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JP5975755B2 - プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法 - Google Patents

プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、真空容器内の処理室内で形成したプラズマを用いてこの処理室内で半導体ウエハ等の基板状の試料を処理するプラズマ処理装置またはプラズマ処理方法に関する。
半導体ウエハなどの試料を試料台に載せて、その上部に発生させたプラズマにより試料に処理を行うプラズマ処理装置であって、例えば、プラズマと試料との間の化学反応によって試料表面の対象膜を除去したり、試料表面に膜を堆積させたりしている。前者をエッチング処理、後者をCVD(Chemical Vapor Deposition)という。このようなプラズマ処理では、化学的に活性なプラズマを用いて、イオンや活性ガス種と試料との間の化学反応により処理が進行している。ここで、前記化学反応が起こるかどうか、あるいは、化学反応によって生成された反応生成物が気体となって試料表面から脱離・放出されるか(エッチング)、あるいは、前記反応生成物が固体となって試料表面に堆積するか(CVD)は、前記試料の温度に大きく影響される。
例えば反応生成物の蒸気圧が低い材料の試料をエッチングする場合は、反応生成物が気体となって試料表面から脱離・放出するためには、プラズマ処理室の圧力を低くするか、試料温度を高くする必要がある。実際にはプラズマ処理室の圧力はプラズマ雰囲気を安定的に維持するためにある程度の圧力が必要(≧0.1Pa程度)であり、試料温度を十分に高くする必要がある。
このように、目的のプロセスに合わせて試料温度を制御する必要がある。そこで、前記試料台温度を制御することで試料温度を所望の温度に制御する方法を採っている。このような試料台の温度を調節する構成として、従来より、試料台内部に温度制御された熱交換液体を流したり、試料台内部にヒータを内蔵させて加熱したりすることが行われている。
一方、試料の温度は試料台との間で熱伝達がされることによって調節される。このため試料と試料台の試料載置面の上面との間の熱伝達を効率よく行うために、試料と載置面とを静電吸着力等により吸着させて、かつ載置面との間にできる隙間空間にHeガスなどの熱伝達用ガスを供給することが一般的に行われている。さらに、このような試料の温度の調節は熱伝達の効率が大きな影響を与えるため、熱伝達を向上させるための試料を載置面上に保持する静電吸着の条件や吸着させる領域について、従来から考慮されてきた。
このような従来の技術としては、特開平09−167794号公報(特許文献1)のものが知られている。この従来技術では、ウエハを試料台上で双極型のチャック電極複数で保持した状態で熱伝達用のガスを供給してウエハの温度を調節した後、ウエハを複数のチャック電極を単極型として動作させた状態で試料台上に吸着させてウエハの処理を行うものが開示されている。
特開平09−167794号公報
一般的に、プラズマ処理前の半導体ウエハ等の基板状の試料は常温であり、処理前の試料は所定の温度にされた前記試料台の上に載置された後に、試料台の上に吸着された状態で試料台と熱伝達することで温度が調節される。例えば、試料温度を250℃〜300℃くらいの高温にしてプラズマ処理を行う場合は、前記試料台を常時高温に制御・維持して、試料は、高温に温度制御された前記試料台の上に載置された後に、静電吸着力によって試料台に吸着され、前記隙間空間に充満した前記熱伝導ガスを熱伝達媒体として加熱される。ウエハ温度がプラズマ処理条件に適した温度になったのち、プラズマ処理が開始される。
このような場合には、試料は前記試料台に吸着された状態で熱膨張するため、試料裏面と試料台表面が摩耗して、微小異物が発生したり、前記試料台表面の表面粗さが変化することで試料と試料台との間の接触熱伝達効率が変化して試料温度の制御性が低下したりすることについて、上記従来技術では考慮されていなかった。
本発明の目的は、微小異物の発生や、試料台表面の摩耗を抑制し、生産性の高いプラズマ処理装置またはプラズマ処理方法を提供することにある。
上記目的は、真空容器内部に配置され減圧された内側でプラズマが形成される処理室と、この処理室内の下部に配置されその上面に前記プラズマを用いた処理の対象の試料が載置される試料台と、この試料台上部の前記試料がその上に載せられる載置面を構成する誘電体製の誘電体膜と、この誘電体膜の内部に配置され前記試料をこの誘電体膜上に吸着して保持するための電力が供給される複数の電極とを備え、前記試料が前記試料台上に載置された状態で前記複数の電極のうちの少なくとも1つに電力を供給して前記試料の中心側の一部分を吸着して所定の温度になるまで前記試料の温度を加熱した後前記複数の電極のうちの前記1つの電極の外周側でこれを囲んで配置された他の電極に電力を供給してこの試料を広い範囲で吸着した後に前記プラズマを用いてこの試料の処理を開始するプラズマ処理装置により達成される。
また、真空容器内部に配置された処理室内の試料台の載置面上に処理対象の試料を配置して、減圧された前記処理室内側でプラズマを形成して前記試料を処理するプラズマ処理方法であって、前記試料の処理の開始前に前記載置面の中心側の領域に配置された静電吸着電極上の前記載置面上に前記試料を吸着して前記試料を所定の温度まで加熱後、前記載置面の中央側の領域の外周側でこれを囲む領域に配置された静電吸着電極の上の前記載置面上に前記試料を静電吸着して前記試料の処理を実施するプラズマ処理方法により達成される。
本発明の実施例に係るプラズマ処理装置を備えた真空処理装置の構成の概略を示す図である。 図1に示す実施例に係るプラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。 図2に示す実施例に係るプラズマ処理装置の試料台の構成を拡大して模式的に示す縦断面図である。 従来技術に係るプラズマ処理装置の時間の変化に伴う動作の流れを示すタイムチャートである。 図2に示す実施例に係るプラズマ処理装置の時間の変化に伴う動作の流れを示すタイムチャートである。 図2に示す実施例に係るプラズマ処理装置の試料と試料台の接触部分を拡大して模式的に示す縦断面図である。 図2に示す実施例の変形例に係るプラズマ処理装置の時間の変化に伴う動作の流れを示すタイムチャートである。 図2に示す実施例の別の変形例に係るプラズマ処理装置の時間の変化に伴う動作の流れを示すタイムチャートである。 図2に示す実施例の変形例に係るプラズマ処理装置の試料台の構成を模式的に示す縦断面図である。 図2に示す実施例の別の変形例に係るプラズマ処理装置の試料台の構成を模式的に示す縦断面図である。 図2に示す実施例の別の変形例に係るプラズマ処理装置の試料台の構成を模式的に示す縦断面図である。 図11に示す変形例に係る試料台の構成を模式的に示す縦断面図である。
本発明の実施の形態を、図面を用いて以下に説明する。
本発明の実施例を、図1乃至図8を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例に係るプラズマ処理装置を備えた真空処理装置の構成の概略を示す図である。図1(a)は、真空処理装置の全体の構成を示す上面図であり、図1(b)は同じく斜視図である。
本実施例に係る真空処理装置は、その前後の方向(図上左右方向であって右側が前側に相当する)について大気ブロック101と処理ブロック102に別れている。真空処理装置の前方側であって複数枚の半導体ウエハ等の処理対象の基板状の試料を収納したカセットが搬送される通路に面した大気ブロック101は、その内部で大気圧下でカセットから搬出する或いはカセットに試料を収納する、さらには搬出した試料の位置決めする等の動作を行う部分である。また、真空処理装置の後方側の部分であって大気ブロック101の後方に配置されてこれと連結された処理ブロック102は、大気圧から減圧された圧力下でウエハ等の試料を搬送し、処理等を行う部分であり、その大気ブロック101と連結された箇所において試料を内部に載置した状態で圧力を上下させる部分を含んでいる。
大気ブロック101は、その内部の空間に試料をアーム上に保持して搬送する搬送ロボットを備えた筐体106を有し、この筐体106の前方側には処理用又はクリーニング用の試料の複数枚が内部に収納されているカセットがその上面に接地されるカセット台107複数が筐体106の前面(前方の通路)に沿って並列に配置されている。
処理ブロック102は所定の値まで減圧して試料を処理する処理ユニット103−1,103−2,103−3,103−4と、上方から見て多角形状の平面形を有して多角形の辺に相当する側壁とこれらの処理ユニット各々と連結されて、当該処理ユニットに試料を前記の所定の値かこれに近い値まで減圧した圧力下で搬送する真空搬送室104、さらには真空搬送室104と大気ブロック101との間にこれらを接続する真空容器であって内部の圧力を大気圧と前記所定の値またはこれに近い値まで減圧可能なロック室105−1,105−2を備えている。この処理ブロック102は、図示しないターボ分子ポンプや粗引きポンプ等の真空ポンプと接続されており減圧されて高い真空度の圧力に維持可能なユニットである。
処理ユニット103−1〜103−4内の部品はプロセス条件に合わせた温度に制御されており、本実施例では、試料温度が250℃〜300℃になるように、図示しない制御ユニットからの指令信号に応じて動作が調節されている。一方、真空搬送室104、筐体106、カセット台107は常温かこれと見倣せる程度の範囲の温度にされており、試料は常温の状態で処理ユニット103−1〜103−4に搬入され、この処理ユニットの内部で所望の温度まで加熱された後に、処理が行われる。
図2に図1に示す処理ユニット103における処理容器内部の構成の概略を示す。図2は、図1に示す実施例に係るプラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
本実施例において、処理ユニット103は真空処理容器の内部に波配置された試料台207上に試料を載せて保持した状態で内部の空間に形成したプラズマ203を用いて試料をエッチング処理するエッチング処理装置である。本図に示す真空処理容器は概略として蓋201及び真空容器204により構成されている。蓋201及び真空容器204によって封止され外部の大気圧の空間から気密に区画された内部の空間である処理室は、真空容器204の下方に配置されてこれと連結された真空ポンプ206が駆動されることにより、内部の圧力が高い真空度まで低減されて保持される。
試料台207の上方の処理室内の空間にプラズマ203を形成し試料を処理するために処理室内に供給される処理用ガスは、ガス流量制御器208によって処理室内へのその流量が調節される。本実施例では、処理用ガスは複数種類のガスが混合されたものが用いられ、各々の種類のガスが通流するガスライン上にバルブ209及びガス流量制御器208が配置されてそのガスの流量が処理に適合したものに調節される。
これらの複数のガスラインは各々のガス流量制御器208の下流側で接続されて合流しており、合流部において複数種類のガスが所定の比率で混合した組成のガスとして1つのガスラインを通り真空処理用器に供給される。ガスラインは真空処理用器の上部と連結され、処理室の上方でその天井面を構成するガス拡散板202と蓋201との間に配置された所定の高さの空間に導入される。
このガス拡散板202の上面(処理室に対して背面)側の空間でガスは拡散してこの空間に充満した後、ガス拡散板202の中央部に複数配置された貫通孔を経由して処理容器内に導入される。処理用ガスが導入された状態で真空ポンプ206は駆動を並行して行われており、真空計213によって検知された結果に基づいて制御ユニットから発信された指令信号に応じて、処理室の底部に配置された排気用の開口と真空ポンプ206の入口との間に配置された軸周りに回転可能な板状のフラップ複数枚を具備するコンダクタンス調整バルブ205の回転動作によって処理室の上下でのガスの供給と排気とのバランスが調節され、処理室内の圧力が処理に適した値の範囲内に維持される。
処理室内部に導入された処理用ガスは、マグネトロン等の電界供給手段210から供給される電界とソレノイドコイル212から供給される磁界との相互作用により生起される共鳴現象により、ガスの分子や原子が励起されてプラズマ化される。処理用ガスの分子はイオンと電子に電離、あるいは、ラジカルに解離される。
本実施例において処理室は略円筒形状を有しており、真空容器204も円筒形状を備えている。また、ガス分散板202は円形の誘電体製の板部材であり、処理室の円筒形状部分とガス分散板202の円板とはその中心同士が合致するように配置されている。
処理室内に配置された試料がその上面に載置される試料台207は略円筒形状を備えており、円板形状の試料が載せられる試料台207上面の載置面も円形またはこれと見倣せる形状を備えている。載置面は試料台207の上面を覆う誘電体製の膜を有して構成され、処理中に被処理物である試料は載置面の誘電体製の膜上面に形成された静電気力によってこれに吸着されて保持される。
試料台207の内部には円板形状または円筒形状を有する導電体製の部材から構成された電極が配置され、この電極は高周波バイアス電源211が接続されている。試料の処理に際して、試料が試料台207上面に保持されプラズマ203が形成された状態で高周波バイアス電源により上記電極に印加される高周波電圧により、プラズマ203の電位に応じて試料の上面上方にバイアス電位が形成される。これら両者の電位差により、プラズマ203内のイオン等荷電粒子を試料の表面に誘引して衝突させることにより、試料上面に予め形成されて配置された複数の膜層が積層された膜構造との間で生起する物理反応及び化学反応の相互反応により膜構造の処理対象の膜のエッチング処理が促進される。
試料台207上面の誘電体製の膜(誘電体膜)は、当該上面に誘電体材料を所定の厚さに溶射して形成されても良く、予め焼結等の製造方法により所定の厚さの円板として形成された部材を試料台207の上面に接着する等の方法により形成されても良い。また、本実施例では、後述の通り誘電体膜の内部に試料をその上面に吸着する静電気力を発生するための膜状の電極が複数個配置されている。
図3に試料台207の構成をより詳細に示す。図3は、図2に示す実施例に係るプラズマ処理装置の試料台の構成を拡大して模式的に示す縦断面図である。
本図において、試料は符号Wにより引用されている。円板形状の試料Wは図のように試料台207の上面に形成される誘電体膜301の上面に載置される。
試料台207の内部には、前述の通り、電極となる導電体製の円板形状の部材であるヘッド311が配置されており、誘電体膜301は、断面が凸字形状となるようにヘッド311の中央部に配置された円筒形の凸部の上面を覆って配置されている。ヘッド311内部には多重の同心の円弧状またはら旋状に配置され熱交換流体が内部を通流する冷媒流路305が配置され、冷媒流路305を通り熱交換した冷媒が循環することによりヘッド311の温度が所定の範囲内となるように調節され、ひいては試料台207の温度が制御される。
熱交換流体は、試料台207に配置された冷媒流路305の入口及び出口と管路を介して連結されたサーキュレータ308において、冷媒流路305の出口から流出した冷媒が所望の温度、流量に調節された後冷媒流路305の入口に向けて流出して循環している。さらに、本実施例では、誘電体膜301の内部またはヘッド311の上部の内部に複数の膜状のヒータを備え、ヒータが発生する熱により誘電体膜301上面の温度を調節している。
また、試料台207内のヘッド311の上部の温度がヘッド311内に配置された温度センサ304により検知される。温度センサ304から出力された信号は、通信手段を介して試料台207の外部に配置されたコントローラ309で受信され、試料台207の載置面の温度、あるいは、試料Wの温度が検出される。コントローラ309は所謂CPU等マイクロプロセッサ(演算器)、RAM或いはROM等のメモリやハードディスクといった記憶装置、外部との信号をやり取りするためのインターフェース及びこれらの間を連結して信号を伝達する配線等の通信手段を備え、演算器がインターフェースを介して受信した温度センサ304からの信号を用いて、記憶装置から読み出した予め記録されたソフトウェア等のアルゴリズムに基づいてヘッド311或いは試料台207の誘電体膜301上面の温度を検出し、これを所望の温度の値にするための熱交換流体の温度、流量およびヒータへ供給される電力を算出し、インターフェースを通してサーキュレータ308及びヒータの電源に指令信号を発信してその動作を調節する。
なお、ヘッド311の下方には円板形状を有する試料台ベース312が配置され、ヘッド311の円筒形状の凸部の外周側に配置された凹み部に配置され上下方向に延びる複数本のボルト306により両者が締結されている。凹み部の段差のリング状の底面に載せられたリング状のカバー315は、ヘッド311の凸部の円筒形の側壁とともにボルト306、ヘッド311及び試料台ベース312の側壁を覆って配置され、これらの部材の処理室内のプラズマ203との相互作用が低減されている。
また、誘電体膜301の内部には静電吸着用の膜状の電極302,303が配置されている。これら電極302,303に電源307,310から供給される直流電圧を印加することで、誘電体膜301を挟んで試料Wに分極を生起して静電気力により試料Wを誘電体膜301上面に吸着(静電吸着)させる。さらに、誘電体膜301の表面には所定の形状の凹みまたは溝が予め形成されており、試料Wをその上面に吸着させた状態で試料Wの裏面と誘電体膜301の間には隙間空間319が形成される。
本実施例では、この隙間空間319を生じる溝や凹みは誘電体膜301の外周縁部を除く内側の領域にその全体わたって形成されており、試料Wを誘電体膜301上に吸着させた状態で当該内側の領域の上面に配置された開口から熱伝達用のガスとしてHeを導入し隙間空間319内に充填する。このように、熱伝達ガスを隙間空間319に導入することで熱伝達率を向上させて試料Wと誘電体膜301(試料台207)との間の熱交換、温度調節の効率を向上する。隙間空間312内でのHeの圧力は、例えば1kPa程度の圧力に維持されている。
一方、試料Wを試料台207に載置後、試料Wを誘電体膜301上に静電吸着させない状態で隙間空間319にHeガスを導入すると、Heガスの流量が多すぎる場合に試料Wが誘電体膜301上から吹き飛ばされたり、Heガスが試料Wと誘電体膜301との間から流出する際に試料Wが誘電体膜301上を滑ってその中心位置がずれたり試料台207から下方に落ちたりする虞が有る。
そこで、本実施例では、誘電体膜301の内側の領域上に配置された開口と連結されたHeのガス導入ライン318に、排気ポンプと連結されてガス導入ライン318内ひいては隙間空間319内のHeガスを排気するための排気ライン317を備え、当該排気ライン317上に配置された排気バルブ316をコントローラ309からの指令に基づいて開放することで不要なHeを排気することができる。また、試料Wを試料台207に静電吸着させずにHeガスを隙間空間319に導入する際に隙間空間319内の圧力による上向きの力が試料Wの自重より大きくならないように、Heガスの導入流量をガス導入ライン318上に配置した流量制御器314で調節しても良い。
ただし、ガス流量調節器314とそのガス導入ライン318上の下流側に配置された下流側バルブ313の間の空間でのガスの圧力が高過ぎるとバルブ313を開けた瞬間に大流量のHeガスが導入されて試料Wが試料台207上から飛ばされてしまう虞が有る。そこで、本実施例では、バルブ313を開ける前に、排気バルブ316を開いた状態でバルブ313を開く。
また、排気ライン317のコンダクタンスは、ガス導入ライン318のコンダクタンスより十分大きくされている。このため、排気バルブ316を開放した場合、ガス流量制御器314とバルブ313の間のHeはほぼ全て排気ライン317を通って排気される。また、ガス流量制御器314で調節されるHeガスの流量が試料Wを誘電体膜301上で保持できるだけの予め定められた流量になったことが検出されると、コントローラ309からの指令信号を受けて排気バルブ316が閉じられHeガスが隙間空間319へ導入される。
なお、もしHeガスを導入することによって試料Wが誘電体膜301上で滑った場合、試料Wはヘッド311の凸部の外周を囲む凹み部に載せられたリング形状のカバー315の上面に接触して移動が停止する。カバー315はその上部の内周縁に沿った部分の形状は、断面がテーパー状に外側に向かって末広がりの形状にされており、このテーパー部に試料Wの外周縁が接しても試料Wの運動を内側に向かわせることで試料台207の上から脱落することを低減している。さらに、カバー315の上面にリング状の突起を配置してもよい。
ここで、試料がプラズマ処理室内に搬入されてからプラズマ処理が開始するまでのシーケンスを図4に示す。図4は本発明を使用する以前の従来シーケンスを示す。本図では試料温度を300℃に制御してプラズマ処理を行うものとして、プラズマ処理室に搬入される前の試料の温度は常温(25℃)であるとする。
本図において、試料台の温度は300℃を設定の温度として調節されている。このような従来技術において、処理室に搬入された試料は試料台に載置された後、試料台の上面に配置された誘電体製の膜の上面上に静電吸着されるとともに試料の裏面と試料台の間の隙間空間に熱伝導用のHeのガスが導入され、この熱伝達用のガスを媒体として試料は試料台と熱交換して加熱される。
その後、処理用ガスが処理室内に導入されつつ処理室内の圧力を所望の値の範囲内に制御される。試料の温度が処理に適した所望の範囲内であることが検出されると、処理室内に電界または磁界が共有されて処理用ガスを用いてプラズマが形成されて試料の処理が開始される。
このような処理の動作において、本図の技術では試料は試料台に静電吸着された状態で試料台から熱を受けて熱膨張するため、試料と誘電体製の試料台の載置面の上面との間で熱膨張の大きさの差に起因して摩擦が生じることになる。このため、試料あるいは試料台の上面の載置面が摩擦により損傷あるいは摩耗して微小異物が発生したり、試料台の表面粗さが変化することで試料と試料台との間の熱伝達効率が変化し処理性能が経時的に変化したりするという問題が生じていた。
本実施例に係るプラズマ処理装置における試料の処理の動作の流れを図5を用いて説明する。図5は、図2に示す実施例に係るプラズマ処理装置の時間の変化に伴う動作の流れを示すタイムチャートである。
本実施例では、試料Wの一部分を試料台207の誘電体膜301に静電吸着させずに加熱することで、試料Wが加熱されて昇温して熱膨張しても試料Wの一部分と試料台207の間では摩擦とこれによる試料Wまたは誘電体膜301の摩耗や損傷の生起が低減されるシーケンスとなっている。ただし、試料Wが試料台207上に吸着させた状態でも摩耗、損傷が許容される範囲内となる試料Wの温度及び誘電体膜301との温度差の所定の範囲が存在する。このような試料Wが試料台207に吸着された状態での試料の温度変動の許容値は、試料の種類、プラズマ処理条件、あるいは、前記試料台の材質などによって決められる。
本実施例では、常温(25℃)の試料Wを予め定められた高い温度(例えば300℃)に調節された試料台207の載置面上に載置後、試料Wの一部分を静電吸着せずに試料台の上に保持している。その間、試料Wと試料台207の誘電体膜301との間の接触部分、特に吸着させた部分における熱の伝達により試料Wは徐々に加熱される。
試料Wが前記予め定められた温度に近い所定の温度250℃まで加熱されたことが検出されると、これまでの試料Wの非吸着部分を誘電体膜301上に静電吸着させ、その部分の試料Wと誘電体膜301との間に熱伝達用のHeガスを導入して試料Wの全体を処理の開始に適した温度の条件である300℃まで加熱してエッチング処理を開始する。本実施例では、処理に際して試料Wと誘電体膜301との間に導入されるHeガスの圧力は1kPaに調節されている。
上記の実施例において、試料Wが試料台207の載置面に載置されて常温(25℃)から所定の温度である250℃まで加熱される間は、試料Wの一部分は誘電体膜301には静電吸着されておらず、この試料Wの非吸着領域の裏面では試料W及び誘電体膜301が熱膨張してもこれらの間の摩擦力は小さく摩耗や損傷は無視できる程度まで抑制される。試料Wが250℃から300℃まで加熱される間は、試料Wはこれまで吸着されていなかった部分も含めて全体的に誘電体膜301上に静電吸着されているので、試料W及び誘電体膜301の熱膨張の差に応じてこれらの間の摩擦が発生するが、本実施例では上記摩耗、損傷が許容される範囲内となる温度差の範囲は50℃内としている。
一方、試料Wの裏面と試料台207の誘電体膜301の上面はそれぞれ表面粗さを有しているので、図6に示すように、試料W裏面と誘電体膜301上面とが接触した状態で、これらの間には各々の粗さを有した表面の形状に応じて接触部601と微小隙間602とが形成される。図5に示す動作において、試料Wが誘電体膜301上に静電吸着されていない状態で試料台207と熱交換して加熱される場合、処理室内部は高い真空度の低圧力に保たれているため微小隙間602も高い真空度の低圧となっており、微小隙間602の熱通過率は極めて低い。このため、試料Wと誘電体膜301との間では実質的に接触部601でのみ熱伝達が行われるが、この接触面積は試料Wの裏面全体の面積と比べて著しく小さいものとなる。このことから、試料Wと試料台207との間の熱伝達の効率は低く、熱伝達用のガスを導入しないままで試料Wを常温から所定の温度(例えば250℃)まで加熱するのには長い時間を要する。
このように、試料Wの加熱のために時間を要すると一枚当たりの試料Wを載置後から処理を終了するまでに要する時間が長くなってしまうが、例えば、処理時間が試料Wの搬送に掛かる時間や処理後の試料を冷却する時間などと比較して十分に短い場合は、処理に要する試料Wをカセットから搬出して処理後に当該カセットの元の位置に戻すまでの全体の試料Wのハンドリング時間へ与える影響は相対的に小さくなる。
図3に示す実施例においては、誘電体膜301内に配置される静電吸着用の膜状の電極は、内側電極302と外側電極303を含む複数が配置される。各々の電極には内側電極用の電源307と外側電極用の電源310とが電気的に接続されている。これらの電極には処理中に異なる極性が付与されるものであって、その上方から見た形状の面積は等しくされている。
すなわち、内側電極302は上方から見てその中心を試料台207の載置面または試料Wの中心と合致させた円形を有し外側電極303は内側電極302の外周側でこれを囲むリング形状を有している。内側電極302の外周縁と外側電極303の内周縁とは可能な限り近接して配置されており、内側電極302の外周縁の半径位置は外側電極303の外周縁に対して所定の範囲の値となっている。
本実施例では、これらの電源307,310は直流電源である。ここで、内側電極302に正の電位を印加して、外側電極303に負の電位を印加すると、内側電極302から試料Wを介し外側電極303に向かって電位差を有した電気回路が形成され、誘電体膜301を挟んで試料W内の分極が発生することにより試料Wは誘電体膜301上面に静電吸着される。
このような構成を備えた本実施例において、試料Wを誘電体膜301上に載置した後、処理室内にガスを供給してプラズマ203を励起させた状態で内側電極302にのみに電源307から電力を供給する(たとえば+500V)。この状態で内側電極302、試料W、プラズマ203、接地された真空容器204との間で電気回路が形成されて試料Wは内部に生じた分極による電荷に応じた静電気力によって誘電体膜301上に静電吸着される。この状態は、内側電極302を単極(モノポール)の静電吸着用電極とした試料Wの吸着と同等である。
なお、この静電吸着に際して試料Wはプラズマ203により処理は実質的に実施されない。また、処理室内にアルゴン等の不活性ガスを導入してこの静電吸着のための静電気力を生起するためのプラズマ203を形成しても良い。また、処理用ガスを導入した状態でプラズマを形成するが、ヘッド311に高周波バイアス電力を印加しない状態で、試料Wを静電吸着して試料Wの加熱を行うようにしても良い。
この際、試料Wと誘電体膜301との間の静電吸着力は実質的に誘電体膜301の上面の内側電極302直上方の領域のみで発生しており、電力が印加されていない外側電極303直上方の誘電体膜301の上面の領域では静電吸着力はほとんど発生していない。この状態で、内側電極302直上方の誘電体膜301の投影面の領域と試料Wとの間にガス導入ライン318を介して上記領域の誘電体膜301上面の開口からHeガスを導入する。
内側電極302上方の誘電体膜301と試料Wの裏面とは静電吸着されており両者の接触面積は外周のリング状に配置された外側電極303の上方の非吸着領域でのものと比べて著しく大きいものとなっているのに加えて、内側電極302の上方の誘電体膜301上面と試料Wとの間に供給されたHeガスが熱伝達媒体として試料台207と試料Wとの間の熱交換を促進することで、試料Wの加熱がより短時間で行われる。試料Wがプラズマ処理に適した所定の温度になるか或いは加熱の時間が所定の長さを経過すると、コントローラ309からの指令信号に応じて、内側電極302と外側電極303とのそれぞれに異なる極性の電力が印加され、試料Wの全体を誘電体膜301上面に静電吸着させる。
この際、例えば、内側電極302には+500Vを、外側電極303には−500Vを印加する。試料Wが誘電体膜301上で全体的に吸着された後、外側電極303上方の誘電体膜301の上面と試料Wとの間の微小隙間602にはガス導入ライン318から供給されたHeガスが充填され、試料Wの非接触領域と誘電体膜301との間の熱伝達が促進され試料Wの加熱が行われる。温度センサ304からの出力信号を受けて試料Wの温度が所期の処理を開始するのに適した温度に到達したことがコントローラ309により検出されると、当該コントローラ309からの指令信号に基づいて試料Wの処理が開始される。
本実施例の内側電極302は円形を有して誘電体膜301が構成する試料載置面の中央部であって試料Wが載せられた状態でその中心から所定の小さい半径の領域が覆う位置に相当する誘電体膜301内の箇所に配置されている。その半径は、試料Wと誘電体膜301との間の実効的な熱伝達を行うためにこの領域に供給されるHeによる試料Wの上向きの力に対して試料Wを誘電体膜301に浮き上がらせずに吸着して保持可能な面積の最小値以上にされている。本実施例では、上記半径は試料Wまたは試料台207の載置面の半径の5%以上、望ましくは10%以上にされている。図3に示す実施例では、試料Wを加熱するために内側電極302の上方にHeガスを供給しつつ内側電極302のみに電力を供給しており、内側電極302の外周縁の半径は外側電極303の外周縁の半径の1/√2程度であるので上記の最小半径より大きな値となっている。
本実施例によれば、試料Wは内側電極302付近のみで静電吸着されているので、Heガスが内側電極302の上方の領域の開口から試料Wと誘電体膜301との間に導入しても試料Wが浮き上がって試料台207から落下したり載置面の当初の載置位置からずれたりすることが抑制され、隙間空間319のHeガスの圧力を高くすることができるため試料Wと試料台207との間の熱伝導効率を高くすることができる。また、試料Wと誘電体膜301との間の静電吸着力は内側電極302付近のみで発生しているが、試料Wが加熱されるときの試料Wの熱膨張量はその中心ではゼロであり中心からの半径方向の位置が大きくなる程大きくなるため、熱膨張の小さな試料Wまたは誘電体膜301の内側のみを吸着することで試料Wと誘電体膜301との間の摩耗や損傷を低減することができる。
なお、試料Wは、その外周側で誘電体膜301に静電吸着されていないため、試料Wと誘電体膜301との間の隙間空間319の内側領域に導入されたHeのガスは、外周側領域の下方の隙間空間319に拡散、移動して試料Wの外周縁部分から処理室内へ漏れ出ることになる。この際、試料Wと誘電体膜301との間の隙間空間319を通過するHeガスを熱伝達媒体として試料台207から試料Wへ加熱が行われる。試料Wが250℃まで加熱されると試料Wを外側電極303にも電力を印加して試料Wの全体を誘電体膜301上に静電吸着した後、隙間空間319の圧力が所定の圧力値(例えば1kPa)になるまで熱伝達用ガスを導入し、試料Wの温度が所期の設定温度(300℃)になるまで試料Wを加熱した後に予め定められた条件で試料W上の対象の膜のエッチング処理が開始される。
また、図7に示すように、試料Wを処理室内に搬入する前に試料台207の温度を例えば350℃にして維持しておき、試料Wを試料台207上の載置面に載置後、上記実施例と同様に試料を250℃まで加熱する。試料Wが250℃になったところで、試料台温度を300℃に制御して、試料W全体を誘電体膜301上に静電吸着させ、誘電体膜301の外側電極303上方の投影面である外側領域にHeガスを充填する。試料温度が300℃になったところでプラズマ処理を開始するようにしても良い。また、図7では試料Wの温度を350℃から300℃に短時間で低下させているが、図8に示すように、試料Wの温度を初期温度(350℃)から徐々に300℃に落としていってもよいし、あるいは、試料W温度をモニタしておき自動制御で試料温度が最速で300℃に到達できるように試料台207の温度を制御してもよい。
〔変形例1〕
上記実施例の変形例を、図9を用いて説明する。図9は、図2に示す実施例の変形例に係るプラズマ処理装置の試料台の構成を模式的に示す縦断面図である。この図において、図3に示された箇所、部分についての説明は省略し、異なる部分を中心に説明する。
図9に示す変形例の実施例と異なる点は、誘電体膜301内に配置された異なる極性の電力が印加される内側、外側の静電吸着用の電極が、少なくとも内側電極が中心から半径方向に複数の領域を有する複数の電極を備えている点である。本例では、円形の試料Wに併せて実質的に円形の領域を覆って配置された誘電体膜301内の内側の領域に配置された内側の電極は円形の内側電極901及びリング状の内側電極902を備えて、同じ電源307に電気的に接続されている。
本変形例において、試料Wが試料台207の誘電体膜301上面に載置された後、試料Wの内側の領域を部分的に静電吸着して熱伝達用ガスを試料Wと誘電体膜301との間に供給して試料Wを所定の高温(例えば250℃)まで加熱し、その後に試料Wの非吸着領域である外側の領域を静電吸着して処理開始に適した温度まで加熱した後にプラズマ処理を行うことは実施例と同等である。一方、本変形例は、試料Wを加熱するために吸着する試料Wまたは誘電体膜301の内側の領域は内側電極901の直上方の誘電体膜301の上面の投影面である点で実施例と異なる構成を有している。
すなわち、処理中に異なる外側電極903と異なる極性の電力が印加される内側電極901,902のうち、試料Wの中心を含むより小さな半径の領域を投影面として含む内側電極901にのみ電力を供給する。つまり、電源307と内側電極902との間の電気的接続を切り替えるスイッチ904を開いて両者を切断し電力を内側電極901にのみ供給した状態で処理室内にプラズマ203を形成して、内側電極901の直上方の誘電体膜301の中心部の領域で試料Wを静電吸着する。この状態で、当該中心部の領域に開口を有するガス導入ライン318からHeガスを試料Wと誘電体膜301との間の隙間空間319に導入して、試料台207と試料Wとの間の熱伝達を促進して試料Wを加熱する。なお、円形を有する内側電極901の半径は、上記試料Wを吸着する上で求められる最小の半径値より大きな値にされている。
試料Wの温度が所定の温度(250℃)に到達したことが温度センサ304の出力信号から検出されると、コントローラ309からの指令信号に基づいて、スイッチ904を閉じて内側電極901,902の両者に電力を供給する。さらに、内側電極902の外周側にリング状に配置された外側電極903に内側電極901,902と異なる極性の電力を電源310から印加して、内側電極901,902と試料W、外側電極903との間での電気回路を構成して試料W内で分極して生じた電荷に応じた静電気力を発生させ試料Wを誘電体膜301上面に静電吸着させる。
この状態でガス導入ライン318から導入されたHeガスは試料W裏面の隙間空間319の全体的にわたり充填されて、試料Wと試料台207との間の熱伝達が促進される。試料Wが所期の処理開始に適した温度になったことが検出されるとプラズマを用いてエッチング処理が開始される。
〔変形例2〕
上記実施例の別の変形例を、図10を用いて説明する。図10は、図2に示す実施例の別の変形例に係るプラズマ処理装置の試料台の構成を模式的に示す縦断面図である。この図において、図3,図9に示された箇所、部分についての説明は省略し、異なる部分を中心に説明する。
本変形例が図9の変形例と異なる点は、誘電体膜301内に配置された複数の膜状の静電吸着用の電極が、1つの電源1004に連結されて単一の極性が印加される点である。本変形例では、円形の試料Wに併せて実質的に円形の領域を覆って配置された誘電体膜301内の内側の領域に配置された内側電極1001は、これの外周側でリング状に配置された外側電極1002とともに同じ電源1004と電気的に接続可能に構成されており、これらの電極は試料Wの処理に際して同じ極性が付与されてプラズマ203と試料Wとを介して形成される電気回路を構成することで、試料W内の分極により生じた電荷に応じた静電気力を形成し試料Wを誘電体膜301上面に吸着させて保持する。
本変形例においても、試料Wを処理室内に搬入して試料台207の誘電体膜301上面に載置した状態で、試料W裏面または誘電体膜301上面の一部の領域でのみ試料Wを静電吸着して保持し試料Wを加熱する。具体的には、試料Wが誘電体膜301上面に載置されると、スイッチ1003を開いて、誘電体膜301の試料載置面の中央部の半径の小さい領域に相当する位置の誘電体膜301内部に配置された膜状の内側電極1001にのみ電源1004からの電力を供給する。円形を有した内側電極1001の半径は、上記求められる最小の値以上となっている。
この状態で、処理室内部にプラズマ203を形成して、内側電極1001を単極の静電吸着電極として試料Wの中心部分の半径の小さな領域のみを誘電体膜301上面に静電吸着させる。この状態で誘電体膜301の中央部に開口を有したガス導入ライン318を通してHeガスを試料Wの裏面に供給し試料台207と試料Wとの間の熱伝達を促進して試料Wを所定の温度(250℃)まで加熱する。
この後、スイッチ1003を閉じて外側電極1002に電源1004からの電力を供給して、内側電極1001と外側電極1002とを一つの極性を有する単極の静電吸着用の電極として動作させて、外側電極1002が配置された領域に相当する非吸着領域に静電吸着力を発生させ試料W全体を誘電体膜301上面に吸着させる。この状態で、試料Wの裏面は全体的にHeガスがその隙間空間319に充填され、試料W全体で試料台207との間の熱伝達が促進され、試料Wが処理の開始に適した温度まで加熱されて、プラズマを用いてエッチング処理が開始される。
〔変形例3〕
上記実施例の別の変形例を図11,図12を用いて説明する。図11及び図12は、図2に示す実施例のさらに別の変形例に係るプラズマ処理装置の試料台の構成を模式的に示す縦断面図である。この図において、図3,図9,図10に示された箇所、部分についての説明は省略し、異なる部分を中心に説明する。
本変形例が図9,図10の変形例と異なる点は、誘電体膜301内に配置された複数の膜状の静電吸着用の電極が、複数の電源307,310に連結されて異なる2つの極性が切り替えられて付与される点である。本変形例では、円形の試料Wに併せて実質的に円形の領域を覆って配置された誘電体膜301内の内側の領域に配置された複数の内側電極1101,1102,1103は、これの外周側でリング状に配置された外側電極1104とともに2つの電源307,3104と電気的に接続可能に構成されている。
具体的には、最も内側に配置された円形を有する内側電極1101は、試料Wまたは誘電体膜301の中心を含む半径の小さな領域に相当する位置で誘電体膜301内部に配置され、内側電極1101の外周側の位置にこれを内側から外側に向かって多重に囲んで配置されたリング状の内側電極1102,1103を備えている。内側電極1102,1103は内側電極1101の外周側に位置しているが、これらの電極は試料Wを処理する際に電源307からの電力が印加されて、外側電極1104とは異なる同一の極性が付与されることから、便宜上内側電極として呼称する。
内側電極1103の外周側には、これを囲んでリング状に配置された膜状の外側電極1104が配置されており、電源310とスイッチ1108を介して電気的に接続されている。さらに、内側電極1102は、スイッチ1107を介して電源310とも電気的に接続され、さらにスイッチ1106を介して電源307と電気的に接続されている。また、内側電極1103はスイッチ1105を介して電源307と電気的に接続されている。
このような構成では、スイッチ1106,1107の開閉の切り替えにより、内側電極1102には電源307または電源310からの電力の印加を切り替えることができ、結果として内側電極1102は内側電極1101と同じ極性または外側電極1104と同じ極性の2つの極性を切り替えて付与可能となっている。本変形例では、試料Wが処理室内に搬入されて試料台207の誘電体膜301上面に載せられた状態で、図11に示すように、スイッチ1105,1106,1108を開きスイッチ107を閉じた状態で内側電極1101と内側電極1102とが各々電源307,310から電力が印加されて異なる極性が付与された状態を実現する。これらのスイッチ1105,1106,1107,1108の開閉の動作(接続の断続)はコントローラ309からの指令信号に基づいて実施される。
この状態では、内側電極1101と内側電極1102との間で試料Wを介して電気回路が構成されて、試料W内の分極により生じた電荷に応じた静電気力を形成し試料Wを誘電体膜301上面に吸着させて保持可能となっている。この状態では、外側電極1104には電源310からの電力は供給されておらず吸着力は生起されておらず、試料Wは実質的に内側電極1101及び内側電極1102の直上方の誘電体膜301の上面の投影面の領域でのみ生起する静電吸着力によって誘電体膜301上面に吸着される。さらに、この状態で、内側電極1101または内側電極1102の直上方のこれらの電極の何れかの誘電体膜301上面の投影領域内に配置された開口からガス導入ライン318を介して試料Wと誘電体膜301との間の隙間空間319にHeガスを導入して、試料台207と試料Wとの間の熱伝達を促進して試料Wを加熱する。なお、内側電極1101,1102の上方から見た面積の和は、上記求められる最小値の半径の円の面積よりも大きな値にされている。
試料Wの温度が所定の温度(例えば250℃)に到達したことが検出されると、コントローラ309からの指令信号に基づいて、スイッチ1105,1106,1107,1108が切り替えられて、内側電極1101,1102,1103に電源307からの電力が、外側電極1104に電源310からの電力が供給されて、内側電極1101,1102,1103と外側電極1104とに異なる極性が付与され、試料Wの全体が誘電体膜301上面に静電吸着されて保持される。
このように本変形例においても、試料Wを処理室内に搬入して試料台207の誘電体膜301上面に載置した状態で、試料W裏面または誘電体膜301上面の一部の領域でのみ試料Wを静電吸着して保持し試料Wを加熱する。さらに、所定の温度に到達したことが検出された試料Wは、その裏面の全体にわたり静電吸着されて、処理の開始に適した温度まで加熱された後プラズマによるエッチング処理が施される。
以上の変形例によっても、試料Wは内側電極とその近傍のみで静電吸着されているので、Heガスが試料Wと誘電体膜301との間に導入しても試料Wが浮き上がって試料台207から落下したり載置面の当初の載置位置からずれたりすることが抑制され、隙間空間319のHeガスの圧力を高くすることができるため試料Wと試料台207との間の熱伝導効率を高くすることができる。また、試料Wと誘電体膜301との間の静電吸着力は内側電極の直上の誘電体膜301への投影面の領域とその近傍でのみで生起して、試料Wが加熱されるときの試料Wの熱膨張量はその中心ではゼロであり中心からの半径方向の位置が大きくなる程大きくなるため、熱膨張の小さな試料Wまたは誘電体膜301の内側のみを吸着することで試料Wと誘電体膜301との間の摩耗や損傷を低減することができる。
なお、上記実施例、変形例において、試料Wの加熱を行うために試料Wの一部分のみを静電吸着する際の静電吸着力はその単位面積当たりの吸着力(吸着圧力)は、試料Wの処理中における吸着圧力より小さくされている。或いは、試料Wの加熱の際に印加される静電吸着力の内側の一部分での全体の総和は、試料Wの処理の際の試料Wの全体的に付与される静電吸着力の総和よりも小さくなっている。
また、上記変形例に記載のように、試料Wを加熱するために処理の開始前に誘電体膜301上面に吸着される試料Wの領域の大きさは処理中に吸着される領域よりも小さくされているが、吸着される領域は複数有っても良い。この場合も、変形例2のように、試料Wの温度の上昇につれて生じる試料Wの膨張による試料Wの裏面の面内での変位が吸着された領域から外周側に向かって単調または一様に生じるように、複数の静電吸着させる領域は同心状に配置されることが好ましい。
また、同心状に配置されていない場合でも、或いは単一の領域で吸着させる場合でも、当該領域はその領域の任意の外縁の一箇所から別の箇所までの最短距離が所定の大きさ以内になる形状であることが好ましい。例えば、上記の2つの箇所からの上記膨張により生じる変位の方向は対向するものとなるので、これらの箇所同士の距離が所定の値以上である場合には上記膨張により試料Wの裏面が上方に変位して静電吸着力を十分に発生できない大きさ以上に誘電体膜301表面から遊離する虞が有る。上記実施例、変形例ではこのような2箇所間の距離として100mm以内に設定されている。
また、上記実施例、変形例は、試料Wが処理室内に搬送されて試料台207上に載せられて処理が開始されるまでの間で試料Wをプラズマ203または試料台207からの熱伝達により加熱を行うものを開示しているが、試料W上面に予め配置された膜構造の処理対象の膜を複数の処理条件で複数のステップに分けて処理を行う場合に、これらの処理ステップの間で試料Wの温度を調節する、特に試料Wを処理に適した温度まで加熱する場合にも適用可能である。すなわち、一つの処理ステップの終了後に試料Wの一部分のみを静電吸着しつつ試料Wの裏面に熱伝達用のガスを供給して試料Wを所定の温度まで加熱した後、試料Wを全体的に静電吸着して処理に適した温度まで加熱して処理用ガスを用いて処理を行う用にしても良い。
このような処理ステップ間での試料Wの静電吸着及び加熱の動作としては、まず第一の処理ステップの終了後に処理室内を排気しつつ不活性ガス等の置換用のガスを導入し、静電吸着電極への電力の供給を停止する。この状態で、Heガス等熱伝達用ガスの供給も停止されている。さらに、試料台207または誘電体膜301の温度を第二の処理ステップに合わせた温度に調節した後、処理室内に不活性ガス、例えばArを導入して処理室内にプラズマを形成し複数の静電吸着用の電極のうち内側の電極のみで試料Wを吸着させる。この際、試料Wと誘電体膜301の内側の静電吸着用の電極の投影面領域との間にHeガスが供給される。さらに、試料Wの温度が所定の範囲内になったことが検出されると、外周側の静電吸着用電極も用いて試料Wを全体的に静電吸着してHeガスを試料Wの裏面に供給しつつ試料Wの第二の処理ステップが実行される。
あるいは、試料Wの加熱のために試料Wを双極型の内側の静電吸着用電極によって吸着する場合には、第一の処理ステップの終了後に上記のガスを置換しつつ真空排気後に試料台207の温度を変更して、或いは変更しつつ内側の双極型静電吸着電極により試料Wを静電吸着して試料Wを加熱する。所定の温度まで試料Wの加熱が行われた後に、試料Wを全体的に吸着して第二の処理ステップを実行するようにしても良い。
101 大気ブロック
102 処理ブロック
103 処理ユニット
104 真空搬送室
105 ロック室
106 筐体
107 カセット台
108,109 搬送ロボット
201 蓋
202 ガス拡散板
203 プラズマ
204 真空容器
205 コンダクタンス調整バルブ
206 真空ポンプ
207 試料台
208 ガス流量制御器
209、313 バルブ
210 電界供給手段
211 高周波バイアス電源
212 ソレノイドコイル
213 真空計
301 誘電体膜
302,901,902,1001,1101,1102,1103 内側電極
303,903,1002,1104 外側電極
304 温度センサ
305 冷媒流路
306 ボルト
307,310 電源
308 サーキュレータ
309 コントローラ
311 ヘッド
312 試料台ベース
314 ガス流量制御器
315 カバー
319 隙間空間
601 接触部
602 微小隙間
1105,1106,1107,1108 スイッチ
W 試料

Claims (10)

  1. 真空容器内部に配置され減圧された内側でプラズマが形成される処理室と、この処理室内の下部に配置されその上面に前記プラズマを用いた処理の対象の試料が載置される試料台と、この試料台上部の前記試料がその上に載せられる載置面を構成する誘電体製の誘電体膜と、この誘電体膜の内部に配置され前記試料をこの誘電体膜上に吸着して保持するための電力が供給される複数の電極とを備え、
    前記試料が前記試料台上に載置された状態で前記複数の電極のうちの少なくとも1つに電力を供給して前記試料の中心側の一部分を吸着して所定の温度になるまで前記試料の温度を加熱した後前記複数の電極のうちの前記1つの電極の外周側でこれを囲んで配置された他の電極に電力を供給してこの試料を広い範囲で吸着した後に前記プラズマを用いてこの試料の処理を開始するプラズマ処理装置。
  2. 請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、前記処理室内にプラズマを形成して前記試料の一部分を静電気力を用いて吸着するプラズマ処理装置。
  3. 請求項1または2に記載のプラズマ処理装置であって、前記複数の電極のうちの1つが前記試料台の試料の載置面の中央部に配置されその半径が前記試料の半径の5%以上の大きさを有した内側の電極であり、前記他の電極が当該内側の電極の外周側にリング状にこれを囲んで配置された外側の電極であるプラズマ処理装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載のプラズマ処理装置であって、前記試料の一部分が前記試料台に吸着されている状態で、前記試料の一部分と前記誘電体膜との間に形成される隙間空間に熱伝達用のガスを導入するプラズマ処理装置。
  5. 請求項1乃至4の何れかに記載のプラズマ処理装置であって、前記処理中に前記複数の電極のうちの2つの電極の各々に異なる極性が付与されるプラズマ処理装置。
  6. 真空容器内部に配置された処理室内の試料台の載置面上に処理対象の試料を配置して、減圧された前記処理室内側でプラズマを形成して前記試料を処理するプラズマ処理方法であって、
    前記試料の処理の開始前に前記載置面の中心側の領域に配置された静電吸着電極上の前記載置面上に前記試料を吸着して前記試料を所定の温度まで加熱後、前記載置面の中央側の領域の外周側でこれを囲む領域に配置された静電吸着電極の上の前記載置面上に前記試料を静電吸着して前記試料の処理を実施するプラズマ処理方法。
  7. 請求項6に記載のプラズマ処理方法であって、前記処理室内にプラズマを形成して前記試料の一部分を静電気力を用いて吸着するプラズマ処理方法。
  8. 請求項7に記載のプラズマ処理方法であって、試料台温度は前記高温状態から、前記プラズマ処理条件温度になるまで徐々に温度を落とすプラズマ処理方法。
  9. 請求項6乃至8のいずれかに記載のプラズマ処理方法であって、前記試料の一部分が前記試料台に吸着されている状態で、前記試料の一部分と前記誘電体膜との間に形成される隙間空間に熱伝達用のガスを導入するプラズマ処理方法。
  10. 請求項6乃至9の何れかに記載のプラズマ処理方法であって、前記処理中に前記複数の電極のうちの2つの電極の各々に異なる極性が付与されるプラズマ処理方法。
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