JP2004315373A - 抗腫瘍活性および血管新生阻害活性を有する化合物、ならびにその製造方法 - Google Patents
抗腫瘍活性および血管新生阻害活性を有する化合物、ならびにその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004315373A JP2004315373A JP2003107647A JP2003107647A JP2004315373A JP 2004315373 A JP2004315373 A JP 2004315373A JP 2003107647 A JP2003107647 A JP 2003107647A JP 2003107647 A JP2003107647 A JP 2003107647A JP 2004315373 A JP2004315373 A JP 2004315373A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- group
- compound
- solvate
- hydrate
- pharmaceutically acceptable
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
- 0 C*C(CC=N)(C1OC11)C(C(CC(C2OC2C2(C)*)=O)(C3C2=COC2*)OC4OC4C32I)=C(C)C1=O Chemical compound C*C(CC=N)(C1OC11)C(C(CC(C2OC2C2(C)*)=O)(C3C2=COC2*)OC4OC4C32I)=C(C)C1=O 0.000 description 2
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02P—CLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
- Y02P20/00—Technologies relating to chemical industry
- Y02P20/50—Improvements relating to the production of bulk chemicals
- Y02P20/55—Design of synthesis routes, e.g. reducing the use of auxiliary or protecting groups
Landscapes
- Epoxy Compounds (AREA)
- Heterocyclic Carbon Compounds Containing A Hetero Ring Having Oxygen Or Sulfur (AREA)
- Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
Abstract
【課題】抗腫瘍活性および血管新生阻害活性を有する化合物の提供。
【解決手段】以下の一般式(I):
【化1】
(式中、R1は炭素数3以上の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基または芳香族基を示し;R2は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基またはヒドロキシ基の保護基を示し;R3は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基またはヒドロキシ基の保護基を示し、R4は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基を示すが、−OR3, R4が一緒になってオキソ基またはオキシム基を示してもよい)で表される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
【選択図】 なし
【解決手段】以下の一般式(I):
【化1】
(式中、R1は炭素数3以上の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基または芳香族基を示し;R2は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基またはヒドロキシ基の保護基を示し;R3は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基またはヒドロキシ基の保護基を示し、R4は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基を示すが、−OR3, R4が一緒になってオキソ基またはオキシム基を示してもよい)で表される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗腫瘍活性および血管新生阻害活性を有する化合物、ならびにその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
外科療法や放射線療法と並んで、癌化学療法が「癌の治療法」において果たす比重は高い。1940年代にナイトロジェンマスタード関連化合物が抗癌剤として臨床使用されたのをはじめとして現在までの約60年の間にさまざまな種類の抗癌剤が開発されている。臨床使用されている抗癌剤が抱えている問題点は、副作用、獲得耐性細胞の出現などが挙げられる。化学物質の生物活性は、その化学構造に依存するところが大きいため、抗腫瘍活性を有する新規な化合物は、不断の希求があるといえる。
【0003】
これらを克服するために、直接、腫瘍細胞の増殖を抑制する抗腫瘍剤に加えて、腫瘍の増殖に不可欠な血管新生を阻害するいわゆる血管新生阻害剤などが有能視されている(非特許文献1を参照)。
【0004】
【非特許文献1】
Nat. Med., 1, 27−31 (1995)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の希求に応えるものであり、抗腫瘍活性および血管新生阻害活性を有する化合物、その製造方法、それを有効成分とする抗腫瘍剤および血管新生阻害剤の提供を目的とする。本発明化合物は、抗腫瘍剤、血管新生阻害剤として有効であり、さらには、転移抑制剤、抗リウマチ様関節炎剤、糖尿病性網膜症などをはじめとした過度の血管新生が原因とされている疾病の治療薬・予防薬などとして有効である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題の解決のために鋭意検討した結果、抗腫瘍活性および血管新生阻害活性を有する新規化合物を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
1) 以下の一般式(I):
【0007】
【化11】
【0008】
(式中、R1は炭素数3以上の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基または芳香族基を示し;R2は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基またはヒドロキシ基の保護基を示し;R3は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基またはヒドロキシ基の保護基を示し、R4は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基を示すが、−OR3, R4が一緒になってオキソ基またはオキシム基を示してもよい)で表される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
【0009】
2) 以下の式(II):
【0010】
【化12】
【0011】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
【0012】
3) 以下の式(III):
【0013】
【化13】
【0014】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
4) 以下の式(IV):
【0015】
【化14】
【0016】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
5) 以下の一般式(V):
【0017】
【化15】
【0018】
(式中、R5は水素原子を示し、R6はヒドロキシ基または保護基で保護されたヒドロキシ基を示すが、R5, R6が一緒になってオキソ基またはオキシム基を示してもよく;R7は水素原子を示し、R8はヒドロキシ基または保護基で保護されたヒドロキシ基を示すが、R7, R8が一緒になってオキソ基またはオキシム基を示してもよく;R9はそれぞれ独立に水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基または直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基を示す)で表される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
【0019】
6) 以下の式(VI):
【0020】
【化16】
【0021】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
7) 以下の式(VII):
【0022】
【化17】
【0023】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
8) 以下の式(VIII):
【0024】
【化18】
【0025】
(式中、n−Buはn−ブチル基を示す。)
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
9) 以下の一般式(V):
【0026】
【化19】
【0027】
(式中、R5〜R9は前記と同義である。)で表される化合物の製造方法であって、(1)以下の式(IX):
【0028】
【化20】
【0029】
(式中、R9は前記と同義である。)で表される化合物を酸化し、
(2)得られた化合物を無溶媒下反応させることを特徴とする方法。
10) 1)〜8)に記載のいずれかの化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物を有効成分として含有する医薬組成物。
11) 1)〜8)に記載のいずれかの化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物を有効成分として含有する抗腫瘍剤。
12) 1)〜8)に記載のいずれかの化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物を有効成分として含有する血管新生阻害剤。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明は以下の一般式(I):
【0031】
【化21】
【0032】
(式中、R1は炭素数3以上の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基または芳香族基を示し;R2は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基またはヒドロキシ基の保護基を示し;R3は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基またはヒドロキシ基の保護基を示し、R4は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基を示すが、−OR3, R4が一緒になってオキソ基またはオキシム基を示してもよい)で表される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物である。
【0033】
式中、R1は炭素数3以上の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基または芳香族基を示すが、例えばアルキル基として、炭素数3〜18個のアルキル基、好ましくは炭素数3〜12個の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を用いることができる。より具体的には、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などを用いることができる。例えば、芳香族基として、炭素数6〜22個、好ましくは炭素数6〜10個の単環式または多環式の芳香族基を挙げることができる。また環中には1個以上の窒素原子、酸素原子、硫黄原子を有してもよい。より具体的にはフェニル基などを用いることができる。
【0034】
R1で示されるアルキル基および芳香族基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜6個の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜6個の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルコキシ基、フェニル基などの芳香族基、アミノ基、ヒドロキシ基またはオキソ基などが挙げられる。R1は好ましくは、n−ブチル基、フェニル基を用いることができる。
【0035】
式中、R2およびR3は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基またはヒドロキシ基の保護基を示すが、例えば、アルキル基またはアシル基として、炭素数1〜6個のアルキル基またはアシル基、好ましくは直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜6個のアルキル基またはアシル基を用いることができる。より具体的には、アルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基など;アシル基としてホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ヘキサノイル基などを用いることができる。これらのアルキル基またはアシル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、R1において前述した置換基と同様である。
【0036】
ヒドロキシ基の保護基としては当業者に種々知られており、適宜の保護基を選択することが可能である。例えば、ピバロイル基などのアシル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基などのアルキルシリル基、イソプロピリデンアセタール基などを用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0037】
式中、R4は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基を示すが、例えば、アルキル基として、炭素数1〜12個のアルキル基、好ましくは直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜6個のアルキル基を用いることができる。より具体的には、アルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などを用いることができる。これらのアルキル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、R1において前述した置換基と同様である。また、−OR3, R4が一緒になってオキソ基またはオキシム基を示してもよい。
【0038】
本発明の好ましい形態は、以下の式(II):
【0039】
【化22】
【0040】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物である。
【0041】
本発明の別の好ましい形態は、以下の式(III):
【0042】
【化23】
【0043】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物である。
【0044】
本発明の別の好ましい形態は、以下の式(IV):
【0045】
【化24】
【0046】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物である。
【0047】
化合物(II)〜(IV)の分子内のヒドロキシ基を通常のアルキル化反応、アシル化反応により、アルキル化、アシル化し、対応する任意のアルキル化体、アシル化体を得ることができる。また、通常のアルキル化反応によりシクロヘキセン環に置換基を導入することができる。さらに、通常の分子内のヒドロキシ基を通常のヒドロキシ基の保護化反応により保護化することができる。
【0048】
さらなる本発明は、以下の一般式(V):
【0049】
【化25】
【0050】
(式中、R5〜R9は前記と同義である。)
で表される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物である。
【0051】
式中、R5は水素原子を示し、R6はヒドロキシ基または保護基で保護されたヒドロキシ基を示すが、R5, R6が一緒になってオキソ基またはオキシム基を示してもよく;R7は水素原子を示し、R8はヒドロキシ基または保護基で保護されたヒドロキシ基を示すが、R7, R8が一緒になってオキソ基またはオキシム基を示してもよく、保護基としてはR2およびR3において前述したアルキル基、アシル基またはヒドロキシ基の保護基と同様である。
【0052】
式中、R9はそれぞれ独立に水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基または直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基を示すが、アルキル基またはアルケニル基として、炭素数1〜12個のアルキル基またはアルケニル基、好ましくは直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜6個のアルキル基またはアルケニル基を用いることができる。より具体的には、アルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基など;アルケニル基としてビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、スチリル基などを用いることができる。これらのアルキル基またはアルケニル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、R1において前述した置換基と同様である。R9は好ましくは水素原子、メチル基、n−ブチル基を用いることができる。
【0053】
本発明の好ましい形態は、以下の式(VI):
【0054】
【化26】
【0055】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物である。
【0056】
本発明の別の好ましい形態は、以下の式(VII):
【0057】
【化27】
【0058】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物である。
【0059】
本発明の別の好ましい形態は、以下の式(VIII):
【0060】
【化28】
【0061】
(式中、n−Buは前記と同義である。)
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物である。
【0062】
化合物(VI)〜(VIII)の分子内のヒドロキシ基を通常のアルキル化反応、アシル化反応により、アルキル化、アシル化し、対応する任意のアルキル化体、アシル化体を得ることができる。また、分子内ヒドロキシ基を通常のヒドロキシ基の保護化反応により保護化することができる。
【0063】
上記式(I)〜(VIII)で表される化合物の光学活性体も本発明に含まれる。光学活性体は任意の立体異性体の混合物またはラセミ体から通常の光学分割方法を用いて光学分割を行うことによって得ることができる。
【0064】
上記式(I)〜(VIII)で表される化合物の製薬上許容される塩も本発明に含まれ、例えば、塩酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩;又はp−トルエンスルホン酸塩などの有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などの金属塩;アンモニウム塩;メチルアンモニウム塩などの有機アンモニウム塩;グリシン塩などのアミノ酸塩を挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0065】
式(I)〜(VIII)で表される本発明の化合物は複数の不斉炭素を有しており、また置換基の種類によりさらに1個以上の不斉炭素を有する場合がある。これらの不斉炭素に基づく光学異性体またはジアステレオマーなどの立体異性体が存在するが、本発明の範囲には純粋な形態の立体異性体のほか、任意の立体異性体の混合物またはラセミ体などが含まれる。また、本発明の化合物にはオレフィン性の二重結合を有する場合も存在し、二重結合に基づく幾何異性体が存在するが、純粋な形態の幾何異性体のほか、任意の幾何異性体の混合物も本発明の範囲に含まれる。本発明の化合物は任意の結晶形として存在することができ、水和物または溶媒和物として存在する場合もある。これらの物質がいずれも本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
【0066】
また、本発明化合物は、後述する試験例に記載の通り、優れた抗腫瘍活性、血管新生阻害活性を示すため、上記の化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物は医薬組成物、具体的には例えば抗腫瘍剤および血管新生抑制剤として用いる医薬組成物の有効成分として有用である。したがって、本発明により、上記の化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物のいずれかまたはそれらの組み合わせを有効成分として含む医薬組成物が提供される。
【0067】
このような本発明の医薬組成物は、転移抑制剤、抗リウマチ様関節炎剤、糖尿病性網膜症などをはじめとした過度の血管新生が原因とされている疾病の治療薬・予防薬として用いることができる。さらに、上記化合物の治療有効量を、ヒトを含む哺乳類動物に投与する行程を含む方法、上記化合物の有効量を細胞に接触させる行程を含む方法が本発明により提供される。
【0068】
本発明の化合物を有効成分として含有する医薬組成物は、その使用目的にあわせて投与方法、剤型、投与量を適宜決定することが可能である。例えば治療あるいは予防を目的としてヒトに投与する場合は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、溶剤等として経口的に、または注射剤、坐剤、経皮吸収剤、吸入剤等として非経口的に投与することができる。また、本化合物の有効量は、その剤型に適した賦形剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、滑沢剤等の医薬用添加剤を必要に応じて混合し、医薬製剤とすることができる。注射剤の場合には、適当な担体とともに滅菌処理を行って製剤とする。投与量は疾患の状態、投与ルート、患者の年齢、または体重によっても異なり、最終的には医師の判断に委ねられるが、有効成分量として成人に経口で投与する場合、通常、0.1−100mg/kg/日、好ましくは、1−20mg/kg/日、非経口で投与する場合、通常、0.01−10mg/kg/日、好ましくは、0.1−2mg/kg/日を投与する。これを1回あるいは数回に分割して投与すればよい。
【0069】
また、本発明化合物を試薬として使用する場合には、有機溶剤又は含水有機溶剤に溶解して用いることができる。例えば、各種培養細胞系へ直接投与すると癌細胞の成長や血管内皮細胞の遊走を抑制することができる。使用可能な有機溶剤としては、例えばメタノールやジメチルスルホキシド等を挙げることができる。剤型としては、例えば、粉末などの固形剤、又は有機溶剤若しくは含水有機溶剤に溶解した液体剤などを挙げることができる。通常、上記の化合物を試薬として用いて細胞成長抑制作用や血管内皮細胞の遊走阻害活性を発揮させるための効果的な使用量は、培養細胞系中において0.1−100 μg/mlであるが、適切な使用量は培養細胞系の種類や使用目的により異なり、適宜選択可能である。また、必要により上記範囲外の量を用いることができる。
【0070】
本発明の化合物(I)〜(IV)は、以下の参考例および実施例に示す方法などにより製造することができる。例えば、以下のようにして得ることができる。
【0071】
アクロイルクロリド(ACROS社、和光純薬社製など)およびフラン(Aldrich社、Merck社製など)をDield−Alder(ディールスアルダー)反応させ、得られた化合物に水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ性溶液を添加し、反応させる。得られた化合物をヨウ素、N−ヨードスクシミド等のヨウ化剤と反応させる。得られた化合物に水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等のアルカリを加えて反応させる。得られた化合物をヨードメタン、ヨードエタン、ブロモメタン等のエステル化剤と反応させる。得られた化合物にLDA(リチウムジイソプロピルアミド)、LiHMDS(リチウムヘキサメチルジシラシド)、KHMDS(カリウムヘキサメチルジシラジド)等の塩基を加えて反応させる。得られたラセミ体化合物に酢酸ビニル、酢酸プロペニル等の酢酸エステルおよびリパーゼを加えて反応させ、得られた化合物を通常の有機合成物の単離・精製方法により単離・精製して光学分割する。光学分割して得られた化合物をVO(acac)2(ビス(アセチルアセトナート)オキソバナジウム(IV))、Mo(CO)6等の遷移金属化合物、及びtert−ブチルヒドロペルオキシド、トリチルヒドロペルオキシド等の過酸化物を加えて反応させてエポキシ化する。光学分割して得られた化合物が保護基を有する場合は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリを加えて反応させて保護基を脱保護する。得られた化合物にNaBH4、LiAlH4等の還元剤を加え、反応させて還元する。得られた化合物をトリエチルアミン等の塩基存在下、tert−ブチルジメチルシリルクロリド等のヒドロキシ基の保護基と反応させることによりヒドロキシメチル基に保護基を導入する。得られた化合物をDess−Martin periodinane(デスマーチンペルヨージナン)、TPAP(テトラプロピルアンモニウム過ルテニウム酸塩)存在下N−メチルモルホリン−N−オキシド等の酸化剤を加えて反応させ、酸化する。得られた化合物にシリカゲル、ピリジニウムパラトルエンスルホナート、トリエチルアミン等の酸性及び塩基性化合物を加えて反応させエポキシ環を開環させる。なお、上記酸化反応およびエポキシ環の開環反応の順序は適宜変更することが可能である。得られた化合物をDowex(ダウエックス)(登録商標)50WX4、Amberlyst(アンバーリスト)(登録商標) 15等の陽イオン交換樹脂を加えて反応させ、保護基を脱離する。得られた化合物の遊離のヒドロキシ基をイソプロピデンアセタール基などとして保護し、ヨウ素などのハロゲン化剤を反応させハロゲン化し、(E)−ヘキセニルボロン酸、フェニルエテニルボロン酸などのアルケニルホウ酸などを反応させ置換基を導入し、Dowex 50WX4、Amberlyst15等の陽イオン交換樹脂などを作用させ保護基を脱保護する。
【0072】
得られた化合物に、必要に応じて前述のR4における置換基を通常の有機化合物の合成において使用されるアルキル化手法にて導入することができる。また必要に応じて前述のR2およびR3で示される置換基または保護基を通常の有機化合物の合成において使用されるアルキル化、アシル化、保護基の導入手法にて遊離のヒドロキシ基に導入することができる。また必要に応じて通常の有機化合物の合成において使用されるオキソ化、オキシム化手法にて遊離のヒドロキシ基をオキソ化、オキシム化することができる。上記各反応を組み合わせてもよい。このようにして本発明の化合物(I)〜(IV)が得られる。
【0073】
上記化合物のヒドロキシ基のオキソ化は、例えば実施例において示すように、対象化合物をトリエチルアミン等の塩基存在下、tert−ブチルジメチルシリルクロリド等のヒドロキシ基の保護基と反応させることにより遊離のヒドロキシ基に保護基を導入し、得られた化合物をDess−Martin periodinane等の酸化剤を加えて反応させ、酸化することにより行うことができる。
【0074】
次に、本発明の化合物(V)〜(VIII)の製造方法について説明する。
【0075】
本発明の製造方法の出発原料となる、以下の式(IX):
【0076】
【化29】
【0077】
(式中、R9は前記と同義である。)で表される化合物は、上記の化合物(I)〜(IV)の製造方法などにより製造することができる。R9がアルケニル基である化合物は、前述の化合物(I)〜(IV)の製造方法において、置換基を導入する際にアルケニルホウ酸、アルケニルスズなどのアルケニル化合物と、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)などの遷移金属化合物を用いることにより同様に製造することができる。なお、アルケニル化合物と遷移金属化合物の組み合わせは適宜変更可能である。
【0078】
化合物(V)〜(VIII)の製造方法における各工程について説明する。
工程(1)
化合物(IX)を通常の酸化方法により酸化する。例えば同化合物をジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、酢酸エチル等のエステル等の溶媒に溶解し、二酸化マンガン、酸素−塩化銅(I)−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニロキシ等の酸化剤存在下、0〜30℃で、5分〜2時間反応させる。得られた化合物を通常の有機合成物の単離・精製方法により単離・精製する。
【0079】
工程(2)
得られた化合物を無溶媒下、0〜30℃で、0.5〜12時間反応させる。得られた化合物を必要に応じて通常の有機合成物の単離・精製方法により単離・精製する。
【0080】
以上のようにして得られた化合物に、必要に応じて前述のR6, R8における保護基を通常の有機化合物の合成において使用されるアルキル化、アシル化、保護基の導入手法にて遊離のヒドロキシ基に導入することができる。また必要に応じて通常の有機化合物の合成において使用されるオキソ化、オキシム化手法にて遊離のヒドロキシ基をオキソ化、オキシム化することができる。上記各反応を組み合わせてもよい。このようにして一般式(V)〜(VIII)で表される本発明の化合物が得られる。
【0081】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【0082】
以下、本発明の化合物の製造に用いられる化合物の合成方法を参考例として示す。なお、化合物(+)−5を用いた参考例において化合物(−)−5を使用することにより対応する光学活性化合物を得ることができ、以下、対応する化合物を得ることができる。合成経路を以下に示す。
【0083】
【化30】
【0084】
【参考例1】化合物3の合成
室温でアクリロイルクロリド1(30 mL)にフラン2(225 mL)を加え、五時間撹拌する。反応液にNaOH水溶液を加え、溶液をアルカリ性にして、1時間撹拌する。水層を分液後、水層にCH2Cl2 (350 mL)、ヨウ素(46.8 g)を加え、激しく撹拌する。2時間後、Na2S2O3水溶液を過剰のヨウ素の色が消えるまで加えた後、低沸点物を減圧下留去すると固体が析出する。固体をろ別し、乾燥させ、ヨードラクトン体3が41 g, 42%収率で得られる。
【0085】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 2.15 (1H, dd, J = 13.5, 3.2 Hz), 2.20 (1H, ddd, J = 13.5, 10.4, 4.7 Hz), 2.77 (1H, ddd, J = 10.4, 4.7, 3.2 Hz), 3.94 (1H, s), 4.80 (1H, d, J = 4.7 Hz), 5.12 (1H, d, J = 4.9 Hz), 5.38 (1H, t, J = 4.9 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= 25.0, 36.1, 38.0, 81.9, 84.2, 87.5, 175.8.IR (KBr) 2995, 1787, 1324, 1189, 1022, 661, 433 cm−1
HRMS (FAB): calcd for C7H8O3I: 266.9518, found 266.9514.
【0086】
【参考例2】化合物4の合成
ヨードラクトン3 (17.9 g, 67.2 mmol) のDMF(ジメチルホルムアミド) (520 mL) 溶液にKOH (9.42 g, 168 mmol) を加え、60℃で27時間加熱環流する。室温でヨードメタン (12.5 mL, 202 mmol) を加えた後、超音波を2時間照射する。減圧下溶媒を留去後、1N HCl水溶液(18mL)、飽和NH4Cl水溶液(150 mL)を加える。有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で3回洗い、Na2SO4で乾燥する。溶媒留去後、カラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)により精製を行い、9.25 gの4を得る(収率81%)。
【0087】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 1.97 (1H, td, J = 11.6, 5.1 Hz), 2.08 (1H, dd, J = 11.6, 4.2 Hz), 2.91 (1H, dt, J = 11.6, 4.6 Hz), 3.74 (3H, s), 4.01 (1H, dd, J = 4.5, 2.5 Hz), 4.10 (1H, dd, J = 4.5, 2.3 Hz), 4.51 (1H, dt, J = 5.0, 2.5 Hz), 4.69 (1H, dt, J = 5.1, 2.0 Hz)
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= 29.2, 44.6, 51.5, 66.2, 66.4, 77.4, 78.0, 171.8.
IR (KBr) 3039, 2921, 1731, 1444, 1342, 1305, 1097, 956, 609cm−1
HRMS (FAB): calcd for C8H11O4: 177.0657, found 171.0663.
Elemental analysis: Calcd for C8H11O4: C 56.47, H 5.92, found C 56.55, H 5.88.
【0088】
【参考例3】化合物5の合成
ジイソプロピルアミン (11.7 mL, 83.2 mmol)のTHF(テトラヒドロフラン) (63 mL) 溶液に0℃でBuLi(ブチルリチウム) (1.58 M, 42.1 mL, 66.6 mmol)を滴下し、10分間撹拌し、LDAを調製する。4 (9.44g, 55.5 mmol)のTHF (84 mL)溶液に−90℃で上記のLDA溶液を加える。滴下終了後10分間撹拌し、リン酸緩衝液を加え、反応を停止する。有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で1回洗い、Na2SO4で乾燥する。溶媒留去後、カラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:3)により精製を行い、6.32 gの5を得る(収率67%)。
【0089】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 1.85 (1H, bs), 2.36 (1H, ddd, J = 17.6, 5.1, 3.4 Hz), 2.82 (1H, dt, J = 17.6, 1.8 Hz), 3.48 (1H, t, J = 4.8 Hz), 3.57−3.62 (1H, m), 4.55−4.61 (1H, m), 7.15 (1H, t, J = 3.4 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= 29.2, 46.2, 52.1, 56.0, 63.3, 130.7, 133.4, 166.6.
IR (neat) 3444, 2954, 1716, 1438, 1207, 819, 609, 509 cm−1
HRMS (EI): calcd for C8H10O4: 170.0579, found 170.0619.
【0090】
【参考例4】化合物(+)−5および(−)−6の合成
ラセミ体5 (2.8 g, 16.5 mmol)の酢酸ビニル溶液 (30 mL) にPseudomonas stutzeri(シュードモナス・スタッツェリ) lipase (Meito TL) (278 mg) を加え、40時間室温で撹拌する。Pseudomonas stutzeri lipase (Meito TL)をろ別し、低沸点化合物を減圧下留去する。カラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:3〜1:1)により精製を行い、(+)−5 1.35 g [収率49%, 光学純度99% ee], (−)−6 1.65 g [収率48%, 光学純度(96% ee)] を得る。
【0091】
(+)−5: [α]D 26 +213 (c=0.56, MeOH)
5 の光学純度の決定:HPLC conditions: Chiralcel OD−H column, 2−propanol : hexane = 1 : 20, 1.5 mL/min, retention times, 28.7 min (major), 11.1 min (minor).
【0092】
(−)−6: [α]D 22 −226 (c=0.46, MeOH)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 2.04 (3H, s), 2.36 (1H, ddd, J = 18.1, 5.3, 3.3 Hz), 2.82 (1H, dt, Jt = 18.1 Hz, Jd = 1.8 Hz), 3.49 (1H, t, J = 3.9 Hz), 3.60−3.63 (1H, m), 3.77 (3H, s), 5.62 (1H, dt, J = 5.4, 2.7 Hz), 7.14 (1H, t, J = 3.6 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= 20.9, 26.4, 46.5, 52.1, 53.9, 65.6, 131.0, 133.0, 166.1, 170.3.
IR (neat) 2964, 2850, 1739, 1714, 1649, 1265, 1028, 818, 600, 1439 cm−1
【0093】
6 の光学純度の決定:HPLC conditions: Chiralcel OD−H column, 2−propanol : hexane = 1 : 20, 1.5 mL/min, retention times, 5.6 min (major), 6.0 min (minor).
【0094】
【参考例5】化合物(−)−5の合成
(−)−6 (96 % ee, 198 mg, 0.93 mmol) のメタノール溶液 (1 mL)に0 ℃で炭酸カリウム(13 mg, 0.093 mmol) を加え、1時間撹拌する。飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止後、減圧下、溶媒を留去する。有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層をNa2SO4で乾燥する。溶媒留去後、カラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:3〜1:1)により精製を行い、154 mgの(−)−5を得る(収率97%)。
【0095】
【参考例6】化合物(+)−7の合成
エポキシエステル(+)−5 (282 m, 1.65 mmol) のCH2Cl2溶液(15 mL)にVO(acac)2 (22.0 mg)、tert−ブチルヒドロペルオキシドのトルエン溶液 (4.2 M, 2.0 mL)を加え、反応溶液を70℃で9時間撹拌する。反応溶液にNa2S2O3水溶液を加え反応を停止した後に、有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で洗い、Na2SO4で乾燥する。溶媒留去後、薄層クロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:3〜1:1)により精製を行い、297 mgの(+)− 7を得る(収率96%)。
【0096】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 2.31(1H, d, J =15.5 Hz), 2.39 (1H, dd, J =16.0, 4.4 Hz), 2.53 (1H, d, J =12.0 Hz), 3.25 (1H, t, J =3.4 Hz), 3.49 (1H, dd, J =3.9, 2.8 Hz), 3.69 (3H, s), 3.78 (1H, d, J =2.5 Hz), 4.13−4.21 (1H, m).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= 27.4, 50.4, 53.0, 53.8, 56.1, 57.4, 64.4, 168.6.
IR (neat) 3521, 2956, 1743, 1444, 1363, 1294, 1257, 1068, 863, 784 cm−1
HRMS (FAB): calcd for [C8H10O5 + H]: 187.0606, found 187.0622.
[α]D 26 +60.9 (c=0.54, MeOH)
【0097】
【参考例7】化合物(+)−8の合成
(+)− 7 (367 mg)のMeOH(メタノール)溶液(3 mL)にNaBH4 (223 mg, 5.91 mmol) を0℃で加え、室温で30分間撹拌する。有機溶媒を減圧下留去後、カラムクロマトグラフ(MeOH:CHCl3=1:10)により精製を行い、300 mgの(+)− 8を得る(収率96%)。
【0098】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 2.05 (1H, dd, J =15.6, 2.6 Hz), 2.08 (1H, dd, J =15.6, 4.4 Hz), 3.22 (1H, bt, J =3.5 Hz), 3.43 (1H, d, J =12.4 Hz), 3.49 (1H, d, J =2.5 Hz), 3.53 (1H, t, J =3.2 Hz), 3.55 (1H, d, J =12.4 Hz), 4.14 (1H, dt, J =4.4, 3.0 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= 29.3, 52.2, 55.2, 55.4, 62.1, 65.4, 65.5
IR (neat) 3399, 3369, 2927, 1423, 1074, 1047, 809, 619 cm−1
HRMS (FAB): calcd for [C7H10O4 + H]: 159.0657, found 159.0650.
[α]D 26 +11.1 (c=0.77, MeOH)
【0099】
【参考例8】化合物(+)−9の合成
(+)− 8 (134 mg, 0.85 mmol) のCH2Cl2溶液(2 mL)にトリエチルアミン(0.19 mL, 1.38 mmol)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン) (10.3 mg, 0.085 mmol)、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(183 mg, 1.21 mmol)を0℃で加え、室温で15時間撹拌する。リン酸緩衝液を加え、反応を停止した後に、有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で洗い、Na2SO4で乾燥する。溶媒留去後、カラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:10〜1:1)により精製を行い、339 mgの(+)− 9を得る(収率84%)。
【0100】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 0.03 (6H, s), 0.87 (9H, s), 2.02 (1H, dd, J =15.4, 4.2 Hz), 2.10 (1H, d, J = 15.4 Hz), 2.82 (1H, d, J =12.0 Hz), 3.27 (1H, bs), 3.47 (1H, d, J = 12.0 Hz), 3.48 (2H, s), 3.64 (1H, d, J =12.0 Hz), 4.10−4.18 (1H, m).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= −5.5, 18.2, 25.7, 27.8, 50.9, 54.3, 54.5, 62.2, 64.9, 65.0, 77.3.
IR (neat) 3517, 2954, 2929, 2857, 1116, 869, 688 cm−1
HRMS (FAB): calcd for [C13H24O4Si + H]: 273.1522, found 273.1491.
[α]D 26 +14.0 (c=0.89, MeOH)
【0101】
【参考例9】化合物(+)−10の合成
シリルエーテル (+)−9 (700 mg, 1.77 mmol)のCH2Cl2 (10 mL) 溶液に0℃でDess−Martin periodinane(1.03 g, 2.43 mmol)を加え、室温で50分撹拌する。飽和重曹水を加え、反応を停止する。有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を飽和重曹水で洗い、Na2SO4で乾燥する。溶媒留去後、シリカゲルでろ過(酢酸エチル:ヘキサン=1:3)し、溶媒を留去する。これにトルエン(15 mL)、シリカゲル (7.0 g) を加え、70℃で4.5時間撹拌する。室温に冷却後、シリカゲルをろ過して686 mgの(+)− 10を得る(収率99%)。
【0102】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 0.10 (6H, s), 0.91 (9H, s), 3.29 (1H, bs), 3.43 (1H, s), 3.78 (1H, dd, J = 3.4, 0.9 Hz), 4.28 (1H, d, J =15.6 Hz), 4.51 (1H, dd, J =15.6, 1.6 Hz), 4.63 (1H, bs), 5.96 (1H, d, J = 1.4 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= −5.5, 18.2, 52.7, 56.4, 64.1, 77.2, 65.0, 121.1, 156.9, 193.6.
IR (neat) 3419, 2954, 2931, 2884, 1687, 1344, 1226, 1049, 879, 781 cm−1
HRMS (FAB): calcd for [C13H22O4Si + H]: 271.1366, found 271.1368.
[α]D 25 +149 (c=0.56, MeOH)
【0103】
【参考例10】化合物(+)−11の合成
エポキシケトン(+)−10 (38.7 mg)のMeOH (1 mL)溶液にAmberlyst 15 (11.3 mg)を加え、室温で5時間撹拌する。Amberlyst 15をろ別後、溶媒を減圧下留去しジオールを得る。このジオールのCH2Cl2 (0.5 mL) 溶液にジメトキシプロパン (0.35 mL), PPTS(ピリジンパラトルエンスルホン酸) (3.6 mg)を加え、室温で4時間撹拌する。飽和重曹水を加え、反応を停止する。有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で洗い、Na2SO4で乾燥する。溶媒留去後、フロリジルゲルを用いたカラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)により精製を行い、18.0 mgのエポキシアセタール(+)−11を得る(収率64 %)。
【0104】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 1.46 (3H, s), 1.62 (3H, s), 3.44−3.47 (1H, m), 3.68 (1H, d, J =3.2 Hz), 4.28 (1H, d, J = 14.6 Hz), 4.60 (1H, dt, J =14.6, 1.3 Hz), 4.83 (1H, s), 5.85 (1H, t, J = 1.1 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= 21.4, 27.1, 52.4, 57.3, 63.8, 64.0, 101.2, 120.1, 154.0, 190.9
IR (neat) 1673, 1268, 1078, 1020, 779, 539cm−1
HRMS (FAB): calcd for [C10H12O4 + H]: 197.0814, found 197.0818.
Elemental analysis: Calcd for C10H12O4: C 61.22, H 6.16, found C 61.38, H 6.23.
[α]D 25 +348.4 (c=0.10, CHCl3)
mp. 93.0−94.0 ℃
【0105】
【参考例12】化合物(+)−12の合成
アルミ箔で遮光した10 mLナスフラスコにCH2Cl2 (0.3 mL), I2 (23.4 mg), ピリジン11.2 μL, PhI(OCOCF3)2 (ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨードベンゼン)(39.7 mg) を加え、室温で15分撹拌する。BHT(3,5−ビス(tert−ブチル)−4−ヒドロキシトルエン) (1.0 mg)、(+)−11 (18.1 mg) を加え、22時間撹拌する。飽和Na2S2O3水溶液を加えて反応を停止させ、有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で洗い、Na2SO4で乾燥する。溶媒留去後、フロリジルゲルを用いたカラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:50)により精製を行い、19.9 mgのエポキシアセタール(+)−12を得る(収率67%)。
【0106】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 1.37 (3H, s), 1.52 (3H, s), 3.60 (1H, dd, J =3.4, 1.4 Hz), 3.74 (1H, d, J =3.2 Hz), 4.33 (1H, dd, J =18.3, 1.4 Hz), 4.38 (1H, dd, J = 18.3, 1.4 Hz), 4.48 (1H, dd, J = 18.3, 1.4 Hz), 4.70 (1H, d, J =0.8 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= 23.9, 25.7, 51.3, 57.4, 65.3, 69.5, 98.0, 102.8, 162.2, 184.3.
IR (neat) 2989, 2858, 1683, 1384, 1228, 1097, 848, 518 cm−1
HRMS (FAB): calcd for [C10H11O4I + H]: 322.9780, found 322.9791.
【0107】
以下、本発明の化合物の合成方法を実施例として示す。本発明の化合物の合成経路を以下に示す。
【0108】
【化31】
【0109】
【実施例1】化合物(+)−RKTS−17の合成
化合物(+)−12 (52.0 mg, 0.161 mmol)のTHF−H2O(0.72 mL, 0.09 mL)混合溶液中に(E)−ヘキセニルボロン酸(33.1 mg, 0.258 mmol)、Ag2O (63.7 mg)、Ph3As(トリフェニルアルシン) (4.9 mg, 0.016 mmol) 、Pd(PhCN)2Cl2(ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)) (3.1 mg, 0.0081 mmol)を加え、室温で7時間撹拌する。飽和NH4Cl溶液を加えた後に1時間撹拌し、反応を停止する。有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥する。溶媒留去後、フロリジルゲルを用いた濾過(酢酸エチル:ヘキサン=1:50)を行い、(+)−13を得る。(+)−13はそのまま次の反応に用いた。
(+)−13のMeOH (1 mL)溶液にDowex 50W−X4 (10 mg) を加え、室温で4時間撹拌した。反応混合物を脱脂綿で濾過し、溶媒留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)により精製を行い、ジオール (+)−RKTS−17 (19.5 mg, 2段階 51%)を得る。
【0110】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 0.91 (3H, t, J =7.1 Hz), 1.25−1.47 (4H, m), 2.18 (2H, bq, J =6.8 Hz), 2.79 (1H, bs), 3.57 (1H, d, J =3.8 Hz), 3.68 (1H, bs), 3.82 (1H, d, J =3.8 Hz), 4.46 (1H, bd, J =14.4 Hz), 4.71 (1H, bd, J =14.4 Hz), 4.98 (1H, bs), 5.95 (1H, dt, J =16.0, 6.4 Hz), 6.03 (1H, d, J =16.0 Hz)
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= 13.8, 22.2, 31.1, 33.4, 53.5, 55.7, 62.5, 65.0, 120.1, 131.0, 140.7, 146.9, 195.0.
【0111】
【実施例2】化合物(+)−RKTS−36の合成
アルゴン雰囲気下、10 mlナスフラスコにジオール (+)−RKTS−17 (4.0 mg, 0.017 mmol)、CH2Cl2 (0.2 ml)、Et3N(トリエチルアミン) (21 μl, 0.15 mmol)、DMAP (0.2 mg, 0.002 mmol) を加え、0 ℃に冷却した。これにTBSCl(tert−ブチルジメチルシリルクロリド) (15 mg, 0.10 mmol)を加え、4時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止したのち、AcOEtを加え、室温に昇温した。有機層を分離後飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、減圧下溶媒を留去した。残渣を薄層クロマトグラフィー(AcOEt/Hexane=1/1)で精製し、シリルエーテルを無色油状物として得た。
【0112】
アルゴン雰囲気下、10 mlナスフラスコに先のアルコール (5.0 mg, 0.014 mmol)、CH2Cl2 (0.4 ml)、を加え、0 ℃に冷却した。これにDess−Martin periodinane (25 mg, 0.059 mmol)を加え、室温に昇温した後4時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で反応を停止した後、AcOEtを加えた。有機層を分離後飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、減圧下溶媒を留去した。残渣をフロリジルゲルで濾過し(AcOEt/Hexane=1/1)、粗生成物のジケトンを得た。これにTHF (75μl), H2O (3.3μl), AcOH (18μl), NH4F (39 mg, 1.0 mmol) を加え、室温で10時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で反応を停止した後、AcOEtを加えた。有機層を分離後飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、減圧下溶媒を留去した。残渣を薄層クロマトグラフィー(AcOEt/Hexane=1/1)で精製し、アルコール (+)−RKTS−36 (0.8 mg, 18%)を無色油状物として得た。
【0113】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ0.92 (3H, t, J=7.2 Hz), 1.23−1.50 (4H, m), 2.26 (2H, br−q, J=7.1 Hz), 2.30 (1H, br−s), 3.85 (1H, d, J=4.1 Hz), 3.89 (1H, d, J=4.1 Hz), 4.45 (1H, d, J=12.7 Hz), 4.57 (1H, d, J=12.7 Hz), 6.31 (1H, br−d, J=15.9 Hz), 6.56 (1H, dt, J=15.9, 7.1 Hz).
【0114】
【実施例3】化合物(+)−RKTS−35の合成
アルゴン雰囲気下、20 mlナスフラスコにヨウ化物(+)−12 (40.8 mg, 0.127 mmol)、THF (0.8 ml)、H2O (0.1 ml)、アルケニルホウ酸 (93.7 mg, 0.633 mmol)、Ag2O (150 mg, 0.646 mmol)、Ph3As (3.9 mg, 0.013 mmol)、Pd(PhCN)2Cl2 (2.4 mg, 0.0063 mmol)を加え、遮光して室温で4時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて1時間撹拌したのち、AcOEtを加え、セライトで濾過した。有機層を分離後飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、減圧下溶媒を留去した。残渣にMeOH (1 ml), Dowex 50WX4 (20 mg) を加え、室温で4時間撹拌した。反応混合物を濾過し、減圧下溶媒を留去した後、残渣を薄層クロマトグラフィー(AcOEt/Hexane=1/1)で精製し、ジオール (+)− RKTS−35 (9.9 mg, 30%)を黄色油状物として得た。
【0115】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ2.28 (1H, br−s), 3.29 (1H, br−s), 3.63 (1H, dd, J=3.9, 0.8 Hz), 3.86 (1H, dd, J=3.9, 1.6 Hz), 4.60 (1H, d, J=14.5 Hz), 4.87 (1H, d, J=14.5 Hz), 5.06 (1H, br−s), 6.77 (1H, d, J=16.4 Hz), 6.88 (1H, d, J=16.4 Hz), 7.27−7.37 (3H, m), 7.40−7.44 (2H, m); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ53.58, 55.70, 62.74, 65.19, 118.90, 126.80, 128.57, 128.71, 130.68, 136.56, 137.21, 147.89, 194.65; FT−IR (neat) ν 3384, 3057, 3026, 2924, 1684, 1448, 1338, 1047, 968, 738, 692 cm−1.
【0116】
【実施例4】化合物(+)−16の合成
アルゴン雰囲気下、20 mlナスフラスコにヨウ化物(+)−12 (82.3 mg, 0.256 mmol)、THF (1.6 ml)、H2O (0.2 ml)、ビニルホウ酸 (91.8 mg, 1.28 mmol)、Ag2O (308 mg, 1.33 mmol)、Ph3As (7.8 mg, 0.026 mmol)、Pd(PhCN)2Cl2 (4.9 mg, 0.013 mmol)を加え、遮光して室温で11時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて1時間撹拌したのち、AcOEtを加え、セライトで濾過した。有機層を分離後飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、減圧下溶媒を留去した。残渣にMeOH (2 ml), Dowex 50WX4 (30 mg) を加え、室温で5時間撹拌した。反応混合物を濾過し、減圧下溶媒を留去した後、残渣を薄層クロマトグラフィー(AcOEt/Hexane=1/3〜1/1)で精製し、ジオール(+)−16 (15.0 mg, 32%)を無色油状物として得た。
【0117】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ2.76 (1H, br−s), 3.56 (1H, dd, J=3.8, 0.7 Hz), 3.66 (1H, br−s), 3.83 (1H, dd, J=3.8, 1.6 Hz), 4.49 (1H, d, J=14.6 Hz), 4.71 (1H, d, J=14.6 Hz), 4.99 (1H, br−s), 5.46 (1H, dd, J=17.7, 1.4 Hz), 5.53 (1H, dd, J=11.6, 1.4 Hz), 6.35 (1H, dd, J=17.7, 11.6 Hz); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ53.34, 55.70, 62.43, 64.84, 123.27, 127.64, 130.90, 148.68, 194.34.
【0118】
【実施例5】化合物18, 19の合成
ジオール(+)−17 (5.8 mg, 0.030 mmol)のジクロロメタン(0.5 ml) 溶液を0 ℃に冷却し、二酸化マンガン (75%, 44 mg, 0.38 mmol) を加え、15 分間撹拌する。反応混合物をセライト濾過し、酢酸エチルで洗浄する。溶媒留去後、重クロロホルム (0.5 ml) を加え、アルミ箔で遮光して室温で18 時間静置した。溶媒留去後、薄層クロマトグラフにより精製を行い、エポキシキノール A 18 (2.3 mg, 40%) とエポキシキノール B 19 (1.5 mg, 25%) を得る。
【0119】
【実施例6】化合物RKTS−18, 19の合成
ジオール(+)−RKTS−17 (13.0 mg, 0.055 mmol)のジクロロメタン(0.6 ml) 溶液を0 ℃に冷却し、二酸化マンガン (75%, 63.2 mg, 0.55 mmol)を加え、15 分間撹拌する。反応混合物をセライト濾過し、酢酸エチルで洗浄する。溶媒留去後、室温で11 時間静置した後、薄層クロマトグラフ(メタノール:クロロホルム=1:10)により精製を行い、RKTS−18 (R=C4H9, 3.8 mg, 31%)とRKTS−19 (R=C4H9, 3.2 mg, 25%)を得る。
【0120】
RKTS−18: 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 0.83 (3H, t, J =7.1 Hz), 0.87 (3H, t, J =6.4 Hz), 1.06−1.48 (12H, m), 1.79 (1H, d, J =9.5 Hz), 2.12 (1H, d, J =7.9 Hz), 2.53 (1H, bs), 3.22 (1H, bs), 3.46 (1H, d, J =3.5 Hz), 3.48 (1H, dd, J =3.5, 0.8 Hz), 3.73 (1H, dd, J =3.5, 0.9 Hz), 3.79 (1H, d, J =3.5 Hz), 4.12 (1H, dd, J =9.2, 4.9 Hz), 4.17 (1H, t, J =6.3 Hz), 4.73 (1H, d, J =9.5 Hz), 5.08 (1H, bd, J =7.9 Hz), 5.14 (1H, s), 6.81 (1H, d, J =2.0 Hz).
【0121】
RKTS−19: 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 0.83 (3H, t, J =7.0 Hz), 0.88 (3H, t, J =7.0 Hz), 1.18−1.41 (12H, m), 1.56 (2H, bs), 2.78 (1H, dd, J =5.1, 2.7 Hz), 3.16−3.20 (1H, m), 3.47−3.56 (3H, m), 3.63 (1H, dd, J =3.0, 2.2 Hz), 3.81 (1H, dd, J =3.5, 1.1 Hz), 3.98 (1H, bt, J =6.5 Hz), 4.67 (1H, d, J =1.7 Hz), 4.81 (1H, s), 5.04 (1H, s), 6.44 (1H, s).
【0122】
【実施例7】化合物RKTS−20の合成
化合物(+)−16を用いて実施例6と同様な行程で、化合物RKTS−20を得た。
【0123】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ2.17 (1H, d, J=7.5 Hz), 2.63 (1H, br−s), 3.12 (1H, br−d, J=8.2 Hz), 3.29 (1H, br−s), 3.50 (2H, t, J=3.4 Hz), 3.57 (1H, dd, J=11.9, 4.7 Hz), 3.73 (1H, d, J=3.3 Hz), 3.77 (1H, d, J=3.6 Hz), 4.08−4.18 (3H, m), 4.75 (1H, d, J=9.2 Hz), 5.07 (1H, br−d, J=6.8 Hz), 5.20 (1H, s), 7.04 (1H, d, J=1.9 Hz); FT−IR (neat) ν3417, 2923, 2852, 1714, 1684, 1458, 1254, 1051, 737 cm−1.
【0124】
【試験例1】RKTS−17, RKTS−35, RKTS−36によるヒト白血病細胞株Jurkat細胞における増殖抑制効果
ヒト白血病細胞株Jurkat細胞は、10%子牛血清を含むRPMI培地にて5%炭酸ガスと水蒸気を飽和させた培養器内で培養した。対数増殖期にあるJurkat細胞に一連の希釈系列の(+)−RKTS−17, 35, 36を添加し8時間培養し、細胞の生存率をMTT(3−(4,5−ジメチル−チアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)法により検定した。
【0125】
化合物(+)−RKTS−17, (+)−RKTS−35, (+)−RKTS−36は、それぞれ20, 20, 10 μg/mlの濃度で、対数増殖期にあるJurkat細胞の増殖を50%阻害した。このことは、本発明のRKTS−17, RKTS−35, RKTS−36が抗腫瘍剤として有効であることを示している。
【0126】
【試験例2】RKTS−17, RKTS−35, RKTS−36, RKTS−18, RKTS−19, RKTS−20による血管内皮細胞の走化性の阻害
HuMedia−EG2 (KURABO)培地を用いて培養維持された正常ヒトさい帯静脈血管内皮細胞HUVEC細胞をケモタキセルチャンバーを用いた3次元培養の上層にまいた。下層に内皮細胞増殖因子(VEGF)を含むHuMedia−EG2を充填させることでHUVEC細胞の走化性を誘導した。(+)−RKTS−17, (+)−RKTS−35, (+)−RKTS−36, RKTS−18, RKTS−19, RKTS−20は、それぞれ、1−30μg/mlの濃度で、VEGFによって誘導されるHUVEC細胞の走化性を抑制した。この結果は、本発明化合物RKTS−17, RKTS−35, RKTS−36, RKTS−18, RKTS−19, RKTS−20が抗VEGF作用、血管内皮細胞の走化性の阻害、すなわち血管新生阻害剤、抗腫瘍剤などとして有効であることを示している。
【0127】
【製剤例1】注射・点滴剤
本発明化合物 10 mgを含有するように、粉末ブドウ糖5 gを加えてバイアルに無菌的に分配して密封し、窒素、ヘリウムなどの不活性ガスを封入して冷暗所に保存した。使用前にエタノールに溶解し、0.85%生理的食塩水100 mlを添加して静脈内注射剤とし、一日あたり10〜100 mlを症状に応じて静脈内注射または点滴で投与する。
【0128】
【製剤例2】顆粒剤
本発明化合物 1 g、乳糖98 g、およびヒドロキシプロピルセルロース1 gをそれぞれ取り、よく混和した後、定法にしたがって粒状に成形し、それをよく乾燥して、瓶やヒートシール包装などに適した顆粒剤を製造した。一日あたり100〜1000 mgを症状に応じて経口投与できる。
【0129】
【発明の効果】
本発明化合物は、抗腫瘍剤、血管新生阻害剤として有効であり、さらには、転移抑制剤、抗リウマチ様関節炎剤、糖尿病性網膜症などをはじめとした過度の血管新生が原因とされている疾病の治療薬・予防薬などとして有効である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗腫瘍活性および血管新生阻害活性を有する化合物、ならびにその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
外科療法や放射線療法と並んで、癌化学療法が「癌の治療法」において果たす比重は高い。1940年代にナイトロジェンマスタード関連化合物が抗癌剤として臨床使用されたのをはじめとして現在までの約60年の間にさまざまな種類の抗癌剤が開発されている。臨床使用されている抗癌剤が抱えている問題点は、副作用、獲得耐性細胞の出現などが挙げられる。化学物質の生物活性は、その化学構造に依存するところが大きいため、抗腫瘍活性を有する新規な化合物は、不断の希求があるといえる。
【0003】
これらを克服するために、直接、腫瘍細胞の増殖を抑制する抗腫瘍剤に加えて、腫瘍の増殖に不可欠な血管新生を阻害するいわゆる血管新生阻害剤などが有能視されている(非特許文献1を参照)。
【0004】
【非特許文献1】
Nat. Med., 1, 27−31 (1995)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の希求に応えるものであり、抗腫瘍活性および血管新生阻害活性を有する化合物、その製造方法、それを有効成分とする抗腫瘍剤および血管新生阻害剤の提供を目的とする。本発明化合物は、抗腫瘍剤、血管新生阻害剤として有効であり、さらには、転移抑制剤、抗リウマチ様関節炎剤、糖尿病性網膜症などをはじめとした過度の血管新生が原因とされている疾病の治療薬・予防薬などとして有効である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題の解決のために鋭意検討した結果、抗腫瘍活性および血管新生阻害活性を有する新規化合物を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
1) 以下の一般式(I):
【0007】
【化11】
【0008】
(式中、R1は炭素数3以上の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基または芳香族基を示し;R2は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基またはヒドロキシ基の保護基を示し;R3は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基またはヒドロキシ基の保護基を示し、R4は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基を示すが、−OR3, R4が一緒になってオキソ基またはオキシム基を示してもよい)で表される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
【0009】
2) 以下の式(II):
【0010】
【化12】
【0011】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
【0012】
3) 以下の式(III):
【0013】
【化13】
【0014】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
4) 以下の式(IV):
【0015】
【化14】
【0016】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
5) 以下の一般式(V):
【0017】
【化15】
【0018】
(式中、R5は水素原子を示し、R6はヒドロキシ基または保護基で保護されたヒドロキシ基を示すが、R5, R6が一緒になってオキソ基またはオキシム基を示してもよく;R7は水素原子を示し、R8はヒドロキシ基または保護基で保護されたヒドロキシ基を示すが、R7, R8が一緒になってオキソ基またはオキシム基を示してもよく;R9はそれぞれ独立に水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基または直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基を示す)で表される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
【0019】
6) 以下の式(VI):
【0020】
【化16】
【0021】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
7) 以下の式(VII):
【0022】
【化17】
【0023】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
8) 以下の式(VIII):
【0024】
【化18】
【0025】
(式中、n−Buはn−ブチル基を示す。)
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物。
9) 以下の一般式(V):
【0026】
【化19】
【0027】
(式中、R5〜R9は前記と同義である。)で表される化合物の製造方法であって、(1)以下の式(IX):
【0028】
【化20】
【0029】
(式中、R9は前記と同義である。)で表される化合物を酸化し、
(2)得られた化合物を無溶媒下反応させることを特徴とする方法。
10) 1)〜8)に記載のいずれかの化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物を有効成分として含有する医薬組成物。
11) 1)〜8)に記載のいずれかの化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物を有効成分として含有する抗腫瘍剤。
12) 1)〜8)に記載のいずれかの化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物を有効成分として含有する血管新生阻害剤。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明は以下の一般式(I):
【0031】
【化21】
【0032】
(式中、R1は炭素数3以上の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基または芳香族基を示し;R2は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基またはヒドロキシ基の保護基を示し;R3は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基またはヒドロキシ基の保護基を示し、R4は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基を示すが、−OR3, R4が一緒になってオキソ基またはオキシム基を示してもよい)で表される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物である。
【0033】
式中、R1は炭素数3以上の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基または芳香族基を示すが、例えばアルキル基として、炭素数3〜18個のアルキル基、好ましくは炭素数3〜12個の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を用いることができる。より具体的には、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などを用いることができる。例えば、芳香族基として、炭素数6〜22個、好ましくは炭素数6〜10個の単環式または多環式の芳香族基を挙げることができる。また環中には1個以上の窒素原子、酸素原子、硫黄原子を有してもよい。より具体的にはフェニル基などを用いることができる。
【0034】
R1で示されるアルキル基および芳香族基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜6個の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜6個の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルコキシ基、フェニル基などの芳香族基、アミノ基、ヒドロキシ基またはオキソ基などが挙げられる。R1は好ましくは、n−ブチル基、フェニル基を用いることができる。
【0035】
式中、R2およびR3は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアシル基またはヒドロキシ基の保護基を示すが、例えば、アルキル基またはアシル基として、炭素数1〜6個のアルキル基またはアシル基、好ましくは直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜6個のアルキル基またはアシル基を用いることができる。より具体的には、アルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基など;アシル基としてホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ヘキサノイル基などを用いることができる。これらのアルキル基またはアシル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、R1において前述した置換基と同様である。
【0036】
ヒドロキシ基の保護基としては当業者に種々知られており、適宜の保護基を選択することが可能である。例えば、ピバロイル基などのアシル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基などのアルキルシリル基、イソプロピリデンアセタール基などを用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0037】
式中、R4は水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基を示すが、例えば、アルキル基として、炭素数1〜12個のアルキル基、好ましくは直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜6個のアルキル基を用いることができる。より具体的には、アルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などを用いることができる。これらのアルキル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、R1において前述した置換基と同様である。また、−OR3, R4が一緒になってオキソ基またはオキシム基を示してもよい。
【0038】
本発明の好ましい形態は、以下の式(II):
【0039】
【化22】
【0040】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物である。
【0041】
本発明の別の好ましい形態は、以下の式(III):
【0042】
【化23】
【0043】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物である。
【0044】
本発明の別の好ましい形態は、以下の式(IV):
【0045】
【化24】
【0046】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物である。
【0047】
化合物(II)〜(IV)の分子内のヒドロキシ基を通常のアルキル化反応、アシル化反応により、アルキル化、アシル化し、対応する任意のアルキル化体、アシル化体を得ることができる。また、通常のアルキル化反応によりシクロヘキセン環に置換基を導入することができる。さらに、通常の分子内のヒドロキシ基を通常のヒドロキシ基の保護化反応により保護化することができる。
【0048】
さらなる本発明は、以下の一般式(V):
【0049】
【化25】
【0050】
(式中、R5〜R9は前記と同義である。)
で表される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物である。
【0051】
式中、R5は水素原子を示し、R6はヒドロキシ基または保護基で保護されたヒドロキシ基を示すが、R5, R6が一緒になってオキソ基またはオキシム基を示してもよく;R7は水素原子を示し、R8はヒドロキシ基または保護基で保護されたヒドロキシ基を示すが、R7, R8が一緒になってオキソ基またはオキシム基を示してもよく、保護基としてはR2およびR3において前述したアルキル基、アシル基またはヒドロキシ基の保護基と同様である。
【0052】
式中、R9はそれぞれ独立に水素原子、直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基または直鎖状もしくは分岐鎖状のアルケニル基を示すが、アルキル基またはアルケニル基として、炭素数1〜12個のアルキル基またはアルケニル基、好ましくは直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜6個のアルキル基またはアルケニル基を用いることができる。より具体的には、アルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基など;アルケニル基としてビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、スチリル基などを用いることができる。これらのアルキル基またはアルケニル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、R1において前述した置換基と同様である。R9は好ましくは水素原子、メチル基、n−ブチル基を用いることができる。
【0053】
本発明の好ましい形態は、以下の式(VI):
【0054】
【化26】
【0055】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物である。
【0056】
本発明の別の好ましい形態は、以下の式(VII):
【0057】
【化27】
【0058】
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物である。
【0059】
本発明の別の好ましい形態は、以下の式(VIII):
【0060】
【化28】
【0061】
(式中、n−Buは前記と同義である。)
で示される化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物である。
【0062】
化合物(VI)〜(VIII)の分子内のヒドロキシ基を通常のアルキル化反応、アシル化反応により、アルキル化、アシル化し、対応する任意のアルキル化体、アシル化体を得ることができる。また、分子内ヒドロキシ基を通常のヒドロキシ基の保護化反応により保護化することができる。
【0063】
上記式(I)〜(VIII)で表される化合物の光学活性体も本発明に含まれる。光学活性体は任意の立体異性体の混合物またはラセミ体から通常の光学分割方法を用いて光学分割を行うことによって得ることができる。
【0064】
上記式(I)〜(VIII)で表される化合物の製薬上許容される塩も本発明に含まれ、例えば、塩酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩;又はp−トルエンスルホン酸塩などの有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などの金属塩;アンモニウム塩;メチルアンモニウム塩などの有機アンモニウム塩;グリシン塩などのアミノ酸塩を挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0065】
式(I)〜(VIII)で表される本発明の化合物は複数の不斉炭素を有しており、また置換基の種類によりさらに1個以上の不斉炭素を有する場合がある。これらの不斉炭素に基づく光学異性体またはジアステレオマーなどの立体異性体が存在するが、本発明の範囲には純粋な形態の立体異性体のほか、任意の立体異性体の混合物またはラセミ体などが含まれる。また、本発明の化合物にはオレフィン性の二重結合を有する場合も存在し、二重結合に基づく幾何異性体が存在するが、純粋な形態の幾何異性体のほか、任意の幾何異性体の混合物も本発明の範囲に含まれる。本発明の化合物は任意の結晶形として存在することができ、水和物または溶媒和物として存在する場合もある。これらの物質がいずれも本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
【0066】
また、本発明化合物は、後述する試験例に記載の通り、優れた抗腫瘍活性、血管新生阻害活性を示すため、上記の化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物は医薬組成物、具体的には例えば抗腫瘍剤および血管新生抑制剤として用いる医薬組成物の有効成分として有用である。したがって、本発明により、上記の化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物のいずれかまたはそれらの組み合わせを有効成分として含む医薬組成物が提供される。
【0067】
このような本発明の医薬組成物は、転移抑制剤、抗リウマチ様関節炎剤、糖尿病性網膜症などをはじめとした過度の血管新生が原因とされている疾病の治療薬・予防薬として用いることができる。さらに、上記化合物の治療有効量を、ヒトを含む哺乳類動物に投与する行程を含む方法、上記化合物の有効量を細胞に接触させる行程を含む方法が本発明により提供される。
【0068】
本発明の化合物を有効成分として含有する医薬組成物は、その使用目的にあわせて投与方法、剤型、投与量を適宜決定することが可能である。例えば治療あるいは予防を目的としてヒトに投与する場合は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、溶剤等として経口的に、または注射剤、坐剤、経皮吸収剤、吸入剤等として非経口的に投与することができる。また、本化合物の有効量は、その剤型に適した賦形剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、滑沢剤等の医薬用添加剤を必要に応じて混合し、医薬製剤とすることができる。注射剤の場合には、適当な担体とともに滅菌処理を行って製剤とする。投与量は疾患の状態、投与ルート、患者の年齢、または体重によっても異なり、最終的には医師の判断に委ねられるが、有効成分量として成人に経口で投与する場合、通常、0.1−100mg/kg/日、好ましくは、1−20mg/kg/日、非経口で投与する場合、通常、0.01−10mg/kg/日、好ましくは、0.1−2mg/kg/日を投与する。これを1回あるいは数回に分割して投与すればよい。
【0069】
また、本発明化合物を試薬として使用する場合には、有機溶剤又は含水有機溶剤に溶解して用いることができる。例えば、各種培養細胞系へ直接投与すると癌細胞の成長や血管内皮細胞の遊走を抑制することができる。使用可能な有機溶剤としては、例えばメタノールやジメチルスルホキシド等を挙げることができる。剤型としては、例えば、粉末などの固形剤、又は有機溶剤若しくは含水有機溶剤に溶解した液体剤などを挙げることができる。通常、上記の化合物を試薬として用いて細胞成長抑制作用や血管内皮細胞の遊走阻害活性を発揮させるための効果的な使用量は、培養細胞系中において0.1−100 μg/mlであるが、適切な使用量は培養細胞系の種類や使用目的により異なり、適宜選択可能である。また、必要により上記範囲外の量を用いることができる。
【0070】
本発明の化合物(I)〜(IV)は、以下の参考例および実施例に示す方法などにより製造することができる。例えば、以下のようにして得ることができる。
【0071】
アクロイルクロリド(ACROS社、和光純薬社製など)およびフラン(Aldrich社、Merck社製など)をDield−Alder(ディールスアルダー)反応させ、得られた化合物に水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ性溶液を添加し、反応させる。得られた化合物をヨウ素、N−ヨードスクシミド等のヨウ化剤と反応させる。得られた化合物に水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等のアルカリを加えて反応させる。得られた化合物をヨードメタン、ヨードエタン、ブロモメタン等のエステル化剤と反応させる。得られた化合物にLDA(リチウムジイソプロピルアミド)、LiHMDS(リチウムヘキサメチルジシラシド)、KHMDS(カリウムヘキサメチルジシラジド)等の塩基を加えて反応させる。得られたラセミ体化合物に酢酸ビニル、酢酸プロペニル等の酢酸エステルおよびリパーゼを加えて反応させ、得られた化合物を通常の有機合成物の単離・精製方法により単離・精製して光学分割する。光学分割して得られた化合物をVO(acac)2(ビス(アセチルアセトナート)オキソバナジウム(IV))、Mo(CO)6等の遷移金属化合物、及びtert−ブチルヒドロペルオキシド、トリチルヒドロペルオキシド等の過酸化物を加えて反応させてエポキシ化する。光学分割して得られた化合物が保護基を有する場合は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリを加えて反応させて保護基を脱保護する。得られた化合物にNaBH4、LiAlH4等の還元剤を加え、反応させて還元する。得られた化合物をトリエチルアミン等の塩基存在下、tert−ブチルジメチルシリルクロリド等のヒドロキシ基の保護基と反応させることによりヒドロキシメチル基に保護基を導入する。得られた化合物をDess−Martin periodinane(デスマーチンペルヨージナン)、TPAP(テトラプロピルアンモニウム過ルテニウム酸塩)存在下N−メチルモルホリン−N−オキシド等の酸化剤を加えて反応させ、酸化する。得られた化合物にシリカゲル、ピリジニウムパラトルエンスルホナート、トリエチルアミン等の酸性及び塩基性化合物を加えて反応させエポキシ環を開環させる。なお、上記酸化反応およびエポキシ環の開環反応の順序は適宜変更することが可能である。得られた化合物をDowex(ダウエックス)(登録商標)50WX4、Amberlyst(アンバーリスト)(登録商標) 15等の陽イオン交換樹脂を加えて反応させ、保護基を脱離する。得られた化合物の遊離のヒドロキシ基をイソプロピデンアセタール基などとして保護し、ヨウ素などのハロゲン化剤を反応させハロゲン化し、(E)−ヘキセニルボロン酸、フェニルエテニルボロン酸などのアルケニルホウ酸などを反応させ置換基を導入し、Dowex 50WX4、Amberlyst15等の陽イオン交換樹脂などを作用させ保護基を脱保護する。
【0072】
得られた化合物に、必要に応じて前述のR4における置換基を通常の有機化合物の合成において使用されるアルキル化手法にて導入することができる。また必要に応じて前述のR2およびR3で示される置換基または保護基を通常の有機化合物の合成において使用されるアルキル化、アシル化、保護基の導入手法にて遊離のヒドロキシ基に導入することができる。また必要に応じて通常の有機化合物の合成において使用されるオキソ化、オキシム化手法にて遊離のヒドロキシ基をオキソ化、オキシム化することができる。上記各反応を組み合わせてもよい。このようにして本発明の化合物(I)〜(IV)が得られる。
【0073】
上記化合物のヒドロキシ基のオキソ化は、例えば実施例において示すように、対象化合物をトリエチルアミン等の塩基存在下、tert−ブチルジメチルシリルクロリド等のヒドロキシ基の保護基と反応させることにより遊離のヒドロキシ基に保護基を導入し、得られた化合物をDess−Martin periodinane等の酸化剤を加えて反応させ、酸化することにより行うことができる。
【0074】
次に、本発明の化合物(V)〜(VIII)の製造方法について説明する。
【0075】
本発明の製造方法の出発原料となる、以下の式(IX):
【0076】
【化29】
【0077】
(式中、R9は前記と同義である。)で表される化合物は、上記の化合物(I)〜(IV)の製造方法などにより製造することができる。R9がアルケニル基である化合物は、前述の化合物(I)〜(IV)の製造方法において、置換基を導入する際にアルケニルホウ酸、アルケニルスズなどのアルケニル化合物と、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)などの遷移金属化合物を用いることにより同様に製造することができる。なお、アルケニル化合物と遷移金属化合物の組み合わせは適宜変更可能である。
【0078】
化合物(V)〜(VIII)の製造方法における各工程について説明する。
工程(1)
化合物(IX)を通常の酸化方法により酸化する。例えば同化合物をジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、酢酸エチル等のエステル等の溶媒に溶解し、二酸化マンガン、酸素−塩化銅(I)−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニロキシ等の酸化剤存在下、0〜30℃で、5分〜2時間反応させる。得られた化合物を通常の有機合成物の単離・精製方法により単離・精製する。
【0079】
工程(2)
得られた化合物を無溶媒下、0〜30℃で、0.5〜12時間反応させる。得られた化合物を必要に応じて通常の有機合成物の単離・精製方法により単離・精製する。
【0080】
以上のようにして得られた化合物に、必要に応じて前述のR6, R8における保護基を通常の有機化合物の合成において使用されるアルキル化、アシル化、保護基の導入手法にて遊離のヒドロキシ基に導入することができる。また必要に応じて通常の有機化合物の合成において使用されるオキソ化、オキシム化手法にて遊離のヒドロキシ基をオキソ化、オキシム化することができる。上記各反応を組み合わせてもよい。このようにして一般式(V)〜(VIII)で表される本発明の化合物が得られる。
【0081】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【0082】
以下、本発明の化合物の製造に用いられる化合物の合成方法を参考例として示す。なお、化合物(+)−5を用いた参考例において化合物(−)−5を使用することにより対応する光学活性化合物を得ることができ、以下、対応する化合物を得ることができる。合成経路を以下に示す。
【0083】
【化30】
【0084】
【参考例1】化合物3の合成
室温でアクリロイルクロリド1(30 mL)にフラン2(225 mL)を加え、五時間撹拌する。反応液にNaOH水溶液を加え、溶液をアルカリ性にして、1時間撹拌する。水層を分液後、水層にCH2Cl2 (350 mL)、ヨウ素(46.8 g)を加え、激しく撹拌する。2時間後、Na2S2O3水溶液を過剰のヨウ素の色が消えるまで加えた後、低沸点物を減圧下留去すると固体が析出する。固体をろ別し、乾燥させ、ヨードラクトン体3が41 g, 42%収率で得られる。
【0085】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 2.15 (1H, dd, J = 13.5, 3.2 Hz), 2.20 (1H, ddd, J = 13.5, 10.4, 4.7 Hz), 2.77 (1H, ddd, J = 10.4, 4.7, 3.2 Hz), 3.94 (1H, s), 4.80 (1H, d, J = 4.7 Hz), 5.12 (1H, d, J = 4.9 Hz), 5.38 (1H, t, J = 4.9 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= 25.0, 36.1, 38.0, 81.9, 84.2, 87.5, 175.8.IR (KBr) 2995, 1787, 1324, 1189, 1022, 661, 433 cm−1
HRMS (FAB): calcd for C7H8O3I: 266.9518, found 266.9514.
【0086】
【参考例2】化合物4の合成
ヨードラクトン3 (17.9 g, 67.2 mmol) のDMF(ジメチルホルムアミド) (520 mL) 溶液にKOH (9.42 g, 168 mmol) を加え、60℃で27時間加熱環流する。室温でヨードメタン (12.5 mL, 202 mmol) を加えた後、超音波を2時間照射する。減圧下溶媒を留去後、1N HCl水溶液(18mL)、飽和NH4Cl水溶液(150 mL)を加える。有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で3回洗い、Na2SO4で乾燥する。溶媒留去後、カラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)により精製を行い、9.25 gの4を得る(収率81%)。
【0087】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 1.97 (1H, td, J = 11.6, 5.1 Hz), 2.08 (1H, dd, J = 11.6, 4.2 Hz), 2.91 (1H, dt, J = 11.6, 4.6 Hz), 3.74 (3H, s), 4.01 (1H, dd, J = 4.5, 2.5 Hz), 4.10 (1H, dd, J = 4.5, 2.3 Hz), 4.51 (1H, dt, J = 5.0, 2.5 Hz), 4.69 (1H, dt, J = 5.1, 2.0 Hz)
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= 29.2, 44.6, 51.5, 66.2, 66.4, 77.4, 78.0, 171.8.
IR (KBr) 3039, 2921, 1731, 1444, 1342, 1305, 1097, 956, 609cm−1
HRMS (FAB): calcd for C8H11O4: 177.0657, found 171.0663.
Elemental analysis: Calcd for C8H11O4: C 56.47, H 5.92, found C 56.55, H 5.88.
【0088】
【参考例3】化合物5の合成
ジイソプロピルアミン (11.7 mL, 83.2 mmol)のTHF(テトラヒドロフラン) (63 mL) 溶液に0℃でBuLi(ブチルリチウム) (1.58 M, 42.1 mL, 66.6 mmol)を滴下し、10分間撹拌し、LDAを調製する。4 (9.44g, 55.5 mmol)のTHF (84 mL)溶液に−90℃で上記のLDA溶液を加える。滴下終了後10分間撹拌し、リン酸緩衝液を加え、反応を停止する。有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で1回洗い、Na2SO4で乾燥する。溶媒留去後、カラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:3)により精製を行い、6.32 gの5を得る(収率67%)。
【0089】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 1.85 (1H, bs), 2.36 (1H, ddd, J = 17.6, 5.1, 3.4 Hz), 2.82 (1H, dt, J = 17.6, 1.8 Hz), 3.48 (1H, t, J = 4.8 Hz), 3.57−3.62 (1H, m), 4.55−4.61 (1H, m), 7.15 (1H, t, J = 3.4 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= 29.2, 46.2, 52.1, 56.0, 63.3, 130.7, 133.4, 166.6.
IR (neat) 3444, 2954, 1716, 1438, 1207, 819, 609, 509 cm−1
HRMS (EI): calcd for C8H10O4: 170.0579, found 170.0619.
【0090】
【参考例4】化合物(+)−5および(−)−6の合成
ラセミ体5 (2.8 g, 16.5 mmol)の酢酸ビニル溶液 (30 mL) にPseudomonas stutzeri(シュードモナス・スタッツェリ) lipase (Meito TL) (278 mg) を加え、40時間室温で撹拌する。Pseudomonas stutzeri lipase (Meito TL)をろ別し、低沸点化合物を減圧下留去する。カラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:3〜1:1)により精製を行い、(+)−5 1.35 g [収率49%, 光学純度99% ee], (−)−6 1.65 g [収率48%, 光学純度(96% ee)] を得る。
【0091】
(+)−5: [α]D 26 +213 (c=0.56, MeOH)
5 の光学純度の決定:HPLC conditions: Chiralcel OD−H column, 2−propanol : hexane = 1 : 20, 1.5 mL/min, retention times, 28.7 min (major), 11.1 min (minor).
【0092】
(−)−6: [α]D 22 −226 (c=0.46, MeOH)
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 2.04 (3H, s), 2.36 (1H, ddd, J = 18.1, 5.3, 3.3 Hz), 2.82 (1H, dt, Jt = 18.1 Hz, Jd = 1.8 Hz), 3.49 (1H, t, J = 3.9 Hz), 3.60−3.63 (1H, m), 3.77 (3H, s), 5.62 (1H, dt, J = 5.4, 2.7 Hz), 7.14 (1H, t, J = 3.6 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= 20.9, 26.4, 46.5, 52.1, 53.9, 65.6, 131.0, 133.0, 166.1, 170.3.
IR (neat) 2964, 2850, 1739, 1714, 1649, 1265, 1028, 818, 600, 1439 cm−1
【0093】
6 の光学純度の決定:HPLC conditions: Chiralcel OD−H column, 2−propanol : hexane = 1 : 20, 1.5 mL/min, retention times, 5.6 min (major), 6.0 min (minor).
【0094】
【参考例5】化合物(−)−5の合成
(−)−6 (96 % ee, 198 mg, 0.93 mmol) のメタノール溶液 (1 mL)に0 ℃で炭酸カリウム(13 mg, 0.093 mmol) を加え、1時間撹拌する。飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止後、減圧下、溶媒を留去する。有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層をNa2SO4で乾燥する。溶媒留去後、カラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:3〜1:1)により精製を行い、154 mgの(−)−5を得る(収率97%)。
【0095】
【参考例6】化合物(+)−7の合成
エポキシエステル(+)−5 (282 m, 1.65 mmol) のCH2Cl2溶液(15 mL)にVO(acac)2 (22.0 mg)、tert−ブチルヒドロペルオキシドのトルエン溶液 (4.2 M, 2.0 mL)を加え、反応溶液を70℃で9時間撹拌する。反応溶液にNa2S2O3水溶液を加え反応を停止した後に、有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で洗い、Na2SO4で乾燥する。溶媒留去後、薄層クロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:3〜1:1)により精製を行い、297 mgの(+)− 7を得る(収率96%)。
【0096】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 2.31(1H, d, J =15.5 Hz), 2.39 (1H, dd, J =16.0, 4.4 Hz), 2.53 (1H, d, J =12.0 Hz), 3.25 (1H, t, J =3.4 Hz), 3.49 (1H, dd, J =3.9, 2.8 Hz), 3.69 (3H, s), 3.78 (1H, d, J =2.5 Hz), 4.13−4.21 (1H, m).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= 27.4, 50.4, 53.0, 53.8, 56.1, 57.4, 64.4, 168.6.
IR (neat) 3521, 2956, 1743, 1444, 1363, 1294, 1257, 1068, 863, 784 cm−1
HRMS (FAB): calcd for [C8H10O5 + H]: 187.0606, found 187.0622.
[α]D 26 +60.9 (c=0.54, MeOH)
【0097】
【参考例7】化合物(+)−8の合成
(+)− 7 (367 mg)のMeOH(メタノール)溶液(3 mL)にNaBH4 (223 mg, 5.91 mmol) を0℃で加え、室温で30分間撹拌する。有機溶媒を減圧下留去後、カラムクロマトグラフ(MeOH:CHCl3=1:10)により精製を行い、300 mgの(+)− 8を得る(収率96%)。
【0098】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 2.05 (1H, dd, J =15.6, 2.6 Hz), 2.08 (1H, dd, J =15.6, 4.4 Hz), 3.22 (1H, bt, J =3.5 Hz), 3.43 (1H, d, J =12.4 Hz), 3.49 (1H, d, J =2.5 Hz), 3.53 (1H, t, J =3.2 Hz), 3.55 (1H, d, J =12.4 Hz), 4.14 (1H, dt, J =4.4, 3.0 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= 29.3, 52.2, 55.2, 55.4, 62.1, 65.4, 65.5
IR (neat) 3399, 3369, 2927, 1423, 1074, 1047, 809, 619 cm−1
HRMS (FAB): calcd for [C7H10O4 + H]: 159.0657, found 159.0650.
[α]D 26 +11.1 (c=0.77, MeOH)
【0099】
【参考例8】化合物(+)−9の合成
(+)− 8 (134 mg, 0.85 mmol) のCH2Cl2溶液(2 mL)にトリエチルアミン(0.19 mL, 1.38 mmol)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン) (10.3 mg, 0.085 mmol)、tert−ブチルジメチルシリルクロリド(183 mg, 1.21 mmol)を0℃で加え、室温で15時間撹拌する。リン酸緩衝液を加え、反応を停止した後に、有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で洗い、Na2SO4で乾燥する。溶媒留去後、カラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:10〜1:1)により精製を行い、339 mgの(+)− 9を得る(収率84%)。
【0100】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 0.03 (6H, s), 0.87 (9H, s), 2.02 (1H, dd, J =15.4, 4.2 Hz), 2.10 (1H, d, J = 15.4 Hz), 2.82 (1H, d, J =12.0 Hz), 3.27 (1H, bs), 3.47 (1H, d, J = 12.0 Hz), 3.48 (2H, s), 3.64 (1H, d, J =12.0 Hz), 4.10−4.18 (1H, m).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= −5.5, 18.2, 25.7, 27.8, 50.9, 54.3, 54.5, 62.2, 64.9, 65.0, 77.3.
IR (neat) 3517, 2954, 2929, 2857, 1116, 869, 688 cm−1
HRMS (FAB): calcd for [C13H24O4Si + H]: 273.1522, found 273.1491.
[α]D 26 +14.0 (c=0.89, MeOH)
【0101】
【参考例9】化合物(+)−10の合成
シリルエーテル (+)−9 (700 mg, 1.77 mmol)のCH2Cl2 (10 mL) 溶液に0℃でDess−Martin periodinane(1.03 g, 2.43 mmol)を加え、室温で50分撹拌する。飽和重曹水を加え、反応を停止する。有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を飽和重曹水で洗い、Na2SO4で乾燥する。溶媒留去後、シリカゲルでろ過(酢酸エチル:ヘキサン=1:3)し、溶媒を留去する。これにトルエン(15 mL)、シリカゲル (7.0 g) を加え、70℃で4.5時間撹拌する。室温に冷却後、シリカゲルをろ過して686 mgの(+)− 10を得る(収率99%)。
【0102】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 0.10 (6H, s), 0.91 (9H, s), 3.29 (1H, bs), 3.43 (1H, s), 3.78 (1H, dd, J = 3.4, 0.9 Hz), 4.28 (1H, d, J =15.6 Hz), 4.51 (1H, dd, J =15.6, 1.6 Hz), 4.63 (1H, bs), 5.96 (1H, d, J = 1.4 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= −5.5, 18.2, 52.7, 56.4, 64.1, 77.2, 65.0, 121.1, 156.9, 193.6.
IR (neat) 3419, 2954, 2931, 2884, 1687, 1344, 1226, 1049, 879, 781 cm−1
HRMS (FAB): calcd for [C13H22O4Si + H]: 271.1366, found 271.1368.
[α]D 25 +149 (c=0.56, MeOH)
【0103】
【参考例10】化合物(+)−11の合成
エポキシケトン(+)−10 (38.7 mg)のMeOH (1 mL)溶液にAmberlyst 15 (11.3 mg)を加え、室温で5時間撹拌する。Amberlyst 15をろ別後、溶媒を減圧下留去しジオールを得る。このジオールのCH2Cl2 (0.5 mL) 溶液にジメトキシプロパン (0.35 mL), PPTS(ピリジンパラトルエンスルホン酸) (3.6 mg)を加え、室温で4時間撹拌する。飽和重曹水を加え、反応を停止する。有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で洗い、Na2SO4で乾燥する。溶媒留去後、フロリジルゲルを用いたカラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)により精製を行い、18.0 mgのエポキシアセタール(+)−11を得る(収率64 %)。
【0104】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 1.46 (3H, s), 1.62 (3H, s), 3.44−3.47 (1H, m), 3.68 (1H, d, J =3.2 Hz), 4.28 (1H, d, J = 14.6 Hz), 4.60 (1H, dt, J =14.6, 1.3 Hz), 4.83 (1H, s), 5.85 (1H, t, J = 1.1 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= 21.4, 27.1, 52.4, 57.3, 63.8, 64.0, 101.2, 120.1, 154.0, 190.9
IR (neat) 1673, 1268, 1078, 1020, 779, 539cm−1
HRMS (FAB): calcd for [C10H12O4 + H]: 197.0814, found 197.0818.
Elemental analysis: Calcd for C10H12O4: C 61.22, H 6.16, found C 61.38, H 6.23.
[α]D 25 +348.4 (c=0.10, CHCl3)
mp. 93.0−94.0 ℃
【0105】
【参考例12】化合物(+)−12の合成
アルミ箔で遮光した10 mLナスフラスコにCH2Cl2 (0.3 mL), I2 (23.4 mg), ピリジン11.2 μL, PhI(OCOCF3)2 (ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨードベンゼン)(39.7 mg) を加え、室温で15分撹拌する。BHT(3,5−ビス(tert−ブチル)−4−ヒドロキシトルエン) (1.0 mg)、(+)−11 (18.1 mg) を加え、22時間撹拌する。飽和Na2S2O3水溶液を加えて反応を停止させ、有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を食塩水で洗い、Na2SO4で乾燥する。溶媒留去後、フロリジルゲルを用いたカラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:50)により精製を行い、19.9 mgのエポキシアセタール(+)−12を得る(収率67%)。
【0106】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 1.37 (3H, s), 1.52 (3H, s), 3.60 (1H, dd, J =3.4, 1.4 Hz), 3.74 (1H, d, J =3.2 Hz), 4.33 (1H, dd, J =18.3, 1.4 Hz), 4.38 (1H, dd, J = 18.3, 1.4 Hz), 4.48 (1H, dd, J = 18.3, 1.4 Hz), 4.70 (1H, d, J =0.8 Hz).
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= 23.9, 25.7, 51.3, 57.4, 65.3, 69.5, 98.0, 102.8, 162.2, 184.3.
IR (neat) 2989, 2858, 1683, 1384, 1228, 1097, 848, 518 cm−1
HRMS (FAB): calcd for [C10H11O4I + H]: 322.9780, found 322.9791.
【0107】
以下、本発明の化合物の合成方法を実施例として示す。本発明の化合物の合成経路を以下に示す。
【0108】
【化31】
【0109】
【実施例1】化合物(+)−RKTS−17の合成
化合物(+)−12 (52.0 mg, 0.161 mmol)のTHF−H2O(0.72 mL, 0.09 mL)混合溶液中に(E)−ヘキセニルボロン酸(33.1 mg, 0.258 mmol)、Ag2O (63.7 mg)、Ph3As(トリフェニルアルシン) (4.9 mg, 0.016 mmol) 、Pd(PhCN)2Cl2(ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)) (3.1 mg, 0.0081 mmol)を加え、室温で7時間撹拌する。飽和NH4Cl溶液を加えた後に1時間撹拌し、反応を停止する。有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥する。溶媒留去後、フロリジルゲルを用いた濾過(酢酸エチル:ヘキサン=1:50)を行い、(+)−13を得る。(+)−13はそのまま次の反応に用いた。
(+)−13のMeOH (1 mL)溶液にDowex 50W−X4 (10 mg) を加え、室温で4時間撹拌した。反応混合物を脱脂綿で濾過し、溶媒留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)により精製を行い、ジオール (+)−RKTS−17 (19.5 mg, 2段階 51%)を得る。
【0110】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 0.91 (3H, t, J =7.1 Hz), 1.25−1.47 (4H, m), 2.18 (2H, bq, J =6.8 Hz), 2.79 (1H, bs), 3.57 (1H, d, J =3.8 Hz), 3.68 (1H, bs), 3.82 (1H, d, J =3.8 Hz), 4.46 (1H, bd, J =14.4 Hz), 4.71 (1H, bd, J =14.4 Hz), 4.98 (1H, bs), 5.95 (1H, dt, J =16.0, 6.4 Hz), 6.03 (1H, d, J =16.0 Hz)
13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ= 13.8, 22.2, 31.1, 33.4, 53.5, 55.7, 62.5, 65.0, 120.1, 131.0, 140.7, 146.9, 195.0.
【0111】
【実施例2】化合物(+)−RKTS−36の合成
アルゴン雰囲気下、10 mlナスフラスコにジオール (+)−RKTS−17 (4.0 mg, 0.017 mmol)、CH2Cl2 (0.2 ml)、Et3N(トリエチルアミン) (21 μl, 0.15 mmol)、DMAP (0.2 mg, 0.002 mmol) を加え、0 ℃に冷却した。これにTBSCl(tert−ブチルジメチルシリルクロリド) (15 mg, 0.10 mmol)を加え、4時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止したのち、AcOEtを加え、室温に昇温した。有機層を分離後飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、減圧下溶媒を留去した。残渣を薄層クロマトグラフィー(AcOEt/Hexane=1/1)で精製し、シリルエーテルを無色油状物として得た。
【0112】
アルゴン雰囲気下、10 mlナスフラスコに先のアルコール (5.0 mg, 0.014 mmol)、CH2Cl2 (0.4 ml)、を加え、0 ℃に冷却した。これにDess−Martin periodinane (25 mg, 0.059 mmol)を加え、室温に昇温した後4時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で反応を停止した後、AcOEtを加えた。有機層を分離後飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、減圧下溶媒を留去した。残渣をフロリジルゲルで濾過し(AcOEt/Hexane=1/1)、粗生成物のジケトンを得た。これにTHF (75μl), H2O (3.3μl), AcOH (18μl), NH4F (39 mg, 1.0 mmol) を加え、室温で10時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で反応を停止した後、AcOEtを加えた。有機層を分離後飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、減圧下溶媒を留去した。残渣を薄層クロマトグラフィー(AcOEt/Hexane=1/1)で精製し、アルコール (+)−RKTS−36 (0.8 mg, 18%)を無色油状物として得た。
【0113】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ0.92 (3H, t, J=7.2 Hz), 1.23−1.50 (4H, m), 2.26 (2H, br−q, J=7.1 Hz), 2.30 (1H, br−s), 3.85 (1H, d, J=4.1 Hz), 3.89 (1H, d, J=4.1 Hz), 4.45 (1H, d, J=12.7 Hz), 4.57 (1H, d, J=12.7 Hz), 6.31 (1H, br−d, J=15.9 Hz), 6.56 (1H, dt, J=15.9, 7.1 Hz).
【0114】
【実施例3】化合物(+)−RKTS−35の合成
アルゴン雰囲気下、20 mlナスフラスコにヨウ化物(+)−12 (40.8 mg, 0.127 mmol)、THF (0.8 ml)、H2O (0.1 ml)、アルケニルホウ酸 (93.7 mg, 0.633 mmol)、Ag2O (150 mg, 0.646 mmol)、Ph3As (3.9 mg, 0.013 mmol)、Pd(PhCN)2Cl2 (2.4 mg, 0.0063 mmol)を加え、遮光して室温で4時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて1時間撹拌したのち、AcOEtを加え、セライトで濾過した。有機層を分離後飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、減圧下溶媒を留去した。残渣にMeOH (1 ml), Dowex 50WX4 (20 mg) を加え、室温で4時間撹拌した。反応混合物を濾過し、減圧下溶媒を留去した後、残渣を薄層クロマトグラフィー(AcOEt/Hexane=1/1)で精製し、ジオール (+)− RKTS−35 (9.9 mg, 30%)を黄色油状物として得た。
【0115】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ2.28 (1H, br−s), 3.29 (1H, br−s), 3.63 (1H, dd, J=3.9, 0.8 Hz), 3.86 (1H, dd, J=3.9, 1.6 Hz), 4.60 (1H, d, J=14.5 Hz), 4.87 (1H, d, J=14.5 Hz), 5.06 (1H, br−s), 6.77 (1H, d, J=16.4 Hz), 6.88 (1H, d, J=16.4 Hz), 7.27−7.37 (3H, m), 7.40−7.44 (2H, m); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ53.58, 55.70, 62.74, 65.19, 118.90, 126.80, 128.57, 128.71, 130.68, 136.56, 137.21, 147.89, 194.65; FT−IR (neat) ν 3384, 3057, 3026, 2924, 1684, 1448, 1338, 1047, 968, 738, 692 cm−1.
【0116】
【実施例4】化合物(+)−16の合成
アルゴン雰囲気下、20 mlナスフラスコにヨウ化物(+)−12 (82.3 mg, 0.256 mmol)、THF (1.6 ml)、H2O (0.2 ml)、ビニルホウ酸 (91.8 mg, 1.28 mmol)、Ag2O (308 mg, 1.33 mmol)、Ph3As (7.8 mg, 0.026 mmol)、Pd(PhCN)2Cl2 (4.9 mg, 0.013 mmol)を加え、遮光して室温で11時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて1時間撹拌したのち、AcOEtを加え、セライトで濾過した。有機層を分離後飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別後、減圧下溶媒を留去した。残渣にMeOH (2 ml), Dowex 50WX4 (30 mg) を加え、室温で5時間撹拌した。反応混合物を濾過し、減圧下溶媒を留去した後、残渣を薄層クロマトグラフィー(AcOEt/Hexane=1/3〜1/1)で精製し、ジオール(+)−16 (15.0 mg, 32%)を無色油状物として得た。
【0117】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ2.76 (1H, br−s), 3.56 (1H, dd, J=3.8, 0.7 Hz), 3.66 (1H, br−s), 3.83 (1H, dd, J=3.8, 1.6 Hz), 4.49 (1H, d, J=14.6 Hz), 4.71 (1H, d, J=14.6 Hz), 4.99 (1H, br−s), 5.46 (1H, dd, J=17.7, 1.4 Hz), 5.53 (1H, dd, J=11.6, 1.4 Hz), 6.35 (1H, dd, J=17.7, 11.6 Hz); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ53.34, 55.70, 62.43, 64.84, 123.27, 127.64, 130.90, 148.68, 194.34.
【0118】
【実施例5】化合物18, 19の合成
ジオール(+)−17 (5.8 mg, 0.030 mmol)のジクロロメタン(0.5 ml) 溶液を0 ℃に冷却し、二酸化マンガン (75%, 44 mg, 0.38 mmol) を加え、15 分間撹拌する。反応混合物をセライト濾過し、酢酸エチルで洗浄する。溶媒留去後、重クロロホルム (0.5 ml) を加え、アルミ箔で遮光して室温で18 時間静置した。溶媒留去後、薄層クロマトグラフにより精製を行い、エポキシキノール A 18 (2.3 mg, 40%) とエポキシキノール B 19 (1.5 mg, 25%) を得る。
【0119】
【実施例6】化合物RKTS−18, 19の合成
ジオール(+)−RKTS−17 (13.0 mg, 0.055 mmol)のジクロロメタン(0.6 ml) 溶液を0 ℃に冷却し、二酸化マンガン (75%, 63.2 mg, 0.55 mmol)を加え、15 分間撹拌する。反応混合物をセライト濾過し、酢酸エチルで洗浄する。溶媒留去後、室温で11 時間静置した後、薄層クロマトグラフ(メタノール:クロロホルム=1:10)により精製を行い、RKTS−18 (R=C4H9, 3.8 mg, 31%)とRKTS−19 (R=C4H9, 3.2 mg, 25%)を得る。
【0120】
RKTS−18: 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 0.83 (3H, t, J =7.1 Hz), 0.87 (3H, t, J =6.4 Hz), 1.06−1.48 (12H, m), 1.79 (1H, d, J =9.5 Hz), 2.12 (1H, d, J =7.9 Hz), 2.53 (1H, bs), 3.22 (1H, bs), 3.46 (1H, d, J =3.5 Hz), 3.48 (1H, dd, J =3.5, 0.8 Hz), 3.73 (1H, dd, J =3.5, 0.9 Hz), 3.79 (1H, d, J =3.5 Hz), 4.12 (1H, dd, J =9.2, 4.9 Hz), 4.17 (1H, t, J =6.3 Hz), 4.73 (1H, d, J =9.5 Hz), 5.08 (1H, bd, J =7.9 Hz), 5.14 (1H, s), 6.81 (1H, d, J =2.0 Hz).
【0121】
RKTS−19: 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ= 0.83 (3H, t, J =7.0 Hz), 0.88 (3H, t, J =7.0 Hz), 1.18−1.41 (12H, m), 1.56 (2H, bs), 2.78 (1H, dd, J =5.1, 2.7 Hz), 3.16−3.20 (1H, m), 3.47−3.56 (3H, m), 3.63 (1H, dd, J =3.0, 2.2 Hz), 3.81 (1H, dd, J =3.5, 1.1 Hz), 3.98 (1H, bt, J =6.5 Hz), 4.67 (1H, d, J =1.7 Hz), 4.81 (1H, s), 5.04 (1H, s), 6.44 (1H, s).
【0122】
【実施例7】化合物RKTS−20の合成
化合物(+)−16を用いて実施例6と同様な行程で、化合物RKTS−20を得た。
【0123】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ2.17 (1H, d, J=7.5 Hz), 2.63 (1H, br−s), 3.12 (1H, br−d, J=8.2 Hz), 3.29 (1H, br−s), 3.50 (2H, t, J=3.4 Hz), 3.57 (1H, dd, J=11.9, 4.7 Hz), 3.73 (1H, d, J=3.3 Hz), 3.77 (1H, d, J=3.6 Hz), 4.08−4.18 (3H, m), 4.75 (1H, d, J=9.2 Hz), 5.07 (1H, br−d, J=6.8 Hz), 5.20 (1H, s), 7.04 (1H, d, J=1.9 Hz); FT−IR (neat) ν3417, 2923, 2852, 1714, 1684, 1458, 1254, 1051, 737 cm−1.
【0124】
【試験例1】RKTS−17, RKTS−35, RKTS−36によるヒト白血病細胞株Jurkat細胞における増殖抑制効果
ヒト白血病細胞株Jurkat細胞は、10%子牛血清を含むRPMI培地にて5%炭酸ガスと水蒸気を飽和させた培養器内で培養した。対数増殖期にあるJurkat細胞に一連の希釈系列の(+)−RKTS−17, 35, 36を添加し8時間培養し、細胞の生存率をMTT(3−(4,5−ジメチル−チアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)法により検定した。
【0125】
化合物(+)−RKTS−17, (+)−RKTS−35, (+)−RKTS−36は、それぞれ20, 20, 10 μg/mlの濃度で、対数増殖期にあるJurkat細胞の増殖を50%阻害した。このことは、本発明のRKTS−17, RKTS−35, RKTS−36が抗腫瘍剤として有効であることを示している。
【0126】
【試験例2】RKTS−17, RKTS−35, RKTS−36, RKTS−18, RKTS−19, RKTS−20による血管内皮細胞の走化性の阻害
HuMedia−EG2 (KURABO)培地を用いて培養維持された正常ヒトさい帯静脈血管内皮細胞HUVEC細胞をケモタキセルチャンバーを用いた3次元培養の上層にまいた。下層に内皮細胞増殖因子(VEGF)を含むHuMedia−EG2を充填させることでHUVEC細胞の走化性を誘導した。(+)−RKTS−17, (+)−RKTS−35, (+)−RKTS−36, RKTS−18, RKTS−19, RKTS−20は、それぞれ、1−30μg/mlの濃度で、VEGFによって誘導されるHUVEC細胞の走化性を抑制した。この結果は、本発明化合物RKTS−17, RKTS−35, RKTS−36, RKTS−18, RKTS−19, RKTS−20が抗VEGF作用、血管内皮細胞の走化性の阻害、すなわち血管新生阻害剤、抗腫瘍剤などとして有効であることを示している。
【0127】
【製剤例1】注射・点滴剤
本発明化合物 10 mgを含有するように、粉末ブドウ糖5 gを加えてバイアルに無菌的に分配して密封し、窒素、ヘリウムなどの不活性ガスを封入して冷暗所に保存した。使用前にエタノールに溶解し、0.85%生理的食塩水100 mlを添加して静脈内注射剤とし、一日あたり10〜100 mlを症状に応じて静脈内注射または点滴で投与する。
【0128】
【製剤例2】顆粒剤
本発明化合物 1 g、乳糖98 g、およびヒドロキシプロピルセルロース1 gをそれぞれ取り、よく混和した後、定法にしたがって粒状に成形し、それをよく乾燥して、瓶やヒートシール包装などに適した顆粒剤を製造した。一日あたり100〜1000 mgを症状に応じて経口投与できる。
【0129】
【発明の効果】
本発明化合物は、抗腫瘍剤、血管新生阻害剤として有効であり、さらには、転移抑制剤、抗リウマチ様関節炎剤、糖尿病性網膜症などをはじめとした過度の血管新生が原因とされている疾病の治療薬・予防薬などとして有効である。
Claims (12)
- 以下の一般式(I):
- 請求項1〜8に記載のいずれかの化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物を有効成分として含有する医薬組成物。
- 請求項1〜8に記載のいずれかの化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物を有効成分として含有する抗腫瘍剤。
- 請求項1〜8に記載のいずれかの化合物もしくはその光学活性体、またはそれらの製薬上許容される塩もしくはそれらの水和物もしくは溶媒和物を有効成分として含有する血管新生阻害剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003107647A JP2004315373A (ja) | 2003-04-11 | 2003-04-11 | 抗腫瘍活性および血管新生阻害活性を有する化合物、ならびにその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003107647A JP2004315373A (ja) | 2003-04-11 | 2003-04-11 | 抗腫瘍活性および血管新生阻害活性を有する化合物、ならびにその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004315373A true JP2004315373A (ja) | 2004-11-11 |
Family
ID=33469422
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003107647A Pending JP2004315373A (ja) | 2003-04-11 | 2003-04-11 | 抗腫瘍活性および血管新生阻害活性を有する化合物、ならびにその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004315373A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006131504A (ja) * | 2004-11-02 | 2006-05-25 | Tokyo Univ Of Science | 新規化合物、これを含有する医薬及びこの製造方法 |
-
2003
- 2003-04-11 JP JP2003107647A patent/JP2004315373A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006131504A (ja) * | 2004-11-02 | 2006-05-25 | Tokyo Univ Of Science | 新規化合物、これを含有する医薬及びこの製造方法 |
JP4617136B2 (ja) * | 2004-11-02 | 2011-01-19 | 学校法人東京理科大学 | 新規化合物、これを含有する医薬及びこの製造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP3686196B1 (en) | Polycyclic compound acting as ido inhibitor and/or ido-hdac dual inhibitor | |
JP6511613B2 (ja) | ハリコンドリンBの大環状C1−ケト類似体の製造のための合成方法及び該方法に有用な中間体、例えば−SO2−(p−トリル)基を含有する中間体 | |
JP2012509351A (ja) | 有機化合物のフッ素化 | |
US9096550B2 (en) | Bryostatin analogues and methods of making and using thereof | |
JP2022107010A (ja) | ブリオスタチン化合物およびその調製方法 | |
US20230002425A1 (en) | Cannabidiol derivatives, preparation method thereof and use thereof | |
JP5614858B2 (ja) | 新規コルチスタチンa類似体およびその用途 | |
Marcos et al. | Synthesis of novel antitumoural analogues of dysidiolide from ent-halimic acid | |
WO2012054782A2 (en) | Fluoroalkoxylation of organic compounds | |
JPH02504394A (ja) | フロ〔3,4‐c〕ピリジン鏡像体の立体特異的製造方法、かくして得られた化合物及びこれの製薬組成物 | |
JP5963278B2 (ja) | 種選択的な電子伝達系の複合体ii阻害活性を有する新規アトペニン類縁体 | |
US5504107A (en) | Optically pure 4-alkenyl- or 4-alkanyl-2-hydroxytetronic acids and pharmaceutical use thereof | |
JP2004315373A (ja) | 抗腫瘍活性および血管新生阻害活性を有する化合物、ならびにその製造方法 | |
WO2016025363A1 (en) | Bryostatin analogs and use thereof as antiviral agents | |
Formánek et al. | Synthesis and migrastatic activity of cytochalasin analogues lacking a macrocyclic moiety | |
JP2004307420A (ja) | 細胞死抑制作用を有する化合物、およびその製造方法 | |
WO2020084633A1 (en) | Decalin derivatives, a process for the preparation and pharmaceutical composition thereof | |
US9771325B2 (en) | Tricyclic compounds and preparation thereof | |
JP7518533B2 (ja) | 新規イノン化合物及びその用途 | |
US9346781B2 (en) | Therapeutic compounds | |
JP4523761B2 (ja) | 抗腫瘍活性を有する新規化合物、およびその製造方法 | |
CA2647655C (en) | Novel c-1 analogs of pancratistatin and 7-deoxypancratistatin and processes for their preparation | |
Cummins | The Synthesis of the C-Ring Subunit of Bryostatin 1, and the Synthesis and Biological Evaluation of Fluorescent Bryostatin Analogs | |
WO2021139740A1 (zh) | 四氢大麻酚衍生物及其制备方法和在医药上的应用 | |
Huntington | Atlantic City |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060404 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20090818 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20091215 |