JP4047469B2 - 鋼帯の接合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、板厚や強度或いは性質などの異なる複数の鋼帯を、その長手方向の端部を溶接しプレス成形用に供される鋼帯の接合方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車部品の製造において、深絞り成形、張出し成形等成形性が要求される自動車部品あるいは高強度が要求される自動車部品毎に、その要求に応じた鋼板をプレス成形して自動車部品を製造していたが、自動車部品の中には、成形性が厳しく要求される部位とそれ程成形性が要求されない部位とを備えた自動車部品や高強度が厳しく要求される部位とそれ程高強度が要求されない部位を備えた自動車部品等がある。このような自動車部品を製造する場合、従来は要求される性能に耐えられる一枚の鋼板を用いてプレス成形を行い、成形後の自動車部品を溶接して自動車を製造していた。
【0003】
また、最近では自動車部品の製造において、必要な部位に必要な板厚と強度を持たせるために、板厚あるいは強度の異なる鋼板をレーザー等で接合して一枚の鋼板となし、その後一体でプレスに供するという、いわゆるテーラードブランクと呼ばれる方法が注目されてきており、このような方法は、例えば、特開平7−290182号、特開平8−174246号公報等に見ることができる。また、亜鉛メッキ鋼帯同士をレーザービームで突き合わせ溶接する方法も特公平5−25596号公報などにより公知となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、同一素材の一枚の鋼板を用いて自動車部品を成形する方法では、成形する自動車部品に要求される成形性がそれ程成形性が要求されない部位まで優れた成形性を有することとなり、言い換えれば、素材のオーバーアクションとなるもので、それに伴う素材費のコストアップとなる問題を有していた。また、特開平7−290182号公報、特開平8−174246号公報などにより知られるテーラードブランク法は、鋼板を小さな形状に剪断し、これを接合して一枚の鋼板とするために、生産性が高められないという課題を有しており、更に、溶接開始端と終了端では接合品質が安定せず、この部分を切り捨てなければならず、製品の歩留りが悪いという欠点を有しており、一方、前述した特公平5−25596号公報に記載された方法では接合が満足するものでなく、有利な接合方法の出現が待たれているところである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記した要望に応えることを目的として完成された本発明に係る鋼帯の接合方法の基本構成は、3条の異なる鋼帯を、溶接ロールと、各条の鋼帯毎に設けられた押さえロールとの間を通過させながら鋼帯のエッジ部を連続的に溶接する方法であって、中央の鋼帯の押さえロールは進行方向に対して直角方向に配置し、両側の鋼帯の押さえロールは傾斜して配置し、両側の鋼帯の押さえロールを傾斜させることにより両側の鋼帯に幅方向の力を加えて中央の鋼帯と両側の鋼帯との間のエッジ部端面に押付力が働くようにしながらレーザー溶接することにある。また、このような方法において、レーザー溶接する溶接点の上流側にフランジロールを配置して鋼帯の間に隙間を設けるようにしてあることを特徴とする鋼帯の接合方法を請求項2に係る発明とする。
【0006】
即ち、本発明は、自動車部品に供される鋼板を同一素材の一枚の鋼板とするのではなく、プレス成形する前に板厚や強度或いは性質などの異なる素材を鋼帯のまま溶接しておき、これより成形しようとする自動車部品が要求する成形性あるいは強度を必要な部位に具備する鋼板を得る鋼帯の接合方法であり、しかも、異質の鋼板を小さな形状に剪断した後、これらの端部を突き合わせて接合するという生産性が悪い方法に代え、コイルから捲戻された3条の異なる鋼帯の端部同士を連続的の溶接することにより、生産性が良好でしかも鋼帯の端部の形状精度が悪い場合でも接合品質が良好となる極めて有利な接合方法を提供することにある。なお、本発明により得られた鋼帯から製造される自動車部品としては、自動車の骨格構造部位などの柱状に近い部品あるいはフロアなどの異種材が平行に接合されて使用される可能性のある部品などがあり、本発明方法によってこれらの部品の飛躍的生産性と歩留りの向上を図ることとなる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は前記したように、材質、板厚等の異なる3条の鋼帯のエッジ部を連続的に有利に溶接する鋼帯の接合方法であり、その大きな特徴とするところは、中央の鋼帯の押さえロールは進行方向に対して直角方向に配置することにより中央の鋼帯の幅方向への変動をなくし、傾斜する押さえロールを両側の鋼帯に押しつけることにより鋼帯の幅方向に力を加えて中央の鋼帯と両側の鋼帯との間のエッジ間に押付力が働くようにして生産性と共に、接合品質が良好となる接合を可能とした点にある。
【0008】
以下、図1〜図8により本発明を詳細に説明する。
本発明では材質、板厚等の異なる3種類の鋼帯1、2、3のエッジ部を連続的に接合するものであり、これら鋼帯1、2、3を並べて各条の鋼帯毎に設けられた上側の押さえロール4、5、6と、これら押さえロール4、5、6に比べて大径の溶接ロール7との間を通過させる。このとき鋼帯1、2、3は大径の溶接ロール7側に巻き付けて通過するものであるが、前記押さえロール5は溶接ロール7と同様に鋼帯2の進行方向に対して直角方向に配置して、鋼帯2の幅方向への変動をなくし、一方、押さえロール4、6は溶接ロール7の長手方向に対してそれぞれ角度θ1 、θ2 だけ傾斜させて配置されるようにして鋼帯1、3が中央の鋼帯2に向けて幅方向の力が積極的に加えられるようにして溶接ロール7に押し付ける。
【0009】
このように本発明では、押さえロール4、6は、例えば、シリンダーなどにより溶接ロール7へ押さえる力を与えると共に、押さえロール4、6を傾斜させておくことにより鋼帯1、3に幅方向の力を積極的に加え、溶接する鋼帯1、2、3のエッジ間に面圧を働かせることを大きな特徴としている。鋼帯1、2、3の端部を突き合わせてレーザー溶接する際、溶接する鋼帯1、2、3の間に隙間が発生すると溶接後にアンダーカット等の品質不良が発生しやすくなる。しかし、通常、鋼帯を製造する際には鋼帯幅精度や鋼帯端部の形状品位を確保するために、鋼帯中央部をスリットしたり、端部をトリミングするなどの端部の剪断加工により仕上げるが、鋼帯端部には微少な凹凸が残るため、これらの端面を突き合わせた場合に多少の隙間が発生し、更に、レーザー溶接を行う場合、溶接部の熱収縮により鋼帯の突き合わせ面を押し開こうとする力が加わるため溶接部上流近傍では隙間が発生する。そこで、本発明では押さえロール4、6を傾斜させ、鋼帯1、3に幅方向の力を加え、溶接する鋼帯1、2、3の端部に突き合わせ力を与えることにより、熱収縮による隙間を押しつけ、更に、鋼帯端部の凸部の弾性変形もしくは塑性変形を加え、凹凸による隙間についても著しく低減させることにより、溶接点のおいて、鋼帯1、2、3の端部間の隙間を著しく小さくすることができ、安定した溶接品質の確保を可能とするものである。
【0010】
この際、鋼帯の幅方向の力を与えるには、通常、サイドガイドロール等により力を加える方法が一般的に考えられるが、自動車部品に用いられるような薄手の鋼帯に対しては、これらの方法では大きな力を加えると鋼帯の座屈や端部の耳荒れ等を発生するため大きな力を加えることができず、十分に前述の溶接する鋼帯の端部間の隙間を小さくすることができないという問題があった。そこで、本発明では鋼帯1、3に幅方向の力を加えるのに押さえロール4、6を傾斜させて押しつけるという方法を採用し、押さえロール4、6の押し付ける力と傾斜角度を適正に調整することにより、鋼帯1、2、3の座屈や端部の耳荒れを発生させることなく十分な押し付ける力を自動車部品に用いられるような薄手の鋼帯にも与えることができるようにする。
【0011】
前記したように、本発明は3条の鋼帯1、2、3を溶接するものであるが、レーザービーム8a、8bを照射する固定されたレーザー発射管9a、9bの位置に対して、溶接される接合面10a、10bが常に溶接位置になることが必要であり、そのために鋼帯2は押さえロール5により幅方向に位置変動しないようにし、鋼帯1、3は傾斜する押さえロール4、6により鋼帯2とのエッジ部端面に押付力が働くようにしながら溶接するものである。
即ち、鋼帯1、3は角度θ1 、θ2 だけ傾斜させ押さえロール4、6により拘束した状態で移動させ、且つ、θ1 、θ2 と押さえロール4、6の押さえ力を適度に調整することにより、鋼帯1、3の接合面10a、10bが鋼帯2の接合面10a、10bに適度な押付力を働かせるようにし、鋼帯1、2、3のエッジ面に面圧を立て、隙間を押し潰した状態で溶接することとなり、言い換えれば、ピンチ方式の突き合わせをすることになり、溶接品質が向上し、極めて有利なものである。
【0012】
更に、本発明の如く、鋼帯1、2、3を大径の溶接ロール7に巻き付けるのは鋼帯1、2、3の厚み方向の突き合わせ精度を良く合わせることが可能となるもので、巻付けをしないと鋼帯1、2、3と溶接ロール7の間の空間ができやすく、鋼帯1と鋼帯2と鋼帯3の厚み方向の突き合わせ精度が十分でない可能性が高いからである。
なお、押さえロール4、5、6は図3、図4に示す如く、鋼帯1、2、3毎に4個用いてもよく、その配置形態は種々考えられるが、特にこだわるものではない。
【0013】
また、溶接ロール7は図5に示す如く、溶接位置に相当する箇所に溝11a、11bを設けたものとして、溶接時における溶接ロール7の熱影響による損傷を防止するものとしている。この図5では厚みの異なる鋼帯1、2、3の接合を示しているが、溶接ロール7の径が全長にわたって同一径としているために鋼帯1、2、3は鋼帯1、2、3の下面に合わせて溶接するようにしている。なお、図6では鋼帯1、2、3の上面の合わせて溶接し、図7では厚い鋼帯1の厚みの中央に薄い鋼帯2を溶接するとともに鋼帯2を厚い鋼帯3の中央に溶接しているものであるが、このような接合の形態は溶接ロール7の溝11a、11bを挟んで左右の径を変えた溶接ロール7を用いるようにすれば容易になされるものである。また、溶接ロール7の左右の径を可変するのは溶接ロール7を拡縮自在とするようにしてもよくその手段は特にこだわるものではない。
【0014】
さらに、本発明では図8に示す如く、溶接点12a、12bの上流側にフランジロール13a、13bを配置して鋼帯1、2、3の間に隙間を設けるようにしている。また、本発明は鋼帯1、2、3を同一平面上で通板し、溶接点12は搬送するものであるが、その為に、鋼帯1、2、3の接合面10a、10bが擦れたり、鋼帯1と鋼帯2あるいは鋼帯2と鋼帯3が重なる場合があるので、それを防止するために鋼帯1、2間にフランジロール13a、13bを設けることはより好ましいものである。
【0015】
なお、本発明に用いる押さえロール4、6は、それぞれ角度θ1 、θ2 傾斜させるものであるが、角度θ1 、θ2 は共に2°〜25°が好ましく、また、押さえロール4、6の押さえ力は350N〜20000Nが好ましい。その理由は、角度θ1 、θ2 が2°未満もしくは押さえ力が350N未満では、鋼帯1、3の幅方向への押付力が不足して溶接品質が好ましくなく、角度θ1 、θ2 が25°超もしくは押さえ力が20000N超では押付力が大きくなりすぎ、鋼帯1、3の座屈等が発生する場合があるからである。但し、角度や押さえ力の前記した範囲は好ましい範囲を述べたに過ぎないもので、座屈等の発生がなければこの範囲にこだわるものでない。
なお、本発明の3条の異なる鋼帯とは隣接する鋼帯の材質とか板厚等を異にしているものであり、両端の鋼帯が同一で中央の鋼帯が異なるものも対象としているものである。
【0016】
【実施例1】
常法に従い製造された表1に示す化学成分の板厚0.7mm、幅250mmの鋼帯1と板厚1.4mm、幅690mmの鋼帯2と板厚0.7mm、幅250mmの鋼帯3を準備し、2kwのレ−ザ−溶接機にて1.7m/分の速度で鋼帯1と鋼帯2と鋼帯3を接合した。
その条件を表1に示し、溶接結果を表2および表3に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
上表から明らかなように、本発明によると座屈の発生もなく、アンダーカットの発生もなく、極めて良好な溶接品質が得られる。
【0020】
【実施例2】
実施例1で示す鋼帯1と鋼帯2と鋼帯3を自動車部品(センターピラー)に成形すべく、各々1000mmに切断した。この場合、本発明は鋼帯1、2、3を接合した後に切断するものとし、比較例では鋼帯1、2、3を切断した後に鋼板を接合した。その時の所要時間を表4に示す。
【0021】
【表4】
表4に示すように、本発明によると比較例で示す切板接合法に比べると、生産性も飛躍的に向上することが判る。
【0022】
【発明の効果】
前記説明から明らかなように本発明によれば、自動車部品等をテーラードブランク法で製造する際、溶接品質が良好で、しかも、生産性の良い鋼帯の接合が可能となり、その効果は極めて大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明方法の平面説明図である。
【図2】 図1に示す本発明方法の側面説明図である。
【図3】 押さえロールを多くした本発明方法の平面説明図である。
【図4】図3に示す本発明方法の側面説明図である。
【図5】 本発明方法の溶接近傍を示す拡大説明図である。
【図6】本発明方法の溶接近傍を示す拡大説明図である。
【図7】 本発明方法の溶接近傍を示す拡大説明図である。
【図8】本発明方法の溶接点上流側にフランジロールを具備した状態の説明図である。
【符号の説明】
1 鋼帯1
2 鋼帯2
3 鋼帯3
4 押さえロール
5 押さえロール
6 押さえロール
7 溶接ロール
8 レーザービーム
9 レーザー発射管
10 接合面
11 溝
12 溶接点
13 フランジロール
Claims (2)
- 3条の異なる鋼帯を、溶接ロールと、各条の鋼帯毎に設けられた押さえロールとの間を通過させながら鋼帯のエッジ部を連続的に溶接する方法であって、中央の鋼帯の押さえロールは進行方向に対して直角方向に配置し、両側の鋼帯の押さえロールは傾斜して配置し、両側の鋼帯の押さえロールを傾斜させることにより両側の鋼帯に幅方向の力を加えて中央の鋼帯と両側の鋼帯との間のエッジ部端面に押付力が働くようにしながらレーザー溶接することを特徴とする鋼帯の接合方法。
- レーザー溶接する溶接点の上流側にフランジロールを配置して鋼帯の間に隙間を設けるようにしてあることを特徴とする請求項1記載の鋼帯の接合方法。
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JP33996898A Expired - Lifetime JP4047469B2 (ja) | 1998-11-30 | 1998-11-30 | 鋼帯の接合方法 |
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- 1998-11-30 JP JP33996898A patent/JP4047469B2/ja not_active Expired - Lifetime
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