――最も記憶に残っている失敗は何でしょうか。 鈴木 何といっても1975年の、自動車排出ガス規制への対応失敗ですね。当時の私は代表権こそないものの、専務として経営の一角を担っていましたから。 高度経済成長下の日本では、急増した自動車の排ガスによる大気汚染が深刻な社会問題となっていたんです。そこで政府は非常に厳しい排ガス規制を導入しました。自動車メーカー各社は、規制をクリアするための技術開発に力を入れていましたが、その中でスズキだけが、新型エンジンの開発に失敗してしまった。 このままでは規制が施行された後には車を一台も作れなくなる。とうとうスズキも倒産か、と途方に暮れていた時、手を差しのべてくれたのがトヨタさんでした。「排ガス規制は自動車業界全体にとって大きな問題だから、今度ばかりはお助けする。だが、早く立派なエンジンを開発して、独り立ちしてほしい」と、エンジンを分けてくださった。 トヨタさ