心温まるおとぎ話――。ハッピーエンドではなかったが、アイスランドの戦いぶりをみると、そんな言葉が浮かんでくる。 北大西洋に浮かぶ小国の人口は約35万人。日本で一番少ない、鳥取県の約56万人の約6割しかいない。サッカー強国としての伝統もなければ、世界的な選手もいない。彼らを奮い立たせるものはただ一つ。代表への熱く、一途な思いだ。 1次リーグ突破をかけた最終戦のクロアチア戦。レアル・マドリードMFモドリッチらスター選手を擁する強国に、最後まで体を張り、ゴールを狙い続けた。初出場での1次リーグ突破の夢ははかなく消えたが、コーチ時代も含め、約7年間指導するハルグリムソン監督は「選手は全てをピッチで出し切った。誇りに思う」。負けても、観客席から向けられた大きな拍手が印象的だった。 10年前まで、この国がW杯に出るとは、誰も思っていなかっただろう。 「自分は歯科医と兼業なんだ。難しい環境から世界へチャ