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ALAN WAKE

【あらん うぇいく】

ジャンル アクションサイコスリラー

対応機種 Xbox 360
Windows XP~7
メディア DVD-ROM 1枚
発売元 【360】マイクロソフト
【Win】イーフロンティア
開発元 【360】Remedy Entertainment
【Win】Nitro Games*1
発売日 【360】2010年5月27日
【Win】2012年2月16日*2
定価 【360】7,140円
【Win】パッケージ版:7,000円
プレイ人数 1人
レーティング CERO:B(12才以上対象)*3
廉価版 【360】プラチナコレクション
 2012年3月8日/2,940円(税5%込)
配信 【360】ゲーム オン デマンド:
 2014年5月1日/3,024円(税8%込)
【Win】Steam:1520円(税8%込)
判定 良作



アラン…起きて



概要

MAX PAYNE』を手がけたフィンランドのデベロッパー、Remedyが送るホラーアクションアドベンチャー。
小説家アラン・ウェイクが休暇で訪れた街ブライトフォールズで怪奇事件に巻き込まれる姿を描く。
光と闇をフィーチャーした物語とシステム、何よりストーリーの見せ方のセンスの良さが評価された一作である。


ストーリー

スランプに陥っていた人気小説家アラン・ウェイクは、 妻であるアリスと共に休暇として田舎町ブライトフォールズを訪れる。
だが、アリスが自分をブライトフォールズに連れてきた本当の理由…精神科医に診せるという目的を知り、口論になってしまう。
その直後にアリスが何者かを目にして悲鳴を上げ、湖に転落。アランは彼女を助けるべく湖に飛び込むも、気付いた時には大破した車の中におり、一週間も時が流れていた。
妻の安否を確かめるべく暗い森の中を彷徨うアランに「闇」を纏う者達が襲い掛かる。
更には道中に散乱する、書いた覚えのない原稿。その原稿に書かれた通りに起きる出来事…。
様々な怪現象が襲い来る中、アランはアリスを取り戻すべく「闇」との戦いに身を投じる。


特徴・評価点

ストーリーの見せ方と雰囲気

  • 本作では物語の要所でリアルタイムにアランのモノローグが入るという演出が行われ、まるで小説をなぞっているかのような気分が味わえる。
    • 中には特定のアイテムを入手しないと聞けないものもあったりと、作りが非常に丁寧で好感が持てる。
  • 随所にはアランが書いた(しかし本人には身に覚えのない)原稿が落ちており、先のストーリーの展開を断片的に予言していたり、アラン以外の登場人物の行動や心理状態が描かれている。
    • この原稿の存在自体もそうだが、そこに書かれた不吉な未来の暗示、謎を深める不可解な記述がプレイヤーを混乱に叩き落とし、言いようのない緊張感を与えつつもその先が気になる好奇心を植え付ける。
    • 他の登場人物の動向についても多数記述されており、集めることでよりストーリーの理解を深めることができる。
    • 何故このようなものが存在するのか。それはストーリーを進めれば自ずと明らかになるだろう。
  • ストーリーはエピソードごとに分割されており、一度クリアしたエピソードはタイトルから自由に再プレイ可能。
    • 海外ドラマを意識しており、エピソード開始時には『24』などのように「これまでのアランウェイク」として前エピソードのあらすじを振り返る演出がある。なお、一度見たムービーも見返せる。
    • ちりばめられた謎、サスペンスな展開の連続と、とにかくストーリーの続きが気になる作りになっている。
    • 全体的に「ホラーの帝王」こと、スティーブン・キングの小説の影響が大きく、作中でも言及がある。
      • また、海外ドラマ『ツイン・ピークス』や『LOST』に類似した雰囲気も随所に見られ、実際にスタッフも参考にしたと語っている。
      • 近い時期には同じく『ツイン・ピークス』の影響が大きく、雰囲気もやや似ているAADV『Red Seeds Profile』が発売されているが、本作はあちらと違ってアクション・バトルがメインとなっている。
    • 本編は全6章構成。発売後に追加シナリオの「The Signal(シグナル)」と「The Writer(小説家)」がDLCとして配信されている*4
  • 会話は全て日本語字幕、吹き替え音声に対応している。訳のクオリティも高い。360本体の言語設定を変えることで英語でのプレイも可能。
    • 敵キャラも何らかの言葉を呟いているが、これらも全て吹き替えられている。セリフの途中で音声にエフェクトがかけられるなど「正常な人間ではない」演出もグッド。
    • なお、Steam版も日本語完全対応なので、360/Winどちらで購入しても問題はない。
  • ゲームは昼間と夜中を繰り返して進む。
    • 昼間のステージもプレイアブルだが、敵は存在しないため平和でホッとする。
      • 昼間に登場するNPCも魅力的なキャラクターが多く、彼らとのやりとりが楽しい。しかし、夜中になると彼らが狂気に侵され、アランを襲ってくる。このギャップがとにかく怖い。
      • 敵は自分に対し「殺意がある」としか分からない存在で、一見ただの人間が斧などで攻撃してくるだけなのに非常に不気味。
    • メインステージが夜中なので当然辺りは暗く、視界は不良。手に持つライトの灯りを頼りに進まねばならず、街頭や明かりの点いた家を発見した時の安堵感と再び暗闇の中に踏み出さねばならない恐怖がプレイヤーを苛む。
    • 光が存在することでより闇が強調され、さらなる恐怖を生む雰囲気の良さも本作の人気に寄与している。
    • 後発のWin版ではプレイヤーからの要望に答えてHUDを全てオフにすることも可能になり、より雰囲気を楽しめるようになった。

光と闇を取り入れたシステム

  • 基本的な部分はTPSに近いが、以下のような独自要素もある。
    • LBを押しながら左スティックを入れると回避アクションが発動。うまく回避すると動きがスローになる演出が入る。そのままダッシュすることも可能だが、ダッシュし続けたり何度も回避すると息切れして動きが鈍くなる。
    • リロード時、Xを連打すると素早くリロードできる。装弾数の多いリボルバーなどで有効。
  • Lトリガーで構えるようになっているが、この時フラッシュライトで敵を照らすことが出来る。ライトの光を当てると敵は怯み、ある程度照射することで「闇」(バリアのようなもの)を取り払って大ダメージを与えられるようになる。
    • なお、構え状態でなくてもフラッシュライトの効果はある(構えると強化される)。レティクルが表示されないので、照準の代わりとなっている。
    • 照射しつづけているとバッテリーを消費するが、照射をやめると徐々に回復していく。Yでバッテリーを交換すると素早く回復できるが、交換できるバッテリーは消耗品。
    • 武器の中には強烈な光を発して近くにいる敵全てに効果がある「閃光手榴弾」や「発炎筒」「フレアガン」といったものも用意されている。
      • 「発炎筒」は燃えている間は敵を寄せ付けず、近距離なら「闇」を剥ぎ取ることもできる。「閃光手榴弾」と「フレアガン」は広範囲の敵を一気に倒したり大ダメージを与えることが可能であり、自分は安全な手榴弾とグレネードランチャーのようなものとなっている。
  • ステージ内にある電灯などで照らされた場所に入ると素早くHPが回復出来る。また、光の中にいる限り敵は現れない安全地帯となっている。
    • 中には電源供給が断たれているものもあるが、どこかにあるジェネレーターを起動することで回復できる。しかし、ジェネレーターを起動するには時間がかかるので安全の確保も重要になる。
  • ステージにはフラッシュライトの光が当たると矢印などの落書きが浮かび上がることがある。この矢印を辿るとアイテムを入手できる。
  • 車内灯が点いている車は運転することが可能。
  • このように、ゲーム全体を通じて「光」が非常に重要なファクターとなっており、光と闇の対比が強調されている。
  • なお、Win版もXInputコントローラーに対応しているので、上記の操作は全て適用できる。もちろん、キーボード+マウスの操作にも対応している。
  • 全体的にアランの動きが洗練されていない点も相俟って、戦闘の難易度は高め。
    • 敵は多数で攻めてくるため、取り囲まれたり光を照射している間に横から殴られることもしばしば。だが、そのギリギリ感が焦燥感や恐怖心を煽る一因にもなっている。
    • アランは作家であって身体能力は優れている訳ではない。HPは少ないし、ちょっと走るだけで息が上がってしまう。それが緊張感となる。
    • もちろんボス戦も存在するが、ボスは攻撃を当てると突然高速で移動し視界から消える。このため、常にどこから襲ってくるか分かりにくく1対1での戦いにも緊張感が生まれるようになっている。
    • やられてもチェックポイントから何度でも再挑戦可能。敵の攻撃の激しい箇所は何度もリトライを繰り返して突破口を切り開く必要も。
  • やりこみ要素も豊富。
    • 前述の原稿集め、コーヒーポット回収、詰まれた缶を崩す、テレビ番組を視聴する…など達成率に関する要素が非常に多い。
      • 原稿集めは難易度ナイトメアでないと取得できないものもある。

賛否両論点

  • 恐怖を突き詰めている訳ではない作風。
    • ホラー作品には違いないが、グロテスクな怪物、目を覆うような残虐描写といった要素がなく、直接的な怖さはあまりない。連続ドラマのようなテンポの良さや、時には協力者の同行もあり、進むのを躊躇わせるほどの恐怖を追求しているとは言いがたい。
    • 最もよく戦うことになる人間タイプの敵は、見た目は黒っぽい人間でしかなく、視覚的な怖さは薄い。刃物や鈍器で襲い掛かってくるその動作も力強く、闇に操られる傀儡というより、単なる殺る気の暴漢にも見えてくる。
    • むしろ「作家トーマス・ゼインは湖で溺れた恋人を助けたが、彼女は邪悪な何かになり果てていた。ゼインは恋人の心臓を取り出したが彼女が死ぬことはなかった」「元バンドマンの老人オーディンは、バンド時代に湖の水で仕込んだ酒を飲んで狂気に駆られ、自ら片目をえぐり出した」といった断片的な情報の方が、想像力に訴える怖さを持っているかも知れない。
    • 怖さの匙加減に万人の正解はなく、プレイヤー次第で物足りないとも遊びやすいとも言える点だろう。

問題点

  • 回避アクション時に大きく画面がブレる。酔いやすい人には辛い。
    • また、回避するとカメラの向きも大きく変わるため進行方向が分からなくなったり、周囲を確認できなくなる事がある。
  • エピソードをクリアするたびに武器や弾薬が没収されてしまう。
    • 武器の種類が少なく、戦闘でやる事が限られているため、単調・作業的という声も。
  • 豊富なやりこみ要素だが、達成率や実績のコンプ以外の意味はほとんどない。
    • 特にあちこちに落ちているコーヒーポットは集めても特に何かあるわけでもなく、配置もけっこうおざなり。
    • 他の収集物はストーリーに関わったりラジオ番組を聴けるといった独自要素も用意されているので、あまり気にならないのだが。
  • 雰囲気や見せ方は良いが、ストーリーは難解という声も。
    • ラストシーンも解釈に委ねる部分があり、主人公アランの最終的な境遇も不明瞭なまま終わる。
      • DLCにてアランのその後が描かれたものの、彼自身が行動を始めるという所で終わるため、最終的な解決には至っていない。
      • 以降のアランの動向はスピンオフや続編で描かれることになる。ただ、スピンオフは日本語吹き替えではない(後述)。
  • プレイ時間も他のTPSに比べると短め。
    • ただし、極端に短い訳ではなく、個々のステージは長めに作られている。
  • 難易度イージーが存在しない。
    • このゲームは最低難易度のノーマルでさえ敵は本気で殺しに来る*5ため、この手のゲームに慣れている人間でさえ結構な緊張感を味わうことになる。
      • 光を発する攻撃手段が無ければ、まずライトで「闇」をはぎ取る必要が生じるため、狙いを定めて一体一体を着実に処理しなければならず、銃弾が有り余ったとしても撃ちまくって無双するような真似は通用しない。
    • にもかかわらず、敵は四方八方から容赦なくリンチを仕掛けて来る上に集団で攻めてくるので、難しい箇所では何度も死ぬ羽目になることも。
    • このため、自ずとプレイする人間をかなり選ぶゲームとなってしまっている。当然ながら受けるダメージが急上昇する難易度ナイトメアでの緊張感は相当のものとなる。
    • リマスター版にはイージーが追加されているが、それでも敵の戦法自体は変わらない。

総評

良質な雰囲気や光と闇を強調した作風が多大な支持を得た良作ホラーアドベンチャー。
ストーリーと恐怖演出について高いレベルで纏まっており、良質なホラー映画や小説を読んだ読後感を想起させる作風に魅せられたプレイヤーも多い。
反面、システムに粗が多く、それらを改善した続編を望む声も多い。
スティーヴン・キング作品や、『ツイン・ピークス』などの海外ドラマを意識した演出も多いので、それらが好きならプレイして損はないだろう。


余談

  • 当初はWin版も360版と並行で開発が進められていたが、Remedy側の開発人員不足*6とマイクロソフト側でのXbox向け独占販売戦略絡みによりWin版の開発が一時凍結されたという経緯を経た上での発売となった。
    • その反動からか、Steamでの配信が開始されてから48時間でWin版の開発費と広告費を回収できた上に、Steamでのローンチセールスも1位という快挙を達成した。
    • アメリカの情報誌『TIME』では2010年ベスト・ゲームに選出されている。
  • 2018年9月には海外TVドラマシリーズの制作が発表された。カナダの映像制作プロダクションContradiction Films*7が制作を手がけ、ゲーム版のシナリオを担当したSam Lake氏もエグゼクティブプロデューサーとして参加するとのこと。
    • ただ、残念ながら2021年現在続報は無い。
  • 2017年5月15日に本作で使用されている楽曲の使用許諾契約が終了することに伴い、パッケージ・DL版とも一時販売停止となっていたが、2018年10月26日に楽曲ライセンスの使用許可が再度下りたことによりまずはWin版の販売が再開された。一方、360版は遅れに遅れ2019年12月末頃に再開された。
  • 2019年7月1日、Remedyが販売中の作品から得たロイヤリティ収入を投資家向けに報告する席上で、「マイクロソフトから『ALAN WAKE』シリーズの販売権を獲得した」と発表した。Remedyの公式見解によると今回の販売権獲得は「さらなるプラットフォームにも発売したいとなれば、自分たちの判断だけでできるようになった」と説明している。
    • そしてその言葉の通り、2021年に後述するリマスター版がマルチプラットフォームで発売される運びとなった。
  • 本作は同じRemedy Entertainmentが開発したアクションアドベンチャー『Control』と世界観を共有しており、同作のDLCにおいてクロスオーバーが行われている。

その後の展開

  • 2012年2月22日に戦闘に重点を置いたダウンロード専売のスピンオフ『Alan Wake's American Nightmare』が360/Winで配信された。
    • ストーリーは本作から連続しているのだが、残念ながらこちらは日本語吹き替えされていない。
  • リマスター版である『Alan Wake Remastered』が2021年10月5日にPS5/XSX/PS4/One/Winで、2022年10月20日にSwitchで発売された。PS系ハードとしては初のリリースとなる。
    • 次世代向けのビジュアル強化が導入された本編と2つの拡張パック(The Signal/The Writer)に加えコメンタリが収録されている。
    • 公式サイトではオリジナル版とリマスター版のビジュアルの比較も見られる。また、下記のような比較動画もアップロードされている。
    • また、ゲーム内設定での音声切り替えに対応している。ただし、英語音声にしてもムービー中の音声は日本語固定なので注意。
      • なお、前述したスピンオフ『Alan Wake's American Nightmare』のリマスターは計画が無いとのこと。
+ オリジナル版とリマスター版の比較動画

  • 2021年12月に正式な続編となる『ALAN WAKE 2』が発表された。本作に引き続きアラン・ウェイクを取り巻く物語が描かれ、トレーラーでは獣のように歯を剝くアラン・ウェイクの姿が映し出されている。
    • 対応機種はPS5/XSX/Win*8で、2023年10月27日に発売された。なお、価格を抑えるという理由から『2』はダウンロード専売となる。
    • また、発売直前には人気バトルロイヤルゲーム『FORTNITE』内において遊べるアラン・ウェイクの物語を追体験できる新作『Alan Wake: Flashback』も配信されている。

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ACT
最終更新:2024年06月15日 15:00

*1 フィンランドのデベロッパー。主にヒストリカル海洋系RTS作品を手がけており、代表作に「East India Company」「Pirates of Black Cove」がある。Remedyのサポートの下、本作のWin版の移植を担当している。

*2 パッケージ及びSteamダウンロード版の発売日。海外ではオーストリアのNordic Gamesがパッケージ版の発売元。日本ではズーから2012年3月30日にパッケージ版が発売された。

*3 現在Xboxストアで配信されているダウンロード版のレーティングはIARC:16+となっている。

*4 後発のWin版についてはこれらの追加シナリオが元から含まれた上での発売となった。

*5 二手に分かれてくる、背後から襲ってくる、走って追ってくるという手段を多用する。

*6 本作開発時点でのRemedyは従業員が50人ほどの小規模な会社だった。

*7 ゲームの実写化作品では『Dead Rising: Endgame』『Mortal Kombat: Legacy』などを手がけている。

*8 Win版はEpic Games Store独占配信となっている。