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JP4997100B2 - ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ Download PDF

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Description

本発明は、ゴム組成物及び該ゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いた空気入りタイヤに関し、特にタイヤの湿潤路面での操縦安定性及び低燃費性を改善することが可能なトレッド用ゴム組成物に関するものである。
近年、環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出規制の動きに関連して、自動車の低燃費化に対する要求が強まりつつある。このような要求に対応するため、タイヤ性能についても転がり抵抗の低減が求められている。ここで、タイヤの転がり抵抗を減少させる手法としては、タイヤのトレッド部に適用するゴム組成物としてより損失正接(tanδ)が小さい低発熱性のゴム組成物を用いることが有効である。
これに対し、充填剤としてカーボンブラックを用いたゴム組成物のカーボンブラックの全部又は一部をシリカで置き換えることで、ゴム組成物が低発熱化し、かかるシリカ含有ゴム組成物をタイヤのトレッド部に適用することで、タイヤの転がり抵抗が低減され、低燃費性が向上することが知られている。また、シリカ含有ゴム組成物をタイヤのトレッド部に適用した場合、低燃費性の向上に加えて、タイヤの湿潤路面での操縦安定性も同時に向上することが知られている。従って、シリカの配合量を増量したゴム組成物をタイヤのトレッド部に適用することで、タイヤの湿潤路面での操縦安定性及び低燃費性を大幅に改善できるものと思われる。
しかしながら、ゴム組成物中のシリカの配合量を大幅に増量すると、ゴム成分にシリカを高分散させることが難しく、このシリカの分散不良に起因して、ゴム組成物の損失正接(tanδ)を十分に減少させることができないという問題がある。また、充填剤であるシリカの分散性が悪いため、得られるゴム組成物は、破壊特性が不十分であるという問題もある。そのため、現在、シリカの配合量が高くても、ゴム成分へのシリカの分散性を十分に確保できる技術が求められている。
そこで、本発明の目的は、シリカを多量に配合したゴム組成物において、シリカのゴム成分への分散性を改良し、タイヤの湿潤路面での操縦安定性及び低燃費性を改善することが可能なゴム組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかるゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いた、湿潤路面での操縦安定性及び低燃費性に優れた空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、充填剤としてシリカを多量に含むゴム組成物において、一般に用いられるアロマオイル等の軟化剤に代えて、特定の芳香族ビニル化合物量、ビニル結合量及び重量平均分子量を有する低分子量の液状芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体を用いることで、ゴム組成物の混練りにおける練り効率が上昇して、シリカを高度に分散させることができ、結果として、ゴム組成物の破壊特性を低下させることなく、損失正接(tanδ)を大幅に低減でき、更に、得られたゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いることで、タイヤの湿潤路面での操縦安定性及び低燃費性を大幅に改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明のゴム組成物は、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの内の少なくとも一種からなるゴム成分(A)100質量部に対して、芳香族ビニル化合物量が5〜80質量%で、共役ジエン化合物部分のビニル結合量が10〜80質量%で、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量が80,000〜200,000低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)5〜60質量部と、充填剤(C)20〜90質量部とを配合してなり、前記充填剤(C)の50〜90質量%がシリカであることを特徴とする。
本発明のゴム組成物は、更に、シランカップリング剤(D)を前記シリカの配合量の5〜15質量%含有することが好ましい。この場合、ゴム組成物の低発熱性及びウェット性能を更に向上させることができる。
本発明のゴム組成物の好適例においては、前記ゴム成分(A)の50質量%以上がスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)である。
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)中の芳香族ビニル化合物がスチレンである。
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)中の共役ジエン化合物が1,3-ブタジエンである。
本発明のゴム組成物において、前記低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)は、未変性の低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体であっても、少なくとも一つの官能基を有する変性低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体であってもよい。ここで、前記低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)が、未変性の低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体である場合、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が80,000〜150,000ある。また、前記低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)が、少なくとも一つの官能基を有する変性低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体である場合、変性前のゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が80,000〜200,000ある。
また、本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を、トレッド部の少なくとも接地部分に用いたことを特徴とする。
本発明によれば、特定の芳香族ビニル化合物量、ビニル結合量及び重量平均分子量を有する低分子量の液状芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体を用いた、タイヤの湿潤路面での操縦安定性及び低燃費性を改善することが可能なゴム組成物を提供することができる。また、かかるゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いた、湿潤路面での操縦安定性及び低燃費性に優れた空気入りタイヤを提供することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のゴム組成物は、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの内の少なくとも一種からなるゴム成分(A)100質量部に対して、芳香族ビニル化合物量が5〜80質量%で、共役ジエン化合物部分のビニル結合量が10〜80質量%で、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が80,000〜200,000低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)5〜60質量部と、充填剤(C)20〜90質量部とを配合してなり、前記充填剤(C)の50〜90質量%がシリカである
ことを特徴とする。
本発明のゴム組成物においては、低分子量の芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)が、ゴム組成物の混練りにおける練り効率を改善し、充填剤(C)として配合されるシリカのゴム成分(A)への分散性を改善する。そのため、本発明のゴム組成物は、シリカの配合効果が十分に発揮され、低発熱性及びウェット性能に優れる。また、シリカの分散性が良好なため、本発明のゴム組成物は、十分な破壊特性を有している。更に、該ゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いることで、タイヤの破壊特性を十分に確保しつつ、タイヤの湿潤路面での操縦安定性及び低燃費性を大幅に向上させることができる。
本発明のゴム組成物のゴム成分(A)は、天然ゴム(NR)及び合成ジエン系ゴムの内の少なくとも一種からなる。ここで、合成ジエン系ゴムとしては、乳化重合又は溶液重合で合成されたものが好ましい。また、上記合成ジエン系ゴムとして、具体的には、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル−ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。上記ゴム成分(A)としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴムが好ましく、また、上記ゴム成分(A)の50質量%以上がスチレン−ブタジエン共重合体ゴムであることが更に好ましい。ゴム成分(A)の50質量%以上がスチレン−ブタジエン共重合体ゴムである場合、上記低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)を配合することにより得られる効果が顕著となる。なお、上記ゴム成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。また、ゴム組成物の耐摩耗性及び耐熱性の観点から、上記ゴム成分(A)としては、ガラス転移温度(Tg)が-60℃以上のものが好ましい。
本発明のゴム組成物は、芳香族ビニル化合物量が5〜80質量%で、共役ジエン化合物部分のビニル結合量が10〜80質量%で、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が80,000〜200,000低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)を上記ゴム成分(A)100質量部に対して5〜60質量部含有する。低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)の配合量が5質量部未満では、ゴム組成物の作業性が悪化し、60質量部を超えると、加硫ゴムの破壊特性が低下する傾向がある。
上記低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)は、芳香族ビニル化合物量が5〜80質量%であることを要する。芳香族ビニル化合物の結合量が5質量%未満又は80質量%を超えると、ゴム組成物の低発熱性とウェット性能とを十分に両立することができない。
また、上記低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)は、共役ジエン化合物部分のビニル結合量が10〜80質量%であることを要する。共役ジエン化合物部分のビニル結合量が10質量%未満又は80質量%を超えると、ゴム組成物の低発熱性とウェット性能とを十分に両立することができない。
更に、上記低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)は、ポリスチレン換算重量平均分子量が5,000〜200,000であることを要する。重量平均分子量が5,000未満では、ゴム組成物の損失正接(tanδ)が上昇して、低発熱性が悪化する傾向があり、一方、200,000を超えると、ゴム組成物の作業性が低下する。
上記低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)は、未変性の低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体であっても、少なくとも一つの官能基を有する変性低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体であってもよい。ここで、変性低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体は、少なくとも一方の末端がスズ含有化合物又はケイ素含有化合物で変性されたものであることが好ましい。
上記未変性の低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体は、ポリスチレン換算重量平均分子量が20,000〜150,000であることが好ましく、50,000〜150,000であることが更に好ましい。重量平均分子量がこの範囲であれば、ゴム組成物の低発熱性を更に向上させつつ、混練りにおける作業性の低下を確実に防止することができる。
また、上記変性低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体は、変性前のポリスチレン換算重量平均分子量が5,000〜200,000であることが好ましく、20,000〜150,000であることが更に好ましく、50,000〜150,000であることがより一層好ましい。変性前の重量平均分子量がこの範囲であれば、ゴム組成物の低発熱性を更に向上させつつ、作業性の低下を確実に防止することができる。
上記低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体は、単量体である芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とを重合開始剤を用いて共重合させることで得られる。ここで、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、これらの中でも、スチレンが好ましい。一方、共役ジエン化合物としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等が挙げられ、これらの中でも、1,3-ブタジエンが好ましい。また、上記重合開始剤としては、有機リチウム化合物が好ましく、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物が更に好ましい。重合開始剤として有機リチウム化合物を用いた場合、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とは、アニオン重合で共重合される。なお、重合開始剤の使用量は、単量体100g当り0.2〜20mmolの範囲が好ましい。
上記重合開始剤として好適なヒドロカルビルリチウムとしては、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチル-フェニルリチウム、4-フェニル-ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物等が挙げられ、これらの中でも、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム等のアルキルリチウムが好ましく、n-ブチルリチウムが特に好ましい。
また、上記重合開始剤として好適なリチウムアミド化合物としては、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチムジ-2-エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム-N-メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムメチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられ、これらの中でも、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド等の環状のリチウムアミド化合物が好ましく、リチウムヘキサメチレンイミド及びリチウムピロリジドが特に好ましい。
上記重合開始剤を用いて、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、例えば、重合反応に不活性な炭化水素溶媒中で、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との混合物を重合させることで共重合体を製造することができる。ここで、重合反応に不活性な炭化水素溶媒としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1-ブテン、イソブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
上記重合反応は、ランダマイザーの存在下で実施してもよい。該ランダマイザーは、共重合体の共役ジエン化合物部分のミクロ構造を制御することができ、より具体的には、共重合体の共役ジエン化合物部分のビニル結合量を制御したり、共重合体中の共役ジエン化合物単位と芳香族ビニル化合物単位とをランダム化する等の作用を有する。上記ランダマイザーとしては、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、1,2-ジピペリジノエタン、カリウム-t-アミレート、カリウム-t-ブトキシド、ナトリウム-t-アミレート等が挙げられる。これらランダマイザーの使用量は、共重合体の製造に使用した重合開始剤1molに対し、0.01〜100molの範囲が好ましい。
上記重合反応は、溶液重合で実施することが好ましく、重合反応溶液中の上記単量体の濃度は、5〜50質量%の範囲が好ましく、10〜30質量%の範囲が更に好ましい。なお、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との混合物中の芳香族ビニル化合物の含有率は、5〜80質量%の範囲が好ましく、目的とする共重合体(B)の芳香族ビニル化合物量に応じて適宜選択することができる。また、重合形式は特に限定されず、回分式でも連続式でもよい。
上記重合反応の重合温度は、0〜150℃の範囲が好ましく、20〜130℃の範囲が更に好ましい。また、該重合は、発生圧力下で実施できるが、通常は、使用する単量体を実質的に液相に保つのに十分な圧力下で行うのが好ましい。ここで、重合反応を発生圧力より高い圧力下で実施する場合、反応系を不活性ガスで加圧することが好ましい。また、重合に使用する単量体、重合開始剤、溶媒等の原材料は、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物等の反応阻害物質を予め除去したものを用いることが好ましい。
また、上記変性低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体は、(1)単量体である芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とを重合開始剤を用いて共重合させ、重合活性部位を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体を生成させた後、該重合活性部位を各種変性剤で変性する方法や、(2)単量体である芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とを官能基を有する重合開始剤を用いて共重合させる方法で得ることができる。ここで、重合開始剤として上記ヒドロカルビルリチウムを用いる場合、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、他方の末端が重合活性部位である共重合体が得られる。また、重合開始剤として上記リチウムアミド化合物を用いる場合、重合開始末端に窒素含有官能基を有し、他方の末端が重合活性部位である共重合体が得られ、該共重合体は、変性剤で変性せずとも、少なくとも一種の官能基を有する。
上記重合活性部位を有する共重合体の重合活性部位を変性剤で変性するにあたって、使用する変性剤としては、スズ含有化合物及びケイ素含有化合物が好ましい。ここで、該変性剤としては、下記式(I):
1 aZXb ・・・ (I)
[式中、R1は、それぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基からなる群から選択され;Zは、スズ又はケイ素であり;Xは、それぞれ独立して塩素又は臭素であり;aは0〜3で、bは1〜4で、但し、a+b=4である]で表されるカップリング剤が好ましい。式(I)のカップリング剤で変性することで、共重合体(B)の耐コールドフロー性を改良することができる。なお、式(I)のカップリング剤で変性して得られる共重合体(B)は、少なくとも一種のスズ−炭素結合又はケイ素−炭素結合を有する。
式(I)のR1として、具体的には、メチル基、エチル基、n-ブチル基、ネオフィル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。また、式(I)のカップリング剤として、具体的には、SnCl4、R1SnCl3、R1 2SnCl2、R1 3SnCl、SiCl4、R1SiCl3、R1 2SiCl2、R1 3SiCl等が好ましく、SnCl4及びSiCl4が特に好ましい。
また、上記変性剤として用いることができるケイ素含有化合物としては、下記式(II):
Figure 0004997100

[式中、Aは(チオ)エポキシ、(チオ)インシアネート、(チオ)ケトン、(チオ)アルデヒド、イミン、アミド、イソシアヌル酸トリエステル、(チオ)カルボン酸ヒドロカルビルエステル、(チオ)カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、炭酸ジヒドロカルビルエステル、環状三級アミン、非環状三級アミン、ニトリル、ピリジン、スルフィド及びマルチスルフィドの中から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基で;R2は単結合又は二価の不活性炭化水素基で;R3及びR4は、それぞれ独立に炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基で;nは0〜2の整数であり;OR4が複数ある場合、複数のOR4はたがいに同一でも異なっていてもよく;また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない]で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物及びその部分縮合物、並びに、下記式(III):
5 p−Si−(OR6)4-p ・・・ (III)
(式中、R5及びR6は、それぞれ独立して炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり;pは0〜2の整数であり;OR6が複数ある場合、複数のOR6はたがいに同一でも異なっていてもよく;また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物及びその部分縮物も好ましい。
式(II)において、Aにおける官能基の中で、イミンはケチミン、アルジミン、アミジンを包含し、(チオ)カルボン酸エステルは、アクリレートやメタクリレート等の不飽和カルボン酸エステルを包含し、非環状三級アミンは、N,N-二置換アニリン等のN,N-二置換芳香族アミンを包含し、また環状三級アミンは、環の一部として(チオ)エーテルを含むことができる。また、(チオ)カルボン酸の金属塩の金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、Sn、Zn等を挙げることができる。
2のうちの二価の不活性炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキレン基が好ましい。該アルキレン基は直鎖状,枝分かれ状,環状のいずれであってもよいが、特に直鎖状のものが好適である。該直鎖状アルキレン基としては、メチレン基,エチレン基,トリメチレン基,テトラメチレン基,ペンタメチレン基,ヘキサメチレン基,オクタメチレン基,デカメチレン基,ドデカメチレン基等が挙げられる。
また、R3及びR4としては、炭素数1〜20のアルキル基,炭素数2〜18のアルケニル基,炭素数6〜18のアリール基,炭素数7〜18のアラルキル基等が挙げられる。ここで、上記アルキル基及びアルケニル基は直鎖状,枝分かれ状,環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基,エチル基,n-プロピル基,イソプロピル基,n-ブチル基,イソブチル基,sec-ブチル基,tert-ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,オクチル基,デシル基,ドデシル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基,ビニル基,プロぺニル基,アリル基,ヘキセニル基,オクテニル基,シクロペンテニル基,シクロヘキセニル基等が挙げられる。また、上記アリール基は、芳香環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよく、例えば、フェニル基,トリル基,キシリル基,ナフチル基等が挙げられる。更に、上記アラルキル基は、芳香環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよく、例えば、ベンジル基,フェネチル基,ナフチルメチル基等が挙げられる。
式(II)において、nは0〜2の整数であるが、0が好ましく、また、この分子中には活性プロトン及びオニウム塩を有しないことが必要である。
式(II)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば(チオ)エポキシ基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物として、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2-グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン及びこれらの化合物におけるエポキシ基をチオエポキシ基に置き換えたものを挙げることができるが、これらの中でも、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
また、イミン基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物として、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-(1-メチルエチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-エチリデン-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-(4-N,N-ジメチルアミノベンジリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-(シクロヘキシリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物,メチルジエトキシシリル化合物,エチルジエトキシシリル化合物,メチルジメトキシシリル化合物,エチルジメトキシシリル化合物等を挙げることができるが、これらの中でも、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン及びN-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミンが特に好ましい。
更に、イミン(アミジン)基含有化合物としては、1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-4,5-ジヒドロイミダゾール,1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-4,5-ジヒドロイミダゾール,N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール,N-(3-イソプロポキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール,N-(3-メチルジエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール等が挙げられ、これらの中でも、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾールが好ましい。
また更に、カルボン酸エステル基含有化合物としては、3-メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルトリイソプロポキシシラン等が挙げられ、これらの中でも、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
また、イソシアネート基含有化合物としては、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリイソプロポキシシラン等が挙げられ、これらの中でも、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランが好ましい。
更に、カルボン酸無水物含有化合物としては、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-メチルジエトキシシリルプロピルコハク酸無水物等が挙げられ、これらの中でも、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物が好ましい。
また、環状三級アミン基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン,3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリメトキシ)シラン,(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン,(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリエトキシ)シラン,2-(1-ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリエトキシ)シラン,2-(1-ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリメトキシ)シラン,3-(1-ピロリジニル)プロピル(トリエトキシ)シラン,3-(1-ピロリジニル)プロピル(トリメトキシ)シラン,3-(1-ヘプタメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン,3-(1-ドデカメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン,3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)メチルシラン,3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)エチルシラン,3-[10-(トリエトキシシリル)デシル]-4-オキサゾリン等が挙げられ、これらの中でも、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン及び(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シランが好ましい。
更に、非環状三級アミン基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、3-ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン,3-ジメチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン,3-ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン,3-ジエチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン,2-ジメチルアミノエチル(トリエトキシ)シラン,2-ジメチルアミノエチル(トリメトキシ)シラン,3-ジメチルアミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン,3-ジブチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン等が挙げられ、これらの中でも、3-ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン及び3-ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シランが好ましい。
また更に、その他のヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、2-(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、2-(トリエトキシシリルエチル)ピリジン、2-シアノエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
上記式(II)のヒドロカルビルオキシシラン化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記ヒドロカルビルオキシシラン化合物の部分縮合物も用いることができる。
式(III)において、R5及びR6については、それぞれ上記式(II)におけるR3及びR4について説明した通りである。
式(III)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン等が挙げられ、これらの中でも、テトラエトキシシランが特に好ましい。
式(III)のヒドロカルビルオキシシラン化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらヒドロカルビルオキシシラン化合物の部分縮合物を用いることもできる。
上記変性剤による重合活性部位の変性反応は、溶液反応で行うことが好ましく、該溶液中には、重合時に使用した単量体が含まれていてもよい。また、変性反応の反応形式は特に制限されず、バッチ式でも連続式でもよい。更に、変性反応の反応温度は、反応が進行する限り特に限定されず、重合反応の反応温度をそのまま採用してもよい。なお、変性剤の使用量は、共重合体の製造に使用した重合開始剤1molに対し、0.25〜3.0molの範囲が好ましく、0.5〜1.5molの範囲が更に好ましい。
本発明においては、上記共重合体(B)を含む反応溶液を乾燥して共重合体(B)を分離した後、得られた共重合体(B)を上記ゴム成分(A)に配合してもよいし、共重合体(B)を含む反応溶液を上記ゴム成分(A)のゴムセメントに溶液状態で混合した後、乾燥して、ゴム成分(A)及び共重合体(B)の混合物を得てもよい。
本発明のゴム組成物は、充填剤(C)を上記ゴム成分(A)100質量部に対して20〜90質量部含有し、該充填剤(C)の50〜90質量%がシリカであることを要する。充填剤(C)の配合量が20質量部未満では、加硫ゴムの破壊特性及び耐摩耗性が十分でなく、一方、90質量部を超えると、作業性が悪化する。また、充填剤(C)中のシリカの割合が50質量%未満では、ゴム組成物の低発熱性及びウェット性能を十分に向上させることができず、90質量%を超えると、作業性が悪化してしまう。上記シリカとしては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、湿式シリカが好ましい。なお、本発明のゴム組成物は、充填剤(C)として、シリカの他に、カーボンブラック等の他の補強性充填剤を含有する。
本発明のゴム組成物は、更に、シランカップリング剤(D)を上記シリカの配合量の5〜15質量%含有することが好ましい。ゴム組成物にシランカップリング剤(D)を添加することで、ゴム組成物の低発熱性及びウェット性能を更に向上させることができる。なお、シランカップリング剤(D)の添加量が、シリカの配合量の5質量%未満では、添加効果が十分に得られず、一方、15質量%を超えると、効果が飽和する上、コスト高となる。該シランカップリング剤としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド等が挙げられ、これらの中でも、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド及び3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドが好ましい。これらシランカップリング剤(D)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のゴム組成物には、上記ゴム成分(A)、低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)、充填剤(C)、シランカップリング剤(D)の他に、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、ワックス、ステアリン酸、亜鉛華、加硫促進剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。上記ゴム組成物は、ゴム成分(A)に、低分子量の共重合体(B)と、シリカを所定の割合で含む充填剤(C)と、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いたことを特徴とする。上記ゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いたタイヤは、低燃費性及び湿潤路面での操縦安定性に優れる。なお、本発明の空気入りタイヤは、上述のゴム組成物をトレッド部の少なくとも接地部分に用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。また、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
[実施例]
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
<液状SBRの製造例>
乾燥し、窒素置換された800mLの耐圧ガラス容器に、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(16%)、スチレンのシクロヘキサン溶液(21%)を、ブタジエン単量体40g、スチレン単量体10gとなるように注入し、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.66ミリモルを注入し、これに、n−ブチルリチウム(BuLi)1.32ミリモルを加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合した。重合転化率はほぼ100%である。この後、重合系に、更に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)のイソプロパノール5重量%溶液0.5mLを添加し、反応を停止させた。その後、常法に従い乾燥することにより、液状SBRを得た。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー製HLC−8020、カラム:東ソー製GMH−XL(2本直列)、検出器:示差屈折率計(RI)]を用い、単分散ポリスチレンを基準として重量平均分子量(Mw)を測定したところ、得られた液状SBRは、ポリスチレン換算重量平均分子量が80,000であった。また、赤外法(モレロ法)でミクロ構造を、1H-NMRスペクトルの積分比から結合スチレン量を求めたところ、得られた液状SBRは、結合スチレン量が25質量%で、ブタジエン部分のビニル結合量が65質量%であった。
次に、表1に示す配合処方のゴム組成物を常法に従って調製し、得られたゴム組成物をトレッド部に用いて、サイズ195/65R15の乗用車用タイヤを試作した。更に、得られたタイヤに対して、下記の方法で湿潤路面での操縦安定性及び低燃費性を評価した。結果を表1に示す。
(1)湿潤路面での操縦安定性
車両に上記供試タイヤ4本を装着して、湿潤路面で実車走行を行い、ドライバーのフィーリングにより操縦安定性を評価し、比較例1のタイヤの操縦安定性を100として指数表示した。指数値が大きい程、湿潤路面での操縦安定性が高く良好であることを示す。
(2)低燃費性
ドラム上にタイヤを接触させながらドラムを回転させ、一定速度まで上昇後、ドラムの駆動スイッチを切り、ドラムを自由回転させ、減速の度合いから転がり抵抗を求め、比較例1のタイヤの転がり抵抗の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れることを示す。
Figure 0004997100
*1 JSR(株)製, #1500.
*2 上記製造例で製造した液状SBR.
*3 昭和キャボット(株)製, ショウブラックN234.
*4 日本シリカ工業(株)製, Nipsil AQ.
*5 大内新興化学工業(株)製, ノクセラーCZ, N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド.
*6 大内新興化学工業(株)製, ノクセラーD−P, 1,3-ジフェニルグアニジン.
*7 デグサ社製, Si69, ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド.
表1から、充填剤中のシリカの割合を上昇させるに従い、タイヤの湿潤路面での操縦安定性及び低燃費性が向上することが分る。また、シリカの割合が同一の比較例と実施例とを比較(例えば、比較例1と実施例1とを比較)することで、アロマオイルを液状SBRで置き換えることで、湿潤路面での操縦安定性を維持しつつ、低燃費性を改善できることが分る。

Claims (8)

  1. 天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの内の少なくとも一種からなるゴム成分(A)100質量部に対して、芳香族ビニル化合物量が5〜80質量%で、共役ジエン化合物部分のビニル結合量が10〜80質量%で、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が80,000〜200,000低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)5〜60質量部と、充填剤(C)20〜90質量部とを配合してなり、前記充填剤(C)の50〜90質量%がシリカであることを特徴とするゴム組成物。
  2. 更に、シランカップリング剤(D)を前記シリカの配合量の5〜15質量%含有することを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 前記ゴム成分(A)の50質量%以上がスチレン−ブタジエン共重合体ゴムであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  4. 前記低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)中の芳香族ビニル化合物がスチレンであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  5. 前記低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)中の共役ジエン化合物が1,3-ブタジエンであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  6. 前記低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)は、未変性の低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体であって、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が80,000〜150,000あることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  7. 前記低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体(B)は、少なくとも一つの官能基を有する変性低分子量芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物共重合体であって、変性前のゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が80,000〜200,000あることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物を、トレッド部の少なくとも接地部分に用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
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