ソリューション」ページ