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JP2004307420A - 細胞死抑制作用を有する化合物、およびその製造方法 - Google Patents

細胞死抑制作用を有する化合物、およびその製造方法 Download PDF

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JP2004307420A
JP2004307420A JP2003105362A JP2003105362A JP2004307420A JP 2004307420 A JP2004307420 A JP 2004307420A JP 2003105362 A JP2003105362 A JP 2003105362A JP 2003105362 A JP2003105362 A JP 2003105362A JP 2004307420 A JP2004307420 A JP 2004307420A
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Hideaki Kakeya
秀昭 掛谷
Yujiro Hayashi
雄二郎 林
Mitsuru Shoji
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Abstract

【課題】アポトーシスを抑制する活性を有し、かつ安定性の高い低分子量化合物の提供。
【解決手段】以下の一般式(I):
【化1】
Figure 2004307420

[式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基または水酸基の保護基を示し;Rは水素原子、下記式:
【化2】
Figure 2004307420

(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルコキシ基、アリール基、アミノ基、ヒドロキシ基またはオキソ基を示す。ただしRがすべて水素原子である場合を除く。)で表される基または下記式:
【化3】
Figure 2004307420

(式中、Rは前記と同義である。)で表される基を示す。]で表される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞死(以下、アポトーシスともいう。)を抑制する化合物およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
細胞死は発生における形態形成や成熟した個体における組織・器官のホメオスタシスに重要な役割を果たしている。生体内においては、例えば、Fas抗体、Fas L(Fasリガンド)あるいはTNF−α(腫瘍壊死因子α)などが、受容体を介してアポトーシスを誘導する。アポトーシスを抑制する化合物は、過度のアポトーシスが原因で起こるとされている様々な疾病、例えば、関節リウマチ、B型肝炎およびC型肝炎等のウイルス感染に伴う肝炎、劇症肝炎、糖尿病、心筋梗塞、潰瘍性大腸炎、慢性腎炎、脱毛症、アルツハイマー病およびパーキンソン氏病などの神経変性疾患、虚血性脳障害、後天性免疫不全症候群、拡張性心筋症、などの予防薬・治療薬となりうる(非特許文献1を参照)。例えば、アポトーシス誘導経路に重要な役割を担っているFas受容体の機能を抑制する抗体などが開発されつつあるが、蛋白質ゆえに、投与方法、生体内での安定性などに問題があるとされている。
【0003】
Fas刺激により誘導されるアポトーシスを抑制する低分子量化合物として、不完全菌類に属する、ペシロマイセス ムシコーラ マツシマ1975 RF−13867 (Paecilomyces musicola Matsushima 1975 RF−13867)の醗酵液から単離される化合物およびそれらの誘導体が知られている(特許文献1を参照)。しかしながら、このような化合物およびそれらの誘導体に関して安定性などの面でさらなる開発が望まれている。
【0004】
【非特許文献1】
Nature Med., 6, 389−395 (2000). Science, 267, 1456−1462 (1995).
【特許文献1】
特開平11−222456号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アポトーシスを抑制する活性を有し、かつ安定性の高い低分子量化合物の提供を目的としている。このような化合物は、関節リウマチ、B型肝炎およびC型肝炎等のウイルス感染に伴う肝炎、劇症肝炎、糖尿病、心筋梗塞、潰瘍性大腸炎、慢性腎炎、脱毛症、アルツハイマー病およびパーキンソン氏病などの神経変性疾患、虚血性脳障害、後天性免疫不全症候群、拡張性心筋症などの予防薬・治療薬として有用であると考えられる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、生体因子Fas 抗体およびTNF−αが誘導するアポトーシスを抑制する活性を有し、かつ安定性の高い化合物およびその製造方法を見出した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
1) 以下の一般式(I):
【0008】
【化23】
Figure 2004307420
【0009】
[式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基または水酸基の保護基を示し;Rは水素原子、下記式:
【0010】
【化24】
Figure 2004307420
【0011】
(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルコキシ基、アリール基、アミノ基、ヒドロキシ基またはオキソ基を示す。ただしRがすべて水素原子である場合を除く。)で表される基または下記式:
【0012】
【化25】
Figure 2004307420
【0013】
(式中、Rは前記と同義である。)で表される基を示す。]で表される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
2) 以下の式(II):
【0014】
【化26】
Figure 2004307420
【0015】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
3) 以下の式(III):
【0016】
【化27】
Figure 2004307420
【0017】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
4) 以下の一般式(I):
【0018】
【化28】
Figure 2004307420
【0019】
(式中、RおよびRは前記と同義である。)
で表される化合物の製造方法であって、
(1)以下の一般式(V):
【0020】
【化29】
Figure 2004307420
【0021】
(式中、Rは直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基を示す。)で表される化合物にリパーゼと酢酸エステルとを作用させ、以下の一般式(V−1):
【0022】
【化30】
Figure 2004307420
【0023】
(式中、Rは前記と同義である。)及び以下の一般式(VI):
【0024】
【化31】
Figure 2004307420
【0025】
(式中、Rは前記と同義であり、Acはアセチル基を示す。)で表される化合物を得、
(2)得られた化合物(V−1)をエポキシ化し、以下の一般式(VII−1):
【0026】
【化32】
Figure 2004307420
【0027】
(式中、Rは前記と同義である。)で表される化合物を得、
(3)得られた化合物を還元し、以下の式(VIII−1):
【0028】
【化33】
Figure 2004307420
【0029】
で示される化合物を得、
(4)得られた化合物のヒドロキシメチル基に保護基を導入し、以下の一般式(IX−1):
【0030】
【化34】
Figure 2004307420
【0031】
(式中、Rは水酸基の保護基を示す。)で表される化合物を得、
(5)得られた化合物を酸化し、次いでエポキシ環を開裂し、以下の一般式(X−1):
【0032】
【化35】
Figure 2004307420
【0033】
(式中、Rは前記と同義である。)で表される化合物を得、
(6)必要に応じて得られた化合物の保護基を脱保護し、
(7)必要に応じて得られた化合物への置換基の導入、遊離の水酸基への保護基の導入または遊離の水酸基のアルキル化もしくはエステル化を行うことを特徴とする方法。
5) 以下の一般式(I):
【0034】
【化36】
Figure 2004307420
【0035】
(式中、RおよびRは前記と同義である。)
で表される化合物の製造方法であって、
(1)以下の一般式(V):
【0036】
【化37】
Figure 2004307420
【0037】
(式中、Rは前記と同義である。)で表される化合物にリパーゼと酢酸エステルとを作用させ、以下の一般式(V−1):
【0038】
【化38】
Figure 2004307420
【0039】
(式中、Rは前記と同義である。)及び以下の一般式(VI):
【0040】
【化39】
Figure 2004307420
【0041】
(式中、RおよびAcは前記と同義である。)で表される化合物を得、
(2)得られた化合物(VI)のアセチル基を脱保護し、以下の一般式(V−2):
【0042】
【化40】
Figure 2004307420
【0043】
(式中、Rは前記と同義である。)で表される化合物を得、
(3)得られた化合物をエポキシ化し、以下の一般式(VII−2):
【0044】
【化41】
Figure 2004307420
【0045】
(式中、Rは前記と同義である。)で表される化合物を得、
(4)得られた化合物を還元し、以下の式(VIII−2):
【0046】
【化42】
Figure 2004307420
【0047】
で表される化合物を得、
(5)得られた化合物のヒドロキシメチル基に保護基を導入し、以下の一般式(IX−2):
【0048】
【化43】
Figure 2004307420
【0049】
(式中、Rは前記と同義である。)で表される化合物を得、
(6)得られた化合物を酸化し、次いでエポキシ環を開裂し、以下の一般式(X−2):
【0050】
【化44】
Figure 2004307420
【0051】
(式中、Rは前記と同義である。)で表される化合物を得、
(7)必要に応じて得られた化合物の保護基を脱保護し、
(8)必要に応じて得られた化合物への置換基の導入、遊離の水酸基への保護基の導入または遊離の水酸基のアルキル化もしくはエステル化を行うことを特徴とする方法。
6) 1)〜3)に記載のいずれかの化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物を有効成分として含有する医薬組成物。
7) 1)〜3)に記載のいずれかの化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物を有効成分として含有するアポトーシス抑制剤。
【0052】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、以下の一般式(I):
【0053】
【化45】
Figure 2004307420
【0054】
[式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基または水酸基の保護基を示し;Rは水素原子、下記式:
【0055】
【化46】
Figure 2004307420
【0056】
(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルコキシ基、アリール基、アミノ基、ヒドロキシ基またはオキソ基を示す。ただしRがすべて水素原子である場合を除く。)で表される基または下記式:
【0057】
【化47】
Figure 2004307420
【0058】
(式中、Rは前記と同義である。)で表される基を示す。]で表される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物である。
【0059】
式中、Rは、それぞれ独立に水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状アルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基または水酸基の保護基を示すが、例えば、アルキル基またはアシル基として、炭素数1〜6個のアルキル基またはアシル基、好ましくは直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜6個のアルキル基またはアシル基を用いることができる。より具体的には、アルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基など;アシル基としてホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ヘキサノイル基などを用いることができる。これらのアルキル基またはアシル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜6個の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などの直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルコキシ基、フェニル基などのアリール基、アミノ基、ヒドロキシ基またはオキソ基などが挙げられる。
【0060】
水酸基の保護基としては当業者に種々知られており、適宜の保護基を選択することが可能である。例えば、ピバロイル基などのアシル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基などのアルキルシリル基、イソプロピリデンアセタール基などを用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0061】
式中、Rは水素原子、下記式:
【0062】
【化48】
Figure 2004307420
【0063】
(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルコキシ基、アリール基、アミノ基、ヒドロキシ基またはオキソ基を示す。ただしRがすべて水素原子である場合を除く。)で表される基または下記式:
【0064】
【化49】
Figure 2004307420
【0065】
(式中、Rは前記と同義である。)で表される基を示す。
【0066】
式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルコキシ基、アリール基、アミノ基、ヒドロキシ基またはオキソ基を示すが、例えば、ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などを用いることができる。また、アルキル基またはアルコキシ基として、炭素数1〜6個のアルキル基またはアルコキシ基、好ましくは直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜6個のアルキル基またはアルコキシ基を用いることができる。より具体的には、アルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基など;アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などを用いることができる。例えば、アリール基として、炭素数6〜22個、好ましくは炭素数6〜10個の単環式または多環式のアリール基を挙げることができる。また環中には1個以上の窒素原子、酸素原子、硫黄原子を有してもよい。より具体的にはフェニル基などを用いることができる。Rは好ましくは水素原子、メチルプロぺニル基を用いることができる。
【0067】
本発明の好ましい態様として、以下の式(II):
【0068】
【化50】
Figure 2004307420
【0069】
で表される化合物(以下、RKTS−33ということもある。)が挙げられる。なお、RKTS−33を通常のアルキル化、アルキニル化反応に付すことによって置換基を導入する、または通常のアルキル化反応、エステル化反応などに付し、遊離の水酸基のアルキル化、エステル化を行うことによって上記一般式(I)に示した本発明の化合物へと誘導可能である。
【0070】
さらに、本発明の別の好ましい態様として、以下の式(III):
【0071】
【化51】
Figure 2004307420
【0072】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物を提供する(以下、式(III)の化合物をRKTS−34ということもある)。なお、RKTS−34を、通常のアルキル化、反応、エステル化反応などに付し、遊離の水酸基のアルキル化、エステル化を行うことによってさまざまな類縁化合物へと誘導可能である。
【0073】
上記式(I)〜(III)で表される化合物の光学活性体も本発明に含まれる。以下に示す本発明の化合物の製造方法によれば、これらの化合物の光学活性体を光学純度よく得ることができる。
【0074】
上記式(I)〜(III)で表される化合物の製薬上許容される塩も本発明に含まれ、例えば、塩酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩;又はp−トルエンスルホン酸塩などの有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などの金属塩;アンモニウム塩;メチルアンモニウム塩などの有機アンモニウム塩;グリシン塩などのアミノ酸塩を挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0075】
一般式(I)で表される本発明の化合物、RKTS−33、RKTS−34は複数の不斉炭素を有しており、また置換基の種類によりさらに1個以上の不斉炭素を有する場合がある。これらの不斉炭素に基づく光学異性体またはジアステレオマーなどの立体異性体が存在するが、本発明の範囲には純粋な形態の立体異性体のほか、任意の立体異性体の混合物またはラセミ体などが含まれる。また、本発明の化合物にはオレフィン性の二重結合を有する場合も存在し、二重結合に基づく幾何異性体が存在するが、純粋な形態の幾何異性体のほか、任意の幾何異性体の混合物も本発明の範囲に含まれる。本発明の化合物は任意の結晶形として存在することができ、水和物または溶媒和物として存在する場合もある。これらの物質がいずれも本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
【0076】
本発明の化合物の類縁化合物として、以下の式(IV):
【0077】
【化52】
Figure 2004307420
【0078】
で示される化合物もしくはその光学活性体(以下、式(IV)の化合物を14(ECH)ということもある)が挙げられるが、本発明の化合物はこのような類縁化合物に対して安定性が高いという特徴を有する。
【0079】
上記14(ECH)のプロペニル基に比較して、本発明の化合物における対応する基は置換基が導入されたアルケニル基またはアルキル基である。このようにアルケニル基またはアルキル基に置換基を導入することで、シクロヘキセノン環上のカルボニル基の周辺が立体的に混んでくるため、化学的にはカルボニル基への求核反応に由来する副反応が非常に減少し、細胞内においても非特異的な酵素等の求核攻撃などによる分解等を軽減できるため安定性が向上すると考えられる。また、本発明の化合物は14(ECH)に比較して、シス型、あるいはトランス型の配置を強固に固定でき、血清を含む培養液中における安定性に優れている。さらに、14(ECH)のプロペニル基に対応する本発明の化合物における基が水素原子である場合は、酸性条件、光照射下の条件において14(ECH)に比較してより安定である。これは、側鎖にオレフィン部位がなく、オレフィンに由来するオレフィンの酸化反応等の副反応が起こらず化合物自身の安定性が向上するためであると考えられる。
【0080】
本発明の化合物は、後述の試験例に示すように抗アポトーシス活性を有しているため、上記の化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物は、例えばアポトーシス関連性炎症の抗炎症剤として用いる医薬組成物、具体的にはアポトーシス抑制剤の有効成分として有用である。したがって、本発明により、上記の化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物のいずれかまたはそれらの組み合わせを有効成分として含む医薬組成物が提供される。
【0081】
このような本発明の医薬組成物は、関節リウマチ、B型肝炎およびC型肝炎等のウイルス感染に伴う肝炎、劇症肝炎、糖尿病、心筋梗塞、潰瘍性大腸炎、慢性腎炎、脱毛症、アルツハイマー病およびパーキンソン氏病などの神経変性疾患、虚血性脳障害、後天性免疫不全症候群、拡張性心筋症などのアポトーシス関連性疾患の予防・治療薬として用いることができる。さらに、上記化合物の治療有効量を、ヒトを含む哺乳類動物に投与する行程を含む方法、上記化合物の有効量を細胞に接触させる行程を含む方法が本発明により提供される。
【0082】
本発明の化合物を有効成分とする医薬組成物は、その使用目的にあわせて投与方法、剤型、投与量を適宜決定することが可能である。例えば、本発明の化合物を有効成分とする医薬の投与形態は、経口投与でも非経口投与でもよい。剤型としては、例えば錠剤、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、エキス剤、シロップ剤等の経口投与剤、または注射剤、点滴剤、もしくは坐剤等の非経口投与剤を挙げることができる。これらの製剤は、賦形剤、結合剤等の製薬上許容される添加剤を用いて既知の方法で製造することができる。本発明の化合物を有効成分として含む医薬組成物の投与量は、患者の年齢、体重、感受性、症状の程度などにより異なるが、通常効果的な量は、有効成分量として成人1日あたり経口投与では、0.1 mg〜100 mg /kg、好ましくは1 mg〜 20 mg/kg程度であり、非経口投与では、0.01mg〜10mg/kg, 好ましくは、0.1 mg〜2 mg/kg程度である。上記の投与量を1日1回または数回にわけて投与することも可能である。また、必要により上記範囲外の量を用いることができる。
【0083】
また、本発明の化合物を研究試薬として使用する場合には、有機溶剤または含水有機溶剤に溶解して用いることができ、使用可能な有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノールやジメチルスルホキシド等を挙げることができる。剤型としては、例えば、粉末などの固形剤、又は有機溶剤若しくは含水有機溶剤に溶解した液体剤などを挙げることができる。通常、上記の化合物を研究試薬として用いてアポトーシス抑制活性を発揮させるための効果的な使用量は、培養細胞系中において0.1〜100 μg/mlであるが、適切な使用量は培養細胞系の種類や使用目的により異なり、適宜選択可能である。また、必要により上記範囲外の量を用いることができる。
【0084】
式(II)で示される本発明の化合物RKTS−33の製造方法は、以下のスキームで示される。
【0085】
【化53】
Figure 2004307420
【0086】
以下、各工程について説明する。
化合物(V)は例えば以下のようにして得られる。アクロイルクロリド(ACROS社、和光純薬社製など)およびフラン(Aldrich社、Merck社製など)をDield−Alder(ディールスアルダー)反応させる。
得られた化合物に水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液等のpH8〜14、好ましくはpH12以上のアルカリ性溶液を添加し、−20〜50℃で、1〜24時間反応させる。必要に応じて得られた化合物を通常の有機合成物の単離・精製方法により単離・精製する。
得られた化合物をジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、エーテル、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒などの溶媒中、同化合物1molに対し1〜5molのヨウ素、N−ヨードスクシミド等のヨウ化剤と、−30〜40℃で、0.5〜10時間反応させる。必要に応じて得られた化合物を通常の有機合成物の単離・精製方法により単離・精製する。
得られた化合物をジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などの溶媒に溶解し、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等のアルカリを加えてpH10〜14、好ましくはpH12以上に調整し、加熱還流下、5〜24時間反応させる。必要に応じて得られた化合物を通常の有機合成物の単離・精製方法により単離・精製する。
得られた化合物を同化合物1molに対し1〜5molのヨードメタン、
ヨードエタン、ブロモメタン等のRX(式中、Rは炭素数1〜6の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基を示し;Xはハロゲン原子を示す。)で表されるエステル化剤と、0〜50℃で、超音波照射下1〜5時間反応させる。必要に応じて得られた化合物を通常の有機合成物の単離・精製方法により単離・精製する。
得られた化合物をテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテルなどの溶媒に溶解し、同化合物1molに対し1〜1.1molのLDA(リチウムジイソプロピルアミド)、LiHMDS(リチウムヘキサメチルジシラシド)、KHMDS(カリウムヘキサメチルジシラジド)等の塩基を加えて−100〜−30℃で、10〜120分間反応させる。必要に応じて得られた化合物を通常の有機合成物の単離・精製方法により単離・精製する。
【0087】
工程(1):化合物(V−1)を得る工程
ラセミ体化合物(V)1gに対し3〜10gの酢酸ビニル、酢酸プロペニル等の酢酸エステル、及びラセミ体化合物(V)1gに対し0.01〜1gのPseudomonas stutzeri(シュードモナス・スタッツェリ)由来などのリパーゼを加えて10〜50℃で、1〜50時間反応させる。得られた化合物を通常の有機合成物の単離・精製方法により単離・精製する。
【0088】
工程(2):化合物(VII)を得る工程
化合物(V−1)を通常のエポキシ化反応によりエポキシ化させる。例えば、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等の溶媒に溶解し、触媒量のVO(acac)(ビス(アセチルアセトナート)オキソバナジウム(IV))、Mo(CO)等の遷移金属化合物、及び同化合物1molに対し1〜10molのtert−ブチルヒドロペルオキシド、トリチルヒドロペルオキシド等の過酸化物を加えて20〜110℃で、2〜15時間反応させる。必要に応じて得られた化合物を通常の有機合成物の単離・精製方法により単離・精製する。
【0089】
工程(3):化合物(V−2)を得る工程
化合物(VI)を通常の保護基の脱保護反応により脱保護させる。例えば、メタノール、エタノール等のアルコール等の溶媒に溶解し、同化合物1molに対し0.01〜0.3molの炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリを加えて0〜30℃で、1〜10時間反応させる。必要に応じて得られた化合物を通常の有機合成物の単離・精製方法により単離・精製する。得られた(V−2)について、光学異性体である(V−1)と同様に、上記(2)および下記(4)〜(7)の工程の反応を行うことによって、化合物(II)の光学活性体を得ることができる。
【0090】
工程(4):化合物(VIII)を得る工程
化合物(VII)を通常の還元反応により還元する。例えばメタノール、エタノール等のアルコール等の溶媒に溶解し、同化合物1molに対し1〜5molのNaBH、LiAlH等の還元剤を加え、−78〜30℃で、0.1〜2時間反応させる。必要に応じて得られた化合物を通常の有機合成物の単離・精製方法により単離・精製する。
【0091】
工程(5):化合物(IX)を得る工程
化合物(VIII)中のヒドロキシメチル基に通常の保護基の導入方法により、Rで表されるtert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、ピバロイル基等の水酸基の保護基を導入する。例えば、トリエチルアミン等の塩基存在下、tert−ブチルジメチルシリルクロリド等と反応させることにより行うことができる。必要に応じて得られた化合物を通常の有機合成物の単離・精製方法により単離・精製する。
【0092】
工程(6):化合物(X)を得る工程
化合物(IX)を通常の酸化反応により酸化する。例えばジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等の溶媒に溶解し、同化合物1molに対し1〜5molのDess−Martin periodinane(デスマーチンペルヨージナン)、TPAP(テトラプロピルアンモニウム過ルテニウム酸塩)存在下N−メチルモルホリン−N−オキシド等の酸化剤を加えて0〜30℃で、5〜30分間反応させる。必要に応じて得られた化合物を通常の有機合成物の単離・精製方法により単離・精製する。
【0093】
次いで得られた化合物を通常の方法によりエポキシ環を開環させる。例えばトルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素等の溶媒に溶解し、同化合物1gに対し0.01〜10gのシリカゲル、ピリジニウムパラトルエンスルホナート、トリエチルアミン等の酸性及び塩基性化合物を加えて0〜70℃で、0.5〜10時間反応させる。
【0094】
なお、上記酸化反応およびエポキシ環の開環反応の順序は適宜変更することが可能である。
【0095】
工程(7):化合物(II)を得る工程
化合物(X)を通常の保護基の脱保護方法、例えばメタノール、エタノール等のアルコール、水等の溶媒に溶解し、同化合物1gに対し0.1〜1gのDowex(ダウエックス)(登録商標)50WX4、Amberlyst(アンバーリスト)(登録商標) 15等の陽イオン交換樹脂を加えて0〜50℃で、1〜10時間反応させる反応等により、保護基を脱離させる。
【0096】
以上のようにして化合物(II)の各光学活性体を得ることができる。
【0097】
化合物(X)または式(II)で示される本発明の化合物に、必要に応じて通常の有機化合物の合成において使用される手法にて前述のRで表される置換基を通常の有機化合物の合成において使用されるアルキル化、アルキニル化手法にて置換基の導入を行うことができる。また必要に応じて通常の有機化合物の合成において使用されるアルキル化、エステル化、保護基の導入手法にて遊離の水酸基の水素原子を前述のRで表される基と置換することができる。置換基の導入、アルキル化、エステル化、保護基の導入の各反応を組み合わせてもよい。このようにして一般式(I)で表される本発明の化合物が得られる。
【0098】
例えばRとしてはメチルプロペニル基などが好ましく、これらの置換基は例えば実施例において示すように、化合物(II)の遊離の水酸基をイソプロピデンアセタール基などとして保護し、ヨウ素などのハロゲン化剤を反応させハロゲン化し、メチルプロペニルホウ酸などのアルケニルホウ酸などを反応させ置換基を導入し、Dowex 50WX4、Amberlyst15等の陽イオン交換樹脂などを作用させ保護基を脱保護することにより化合物(II)に導入することができる。このようにして化合物(III)を得ることができる。
【0099】
また、同様にして、以下の式(IV):
【0100】
【化54】
Figure 2004307420
【0101】
で示される化合物もしくはその光学活性体(14(ECH))を得ることができる。なお、14(ECH)を、通常のアルキル化反応、エステル化反応などに付し、遊離の水酸基のアルキル化、エステル化を行うことによってさまざまな類縁化合物へと誘導可能である。
【0102】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。(+)−RKTS−33, (+)−RKTS−34, (+)−14(ECH)の合成経路を以下に示す。なお、化合物(+)−5を用いた実施例において化合物(−)−5を使用することにより対応する光学活性化合物を得ることができ、以下、対応する化合物を得ることができる。
【0103】
【化55】
Figure 2004307420
【0104】
【実施例1】化合物3の合成
室温でアクリロイルクロリド1(30 mL)にフラン2(225 mL)を加え、五時間撹拌する。反応液にNaOH水溶液を加え、溶液をアルカリ性にして、1時間撹拌する。水層を分液後、水層にCHCl(350 mL)、ヨウ素(46.8 g)を加え、激しく撹拌する。2時間後、Na水溶液を過剰のヨウ素の色が消えるまで加えた後、低沸点物を減圧下留去すると固体が析出する。固体をろ別し、乾燥させ、ヨードラクトン体3が41 g, 42%収率で得られる。
【0105】
H NMR (400 MHz, CDCl) δ= 2.15 (1H, dd, J = 13.5, 3.2 Hz), 2.20 (1H, ddd, J = 13.5, 10.4, 4.7 Hz), 2.77 (1H, ddd, J = 10.4, 4.7, 3.2 Hz), 3.94 (1H, s), 4.80 (1H, d, J = 4.7 Hz), 5.12 (1H, d, J = 4.9 Hz), 5.38 (1H, t, J = 4.9 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl) δ= 25.0, 36.1, 38.0, 81.9, 84.2, 87.5, 175.8.IR (KBr) 2995, 1787, 1324, 1189, 1022, 661, 433 cm−1
HRMS (FAB): calcd for CI: 266.9518, found 266.9514.
【0106】
【実施例2】化合物4の合成
ヨードラクトン3 (17.9 g, 67.2 mmol) のDMF(ジメチルホルムアミド) (520 mL) 溶液にKOH (9.42 g, 168 mmol) を加え、60℃で27時間加熱環流する。室温でヨードメタン (12.5 mL, 202 mmol) を加えた後、超音波を2時間照射する。減圧下溶媒を留去後、1N HCl水溶液(18mL)、飽和NHCl水溶液(150 mL)を加える。有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で3回洗い、NaSOで乾燥する。溶媒留去後、カラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)により精製を行い、9.25 gの4を得る(収率81%)。
【0107】
H NMR (400 MHz, CDCl) δ= 1.97 (1H, td, J = 11.6, 5.1 Hz), 2.08 (1H, dd, J = 11.6, 4.2 Hz), 2.91 (1H, dt, J = 11.6, 4.6 Hz), 3.74 (3H, s), 4.01 (1H, dd, J = 4.5, 2.5 Hz), 4.10 (1H, dd, J = 4.5, 2.3 Hz), 4.51 (1H, dt, J = 5.0, 2.5 Hz), 4.69 (1H, dt, J = 5.1, 2.0 Hz)
13C NMR (100 MHz, CDCl) δ= 29.2, 44.6, 51.5, 66.2, 66.4, 77.4, 78.0, 171.8.
IR (KBr) 3039, 2921, 1731, 1444, 1342, 1305, 1097, 956, 609cm−1
HRMS (FAB): calcd for C11: 177.0657, found 171.0663.
Elemental analysis: Calcd for C11: C 56.47, H 5.92, found C 56.55, H 5.88.
【0108】
【実施例3】化合物5の合成
ジイソプロピルアミン (11.7 mL, 83.2 mmol)のTHF(テトラヒドロフラン) (63 mL) 溶液に0℃でBuLi(ブチルリチウム) (1.58 M, 42.1 mL, 66.6 mmol)を滴下し、10分間撹拌し、LDAを調製する。4 (9.44g, 55.5 mmol)のTHF (84 mL)溶液に−90℃で上記のLDA溶液を加える。滴下終了後10分間撹拌し、リン酸緩衝液を加え、反応を停止する。有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で1回洗い、NaSOで乾燥する。溶媒留去後、カラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:3)により精製を行い、6.32 gの5を得る(収率67%)。
【0109】
H NMR (400 MHz, CDCl) δ= 1.85 (1H, bs), 2.36 (1H, ddd, J = 17.6, 5.1, 3.4 Hz), 2.82 (1H, dt, J = 17.6, 1.8 Hz), 3.48 (1H, t, J = 4.8 Hz), 3.57−3.62 (1H, m), 4.55−4.61 (1H, m), 7.15 (1H, t, J = 3.4 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl) δ= 29.2, 46.2, 52.1, 56.0, 63.3, 130.7, 133.4, 166.6.
IR (neat) 3444, 2954, 1716, 1438, 1207, 819, 609, 509 cm−1
HRMS (EI): calcd for C10: 170.0579, found 170.0619.
【0110】
【実施例4】化合物(+)−5および(−)−6の合成
ラセミ体5 (2.8 g, 16.5 mmol)の酢酸ビニル溶液 (30 mL) にPseudomonas stutzeri lipase (Meito TL) (278 mg) を加え、40時間室温で撹拌する。Pseudomonas stutzeri lipase (Meito TL)をろ別し、低沸点化合物を減圧下留去する。カラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:3〜1:1)により精製を行い、(+)−5 1.35 g [収率49%, 光学純度99% ee], (−)−6 1.65 g [収率48%, 光学純度(96% ee)] を得る。
【0111】
(+)−5: [α] 26 +213 (c=0.56, MeOH)
5 の光学純度の決定:HPLC conditions: Chiralcel OD−H column, 2−propanol : hexane = 1 : 20, 1.5 mL/min, retention times, 28.7 min (major), 11.1 min (minor).
【0112】
(−)−6: [α] 22 −226 (c=0.46, MeOH)
H NMR (400 MHz, CDCl) δ= 2.04 (3H, s), 2.36 (1H, ddd, J = 18.1, 5.3, 3.3 Hz), 2.82 (1H, dt, Jt = 18.1 Hz, Jd = 1.8 Hz), 3.49 (1H, t, J = 3.9 Hz), 3.60−3.63 (1H, m), 3.77 (3H, s), 5.62 (1H, dt, J = 5.4, 2.7 Hz), 7.14 (1H, t, J = 3.6 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl) δ= 20.9, 26.4, 46.5, 52.1, 53.9, 65.6, 131.0, 133.0, 166.1, 170.3.
IR (neat) 2964, 2850, 1739, 1714, 1649, 1265, 1028, 818, 600, 1439 cm−1
【0113】
6 の光学純度の決定:HPLC conditions: Chiralcel OD−H column, 2−propanol : hexane = 1 : 20, 1.5 mL/min, retention times, 5.6 min (major), 6.0 min (minor).
【0114】
【実施例5】化合物(−)−5の合成
(−)−6 (96 % ee, 198 mg, 0.93 mmol) のメタノール溶液 (1 mL)に0 ℃で炭酸カリウム(13 mg, 0.093 mmol) を加え、1時間撹拌する。飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止後、減圧下、溶媒を留去する。有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層をNaSOで乾燥する。溶媒留去後、カラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:3〜1:1)により精製を行い、154 mgの(−)−5を得る(収率97%)。
【0115】
【実施例6】化合物(+)−7の合成
エポキシエステル(+)−5 (282 m, 1.65 mmol) のCHCl溶液(15 mL)にVO(acac) (22.0 mg)、tert−ブチルヒドロペルオキシドのトルエン溶液 (4.2 M, 2.0 mL)を加え、反応溶液を70℃で9時間撹拌する。反応溶液にNa水溶液を加え反応を停止した後に、有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で洗い、NaSOで乾燥する。溶媒留去後、薄層クロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:3〜1:1)により精製を行い、297 mgの(+)− 7を得る(収率96%)。
【0116】
H NMR (400 MHz, CDCl) δ= 2.31(1H, d, J =15.5 Hz), 2.39 (1H, dd, J =16.0, 4.4 Hz), 2.53 (1H, d, J =12.0 Hz), 3.25 (1H, t, J =3.4 Hz), 3.49 (1H, dd, J =3.9, 2.8 Hz), 3.69 (3H, s), 3.78 (1H, d, J =2.5 Hz), 4.13−4.21 (1H, m).
13C NMR (100 MHz, CDCl) δ= 27.4, 50.4, 53.0, 53.8, 56.1, 57.4, 64.4, 168.6.
IR (neat) 3521, 2956, 1743, 1444, 1363, 1294, 1257, 1068, 863, 784 cm−1
HRMS (FAB): calcd for [C10 + H]: 187.0606, found 187.0622.
[α] 26 +60.9 (c=0.54, MeOH)
【0117】
【実施例7】化合物(+)−8の合成
(+)− 7 (367 mg)のMeOH(メタノール)溶液(3 mL)にNaBH(223 mg, 5.91 mmol) を0℃で加え、室温で30分間撹拌する。有機溶媒を減圧下留去後、カラムクロマトグラフ(MeOH:CHCl=1:10)により精製を行い、300 mgの(+)− 8を得る(収率96%)。
【0118】
H NMR (400 MHz, CDCl) δ= 2.05 (1H, dd, J =15.6, 2.6 Hz), 2.08 (1H, dd, J =15.6, 4.4 Hz), 3.22 (1H, bt, J =3.5 Hz), 3.43 (1H, d, J =12.4 Hz), 3.49 (1H, d, J =2.5 Hz), 3.53 (1H, t, J =3.2 Hz), 3.55 (1H, d, J =12.4 Hz), 4.14 (1H, dt, J =4.4, 3.0 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl) δ= 29.3, 52.2, 55.2, 55.4, 62.1, 65.4, 65.5IR (neat) 3399, 3369, 2927, 1423, 1074, 1047, 809, 619 cm−1
HRMS (FAB): calcd for [C10 + H]: 159.0657, found 159.0650.
[α] 26 +11.1 (c=0.77, MeOH)
【0119】
【実施例8】化合物(+)−9の合成
(+)− 8 (134 mg, 0.85 mmol) のCHCl溶液(2 mL)にトリエチルアミン(0.19 mL, 1.38 mmol)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン) (10.3 mg, 0.085 mmol)、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(183 mg, 1.21 mmol)を0℃で加え、室温で15時間撹拌する。リン酸緩衝液を加え、反応を停止した後に、有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で洗い、NaSOで乾燥する。溶媒留去後、カラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:10〜1:1)により精製を行い、339 mgの(+)− 9を得る(収率84%)。
【0120】
H NMR (400 MHz, CDCl) δ= 0.03 (6H, s), 0.87 (9H, s), 2.02 (1H, dd, J =15.4, 4.2 Hz), 2.10 (1H, d, J = 15.4 Hz), 2.82 (1H, d, J =12.0 Hz), 3.27 (1H, bs), 3.47 (1H, d, J = 12.0 Hz), 3.48 (2H, s), 3.64 (1H, d, J =12.0 Hz), 4.10−4.18 (1H, m).
13C NMR (100 MHz, CDCl) δ= −5.5, 18.2, 25.7, 27.8, 50.9, 54.3, 54.5, 62.2, 64.9, 65.0, 77.3.
IR (neat) 3517, 2954, 2929, 2857, 1116, 869, 688 cm−1
HRMS (FAB): calcd for [C1324Si + H]: 273.1522, found 273.1491.
[α] 26 +14.0 (c=0.89, MeOH)
【0121】
【実施例9】化合物(+)−10の合成
シリルエーテル (+)−9 (700 mg, 1.77 mmol)のCHCl (10 mL) 溶液に0℃でDess−Martin periodinane(1.03 g, 2.43 mmol)を加え、室温で50分撹拌する。飽和重曹水を加え、反応を停止する。有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を飽和重曹水で洗い、NaSOで乾燥する。溶媒留去後、シリカゲルでろ過(酢酸エチル:ヘキサン=1:3)し、溶媒を留去する。これにトルエン(15 mL)、シリカゲル (7.0 g) を加え、70℃で4.5時間撹拌する。室温に冷却後、シリカゲルをろ過して686 mgの(+)− 10を得る(収率99%)。
【0122】
H NMR (400 MHz, CDCl) δ= 0.10 (6H, s), 0.91 (9H, s), 3.29 (1H, bs), 3.43 (1H, s), 3.78 (1H, dd, J = 3.4, 0.9 Hz), 4.28 (1H, d, J =15.6 Hz), 4.51 (1H, dd, J =15.6, 1.6 Hz), 4.63 (1H, bs), 5.96 (1H, d, J = 1.4 Hz).13C NMR (100 MHz, CDCl) δ= −5.5, 18.2, 52.7, 56.4, 64.1, 77.2, 65.0, 121.1, 156.9, 193.6.
IR (neat) 3419, 2954, 2931, 2884, 1687, 1344, 1226, 1049, 879, 781 cm−1
HRMS (FAB): calcd for [C1322Si + H]: 271.1366, found 271.1368.
[α] 25 +149 (c=0.56, MeOH)
【0123】
【実施例10】化合物(+)−RKTS−33の合成
TBS(tert−ブチルジメチルシリル)エーテル(+)−10 (20.7 mg, 0.0766 mmol) にMeOH (0.2 ml), Dowex 50WX4 (7 mg) を加え、室温で3.5時間撹拌した。反応混合物を濾過し、減圧下溶媒を留去した後、残渣を薄層クロマトグラフィー(AcOEt(酢酸エチル))で精製し、(+)−RKTS−33 (11.2 mg, 94%)を無色油状物として得た。
【0124】
H NMR (400 MHz, CDOD) δ 3.39−3.42 (1H, m), 3.75−3.77 (1H, m), 4.18 (1H, d, J=17.2 Hz), 4.42 (1H, d, J=17.2 Hz), 4.49 (1H, s), 6.02−6.05 (1H, m); 13C NMR (100 MHz, CDCl) δ 53.89, 58.19, 62.85, 63.85, 120.52, 161.94, 195.76; FT−IR (neat) ν3352, 2920, 2852, 1676, 1132, 1041, 856, 806 cm−1
【0125】
【実施例11】化合物(+)−11の合成
エポキシケトン(+)−10 (38.7 mg)のMeOH (1 mL)溶液にAmberlyst 15 (11.3 mg)を加え、室温で5時間撹拌する。Amberlyst 15をろ別後、溶媒を減圧下留去しジオールを得る。このジオールのCHCl(0.5 mL) 溶液にジメトキシプロパン (0.35 mL), PPTS(ピリジンパラトルエンスルホン酸) (3.6 mg)を加え、室温で4時間撹拌する。飽和重曹水を加え、反応を停止する。有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で洗い、NaSOで乾燥する。溶媒留去後、フロリジルゲルを用いたカラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)により精製を行い、18.0 mgのエポキシアセタール(+)−11を得る(収率64 %)。
【0126】
H NMR (400 MHz, CDCl) δ= 1.46 (3H, s), 1.62 (3H, s), 3.44−3.47 (1H, m), 3.68 (1H, d, J =3.2 Hz), 4.28 (1H, d, J = 14.6 Hz), 4.60 (1H, dt, J =14.6, 1.3 Hz), 4.83 (1H, s), 5.85 (1H, t, J = 1.1 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl) δ= 21.4, 27.1, 52.4, 57.3, 63.8, 64.0, 101.2, 120.1, 154.0, 190.9
IR (neat) 1673, 1268, 1078, 1020, 779, 539cm−1
HRMS (FAB): calcd for [C1012 + H]: 197.0814, found 197.0818.
Elemental analysis: Calcd for C1012: C 61.22, H 6.16, found C 61.38, H 6.23.
[α] 25 +348.4 (c=0.10, CHCl
mp. 93.0−94.0 ℃
【0127】
【実施例12】化合物(+)−12の合成
アルミ箔で遮光した10 mLナスフラスコにCHCl (0.3 mL), I (23.4 mg), ピリジン11.2 μL, PhI(OCOCF (ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨードベンゼン)(39.7 mg) を加え、室温で15分撹拌する。BHT(3,5−ビス(tert−ブチル)−4−ヒドロキシトルエン) (1.0 mg)、(+)−11 (18.1 mg) を加え、22時間撹拌する。飽和Na水溶液を加えて反応を停止させ、有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で洗い、NaSOで乾燥する。溶媒留去後、フロリジルゲルを用いたカラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:50)により精製を行い、19.9 mgのエポキシアセタール(+)−12を得る(収率67%)。
【0128】
H NMR (400 MHz, CDCl) δ= 1.37 (3H, s), 1.52 (3H, s), 3.60 (1H, dd, J =3.4, 1.4 Hz), 3.74 (1H, d, J =3.2 Hz), 4.33 (1H, dd, J =18.3, 1.4 Hz), 4.38 (1H, dd, J = 18.3, 1.4 Hz), 4.48 (1H, dd, J = 18.3, 1.4 Hz), 4.70 (1H, d, J =0.8 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl) δ= 23.9, 25.7, 51.3, 57.4, 65.3, 69.5, 98.0, 102.8, 162.2, 184.3.
IR (neat) 2989, 2858, 1683, 1384, 1228, 1097, 848, 518 cm−1
HRMS (FAB): calcd for [C1011I + H]: 322.9780, found 322.9791.
【0129】
【実施例13】化合物(+)−RKTS−34の合成
アルゴン雰囲気下、20 mlナスフラスコにヨウ化物(+)−12 (46.0 mg, 0.143 mmol)、THF (1.2 ml)、HO (0.15 ml)、アルケニルホウ酸 (42.8 mg, 0.428 mmol)、AgO (103 mg, 0.443 mmol)、PhAs(トリフェニルアルシン) (4.4 mg, 0.014 mmol)、Pd(PhCN)Cl(ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)) (2.7 mg, 0.0071 mmol)を加え、遮光して室温で21時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて1時間撹拌したのち、AcOEtを加え、セライトで濾過した。有機層を分離後飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、減圧下溶媒を留去した。残渣をフロリジルで濾過し(AcOEt/Hexane=1/10)、減圧下溶媒を留去した後、MeOH (1 ml), Dowex 50WX4 (10 mg) を加え、室温で1.5時間撹拌した。反応混合物を濾過し、減圧下溶媒を留去した後、残渣を薄層クロマトグラフィー(AcOEt/Hexane=1/1)で精製し、ジオール (+)−RKTS−34
(17.0 mg, 57%)を無色油状物として得た。
【0130】
H NMR (400 MHz, CDCl) δ 1.33−1.85 (6H, m), 2.46−2.63 (1H, m), 3.49−3.70 (2H, m), 3.78−3.82 (1H, m), 4.25−4.53 (2H, m), 4.93−5.02 (1H, m), 5.19−5.67 (1H, m); FT−IR (neat) ν 3400, 2916, 2858, 1668, 1435, 1373, 1300, 1173, 1051, 1026, 866, 823, 783 cm−1
【0131】
【実施例14】化合物(+)−13の合成
(+)−12 (8.0 mg, 25 μmol)のTHF−HO (0.44 mL, 0.055 ml)の混合溶液中に(E)−プロペニルボロン酸(6.6 mg, 77 μmol)、AgO (18.4 mg, 79 μmol)、PhAs (1.5 mg, 5.0 μmol), Pd(PhCN)Cl(1.0 mg, 2.5 μmol) を加え、室温で11時間撹拌する。飽和NHCl水溶液を加え1時間撹拌し、反応を停止する。有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で洗い、NaSOで乾燥する。溶媒留去後、薄層クロマトグラフ(エーテル:ベンゼン=1:6)により精製を行い、4.5 mgのエポキシアセタール(+)−13を得る(収率 77%)。
【0132】
H NMR (400 MHz, CDCl) δ= 1.34 (3H, s), 1.51 (3H, s), 1.82 (3H, dd, J = 6.5, 1.1 Hz), 3.48 (1H, d, J = 3.5 Hz), 3.69 (1H, d, J = 3.5 Hz), 4.59 (1H, d, J = 16.8 Hz), 4.59 (1H, d, J = 16.8 Hz), 4.64 (1H, d, J = 16.8 Hz), 4.88 (1H, s), 5.89 (1H, qd, J =16.0, 6.5 Hz), 6.06 (1H, d, J = 16.0 Hz)
13C NMR (100 MHz, CDCl) δ= 19.2, 24.8, 25.5, 53.1, 57.1, 63.0, 101.5, 121.0, 127.9, 134.8, 148.7, 190.9
IR (neat) 2991, 2937, 2854, 1681, 1444, 1373, 1238, 1081, 1037, 858, 539 cm−1
[α] 25 +231 (c=0.73, MeOH)
【0133】
【実施例15】化合物(+)−14(ECH)の合成
アセトニド(+)−13 (9.0 mg, 0.038 mmol) のMeOH (0.8 mL) 溶液にAmberlyst 15 (13 mg) を加え、室温で40分間撹拌する。Amberlyst 15を脱脂綿で濾過し、溶媒留去後、薄層クロマトグラフ(酢酸エチル)により精製を行い、ジオール(+)−14(ECH) (6.2 mg, 84%)を得る。
【0134】
H NMR (400 MHz, CDCl) δ= 1.81 (3H, dd, J = 6.2, 1.0 Hz), 2.07 (1H, bs), 3.11 (1H, bd, J = 3.9 Hz), 3.54 (1H, dd, J = 3.9, 0.7 Hz), 3.79 (1H, dd, J = 3.9, 1.5 Hz), 4.47 (1H, d, J = 14.2 Hz), 4.75 (1H, J = 14.2 Hz), 4.98 (1H, bs), 5.94 (1H, qd, J = 16.0, 6.2 Hz), 6.04 (1H, d, J = 16.0 Hz)
13C NMR (100 MHz, CDCl) δ= 19.2, 53.4, 55.6, 63.0, 65.2, 121.6, 131.0, 135.3, 146.3, 194.3
IR (neat) 3380, 2915, 1677, 1444, 1051, 1012, 867, 734 cm−1
HRMS (FAB): calcd for C1012: 196.0736, found 196.0732.
[α] 25 +285 (c=0.41, MeOH)
【0135】
【試験例1】RKTS−33, RKTS−34によるFas抗体誘導性アポトーシスの抑制作用
ヒトバーキットリンパ腫SKW6.4細胞を、10%子牛血清を含むRPMI培地にて5%炭酸ガスと水蒸気を飽和させた培養器内で培養した。対数増殖期にあるSKW6.4細胞に一連の希釈系列の(+)−RKTS−33、あるいは、(+)−RKTS−34を添加し、Fas抗体CH−11(株式会社医学生物学研究所社製, 100ng/ml)存在下で8時間培養し、細胞の生存率をMTT(3−(4,5−ジメチル−チアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)法により検定した。生存率は以下の式に従い算出した。
【0136】
生存率(%)=[[(抗Fas抗体および化合物の存在下における吸光度)−( 抗Fas抗体存在下および化合物の非存在下における吸光度)]/[( 抗Fas抗体および化合物の非存在下における吸光度)−( 抗Fas抗体存在下および化合物の非存在下における吸光度)]]×100
【0137】
化合物(+)−RKTS−33および(+)−RKTS−34は、それぞれ約20μg/mlの濃度で、Fas抗体により誘導されるアポトーシスを50%阻害した。このことは、本発明のRKTS−33およびRKTS−34がFas誘導性アポトーシス抑制作用を有し、過度のアポトーシスが原因である疾病に対する治療薬・予防薬などとして有効であることを示している。
【0138】
【試験例2】RKTS−33, RKTS−34, 14 (ECH)によるTNF−α誘導性アポトーシスの抑制作用
ヒトバーキットリンパ腫SKW6.4細胞を、10%子牛血清を含むRPMI培地にて5%炭酸ガスと水蒸気を飽和させた培養器内で培養した。対数増殖期にあるSKW6.4細胞に一連の希釈系列の(+)−RKTS−33、(+)−RKTS−34、あるいは、(+)−14 (ECH)を添加し、TNF−α (R&Cシステム社製, 100ng/ml)およびシクロヘキシミド(シグマ社製, 10 nM)存在下で8時間培養し、細胞の生存率をMTT法により検定した。生存率は以下の式に従い算出した。
【0139】
生存率(%)=[[(TNF−αおよび化合物の存在下における吸光度)−(TNF−α存在下および化合物の非存在下における吸光度)]/[(TNF−αおよび化合物の非存在下における吸光度)−(TNF−α存在下および化合物の非存在下における吸光度)]]×100
【0140】
化合物(+)−RKTS−33, (+)−RKTS−34, および(+)−14 (ECH)は、それぞれ約20μg/mlの濃度で、TNF−αにより誘導されるアポトーシスを50%阻害した。このことは、本発明のRKTS−33,RKTS−34, および14 (ECH)がTNF−α誘導性アポトーシス抑制作用を有し、過度のアポトーシスが原因である疾病に対する治療薬・予防薬などとして有効であることを示している。
【0141】
【製剤例1】注射・点滴剤
本発明化合物 10 mgを含有するように、粉末ブドウ糖5 gを加えてバイアルに無菌的に分配して密封し、窒素、ヘリウムなどの不活性ガスを封入して冷暗所に保存した。使用前にエタノールに溶解し、0.85%生理的食塩水100 mlを添加して静脈内注射剤とし、一日あたり10〜100 mlを症状に応じて静脈内注射または点滴で投与する。
【0142】
【製剤例2】顆粒剤
本発明化合物 1 g、乳糖98 g、およびヒドロキシプロピルセルロース1 gをそれぞれ取り、よく混和した後、定法にしたがって粒状に成形し、それをよく乾燥して、瓶やヒートシール包装などに適した顆粒剤を製造した。一日あたり100〜1000 mgを症状に応じて経口投与できる。
【0143】
【発明の効果】
アポトーシス抑制活性を有し、かつ安定性の高い本発明の化合物は、過度のアポトーシスが原因で起こるとされている様々な疾病、例えば、関節リウマチ、B型肝炎およびC型肝炎等のウイルス感染に伴う肝炎、劇症肝炎、糖尿病、心筋梗塞、潰瘍性大腸炎、慢性腎炎、脱毛症、アルツハイマー病およびパーキンソン氏病などの神経変性疾患、虚血性脳障害、後天性免疫不全症候群、拡張性心筋症などの予防薬・治療薬として有用である。
また本発明の製造方法は、ラージスケールで光学純度良く、鏡像体を合成でき、さまざまな置換基を導入できるという点で有用である。

Claims (7)

  1. 以下の一般式(I):
    Figure 2004307420
    [式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基または水酸基の保護基を示し;Rは水素原子、下記式:
    Figure 2004307420
    (式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルコキシ基、アリール基、アミノ基、ヒドロキシ基またはオキソ基を示す。ただしRがすべて水素原子である場合を除く。)で表される基または下記式:
    Figure 2004307420
    (式中、Rは前記と同義である。)で表される基を示す。]で表される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
  2. 以下の式(II):
    Figure 2004307420
    で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
  3. 以下の式(III):
    Figure 2004307420
    で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
  4. 以下の一般式(I):
    Figure 2004307420
    (式中、RおよびRは前記と同義である。)
    で表される化合物の製造方法であって、
    (1)以下の一般式(V):
    Figure 2004307420
    (式中、Rは直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基を示す。)で表される化合物にリパーゼと酢酸エステルとを作用させ、以下の一般式(V−1):
    Figure 2004307420
    (式中、Rは前記と同義である。)及び以下の一般式(VI):
    Figure 2004307420
    (式中、Rは前記と同義であり、Acはアセチル基を示す。)で表される化合物を得、
    (2)得られた化合物(V−1)をエポキシ化し、以下の一般式(VII−1):
    Figure 2004307420
    (式中、Rは前記と同義である。)で表される化合物を得、
    (3)得られた化合物を還元し、以下の式(VIII−1):
    Figure 2004307420
    で示される化合物を得、
    (4)得られた化合物のヒドロキシメチル基に保護基を導入し、以下の一般式(IX−1):
    Figure 2004307420
    (式中、Rは水酸基の保護基を示す。)で表される化合物を得、
    (5)得られた化合物を酸化し、次いでエポキシ環を開裂し、以下の一般式(X−1):
    Figure 2004307420
    (式中、Rは前記と同義である。)で表される化合物を得、
    (6)必要に応じて得られた化合物の保護基を脱保護し、
    (7)必要に応じて得られた化合物への置換基の導入、遊離の水酸基への保護基の導入または遊離の水酸基のアルキル化もしくはエステル化を行うことを特徴とする方法。
  5. 以下の一般式(I):
    Figure 2004307420
    (式中、RおよびRは前記と同義である。)
    で表される化合物の製造方法であって、
    (1)以下の一般式(V):
    Figure 2004307420
    (式中、Rは前記と同義である。)で表される化合物にリパーゼと酢酸エステルとを作用させ、以下の一般式(V−1):
    Figure 2004307420
    (式中、Rは前記と同義である。)及び以下の一般式(VI):
    Figure 2004307420
    (式中、RおよびAcは前記と同義である。)で表される化合物を得、
    (2)得られた化合物(VI)のアセチル基を脱保護し、以下の一般式(V−2):
    Figure 2004307420
    (式中、Rは前記と同義である。)で表される化合物を得、
    (3)得られた化合物をエポキシ化し、以下の一般式(VII−2):
    Figure 2004307420
    (式中、Rは前記と同義である。)で表される化合物を得、
    (4)得られた化合物を還元し、以下の式(VIII−2):
    Figure 2004307420
    で表される化合物を得、
    (5)得られた化合物のヒドロキシメチル基に保護基を導入し、以下の一般式(IX−2):
    Figure 2004307420
    (式中、Rは前記と同義である。)で表される化合物を得、
    (6)得られた化合物を酸化し、次いでエポキシ環を開裂し、以下の一般式(X−2):
    Figure 2004307420
    (式中、Rは前記と同義である。)で表される化合物を得、
    (7)必要に応じて得られた化合物の保護基を脱保護し、
    (8)必要に応じて得られた化合物への置換基の導入、遊離の水酸基への保護基の導入または遊離の水酸基のアルキル化もしくはエステル化を行うことを特徴とする方法。
  6. 請求項1〜3に記載のいずれかの化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物を有効成分として含有する医薬組成物。
  7. 請求項1〜3に記載のいずれかの化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物を有効成分として含有するアポトーシス抑制剤。
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