ララ・クロフト トゥームレイダー 美しき逃亡者
【らら くろふと とぅーむれいだー うつくしきとうぼうしゃ】
ジャンル
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アクションアドベンチャー
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対応機種
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プレイステーション2 Windows 98/2000/XP Mac OS X
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発売元
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アイドスインタラクティブ
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開発元
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Core Design
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発売日
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2003年10月23日
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定価(税別)
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【Win】7,980円 【PS2】6,980円
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レーティング
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CERO:15才以上対象
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配信
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【Win】Steam (英語版) 2012年11月29日/711円
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判定
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クソゲー
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シリーズファンから不評
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ポイント
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シリーズ最大の黒歴史 Core Design倒産の元凶 何もかも中途半端
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トゥームレイダーシリーズ
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概要
『トゥームレイダー』シリーズの据置用タイトル6作目。
シリーズ初のPS2、当時他の会社もこぞって取り入れていたステルス要素やシナリオ分岐などの新要素を取り入れ、マンネリ化したシリーズを打開すべく開発された。
発売前には新生『トゥームレイダー』3部作の第1弾として発表されていたのだが…。
原題は『Tomb Raider:The Angel of Darkness』で、そのタイトル通り全体的に暗めな作風になっている。
ストーリー
『4』ラストにおける遺跡崩壊から奇跡的に生還したララ・クロフトだったが、
仲間であり師であったフォン・クロイ教授の裏切りともとれる行動によりすっかり人間不信に陥り、自宅で陰鬱とした日々を送っていた。
ある日、教授からパリに来てほしいと電話を受ける。現在のパリは「モンストラム」と呼ばれる謎の猟奇殺人犯による連続殺人が起きていたが、怒り冷めやらぬララは教授の下へ向かった。
教授はララに助けを求めるが、突如拳銃を取り出して発砲され、ララは気を失ってしまう。
気が付いた時、そこには息絶えた教授の遺体があり、ララは殺人犯として逃亡するハメになってしまう。
特徴
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基本操作はこれまで同様のラジコン操作。
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PS2版は左スティックを倒した方向に移動し、スティックの倒し具合で歩きと走りが切り替わる操作に変更されている。通常通り、歩きボタンも存在する。
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新たに歩きよりも敵に気付かれにくくなる「ステルス」が追加された。
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ステルス中に壁に向かってアクションボタンを押すと壁に張り付いて移動することが可能になった。この状態で壁の端でさらに移動しようとする向こう側を覗きこめるようになった。
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ステルス中に敵の背後に近づいてアクションボタンを押すとステルスキルを行えるようになった。
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しゃがんだ状態から這って移動する事が可能になった。
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最初はダッシュが使えず、ゲームがある程度進むと解禁される。
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マウスや右スティックでカメラを操作できるようになった。
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「グリップゲージ」が追加され、ぶら下がり移動に時間制限がついた。
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特定の場面で特定の行動をすると身体能力が強化されていき、ぶら下がり時間の延長、ジャンプ力の強化といった成長要素が追加された。
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特定の場面では選択によってルート分岐が発生するようになった。
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ストーリー自体に変化はないが、異なるステージに進むといった変化が発生する。
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シリーズ初にして唯一のダブル主人公を採用しており、新主人公のカーティス・トレントを操作する場面がある。
問題点
もっさりした操作性
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全体的にモーションが遅く、PS1時代のキビキビとした操作性はなくなってしまった。
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特に移動。前作まではボタンを押している間だけ歩き、通常は走り移動でスムーズに移動が行えたが、今作では走る際も必ず数歩歩いてから走り出すようになった。走る速度自体も遅い。
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戦闘が必要な場面でももたもたと歩くのは変わらないため、戦闘が面倒くさい要因の1つとなっている。場面によっては処理落ちによって、もっさり具合に拍車がかかるおまけ付き。
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特定の場面では時間制限が発生するが、これが非常にギリギリで少しでももたつくとゲームオーバーの難所。これをこのもっさり操作でやるのは難しい。
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前述のグリップゲージについても非常に中途半端。
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そもそも強化は特定のオブジェクトを押し引きしたり、扉を蹴破るだけでパワーアップする固定方式で、やらされている感が強い。
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似たような要素のある『MGS2』などと違って能動的に鍛えることが不可能で行動を制限するだけの要素に成り下がっている。
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元々、開発段階では成長要素を取り入れる予定だったらしいが、余談にて後述する開発のドタバタでお蔵入りとなり、中途半端に残ったのがグリップゲージとの事。だったら完全に削除してもよかったのでは…。
カメラワーク
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一部強制で固定カメラになるためジャンプを多用する本作では最大の問題の1つと言っても過言ではない。
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また、スニーキングで進む場面でも固定カメラになる場所があるため、せっかくの覗き込みアクションの意味がなくなっていたり、逆に周囲を確認しづらくなるなど厄介極まりない。
なんちゃってステルス
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ステルス自体、失敗しても特にペナルティがある訳でもないため、普通に突っ込んでいった方が楽に突破できる場面も多い。
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見つかっても敵が増援を呼んだりする事はないので、ごり押しで突破できてしまう。さらに見つかっていない敵に触れても特に反応しないなど作りこみも浅い。
今までのトレードマークだった二丁拳銃が無い
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発売前のPVではガンガン撃ちまくっていた二丁拳銃だが、今作の正規プレイではストーリー中のムービーで二丁拳銃を構える(もしくは左右のホルスター両方に入れてある)場面はあるものの、プレイヤーが操作できる場面には二丁拳銃は存在せず、拳銃タイプの武器は全て一丁を両手で構えるスタイルになっている。
遺跡がほとんど登場しない
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『2』以降、遺跡以外のステージが増えたが、今作はいつにも増して遺跡が舞台となるステージが少なく、「トゥームレイダー」というタイトルに疑問符がつく。
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ララが逃亡者となっているため、序盤から裏通りなどを移動する場面ばかり。唯一遺跡と言えるのは中盤で訪れる「古代の墓」のみ。
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後半は『バイオハザード』のようにサナトリウムや研究所が舞台となり、実験体クリーチャーが敵となるシリーズの中では非常に異色な展開となる。
ロードが長い
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特にPS2版では顕著。
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前半に訪れる「パリの貧民街」は街中が複数のマップに分断されているため、階段を上がったり路地に進もうとしたりするたびにロードが挟まるというイライラポイント。別にイベントが多いわけではなく、ほぼ無人なのにこの有様。
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過去作と違ってチャプターで区切られていないため、他のステージでも途中にロードを挟むようになっている。
その他
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カーティスを操作できるのは後半のごく一部のシーンのみ。結局ほとんどの場面はララ操作で進む。
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カーティスは超能力を使うという設定があるが、ゲーム面でそれが反映されているわけでもなく一部の謎解きで勝手に使われるのみ。
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換金アイテムが用意されており質屋で売る事が出来るのだが、買い物できるのは極一部の場面だけ。一度も利用しなくてもクリア可能でおまけ要素などにも直結しない。本作の中でも存在価値不明な要素の筆頭。
PS2版の問題点
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アナログスティック操作は問題だらけ。
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普通に移動する場合は問題ないのだが、倒した方向にすぐ振り向くわけではなくゆっくり回り込む形で移動するため、穴を飛び越える際の微調整は非常にやりにくい。
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立ち止まった状態でスティックを入れればその方向に振り向いてくれるが、こちらも微調整しにくいためストレスが溜まる。これならPC版同様、ラジコン操作の方がマシである。
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スティックのみで歩き移動が出来ること自体は良いのだが、足場の端から落ちないようにするには従来通りボタン入力で歩き状態に切り替える必要があるなど、やはり中途半端になっている。
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おまけにPS2版ではビハインドビュー(常時背後視点カメラ)が廃止されたため右スティックで逐一調整せねばならず、状況によっては突然スティックを入力していた方向と別の方に移動するなど少なからずプレイに支障をきたす要因になっている。
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日本語訳は微妙におかしく、違和感のある言い回しが多い。さすがに意味が通じないほどではないが。
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北米版のみ落下中にポーズをかけるとキャーキャー鳴り響くバグが発生する。速攻でミュートにした方がマシ
賛否両論点
ストーリー分岐の追加
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会話中の選択肢により展開が変化するインタラクティブ性が取り入れられ、一本道だったストーリー・ゲーム進行に彩りを添える要素となった。
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歴代シリーズでも今作のみの要素であり、新要素の中では評価できる。
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ただ、分岐と言ってもステージの入り方が変化したり、入手できるアイテムに差が出る程度。ゲームオーバーになる選択肢もあるが、ごく一部のみ。
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選択肢を選ぶためか、会話を飛ばせないのも地味に面倒くさい。
評価点
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グラフィックはPS1時代から順当にレベルアップしており、当時のシリーズで最高峰のグラフィックを実現していた。
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PS1時代のカクカクで女性のプロポーションを強調したようなデフォルメ体型から大きく進化しており、他のゲームと比較しても十分すぎるほど良くなっている。
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アイテムを拾ったりレバーや扉を操作する際、以前に比べてアクセス可能な範囲が広がり、自動的に近づいてくれるようになった。
総評
マンネリ化し、評価も下がっていたシリーズに新風を吹き込もうと様々な要素を取ってつけたものの、その多くが中途半端すぎて逆に大幅に評価を下げてしまった。
グラフィックなど進化している部分もあるものの、大半のゲームプレイ、シナリオに問題を抱えているため評価を覆せるほどではなく、シリーズ最低作品の烙印を押されている。
一応遊べない事はないものの、最後までプレイするには非常にストレスのかかるクソゲーという評価が一般的である。
あまりに不評だったため本作のキャラクター・ストーリーは封印され、公式から黒歴史化された。
長らくシリーズの開発に携わってきたCore Designは親会社でもあるアイドスから契約を切られ、次回作からは別の傘下会社が開発を担当することになるなどシリーズに与えた影響は非常に大きかったと言えるだろう。
余談
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本作の同年に実写映画版第2作目が公開されたのだが、海外では本作の不評の影響で前作から興収が著しく低下したとされている。
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イギリスのゲーム雑誌、EDGEの2006年8月号に掲載された当時のCore Designの開発メンバーのインタビューによると「ゲームが完成していないにもかかわらず、2003年の財務目標を達成するために、Eidosの圧力によって無理やり発売を強行させられる羽目になった。そのせいで本来搭載されるはずだった要素の大半はスケールダウンされたり削除されることはおろか、UI関連のテストすら端折られてしまった」と述べている。
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本作の失敗はCore DesignはおろかEidos Interactiveにまで悪影響が及ぶ形となった。販売数は全世界で250万本と言う数にもかかわらず、開発関連費用がペイできず、上層部が数名ほど更迭されている。
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本作発売から3年後、Core Designの開発部門は『Aliens vs. Predator』や『Sniper Elite』シリーズなどで知られるイギリスのデベロッパー、Rebellion Developmentsに売却され、最小限の事務員だけを残す状態となったのち、2010年に倒産した。
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一方、売却された開発部門はRebellion Derbyとして『Shellshock2:Blood Trails』や『Rogue Warrior』といったFPSを手掛けたものの、スタジオの再編・整理により2010年の3月に閉鎖された。
最終更新:2024年03月13日 05:12