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収益・業務の効率化を図るX Mileのロジポケ

2024年12月24日 (火)

話題「荷主はマーケティングなどの関係上、最新情報や世の中の変化に触れやすい立場にある。自分たちが得た知見を運送パートナーと共有すれば、より効率的に物流を最適化できるはず」。そう語るのは、運送のDX(デジタルトランスメーション)化ツールを提供するX Mile(クロスマイル、東京都新宿区)の安藤雄真氏(物流プラットフォーム事業本部ゼネラルマネージャー)だ。

物流の最適化を図るため、多重下請け構造の是正や、輸送運賃の適正化に取り組む必要を感じている事業者も多いだろう。こうした改革はサプライチェーンの上流が主導した方が進みやすいものだが、どのような取り組みを行うにしても、現場の実情把握は欠かせない。

安藤氏は自社のサービスなら現場の見える化が進むと言い切る。同社はどのように運送現場の解像度を上げようとしているのか。物流の最適化を後押しするX Mileの戦略を取材した。

X Mileが実現する現場の「見える化」

X Mileのクラウドサービス「ロジポケ」は、経営、労務、車両の管理から、安全教育、ドライバーの採用に至るまで、運送にまつわる多種多様な領域をカバーしている。そのためロジポケによる一元管理を進めれば、業務内容を共有・分析しやすいデータという形にまとめることが可能になる。データによる情報の統合管理こそ、ロジポケが謳う「見える化」だ。

▲ロジポケの機能一覧(クリックで拡大)

データ化のメリットは見える化だけではない。例えば2025年4月から、元請け事業者には「実運送体制管理簿の作成」という新たな義務が課される。管理簿には実運送事業者の名称や運送区間、貨物の内容を記入する必要があり、これを手作業で行った場合、大変な手間と時間がかかってしまう。

負担を被るのは元請け事業者だけではない。実運送事業者の多くは未だに紙や表計算ソフトといった、効率の上がらない記録手段に頼っている。このままの状態が続けば、現場は対応に追われることになるだろう。実際にトラックを操るドライバーにもしわ寄せがいく可能性がある。そして、中小零細が大半を占める運送事業者の多くは、これ以上の負荷に耐えられるだけのスタミナを持たない。ロジポケは、手作業・アナログでは対応しきれない業務を支援し、業務を効率化ないしは削減を実現する。

▲X Mileの安藤雄真氏

とはいえ「法令順守」を謳うだけでは、下流の運送事業者がツールの導入を進めるとは思えない。しかし、ロジポケは勤怠管理や点呼のチェック、配車管理など、運送事業者にとって必要不可欠な機能をたくさん備えている。安藤氏は「人的リソースが限られている中小零細企業こそ、ロジポケを入れるメリットは大きい。(元請け、下請け事業者が)お互いロジポケを導入しているなら、簡単に情報をまとめることができる」と話す。

物流という社会インフラを支えるサービスが必要

多重下請け構造については、すでに行政からいくつかの是正案が出されている。例えば「標準的な運賃」の設定だ。これは運送事業者の交渉力が弱い現状を踏まえ、行政が収受する運賃の目安を定めたもの。しかし、現場からは「高過ぎて実情に見合っていない」との声も上がっている。標準運賃を盾に元請けに交渉を迫っても、一蹴されるのがオチだ。また「下請けを二次までに制限する」という案もある。これも、季節や時期によって荷量がダイナミックに変化する物流業界の実情とは合わないとの声もある。

このように行政もはっきりとした方向性を示せていないが、法律による規制・締め付けだけは確実に強化される見通しだ。このような状況下では、当事者たる運送事業者、あるいはさらに上流の荷主などによる取り組みがますます重要性を増していくだろう。

こうした取り組みを後押しする上でも、DX化は非常に有効だ。安藤氏は「物流は社会になくてはならないインフラ。私は過保護なくらいのサービスを提供しても良いと思っている」とコメント。X Mileが物流に携わる事業者にとことん伴走する姿勢を強調した。

DXが実現する、運送の質向上とドライバーを守る仕組み

物流の最適化には、ドライバーの待遇改善が絶対条件だ。昨今、業界を覆う下請け構造是正の流れも、結局はドライバーの待遇改善という大目標につながっていく。現状を分析して、安藤氏も「行政が下請け構造を是正する背景には『運送の質を上げなさい』『ドライバーを守りなさい』というメッセージがある」と語った。

X Mileが行ったアンケートによると、ドライバーの働き方改革に対応する形で、運送・物流事業者のそれぞれ10%以上が「ドライバーの労働時間が減った」としている。運送に関しては「減った」「やや減った」と答えた事業者の合計は6割に迫る。しかし、労働時間の見直しが進む一方で、ドライバーの賃上げをした運送事業者はほとんどがないのが実情だという。金銭面におけるドライバーの待遇改善にはまだまだ課題が多い。

▲ドライバー1人あたりの労働時間調査結果(X Mile調べ)

ドライバーが適正な賃金を受け取れなければ、運送の質を担保することはできない。それどころかドライバー不足がさらに進み、輸送力がますます低下することも考えられる。そうしないためには適正な運賃を収受し、それをドライバーに還元する仕組みが必要だ。

ロジポケは運送事業者自らが事業改善に取り組むきっかけを与えてくれる。例えば勤怠管理は、ロジポケの最も基本的な機能の一つだが、アナログな記録方法と比べて信ぴょう性が高く、実運送の実態を正しく伝えることができる。これをベースに運賃交渉をするのも、ボトルネックを見つけて配送効率を上げるのも、すべてはユーザー次第だ。

ドライバーの労働水準の改善には、安全教育もまた重要な役割を果たす。ロジポケの安全教育機能は動画などを用いた直感的なもので、ドライバーが当事者意識を持ちやすい。X Mileは動画の長さを1本2-3分程度に凝縮する代わりに、月に2、3本観ることを推奨している。密度が高い分、「実施すること」自体が目的になりがちな集合研修などよりも、よほど効果が見込める。そして事故件数の減少は、そのまま運送の質向上と同義だ。

ロジポケはクラウドサービスのため、システムの基幹部分はX Mileが握っている。データの改ざんなどは不可能に近い。これは不平等な取引や、無理な要求などから事業者やドライバーを守ることにもつながる。

「デジタルのデータをうまく活用すれば『質のいい運送』をアピールできる。事故やクレームの少ない実情を対外的に示せれば、会社の価値も上がるはず」(安藤氏)

物流をコストではなく、武器として捉える

安藤氏は本誌イベントでも企業間連携の必要性を強調した

安藤氏は業界の変革が進みつつある雰囲気を肌で感じている。「荷主や元請け事業者も、運送事業者を巻き込んで変わろうとしている。荷主には物流をコストではなく、武器として捉えてほしい。これからは『サプライチェーンの一部』という大きな枠の中で物流を考えることが大事」と安藤氏は語る。

サプライチェーン全体を可視化しようとしたとき、デジタルツールの導入は最も有力な選択肢の一つになる。自社の物流の透明度が増せば、収益や業務の効率化を図ることも可能になるだろう。まだまだ数は少ないが、業務の効率化や順法を目的に、配送パートナーにロジポケをプレゼンテーションしてくれる荷主もいるという。感度の高い荷主はすでに物流の最適化に向けて動き出している。

サプライチェーンの上流と下流をつなぐツールを提供する側であるX Mileも、横のつながりを強化しようとしている。安藤氏は同社を代表して「自社製品の導入だけを推進するのではなく、これからは他社製品との連携にも力を入れていきたい。企業をまたいだ連携は実現間近」とコメント。サプライチェーンをDXでつなぎ、物流を武器とする各社の動きは、すでに具体性を帯び始めている。

ロジポケサービス概要