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JP6490126B2 - ポリアリーレンスルフィド用のホウ素含有成核剤 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド用のホウ素含有成核剤 Download PDF

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JP6490126B2 JP2017047146A JP2017047146A JP6490126B2 JP 6490126 B2 JP6490126 B2 JP 6490126B2 JP 2017047146 A JP2017047146 A JP 2017047146A JP 2017047146 A JP2017047146 A JP 2017047146A JP 6490126 B2 JP6490126 B2 JP 6490126B2
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Description

[0001]本出願は、2011年12月16日出願の米国仮特許出願61/576,505及び2012年6月28日出願の61/665,384(これらの全部を本明細書中に包含する)の出願の利益を主張する。
[0002]ポリアリーレンスルフィドは、高い熱的、化学的、及び機械的応力に耐えることができる高性能ポリマーである。しかしながら、その比較的遅い結晶化速度のために、ポリアリーレンスルフィドから部品を射出成形することは困難な可能性がある。例えば、所望の結晶化度を達成するために、成形は一般に高い金型温度(約130℃又はそれ以上)において比較的長いサイクル時間の間行う。残念なことに、高い金型温度のために、通常は高価で腐食性の加熱媒体(例えばオイル)が必要になる。
[0003]上述の問題に対処する試みは、一般にポリマー組成物中に成核剤を含ませて結晶化特性の向上を助けることを含む。例えば、成核剤として窒化ホウ素がしばしば用いられている。ポリマーの特性を更に向上させる試みにおいて、特定の特性を示す窒化ホウ素成核剤が開発されている。例えば、特定のアスペクト比(例えば2より大きい)を有する六方晶系窒化ホウ素、及び/又は非常に高いアスペクト比及び非常に小さい寸法を有する層剥離窒化ホウ素粒子が形成されている。高い結晶化度を示す高純度窒化ホウ素粒子も成核剤として使用されている。一般に、窒化ホウ素の望ましい特性を向上させる最良の手段は、粒子の寸法を減少させ、粒子の純度を増加させることによるものである。
[0004]しかしながら、今日までかかる試みは完全には成功していない。実際、種々の産業(例えばエレクトロニクス、自動車等)は現在非常に小さい寸法公差を有する射出成形部品を求めているので、問題は更により顕著になっている。これらの用途においては、ポリマーは、金型キャビティの小さい空間を迅速且つ均一に満たすことができるように良好な流動特性を有していなければならない。しかしながら、必要な高い流動要件を満たすようにされている従来のポリフェニレンスルフィドは、非常に高コストで時間がかかる工程である可能性がある長い冷却サイクルが必要な傾向を有する成核剤を用いていることが分かっている。
[0005]このように、良好な機械特性をなお達成しながら比較的短いサイクル時間を与えることができるポリアリーレンスルフィド用の好適な成核剤に対する必要性が存在する。
[0006]一態様によれば、ホウ素含有成核剤及びポリアリーレンスルフィドを含む熱可塑性組成物が開示される。ホウ素含有成核剤は、比較的劣った結晶化度を有していてよい。例えば、ホウ素含有成核剤は約4より大きい黒鉛化指数を示してよい。ホウ素含有成核剤はまた、小さい平均粒径及び比較的大きい比表面積を有していてもよく、例えば比表面積に対する平均粒径の比は約0.001〜約1(μm/m/g)の間であってよい。熱可塑性組成物は、例えば約231℃を超える高い再結晶温度(これは生成物形成プロセスに関するより速い再結晶速度及びより短いサイクル時間を意味する可能性がある)を有することができる。
[0007]組成物から形成することができる生成物も開示される。例えば、自動車エンジン
を通して冷却液を循環させるための遠心ポンプが開示される。このポンプは、冷却液を放射方向に外側に向かって渦形室中に流入させるように構成されているポンプインペラー;並びにポンプインペラー及び渦形室を収容するハウジング;を含み;ポンプインペラー、ハウジング、又は両方の少なくとも一部は、ポリアリーレンスルフィド及びホウ素含有成核剤を含む熱可塑性組成物から形成される成形部品を含む。
[0008]熱可塑性組成物を成形する方法も開示される。この方法は、本明細書に記載するポリアリーレンスルフィド及びホウ素含有成核剤を含む熱可塑性組成物を成形することを含む。この方法はまた熱可塑性組成物を冷却することも含む。例えば、この方法には、ポリアリーレンスルフィド組成物を射出成形することを含ませることができる。
[0009]本発明の他の特徴及び形態を下記においてより詳細に示す。
[0010]明細書の残りにおいて、添付の図面の参照を含む当業者に対するそのベストモードを含む本発明の完全且つ実施可能な程度の開示をより詳しく示す。
[0011]図1は、本発明において用いることができる射出成形装置の一態様の断面図である。 [0012]図2は、本発明の一態様にしたがって形成することができる水ポンプを示す。 [0013]図3は、本発明の一態様にしたがって形成することができる電子機器の斜視図である。 [0014]図4は、閉止した形態で示す図2の電子機器の斜視図である。
[0015]本議論は代表的な態様のみの説明であり、本発明のより広い形態を限定するようには意図しないことが当業者に理解される。
[0016]一般的に言えば、本発明はポリアリーレンスルフィドを迅速に再結晶させるために用いることができるホウ素含有成核剤に関する。成核剤の幾つかの特徴を選択的に制御することによって、成核剤及びポリアリーレンスルフィドを含む熱可塑性組成物の結晶化特性を大きく向上させることができる。とりわけ、成核剤によって成形サイクル中の「冷却時間」を実質的に減少させることができる。冷却時間の減少は再結晶温度の上昇によって明示することができ、これはホウ素含有成核剤を用いることによって上昇させることができる。例えば、ホウ素含有成核剤を用いることによって、熱可塑性組成物の再結晶温度を約231℃より高く、232℃より高く、又は約233℃より高くすることができる。
[0017]熱可塑性組成物の再結晶温度を上昇させることに加えて、ホウ素含有成核剤によって再結晶エネルギーを増加させることができ、これによっても成形サイクル中の冷却時間を減少させることができる。例えば、ポリアリーレンスルフィド及びホウ素含有成核剤を含む熱可塑性組成物は、約24キロジュール/グラム(kJ/g)より大きく、約24.5kJ/gより大きく、又は約25kJ/gより大きい再結晶エネルギーを示すことができる。
[0018]ホウ素含有成核剤を熱可塑性組成物に加えることにより、組成物の他の特性には僅かか又は全く変化を与えないようにすることができる。例えば、組成物の溶融粘度は成核剤の存在によって僅かか又は全く変化を示さないことができる。而して、ホウ素含有成核剤を用いることによって、他のプロセスパラメーターに関して悪影響を与えずに成形プロセスの温度及び時間を大きく改良することができる。
[0019]ホウ素含有成核剤を用いることによって、また、部品をより低い温度で成形することを可能にすることもできる。例えば、射出成形プロセスを考えた場合、金型温度(例えば金型の表面の温度)を、約50℃〜約120℃、幾つかの態様においては約60℃〜約110℃、幾つかの態様においては約70℃〜約90℃にすることができる。成形操作のためのエネルギー投入量要件を最小にすることに加えて、かかる低い金型温度を、幾つかの従来の技術よりも低腐食性で安価である冷却媒体を用いて達成することができる。例えば、冷却媒体として液体水を用いることができる。更に、低い金型温度を用いることによって、高温成形操作に通常関連する「フラッシュ」の生成を減少させることもできる。例えば、射出成形操作中に生成するフラッシュ(バリとしても知られる)の長さを、約0.17ミリメートル以下、幾つかの態様においては約0.14ミリメートル以下、幾つかの態様においては約0.13ミリメートル以下にすることができる。
[0020]全冷却時間は、組成物を金型キャビティ中に射出する時点から、それを安全に取り出すことができる取り出し温度に達する時点までに定めることができる。代表的な冷却時間は、例えば約1〜約60秒間、幾つかの態様においては約5〜約40秒間、幾つかの態様においては約10〜約35秒間の範囲にすることができる。
[0021]ホウ素含有成核剤は比較的劣った結晶化度を示してよい。例えば、成核剤は、約4より大きく、約5より大きく、又は約6より大きいような驚くほど高い黒鉛化指数を示してよい。一態様においては、黒鉛化指数は約6〜約10の間、例えば約7〜約9の間であってよい。
[0022]黒鉛化指数(通常的に黒鉛指数とも呼ばれる)は、ホウ素含有粒子の構造品質を表すパラメーターである。窒化ホウ素のようなホウ素含有粒子は、構造が黒鉛に類似している六方晶系;ダイヤモンドに類似している立方晶系;及びロンズデーライト(六方晶ダイヤモンドとも呼ばれる)に類似しているウルツ鉱;などの幾つかの結晶形態で存在している。情報にしたがえば、ホウ素含有粒子は異なる結晶化度を有する可能性がある。この結晶化度を測定するために、黒鉛化指数と呼ばれる性能構造指数が開発された。黒鉛化指数はX線回折から誘導され、(102)ピーク下の領域に対する[(100)+(101)]ピーク下の領域の比である。黒鉛化指数は、材料のc軸に沿った層の積層の秩序度を表す。黒鉛化指数は、例えば秩序立った高結晶質粒子に関する約1から、所謂乱層粒子(層は垂直に対してランダムな回転及び並進を示す)に関する約50までで大きく変化する可能性がある。
[0023]驚くべきことに、比較的低い結晶化度を示すホウ素含有成核剤を用いることによって、ポリアリーレンスルフィドの再結晶特性を大きく改良することができることが見出された。具体的には、再結晶温度及び再結晶エネルギーを上昇させることができ、これによって成形生成物を形成する際のサイクル時間を減少させることができる。成形プロセス中におけるホウ素含有成核剤の有益な機能的能力に加えて、ホウ素含有成核剤はまた、組成物の結晶化特性を向上させることもできる。
[0024]驚くほど低い結晶化度と共に、ホウ素含有成核剤はまた小さい粒径も有していてよい。例えば、成核剤は、約10μm未満、約9μm未満、又は約8μm未満の平均粒径を有していてよい。例えば、平均粒径は、約0.5μm〜約10μm、又は約1μm〜約9μmであってよい。平均粒径は、沈降法、レーザー回折法、又は任意の他の好適な方法にしたがって求めることができる。例えば、粒径分布は、ASTM−D4464又はASTM−B822のような標準試験法にしたがって求めることができる。
[0025]成核剤はまた大きな比表面積を有していてもよい。比表面積は、例えば、約15
/gより大きく、約17m/gより大きく、又は約19m/gより大きくてよい。一態様においては、比表面積は非常に大きく、例えば約30m/gより大きくてよい。比表面積は、当該技術において一般的に知られており、例えばBrunauer, Emmet, 及びTeller(J. Amer. Chem. Soc., vol.60, 1938年2月, pp.309-319)によって記載されてい
る吸着ガスとして窒素を用いる物理ガス吸着法(BET法)による標準的な方法にしたがって求めることができる。
[0026]小さい粒径と大きい比表面積の組合せによって、約0.001〜約1の間、例えば約0.01〜約0.8の間、又は約0.02〜約0.25の間の比表面積に対する平均粒径の比を有するホウ素含有成核剤を提供することができる。
[0027]成核剤粒子は任意の全体的な形状を有していてよい。例えば、成核剤には針状又は板状の構造を有する高アスペクト比の粒子を含ませることができる。ホウ素含有成核剤はまた、個々の高アスペクト比の粒子が例えばファンデルワールス力のような弱い化学結合を介して特定の配向又は高秩序形態で一緒に凝集している凝集粒子の形態であってもよい。また、非凝集のより大きい粒子を用いることもできる。例えば、多数の積層した板状の一次粒子を含む粒子、並びにより大きい焼結体で形成される粒状化粒子又は粉砕粒子のように一次構造が見られない粒子を用いることができる。
[0028]好適なホウ素含有成核剤には、開示されている特徴を有する可能性がある当該技術において一般的に知られている任意のホウ素含有材料を含ませることができる。一例として、ホウ素含有成核剤材料としては、限定なしに、窒化ホウ素、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸カルシウム等、並びにこれらの混合物を挙げることができる。窒化ホウ素(BN)は特に有益であることが分かった。窒化ホウ素は種々の異なる結晶形態(例えば、h−BN−六方晶系、c−BN−立方晶系又は閃亜鉛鉱型、及びw−BN−ウルツ鉱型)で存在し、これらのいずれも一般的に本発明において用いることができる。一態様においては、その安定性及び柔軟性のために六方晶結晶形態を用いることができる。
[0029]成核剤は任意の標準的な形成方法にしたがって形成することができる。一例として、窒化ホウ素粒子は、ホウ酸と三酸化ホウ素との反応から形成することができる未処理の実質的に乱層の粉末の高温焼結を含む方法にしたがって形成することができる。焼結は、一般に約1400℃〜約2300℃の間の温度において、約0.5〜約12時間の間の時間行うことができる。焼結は、アルゴンのような不活性雰囲気中、又は場合によっては窒素に富む雰囲気中で行うことができる。焼結は、公知なように真空下又は加圧雰囲気中で行うことができる。大きな焼結体は、限定なしにジョークラッシュ又はロール粉砕などの成核剤粒子を形成するのに好適な任意のプロセスにしたがって粒状化又は粉砕することができる。有益には、ホウ素含有成核剤は比較的劣った結晶化度を有しているので、形成プロセスはより高結晶質の粒子と比べてより低い温度で行うことができる。これにより、形成プロセスにおけるコスト節約及びそれによって形成される生成物に関するコスト節約をもたらすことができる。
[0030]勿論、ホウ酸とメラミンとを反応させ、次に(例えば約40℃〜約200℃の温度、及び約5%より高い相対湿度において)か焼し、ホウ酸又はアルカリ金属のホウ酸塩のような結晶化触媒を加えるような当該技術において公知の他の形成プロセスを代わりに用いることができる。少量の結晶化触媒を用いることにより、黒鉛化指数を制御して所望のレベルの結晶化度を有する成核剤を与えることができる。例えば、結晶化触媒を、結晶化触媒に対する窒化ホウ素の窒素のモル比が約300より大きいような量で用いて、約4より大きい黒鉛化指数を有する窒化ホウ素成核剤を得ることができる。
[0031]成核剤成分(即ち1種類以上の成核剤)は、通常は熱可塑性組成物の約0.01重量%〜約6重量%、幾つかの態様においては約0.05重量%〜約3重量%、幾つかの態様においては約0.1重量%〜約2重量%を構成する。
[0032]ホウ素含有成核剤を含む熱可塑性組成物には、一般に溶融することなく比較的高い温度に耐えることができる少なくとも1種類のポリアリーレンスルフィドも含ませることができる。実際の量は所望の用途によって変化する可能性があるが、1種類又は複数のポリアリーレンスルフィドは、通常は熱可塑性組成物の約30重量%〜約95重量%、幾つかの態様においては約35重量%〜約90重量%、幾つかの態様においては約40重量%〜約80重量%を構成する。1種類又は複数のポリアリーレンスルフィドは、一般に、式:
Figure 0006490126
(式中、
Ar、Ar、Ar、及びArは、独立して、6〜18個の炭素原子のアリーレン単位であり;
W、X、Y、及びZは、独立して、−SO−、−S−、−SO−、−CO−、−O−、−C(O)O−、又は1〜6個の炭素原子のアルキレン若しくはアルキリデン基から選択される二価の連結基であり、連結基の少なくとも1つは−S−であり;そして
n、m、i、j、k、l、o、及びpは、独立して、0、1、2、3、若しくは4であり、但しこれらの合計は2以上である)
の繰り返し単位を有する。
[0033]アリーレン単位のAr、Ar、Ar、及びArは、選択的に置換又は非置換であってよい。有利なアリーレン単位は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセン、及びフェナントレンである。ポリアリーレンスルフィドは、通常は約30モル%より多く、約50モル%より多く、又は約70モル%より多いアリーレンスルフィド(−S−)単位を含む。例えば、ポリアリーレンスルフィドは、少なくとも約85モル%の、2つの芳香環に直接結合しているスルフィド連結基を含んでいてよい。1つの特定の態様においては、ポリアリーレンスルフィドは、本発明においてその成分としてフェニレンスルフィド構造:−(C−S)−(式中、nは1以上の整数である)を含むものとして定義されるポリフェニレンスルフィドである。
[0034]ポリアリーレンスルフィドの製造において用いることができる合成技術は当該技術において一般的に知られている。一例として、ポリアリーレンスルフィドを製造する方法には、ヒドロスルフィドイオンを与える材料(例えばアルカリ金属硫化物)を有機アミド溶媒中でジハロ芳香族化合物と反応させることを含ませることができる。アルカリ金属硫化物は、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム、又はこれらの混合物であってよい。アルカリ金属硫化物が水和物又は水性混合物である場合には、アルカリ金属硫化物を、重合反応の前に脱水操作によって処理することができる。アルカリ金属硫化物はまた、その場で生成させることもできる。更に、少量のアルカリ金属水酸化物を反応中に含ませて、アルカリ金属硫化物と共に非常に少量で存在する可能性があるアルカリ金属ポリスルフィド又はアルカリ金属チオスルフェートのような不純物を除去するか又は(例えばかかる不純物を無害の材料に変化させるために)反応させることができる。
[0035]ジハロ芳香族化合物は、限定なしに、o−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン
、p−ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシ−ジハロベンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシド、又はジハロジフェニルケトンであってよい。ジハロ芳香族化合物は、単独か又はその任意の組合せのいずれかで用いることができる。具体的な代表的ジハロ芳香族化合物としては、限定なしに、p−ジクロロベンゼン;m−ジクロロベンゼン;o−ジクロロベンゼン;2,5−ジクロロトルエン;1,4−ジブロモベンゼン;1,4−ジクロロナフタレン;1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン;4,4’−ジクロロビフェニル;3,5−ジクロロ安息香酸;4,4’−ジクロロジフェニルエーテル;4,4’−ジクロロジフェニルスルホン;4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド;及び4,4’−ジクロロジフェニルケトン;を挙げることができる。ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素であってよく、同じジハロ芳香族化合物中の2つのハロゲン原子は、同一か又は互いと異なっていてよい。一態様においては、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、又はこれらの2以上の化合物の混合物をジハロ芳香族化合物として用いる。当該技術において公知なように、ポリアリーレンスルフィドの末端基を形成するか、或いは重合反応及び/又はポリアリーレンスルフィドの分子量を調節するために、モノハロ化合物(必ずしも芳香族化合物ではない)をジハロ芳香族化合物と組み合わせて用いることもできる。
[0036]1種類又は複数のポリアリーレンスルフィドはホモポリマー又はコポリマーであってよい。例えば、ジハロ芳香族化合物の選択的組み合わせによって、2以上の異なる単位を含むポリアリーレンスルフィドコポリマーを形成することができる。例えば、p−ジクロロベンゼンをm−ジクロロベンゼン又は4,4’−ジクロロジフェニルスルホンと組み合わせて用いる場合には、式:
Figure 0006490126
の構造を有するセグメント、及び式:
Figure 0006490126
の構造を有するセグメント、又は式:
Figure 0006490126
の構造を有するセグメントを含むポリアリーレンスルフィドコポリマーを形成することができる。
[0037]他の態様においては、1000〜20,000g/モルの数平均モル質量Mnを有する第1のセグメントを含むポリアリーレンスルフィドコポリマーを形成することがで
きる。第1のセグメントには、式:
Figure 0006490126
(式中、基R及びRは、互いに独立して、水素、フッ素、塩素、又は臭素原子、或いは1〜6個の炭素原子を有する分岐若しくは非分岐のアルキル又はアルコキシ基である)の構造から誘導される第1の単位;及び/又は式:
Figure 0006490126
の構造から誘導される第2の単位を含ませることができる。
[0038]第1の単位はp−ヒドロキシ安息香酸又はその誘導体の1つであってよく、第2の単位は2−ヒドロキシナフタレン−6−カルボン酸から構成することができる。第2のセグメントは、式:
Figure 0006490126
(式中、Arは芳香族基、或いは1つより多い縮合芳香族基であり、qは2〜100、特に5〜20の数である)
のポリアリーレンスルフィド構造から誘導することができる。基Arはフェニレン又はナフチレン基であってよい。一態様においては、第2のセグメントは、ポリ(m−チオフェニレン)、ポリ(o−チオフェニレン)、又はポリ(p−チオフェニレン)から誘導することができる。
[0039]1種類又は複数のポリアリーレンスルフィドは、線状、半線状、分岐、又は架橋型であってよい。線状ポリアリーレンスルフィドは、通常は80モル%以上の繰り返し単位:−(Ar−S)−を含む。かかる線状ポリマーはまた少量の分岐単位又は架橋単位を含んでいてもよいが、分岐又は架橋単位の量は、通常はポリアリーレンスルフィドの全モノマー単位の約1モル%未満である。線状ポリアリーレンスルフィドポリマーは、上記に記載の繰り返し単位を含むランダムコポリマー又はブロックコポリマーであってよい。半線状ポリアリーレンスルフィドは、更に、3つ以上の反応性官能基を有する少量の1種類以上のモノマーがポリマー中に導入されている架橋構造又は分岐構造を有していてよい。一例として、半線状ポリアリーレンスルフィドの形成において用いるモノマー成分に、分
岐ポリマーの製造において用いることができる分子あたり2以上のハロゲン置換基を有する一定量のポリハロ芳香族化合物を含ませることができる。かかるモノマーは、式:R’X(式中、それぞれのXは、塩素、臭素、及びヨウ素から選択され、nは3〜6の整数であり、R’は、約4個以下のメチル置換基を有していてよい価数nの多価芳香族基であり、R’中の炭素原子の総数は6〜約16の範囲内である)によって表すことができる。半線状ポリアリーレンスルフィドを形成する際に用いることができる分子あたり2個より多いハロゲンで置換されている幾つかのポリハロ芳香族化合物の例としては、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3−ジクロロ−5−ブロモベンゼン、1,2,4−トリヨードベンゼン、1,2,3,5−テトラブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロ−2,4,6−トリメチルベンゼン、2,2’,4,4’−テトラクロロビフェニル、2,2’,5,5’−テトラヨードビフェニル、2,2’,6,6’−テトラブロモ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、1,2,3,4−テトラクロロナフタレン、1,2,4−トリブロモ−6−メチルナフタレン等、及びこれらの混合物が挙げられる。
[0040]特定の構造に関係なく、ポリアリーレンスルフィドの数平均分子量は、通常は約15,000g/モル以上、幾つかの態様においては約30,000g/モル以上である。幾つかの場合においては、ポリアリーレンスルフィドの形成中に少量の塩素を用いることができる。しかしながら、ポリアリーレンスルフィドはなお、約1000ppm以下、幾つかの態様においては約900ppm以下、幾つかの態様においては約1〜約800ppm、幾つかの態様においては約2〜約700ppmのような低い塩素含量を有する。しかしながら、幾つかの態様においては、ポリアリーレンスルフィドは塩素又は他のハロゲンを概して含まない。
ホウ素含有成核剤及びポリアリーレンスルフィドに加えて、熱可塑性組成物にはその全体的な特性を向上させることを助ける種々の他の異なる成分を含ませることもできる。組成物の機械特性を向上させるために用いることができる他の好適な添加剤は耐衝撃性改良剤である。好適な耐衝撃性改良剤の例としては、例えば、ポリエポキシド、ポリウレタン、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリシロキサン等、並びにこれらの混合物を挙げることができる。1つの特定の態様においては、分子あたり少なくとも2つのオキシラン環を含むポリエポキシド改良剤を用いる。ポリエポキシドは、末端エポキシ基、骨格オキシラン単位、及び/又は懸垂エポキシ基を含む線状又は分岐のホモポリマー又はコポリマー(例えば、ランダム、グラフト、ブロック等)であってよい。かかるポリエポキシドを形成するのに用いるモノマーは変化してよい。例えば、1つの特定の態様においては、ポリエポキシド改良剤は少なくとも1つのエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分を含む。「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル及びメタクリルモノマー、並びにアクリレート及びメタクリレートモノマーのようなその塩又はエステルを包含する。好適なエポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーとしては、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートのような1,2−エポキシ基を含むものを挙げることができるが、これらに限定されない。他の好適なエポキシ官能性モノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルエタクリレート、及びグリシジルイタコネートが挙げられる。
[0041]所望の場合には、所望の溶融粘度を達成するのを助けるために更なるモノマーをポリエポキシド中において用いることもできる。かかるモノマーは変化してよく、例えば、エステルモノマー、(メタ)アクリルモノマー、オレフィンモノマー、アミドモノマー等を挙げることができる。例えば、1つの特定の態様においては、ポリエポキシド改良剤に、2〜20個の炭素原子、好ましくは2〜8個の炭素原子を有するもののような少なくとも1種類の線状又は分岐のα−オレフィンモノマーを含ませる。具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン;3−メチル−1−ブテン;3,3−ジメチル−1−ブテ
ン;1−ペンテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1−ペンテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1−ヘキセン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1−ヘプテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1−オクテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1−ノネン;エチル、メチル、又はジメチル置換1−デセン;1−ドデセン;及びスチレン;が挙げられる。特に望ましいα−オレフィンコモノマーはエチレン及びプロピレンである。本発明の1つの特に望ましい態様においては、ポリエポキシド改良剤は、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマー成分及びα−オレフィンモノマー成分から形成されるコポリマーである。例えば、ポリエポキシド改良剤はポリ(エチレン−co−グリシジルメタクリレート)であってよい。本発明において用いることができる好適なポリエポキシド改良剤の1つの具体例は、ArkemaからLotader(登録商標)AX8840の名称で商業的に
入手できる。Lotader(登録商標)AX8950は、5g/10分のメルトフローレートを有し
、8重量%のグリシジルメタクリレートモノマー含量を有する。
[0042]熱可塑性組成物の機械特性を向上させるために用いることができる更に他の好適な添加剤は有機シランカップリング剤である。カップリング剤は、例えば、ビニルアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、及びこれらの組み合わせのような当該技術において公知の任意のアルコキシシランカップリング剤であってよい。アミノアルコキシシラン化合物は、通常は、式:R−Si−(R(式中、Rは、NHのようなアミノ基;約1〜約10個の炭素原子、又は約2〜約5個の炭素原子のアミノアルキル、例えばアミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチルなど;約2〜約10個の炭素原子、又は約2〜約5個の炭素原子のアルケン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンなど;及び約2〜約10個の炭素原子、又は約2〜約5個の炭素原子のアルキン、例えばエチン、プロピン、ブチンなどからなる群から選択され;Rは、約1〜約10原子、又は約2〜約5個の炭素原子のアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシなどである)を有する。一態様においては、Rは、アミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、エチレン、エチン、プロピレン、及びプロピンからなる群から選択され、Rは、メトキシ基、エトキシ基、及びプロポキシ基からなる群から選択される。他の態様においては、Rは、約2〜約10個の炭素原子のアルケン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレンなど、並びに約2〜約10個の炭素原子のアルキン、例えばエチン、プロピン、ブチンなどからなる群から選択され、Rは、約1〜約10原子のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などである。また、種々のアミノシランの組み合わせを混合物中に含ませることもできる。
[0043]混合物中に含ませることができるアミノシランカップリング剤の幾つかの代表例としては、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルトリメトキシシラン、エチレントリメトキシシラン、エチレントリエトキシシラン、エチントリメトキシシラン、エチントリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン又は3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3−アミノプロピル)テトラメトキシシラン、ビス(3−アミノプロピル)テトラエトキシジシロキサン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。アミノシランはまた、アミノアルコキシシラン、例えばγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ジアリルアミノプロピルトリメ
トキシシラン、及びγ−ジアリルアミノプロピルトリメトキシシランであってもよい。1つの好適なアミノシランは、Degussa、Sigma Chemical Company、及びAldrich Chemical Companyから入手できる3−アミノプロピルトリエトキシシランである。
[0044]また、所望の特性及び/又は色を達成するのを助けるために、熱可塑性組成物中において充填剤を用いることもできる。用いる場合には、かかる無機充填剤は、通常は、熱可塑性組成物の約5重量%〜約60重量%、幾つかの態様においては約10重量%〜約50重量%、幾つかの態様においては約15重量%〜約45重量%を構成する。クレイ鉱物は本発明において用いるのに特に好適な可能性がある。かかるクレイ鉱物の例としては、例えば、タルク(MgSi10(OH))、ハロイサイト(AlSi(OH))、カオリナイト(AlSi(OH))、イライト((K,HO)(Al,Mg,Fe)(Si,Al)10[(OH),(HO)])、モンモリロナイト(Na,Ca)0.33(Al,Mg)Si10(OH)・nHO)、バーミキュライト((MgFe,Al)(Al,Si)10(OH)・4HO)、パリゴルスカイト((Mg,Al)Si10(OH)・4(HO))、パイロフィライト(AlSi10(OH))等、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。クレイ鉱物の代わりか又はそれに加えて、更に他の無機充填剤を用いることもできる。例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、マイカ、珪藻土、珪灰石などのような他の好適なシリケート充填剤を用いることもできる。例えば、マイカは本発明において用いるのに特に好適な鉱物である可能性がある。地質学的存在状態における相当な相違を有する幾つかの化学的に異なるマイカ種が存在するが、全て実質的に同じ結晶構造を有する。本明細書において用いる「マイカ」という用語は、モスコバイト(KAl(AlSi)O10(OH))、バイオタイト(K(Mg,Fe)(AlSi)O10(OH))、フロゴパイト(KMg(AlSi)O10(OH))、レピドライト(K(Li,Al)2〜3(AlSi)O10(OH))、グローコナイト(K,Na)(Al,Mg,Fe)(Si,Al)10(OH))等、並びにこれらの組み合わせのような任意のこれらの種を総称的に包含すると意図される。
[0045]また、熱可塑性組成物中において繊維充填剤を用いることもできる。用いる場合には、かかる繊維充填剤は、通常は、熱可塑性組成物の約5重量%〜約60重量%、幾つかの態様においては約10重量%〜約50重量%、幾つかの態様においては約15重量%〜約45重量%を構成する。繊維充填剤としては、限定なしにポリマー繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維など、又は複数の繊維タイプの組み合わせなどの1以上の繊維タイプを挙げることができる。一態様においては、繊維はガラス短繊維又はガラス繊維粗紡糸(トウ)であってよい。繊維の直径は、用いる特定の繊維によって変化してよく、短繊維形態又は連続形態のいずれかで入手できる。繊維は、例えば、約100μm未満、例えば約50μm未満の直径を有していてよい。例えば、繊維は短繊維又は連続繊維であってよく、約5μm〜約50μm、例えば約5μm〜約15μmの繊維径を有していてよい。
[0046]また、実質的に分解することなくポリ(アリーレンスルフィド)の加工条件(通常は約290℃〜約320℃)に耐えることができる潤滑剤を、熱可塑性組成物中において用いることもできる。かかる潤滑剤の代表例としては、脂肪酸エステル、その塩、エステル、脂肪酸アミド、有機ホスフェートエステル、及びエンジニアリングプラスチック材料の加工において潤滑剤として通常的に用いられているタイプの炭化水素ワックスが挙げられ、これらの混合物が包含される。好適な脂肪酸は、通常は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、モンタン酸、オクタデカン酸、パリナリン酸などのように、約12〜約60個の炭素原子の骨格炭素鎖を有する。好適なエステルとしては、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステル、ワックスエステル、グリセロールエステル、グリコールエステル、及びコンプレックスエステルが挙げられる。脂肪酸アミドとしては、脂肪酸第1級アミド、脂肪酸第2級アミド、メチレン及びエチレンビスアミド、並びにア
ルカノールアミド、例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアラミドなどが挙げられる。ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどのような脂肪酸の金属塩;パラフィンワックス、ポリオレフィン及び酸化ポリオレフィンワックス、並びに微結晶質ワックスなどの炭化水素ワックス;も好適である。特に好適な潤滑剤は、ステアリン酸の酸、塩、又はアミド、例えばペンタエリトリトールテトラステアレート、カルシウムステアレート、又はN,N’−エチレンビスステアラミドである。用いる場合には、1種類又は複数の潤滑剤は、通常は、熱可塑性組成物の約0.05重量%〜約1.5重量%、幾つかの態様においては約0.1重量%〜約0.5重量%を構成する。
[0047]熱可塑性組成物中において用いることができる更に他の添加剤はジスルフィド化合物である。いかなる特定の理論にも縛られることは望まないが、ジスルフィド化合物は、溶融加工中にポリアリーレンスルフィドとのポリマー開裂反応を起こすことができ、これにより組成物の全体的な溶融粘度が更に低下する。用いる場合には、ジスルフィド化合物は、通常は組成物の約0.01重量%〜約3重量%、幾つかの態様においては約0.02重量%〜約1重量%、幾つかの態様においては約0.05〜約0.5重量%を構成する。また、ポリアリーレンスルフィドの量とジスルフィド化合物の量との比は、約1000:1〜約10:1、約500:1〜約20:1、又は約400:1〜約30:1であってよい。好適なジスルフィド化合物は、通常は、次式:
−S−S−R
を有するものである。
[0048]上式中、R及びRは、同一か又は異なっていてよく、独立して1〜約20個の炭素を含む炭化水素基である。例えば、R及びRは、アルキル、シクロアルキル、アリール、又は複素環式基であってよい。幾つかの態様においては、R及びRは、一般に、フェニル、ナフチル、エチル、メチル、プロピル等のような非反応性官能基である。かかる化合物の例としては、ジフェニルジスルフィド、ナフチルジスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、及びジプロピルジスルフィドが挙げられる。R及びRはまた、ジスルフィド化合物の1つ又は複数の末端における反応性官能基を含んでいてもよい。例えば、R及びRの少なくとも1つは、末端カルボキシル基、ヒドロキシル基、置換又は非置換アミノ基、ニトロ基などを含んでいてよい。化合物の例としては、限定なしに、2,2’−ジアミノジフェニルジスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルジスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ジチオサリチル酸、ジチオグリコール酸、α,α’−ジチオジ乳酸、β,β’−ジチオジ乳酸、3,3’−ジチオジピリジン、4,4’−ジチオモルホリン、2,2’−ジチオビス(ベンゾチアゾール)、2,2’−ジチオビス(ベンズイミダゾール)、2,2’−ジチオビス(ベンゾオキサゾール)、及び2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールを挙げることができる。
[0049]組成物中に含ませることができる更に他の添加剤としては、例えば、抗菌剤、顔料、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、流動促進剤、固体溶媒、並びに特性及び加工性を向上させるために加える他の材料を挙げることができる。
[0050]ホウ素含有成核剤、ポリアリーレンスルフィド、及び他の随意的な添加剤を混合する方法は、当該技術において公知なように変化させることができる。例えば、材料は、材料を分散してブレンドする溶融加工装置に同時か又は順々に供給することができる。バッチ及び/又は連続溶融加工技術を用いることができる。例えば、ミキサー/ニーダー、バンバリーミキサー、ファレル連続ミキサー、一軸押出機、二軸押出機、ロールミル等を用いて、材料をブレンド及び溶融加工することができる。1つの特に好適な溶融加工装置は、同時回転二軸押出機(例えば、Leistritz同時回転完全噛み合い二軸押出機)である
。かかる押出機には供給及び排出口を含ませることができ、高強度分配分散混合を与えることができる。例えば、ポリアリーレンスルフィド及び成核剤を、二軸押出機の同一か又は異なる供給口に供給し、溶融ブレンドして実質的に均一な溶融混合物を形成することができる。溶融ブレンドは、高剪断/加圧及び加熱下で行って十分な分散を確保することができる。例えば、溶融加工は、約50℃〜約500℃、幾つかの態様においては約100℃〜約250℃の温度で行うことができる。更に、溶融加工中のみかけ剪断速度は、約100秒−1〜約10,000秒−1、幾つかの態様においては約500秒−1〜約1,500秒−1の範囲にすることができる。勿論、所望の均一度を達成するために、溶融加工中の滞留時間(これは処理速度に逆比例する)のような他の変数を制御することもできる。
[0051]溶融ブレンドに加えて、成核剤とポリアリーレンスルフィドを混合するために他の技術を用いることもできる。例えば、成核剤は、ポリアリーレンスルフィドの重合の1以上の段階中に、例えば重合装置に供給することができる。これは任意の時点で導入することができるが、通常は、成核剤は重合を開始する前に、通常はポリアリーレンスルフィドに関する前駆体モノマーと共に供給することが望ましい。反応混合物は、一般に重合反応容器内で昇温温度に加熱して反応物質の溶融重合を開始させる。
[0052]それらを一緒に混合する方法に関係なく、熱可塑性組成物の結晶化度及び結晶化速度を、ホウ素含有成核剤によって大きく向上させることができる。例えば、熱可塑性組成物(成形前)の結晶化ポテンシャルは、約52%以上、幾つかの態様においては約55%以上、幾つかの態様においては約58%以上、幾つかの態様においては約60%〜約95%にすることができる。結晶化ポテンシャルは、融解潜熱(ΔH)から結晶化潜熱(ΔH)を減じ、この差を融解潜熱で割り、次に100をかけることによって求めることができる。融解潜熱(ΔH)及び結晶化潜熱(ΔH)は、当該技術において周知なように、ISO標準規格10350にしたがって示差走査熱量測定法(DSC)によって求めることができる。結晶化潜熱は、例えば約15ジュール/グラム(J/g)以下、幾つかの態様においては約12J/g以下、幾つかの態様においては約1〜約10J/gにすることができる。また、融解潜熱は、約15ジュール/グラム(J/g)以上、幾つかの態様においては約18J/g以上、幾つかの態様においては約20〜約28J/gにすることができる。
[0053]更に、本熱可塑性組成物はまた、成核剤が存在しない場合に起こるであろう温度よりも低い温度で結晶化させることができる。例えば、本熱可塑性組成物の結晶化温度(成形前)は、約250℃以下、幾つかの態様においては約100℃〜約245℃、幾つかの態様においては約150℃〜約240℃にすることができる。また、本熱可塑性組成物の溶融温度は、約250℃〜320℃、幾つかの態様においては約265℃〜約300℃の範囲にすることができる。溶融温度及び結晶化温度は、当該技術において周知なようにISO試験No.11357にしたがって示差走査熱量測定法を用いて求めることができる。かかる溶融温度においても、溶融温度に対する荷重撓み温度(DTUL)(短時間耐熱性の指標)の比は、なお比較的高く維持することができる。例えば、この比は、約0.65〜約1.00、幾つかの態様においては約0.70〜約0.99、幾つかの態様においては約0.80〜約0.98の範囲にすることができる。具体的なDTUL値は、例えば、約230℃〜約300℃、幾つかの態様においては約240℃〜約290℃、幾つかの態様においては約250℃〜約280℃の範囲にすることができる。かかる高いDTUL値は、とりわけ、小さい寸法公差を有する部品の製造中にしばしば用いられる高速プロセスを使用することを可能にすることができる。
[0054]本発明者らはまた、本熱可塑性組成物は比較的低い溶融粘度を有することができ、これにより部品の製造中において金型キャビティ中にそれを容易に流入させることがで
きることも見出した。例えば、本組成物は、316℃の温度及び1200秒−1の剪断速度において毛細管流量計によって測定して約20キロポイズ以下、幾つかの態様においては約15キロポイズ以下、幾つかの態様においては約0.1〜約10キロポイズの溶融粘度を有することができる。とりわけ、これらの溶融特性により、組成物を、過量のフラッシュを生成させることなく非常に小さい寸法を有する部品に容易に射出成形することを可能にすることができる。
[0055]熱可塑性組成物から物品を形成するために、限定なしに押出、射出成形、ブロー成形、熱成形、発泡、圧縮成形、熱間鍛造、繊維紡糸などの従来の成形プロセスを用いることができる。形成することができる成形物品としては、例えば自動車工学熱可塑性材料アセンブリ並びに冷却塔ポンプ、水ヒーターなどの部品のような工業用途のための構造及び非構造成形部品を挙げることができる。例えば、熱成形シート、発泡基材、射出成形又はブロー成形部品、繊維などを本熱可塑性組成物から形成することができる。
[0056]一態様によれば、本熱可塑性組成物は射出成形法にしたがって加工することができる。射出成形法は、熱可塑性組成物を金型キャビティ中に射出し、そこで所望の排出温度に達するまで冷却することを含む。上記で議論したように、本熱可塑性組成物のホウ素含有成核剤の独特の特性のために、成形サイクルの冷却時間及び/又は金型温度を実質的に減少させることを可能にすることができる。冷却サイクルの特性を向上させることに加えて、成形操作の他の様相を向上させることもできる。例えば、当該技術において公知なように、射出は2つの主要段階、即ち射出段階及び保持段階で行うことができる。射出段階中においては、金型キャビティを溶融した熱可塑性組成物で完全に満たす。保持段階は射出段階が完了した後に開始し、保持圧を制御して更なる材料をキャビティ中に充填して、冷却中に起こる体積収縮を補う。ショットが形成されたら、それを次に冷却することができる。上記で議論したように冷却時間を減少させることに加えて、本熱可塑性組成物の向上した特性によって、保持時間(更なる材料をキャビティ中に充填するのに必要な時間及びこの材料を特定の圧力において保持する時間を含む)を減少させることを可能にすることもできる。冷却が完了したら、成形サイクルを終了し、この時点で金型を開放し、例えば金型内の排出ピンを用いて部品を排出する。
[0057]本発明においては、一般に任意の好適な射出成形装置を用いることができる。例えば図1を参照すると、本発明において用いることができる射出成形装置又は用具10の一態様が示されている。この態様においては、装置10は、第1の金型基部12及び第2の金型基部14を含み、これらは一緒になって物品又は部品を画定する金型キャビティ16を画定する。成形装置10はまた、第1の金型半部分12の外側の外表面20からスプルー22を通って金型キャビティ16に伸長している樹脂流路も含む。樹脂流路にはランナー及びゲートも含ませることができ、これらは両方とも単純にする目的のために示していない。熱可塑性組成物は、種々の技術を用いて樹脂流路に供給することができる。例えば、熱可塑性組成物は、回転スクリュー(図示せず)を含む押出機バレルに取り付けられている供給ホッパーに(例えばペレットの形態で)供給することができる。スクリューが回転するにつれてペレットは前方へ移動して圧力及び摩擦を受けて、これによって熱が発生してペレットが溶融する。また、押出機バレルと連通している加熱媒体によって更なる熱を組成物に与えることもできる。また、装置10の閉止位置において金型キャビティ16を画定する第2の金型半部分14内に滑動可能に固定されている1以上の排出ピン24を用いることもできる。排出ピン24は周知の形態で操作して、成形装置10の開放位置においてキャビティ16から成形部品を取り出すことができる。
[0058]また、冷却機構を与えて金型キャビティ内の樹脂を固化させることもできる。例えば図1においては、金型基部12及び14はそれぞれ1以上の冷却ライン18を含んでおり、これを通して冷却媒体を流して、溶融した材料を固化させるために金型基部の表面
に所望の金型温度を与える。
[0059]本発明において用いるホウ素含有成核剤の結果として、本熱可塑性組成物は広範囲の異なる部分を有する部品に容易に成形することができることが見出された。この部品は、約25ミリメートル以下、幾つかの態様においては約0.5〜約15ミリメートル、幾つかの態様においては約1ミリメートル〜約10ミリメートルの平均厚さを有する基材の形態であってよい。或いは、この部品は単純に上述の平均厚さ範囲内の幾つかの造作(例えば壁部、突起部等)を有していてよい。
[0060]特定の寸法に関係なく、本発明者らは、比較的短い冷却時間を用いる場合であっても優れた機械特性を達成することができることを見出した。例えば、射出成形部品は、約100〜約500MPa、幾つかの態様においては約120〜約400MPa、幾つかの態様においては約190〜約350MPaの引張り強さを示すことができる。この部品はまた、約0.5%以上、幾つかの態様においては約0.6%〜約10%、幾つかの態様においては約0.8%〜約3.5%の引張破壊歪み;及び/又は約5,000MPa〜約25,000MPa、幾つかの態様においては約8,000MPa〜約22,000MPa、幾つかの態様においては約10,000MPa〜約20,000MPaの引張弾性率;も示すことができる。引張特性は、ISO試験No.527(ASTM−D638と技術的に同等である)にしたがって23℃において測定することができる。この部品はまた、約20〜約500MPa、幾つかの態様においては約50〜約400MPa、幾つかの態様においては約100〜約350MPaの曲げ強さ;約0.5%以上、幾つかの態様においては約0.6%〜約10%、幾つかの態様においては約0.8%〜約3.5%の曲げ破壊歪み;及び/又は約5,000MPa〜約25,000MPa、幾つかの態様においては約8,000MPa〜約22,000MPa、幾つかの態様においては約10,000MPa〜約20,000MPaの曲げ弾性率;も示すことができる。曲げ特性は、ISO試験No.178(ASTM−D790と技術的に同等である)にしたがって23℃において測定することができる。この部品はまた、ISO試験No.180(ASTM−D256方法Aと技術的に同等である)にしたがって23℃において測定して約4kJ/mより大きく、幾つかの態様においては約5〜約40kJ/m、幾つかの態様においては約6〜約30kJ/mのアイゾッドノッチ付き衝撃強さのような高い衝撃強さも有することができる。
[0061]得られる成形部品は広範囲の異なる部品において用いることができる。本発明の成形部品を含ませることができる1つの特定の部品は、液体ポンプ(例えば水ポンプ)である。液体ポンプは、ダイレクトリフトポンプ、容積式ポンプ(例えば、回転式、往復式、又はリニア式)、ターボ形ポンプ(例えば遠心式)、重力ポンプ等であってよい。ターボ形ポンプ(回転するインペラー、プロペラ、又はローターによってポンプ移送されている流体にエネルギーを連続的に与える)が特に好適である。例えば、遠心式ポンプにおいては、流体は、回転軸に沿ってか又はその近傍でポンプインペラーに導入して、インペラーによって加速して、ディフューザー又は渦形室中に放射状に外へ向かって流動させ、それから下流の配管中に排出する。このようなポンプは、自動車用途においてエンジンを通して冷却液を移動させるためにしばしば用いられる。自動車エンジンに付随する高い温度のために、本熱可塑性組成物はこのような自動車冷却システムの遠心式ポンプにおいて用いるのに特によく適している。例えば、幾つかの態様においては、水インペラーの全部又は一部(例えばブレード)を、本熱可塑性組成物から形成することができる。遠心式ポンプはまた、一般にポンプの幾つかの部品を収容して、それらを熱、腐食等から保護するハウジングも含む。幾つかの態様においては、ハウジングの一部又は全部を本熱可塑性組成物から形成することができる。
[0062]図2を参照すると、本発明の熱可塑性組成物を用いることができる遠心式ポンプ
の1つの特定の例が示されている。示されている態様においては、ポンプは、ベアリング202を介してハウジング203上に支持されている回転シャフト201を含む。本熱可塑性組成物を含ませることができるポンプインペラー204は、回転シャフト201の端部に堅く固定されている。プーリーハブ205も、回転シャフト201の基端部上に堅く固定されている。ベアリング202とポンプインペラー204との間に、ハウジング203の側部上に固定されている固定部材206a、及び回転シャフト201と固定して噛合している回転部材206bによって構成されているメカニカルシール206が形成されている。ポンプにはまた、本熱可塑性組成物を含ませることができるハウジング207を含ませることもできる。ハウジング207は、渦形室208がその間に画定されるように、ポンプハウジング203に(例えば締め付けボルトによって)固定することができる。示してはいないが、吸引部分及び排出口をハウジング207内に与えることもできる。
[0063]勿論、本熱可塑性組成物は水ポンプ又はその幾つかの部分の形成に限定されず、全ての形態の部品、例えばパイプ及びパイプの部分、フランジ、バルブ、バルブシート、シール材、センサーハウジング、サーモスタット、サーモスタットハウジング、誘導弁、ライニング、プロペラなどをはじめとする流体取扱いシステム中に含ませることができる部品の形成において用いることができる。本組成物はまた、高温の流体に遭遇する消費者製品、例えば加熱飲料容器のような流体環境において機能する部品の形成において用いることもできる。更には、本組成物は電子部品のような全く異なる環境において用いることができる。成形部品を用いることができる電子部品の例としては、例えば、携帯電話、ラップトップコンピューター、小型ポータブルコンピューター(例えば超軽量型コンピューター、ネットブックコンピューター、及びタブレットコンピューター)、腕時計型機器、ペンダント型機器、ヘッドホン又はイヤホン型機器、無線通信機能を有するメディアプレイヤー、携帯型コンピューター(時には携帯情報端末とも呼ばれる)、リモートコントローラー、全地球測位システム(GPS)機器、携帯ゲーム機器、バッテリーカバー、スピーカー、カメラモジュール、集積回路(例えばSIMカード)等が挙げられる。
[0064]しかしながら、無線電子機器が特に好適である。好適な無線電子機器の例としては、デスクトップコンピューターまたは他のコンピューター装置、ラップトップコンピューター又は時には「超軽量型」と呼ばれるタイプの小型のポータブルコンピューターのようなポータブル電子機器を挙げることができる。1つの好適な配置においては、ポータブル電子機器は携帯型の電子機器であってよい。ポータブル携帯型電子機器の例としては、携帯電話、無線通信機能を有するメディアプレイヤー、携帯型コンピューター(時には携帯情報端末とも呼ばれる)、リモートコントローラー、全地球測位システム(GPS)機器、及び携帯ゲーム機器を挙げることができる。この機器はまた、複数の従来の機器の機能を合わせた複合型機器であってもよい。複合型機器の例としては、メディアプレイヤーの機能を含む携帯電話、無線通信機能を含むゲーム機器、ゲーム及びeメール機能を含む携帯電話、並びに、eメールを受信し、携帯電話の呼び出しをサポートし、音楽プレイヤーの機能を有し、ウエブ閲覧をサポートする携帯機器が挙げられる。
[0065]図3〜4を参照すると、電子機器100の1つの特定の態様をポータブルコンピューターとして示す。電子機器100は、液晶ダイオード(LCD)ディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は任意の他の好適なディスプレイのようなディスプレイ部材103を含む。示されている態様においては、機器はラップトップコンピューターの形態であり、したがってディスプレイ部材103は基部部材106に回転可能に接続されている。しかしながら、基部部材106は随意的であり、機器がタブレットポータブルコンピューターの形態である場合のような他の態様においては取り除くことができることを理解すべきである。しかしながら、図3〜4に示される態様においては、ディスプレイ部材103及び基部部材106は、それぞれ電子機器100の1以上の部品を保護及び/又は支持するためのハウジング(それぞれ86及び8
8)を含む。ハウジング86は例えばディスプレイスクリーン120を支持することができ、基部部材106には、種々のユーザーインターフェース部品のための空洞部及びインターフェース(例えばキーボード、マウス、及び他の周辺機器への接続手段)を含ませることができる。本発明の熱可塑性組成物は一般に電子機器100の任意の部分を形成するために、例えば冷却ファンを形成するために用いることができるが、通常はハウジング86及び/又は88の全部又は一部を形成するために用いる。例えば、機器がタブレットポータブルコンピューターである場合には、ハウジング88は存在させなくてよく、本熱可塑性組成物はハウジング86の全部又は一部を形成するために用いることができる。しかしながら、本発明によって達成される独特の特性のために、1つ又は複数のハウジング或いは1つ又は複数のハウジングの造作は、上述の範囲内のような非常に小さい壁厚さを有するように成形することができる。
[0066]明示してはいないが、機器100にはまた、記憶装置、処理回路、及び入力−出力コンポーネントのような当該技術において公知の回路を含ませることもできる。回路内の無線送受信機回路を用いて、高周波(RF)信号を送信及び受信することができる。同軸通信路及びマイクロストリップ通信路のような通信路を用いて、送受信機回路とアンテナ構造体との間で高周波信号を伝達することができる。通信路を用いて、アンテナ構造体と回路との間で信号を伝達することができる。通信路は、例えばRF送受信機(時にはラジオと呼ばれる)と多周波帯アンテナとの間を接続する同軸ケーブルであってよい。
[0067]本発明は以下の実施例を参照してより良好に理解することができる。
試験法:
[0068]溶融粘度:溶融粘度は走査剪断速度粘度として求め、ISO試験No.11443(ASTM−D3835と技術的に同等である)にしたがって1200秒−1の剪断速度及び約316℃の温度において、Dynisco 7001毛細管流量計を用いて測定した。流量計オリフィス(ダイ)は、1mmの直径、20mmの長さ、20.1のL/D比、及び180°の入口角を有していた。バレルの直径は9.55mm±0.005mmであり、ロッドの長さは233.4mmであった。
[0069]再結晶温度及び再結晶エネルギーは示差走査熱量測定法によって求めた。
実施例1:
[0070]成核剤として以下のような種々の窒化ホウ素材料を用いた。
BN−1:Denki Kagaku Kogyoから入手できるSP-2グレードの窒化ホウ素粉末;
BN−2:Momentive Performance Materials, Inc.から入手できるNX-1グレードの窒
化ホウ素粉末;
BN−3:Saint-Gobain Ceramicsから入手できるPCPS 3005グレードのCombat窒化ホウ素粉末;
BN−4:Momentive Performance Materials, Inc.から入手できるPT110グレードのPolarTherm窒化ホウ素粉末;
BN−5:Momentive Performance Materials, Inc.から入手できるPT180グレードのPolarTherm窒化ホウ素粉末;
BN−6:Momentive Performance Materials, Inc.から入手できるHCVグレードの窒化ホウ素粉末;
BN−7:Momentive Performance Materials, Inc.から入手できるAC6111グレードの
窒化ホウ素粉末;
[0071]窒化ホウ素材料は、下表に与える供給業者によって報告されている物理特性を有
していた。
Figure 0006490126
[0072]窒化ホウ素成核剤の1つ、及び下記に示す更なる成分:
ポリフェニレンスルフィド:Fortron(登録商標)0205 PPS;
ガラス繊維:OCVから入手できる直径10μmのガラス繊維910a10c(登録商標);
アミノシラン:3−アミノプロピルトリエトキシシラン:Shin-Etsu Siliconeから入手できるKBE-903;
潤滑剤:Lonza Group Ltd.から入手できるGlycolube(登録商標)P。;
を含む熱可塑性組成物を形成した。
[0073]25mmの直径を有するWerner Pfleiderer ZSK-25同時回転噛み合い二軸押出機内で成分を混合して下表に示す試料を形成した。
Figure 0006490126
[0074]試料から形成されたペレットの特性を求め、その結果を下表に示す。
Figure 0006490126
[0075]上記に示すように、比表面積に対する粒径の最も小さい比を有する窒化ホウ素成核剤を加えると(試料14)再結晶温度はより高くなり、一方、対照試料1及び10並びに比較試料7は遙かにより低い再結晶温度を有する。
[0076]本発明のこれら及び他の修正及び変更は、本発明の精神及び範囲から逸脱するこ
となく当業者によって実施することができる。更に、種々の態様の幾つかの形態は全体的
又は部分的に交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、上
記の記載は例示のみの目的であり、特許請求の範囲において更に記載される発明を限定す
ることは意図しないことを認識するであろう。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
熱可塑性組成物であって、ホウ素含有成核剤及びポリアリーレンスルフィドを含み、該
ホウ素含有成核剤は約4より大きい黒鉛化指数を有し、該成核剤は平均粒径及び比表面積
を有し、該比表面積に対する該平均粒径の比は約0.001〜約1マイクロメートル/m
/gの間であり、該熱可塑性組成物は示差走査熱量測定法にしたがって測定して約23
1℃より高い再結晶温度を有する熱可塑性組成物。
[請求項2]
請求項1に記載の熱可塑性組成物であって、該ホウ素含有成核剤の該比表面積に対する
該平均粒径の比が約0.01〜約0.8マイクロメートル/m/gの間である熱可塑性
組成物。
[請求項3]
請求項1又は2に記載の熱可塑性組成物であって、該ホウ素含有成核剤の該平均粒径が
約10マイクロメートル未満である熱可塑性組成物。
[請求項4]
請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性組成物であって、該ホウ素含有成核剤の該比
表面積が約15m/gより大きい熱可塑性組成物。
[請求項5]
請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性組成物であって、該ホウ素含有成核剤の該黒
鉛化指数が約5より大きい熱可塑性組成物。
[請求項6]
請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性組成物であって、該ホウ素含有成核剤が窒化
ホウ素である熱可塑性組成物。
[請求項7]
請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性組成物であって、該ホウ素含有成核剤が六方
晶結晶形態である熱可塑性組成物。
[請求項8]
請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性組成物であって、該ポリアリーレンスルフィ
ドが該組成物の約30重量%〜約95重量%を構成し、該ホウ素含有成核剤が該組成物の
約0.01重量%〜約6重量%を構成する熱可塑性組成物。
[請求項9]
請求項1〜8のいずれかに記載の熱可塑性組成物であって、該ポリアリーレンスルフィ
ドがポリフェニレンスルフィドである熱可塑性組成物。
[請求項10]
請求項1〜9のいずれかに記載の熱可塑性組成物であって、該組成物が、耐衝撃性改良
剤、無機充填剤、繊維充填剤、有機シランカップリング剤、潤滑剤、ジスルフィド、又は
これらの組み合わせを更に含む熱可塑性組成物。
[請求項11]
請求項1〜10のいずれかに記載の熱可塑性組成物であって、該組成物が示差走査熱量
測定法にしたがって測定して約24キロジュール/gより大きい再結晶エネルギーを有す
る熱可塑性組成物。
[請求項12]
請求項1〜11のいずれかに記載の熱可塑性組成物を含む成形部品。
[請求項13]
請求項12又は13に記載の成形部品であって、射出成形されている成形部品。
[請求項14]
請求項12に記載の成形部品を含む液体ポンプ。
[請求項15]
請求項14に記載の液体ポンプであって、該ポンプが、ダイレクトリフトポンプ、容積
式ポンプ、ターボ形ポンプ、又は重力ポンプである液体ポンプ。
[請求項16]
請求項14に記載の液体ポンプであって、該ポンプが自動車エンジンを通して冷却液を
循環させるための遠心ポンプである液体ポンプ。
[請求項17]
請求項12に記載の成形部品を含む電子部品。
[請求項18]
請求項17に記載の電子部品であって、該部品が、携帯電話、ラップトップコンピュー
ター、小型ポータブルコンピューター、腕時計型機器、ペンダント型機器、ヘッドホン又
はイヤホン型機器、無線通信機能を有するメディアプレイヤー、携帯型コンピューター、
リモートコントローラー、全地球測位システム機器、携帯ゲーム機器、バッテリーカバー
、スピーカー、カメラモジュール、又は集積回路である電子部品。
[請求項19]
熱可塑性組成物の成形方法であって、ポリアリーレンスルフィド及びホウ素含有成核剤
を含み、成核剤は約4より大きい黒鉛化指数を有し、成核剤は平均粒径及び比表面積を有
し、比表面積に対する平均粒径の比は約0.001〜約1の間であり、熱可塑性組成物は
示差走査熱量測定法にしたがって測定して約231℃より高い再結晶温度を有する熱可塑
性組成物を成形し;
熱可塑性組成物を冷却サイクルにかける;
ことを含む方法。
[請求項20]
請求項19に記載の方法であって、該熱可塑性組成物を成形する工程が熱可塑性組成物
を金型キャビティ中に射出することを含む方法。
[請求項21]
請求項20に記載の方法であって、金型温度が約50℃〜約120℃である方法。
[請求項22]
請求項19に記載の方法であって、該熱可塑性組成物を成形する工程中に形成されるフ
ラッシュが約0.17ミリメートル以下である方法。
[請求項23]
請求項19に記載の方法であって、該ポリアリーレンスルフィドをホウ素含有成核剤と
混合することを更に含む方法。
[請求項24]
請求項19に記載の方法であって、該冷却サイクルの全時間が約1〜約60秒間である
方法。
[請求項25]
請求項19に記載の方法であって、該冷却サイクル中に冷却媒体として水を用いる方法

Claims (17)

  1. 熱可塑性組成物であって、ホウ素含有成核剤及びポリアリーレンスルフィドを含み、該
    ホウ素含有成核剤はより大きい黒鉛化指数を有し、該成核剤は1〜9マイクロメートルの平均粒径を有し、該熱可塑性組成物は示差走査熱量測定法にしたがって測定して231℃より高い再結晶温度と25キロジュール/gより大きい再結晶エネルギー有し、当該成核剤は、当該組成物の0.05重量%〜2重量%を構成し、当該組成物は酸化マグネシウム粉末を含まない、前記熱可塑性組成物。
  2. 請求項1に記載の熱可塑性組成物であって、該ホウ素含有成核剤の比表面積に対する該平均粒径の比が0.01〜0.8マイクロメートル/m/gの間である、前記熱可塑性組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の熱可塑性組成物であって、該ホウ素含有成核剤の該比表面積が15/gより大きい、前記熱可塑性組成物。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性組成物であって、該ホウ素含有成核剤の該黒
    鉛化指数がより大きい、前記熱可塑性組成物。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性組成物であって、該ホウ素含有成核剤が窒化
    ホウ素である、前記熱可塑性組成物。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性組成物であって、該ホウ素含有成核剤が六方
    晶結晶形態である、前記熱可塑性組成物。
  7. 請求項1、及び3〜6のいずれかに記載の熱可塑性組成物であって、該ポリアリーレンスルフィドが該組成物の30重量%〜95重量%を構成する、前記熱可塑性組成物。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性組成物であって、該ポリアリーレンスルフィ
    ドがポリフェニレンスルフィドである、前記熱可塑性組成物。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性組成物であって、該組成物が、耐衝撃性改良
    剤、無機充填剤、繊維充填剤、有機シランカップリング剤、潤滑剤、ジスルフィド、又は
    これらの組み合わせを更に含む、前記熱可塑性組成物。
  10. 請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性組成物を含む成形部品。
  11. 請求項10に記載の成形部品を含む液体ポンプ。
  12. 請求項10に記載の成形部品を含む電子部品。
  13. 熱可塑性組成物の成形方法であって、
    請求項1〜9のいずれかに記載の熱可塑性組成物を成形し;そして
    当該熱可塑性組成物を冷却サイクルにかける;
    ことを含む方法。
  14. 請求項13に記載の方法であって、該熱可塑性組成物を成形する工程が熱可塑性組成物
    を金型キャビティ中に射出することを含む方法。
  15. 請求項13に記載の方法であって、該熱可塑性組成物を成形する工程中に形成されるフ
    ラッシュが0.17ミリメートル以下である方法。
  16. 請求項1に記載の熱可塑性組成物であって、さらに、ガラス繊維を当該組成物の15〜50重量%の量で含む、前記組成物。
  17. 請求項1に記載の熱可塑性組成物であって、前記ホウ素含有成核剤の比表面積に対する平均粒径の比は0.001〜1マイクロメートル/m /gの間である、前記熱可塑性組成物。
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